いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第7章

第344話 番外編:ねことうさぎとりすとライオンとクマの物語②※

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自分の悲劇的な未来に絶望している間に、ライオンとクマはスイスイ迷路を進んでいく。速すぎて周りの景色がよく見えないくらいだ。

途中何度か休憩するたびに、ベロベロとライオンの大きな舌で身体中を舐められ、ぞわああっと毛が逆立った(これは…味見?)逃亡を図ろうとしてもすぐに捕まってしまう。 

そんなことを繰り返している間に、ゴールと書かれたアーチ型の門が見えた。門を潜るとぽむっと音がして、もふもふの白い体が肌色に変化していく。

「あ……僕の手……人間になってる」

クライスや、その後についてきたクーマ、リリー、テアも、動物の姿から無事人間に戻っていた。地下迷宮から戻った僕らの元に、ニコニコと入り口にいたお兄さんが近寄ってくる。

「おかえりなさいませ。『新感覚動物もふもふワールド』はいかがでしたか? 楽しんでいただけましたでしょうか」
「ああ、結構楽しかった」
「オレも、自分以外の人も動物になってるのは、新鮮で楽しがったでず」
「僕も楽しかったよ。また来たいね。次はねこ以外の動物にもなってみたい」
「テアも、リスになれるなんて思ってもみなかった。びっくりしたけどスリルがあって楽しかったぁ~」

さっきまで僕と一緒に必死で逃げている様子だったのに、リリーとテアはもうケロッとした顔をしている。

「そちらの方はいかがでしたか?」

受付のお兄さんに感想を聞かれ、みんなの視線が集中する。なんか答えなきゃ。

「ぼく…は……」

(う、ほんとは怖かったけど、でも……自分だけ本気でビビってただなんて知られたくない)

空気を読んで、「僕も楽しかったよ」と言おうとしたけど、言葉が出なかった。泣くのを我慢するので精一杯で、俯いて顔を隠す。でも小さな嗚咽が漏れ、それをクライスは聞き逃さなかった。お兄さんを下がらせ、僕の頭をポムポムと撫でる。

「ふっ……」
「キルナ、大丈夫か? 怖かったのか?」
「っ……だって…ライオンがすごい勢いで追いかけてくるからぁ……」
「ああ、それは……。すまない」

聞けば、クライスはすぐにうさぎが僕だと見抜いていたらしい。せっかくだし一緒にもふもふワールドを楽しもう、という気持ちで追いかけてきていたのだって。

リリーとテアも、途中からその意図に気づいて、機嫌良くクーマの背中に乗って迷宮探検を満喫していたという。最後まで気づかなかったのは僕だけだった。中身がクライスなのだから冷静に考えれば食べられるはずないのに。ほんと、僕のバカ。

「ごめん、クライスが悪いんじゃないよ。ちょっと…びっくりしただけだから」
「我慢しないで泣いていい」

クライスがそんな優しいことを言ったせいで、隠していた本音がぶわああっと外に出てしまった。

「……怖かったよおぉ」

びええええんと泣き出した僕を、みんながよしよしと撫でてくれた。……優しい。





数十分後……

「なんだ? リリー」

「クライス王子、キルナ様がかわいそう(カワイソカワイイ)なので、今日は慰めて(可愛がって)あげくださいね」

「ああ、わかっている」

「はい。コレ~、テアたちからのプレゼントですぅ。もふもふワールドのお土産屋さん(アダルトコーナー)にあったので、よかったら食べてください~」

「ん? これは。動物発情クッキー…だと?」

「このクッキー食べたら、発情状態になるそうですぅ。あと、これも。(もふもふ躾シリーズのコーナーで)とってもイイモノ見つけちゃったんで~、ぜひキルナサマに使ってあげてください」


「「お大事に……」」


「ああ…ありがとう」           


そんなやりとりが行われているとはつゆ知らず。僕はなんとか泣き止んで、差し出されたクライスの手を取った。

「さあ、キルナ、寮の部屋に帰ってゆっくりハーブティーでも飲んで落ち着こう」
「ん、なんかお腹も空いたし、甘いの食べたい」
「ああ、ちょうどリリーとテアがさっきくれた動物クッキーがある」

クライスの手には可愛くラッピングされたクッキー缶があった。さっきまでどん底だった僕のテンションがぐんぐん上がっていく。

(やったぁ~クッキー早く食べたい!)

「じゃあキルナサマ、またね~」
「クッキーどんな味だったか。後で教えてね」
「ん、わかった。ありがと」

このクッキーを受け取ったことを後悔することになるとは、この時の僕はまだ知らなかった。



***

『発情クッキー』とイイモノを手に入れたクライス🦁 どうなるキルナ🐰
                    
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