187 / 286
第7章
第323話 サプライズ誕生日パーティー①(ちょい※)
しおりを挟む
爽快な朝だった。
アーチ型の大きな窓からきらきらと朝日が差し込み、鳥たちがピッピと鳴いておしゃべりしているみたい。花がたくさん花瓶に生けられていて、部屋中に甘く高貴な香りが満ちている。
腕の中には大きなメフメフのぬいぐるみ。
そして僕は、逞しいクライスの腕の中にいた。
(よく寝てる……)
長い金色のまつ毛はいつもよりぎゅっときつく閉じられ、全然起きそうにない。
(ランニング、行かなかったのかな?)
いつもなら早朝ランニングに行っているか、戻ってきて読書しながら優雅にコーヒーを飲んでいるかどちらかなのに。なんで?
クライスを起こさないようにそっと腕から抜け出てベッドから出る。
冷たい水をグラスに入れ、ごくごくと飲みながらふと全身鏡を見た。え? 一瞬目を疑う。
「な、な、なんてこと!!!」
白いワンピース……軽やかで暖かく着心地抜群だけれど。問題はそこじゃない。ほぼ裸!? ほとんど透けて肌の色がまるわかり。そしてこの衝撃的にエロい下着……え? 紐? お股のとことか紐しかないけど!!
僕こんな格好でクライスの腕の中で寝て……何してたのだっけ。
『クライスぅ、こっちきて手伝って?』
クライスによりかかりながら脚を広げて、おねだり…して……、その他諸々、二週間分の自分の所業が一気に蘇ってきて、治ったはずの頭に痛みを感じた。
(迷惑かけていいって言われたけど、さすがにこれは酷すぎる!)
もう一度クライスを見ると、目の下に濃いクマができていて、全体的に少しやつれたように見える。元がハイパーイケメンだからすこしアンニュイなかんじもカッコいいけど、こんな風になっちゃったのは僕のせい。
「クライスごめん」
咄嗟に、ふにっと柔らかな唇にごめんなさいのキスをしたけれど、それでも彼は起きなかった。死んで…ないよね? 脈を測ったり息をしてるか調べて、生存を確認し、僕はズルズルとベッドの横にへたり込んだ。
床に座ったままクライスのベッドにもたれ、恥ずかしさに熱くなった頭を冷ましながら今までのことを振り返る。
砂時計を無くして走っていったときは妖精の森まで、誘拐されたときはドラゴンのいる洞窟まで、妖精に呼ばれたときは妖精の世界にまで迎えにきてもらって、今回は温室に……。そして魔力風邪の看病をさせ……あんなエッチなお手伝いまでさせて。
(ずっとずっと迷惑ばかりかけている。僕からは何もしてあげられてないのに)
プレゼントの懐中時計も渡すタイミングを逃しっぱなしで渡せていない。机の引き出しにしまった懐中時計は、綺麗な箱に入れてラッピングし直してからまた日にちが経ってしまった。
(いっそのこと、今日渡すというのはどうかな?)
海とか湖とか……ロマンチックな場所で渡したい、とか思ってまだぐずぐずと持っていたけれど、そんなこと言ってたらいつになるかわからない。プレゼントを渡して、他にも彼のためにできることをいっぱいして、ありがとうって伝えたい。
最高のシチュエーション、とまではいかなくても、美味しい料理やお菓子、お花をいっぱい飾れば少しは雰囲気が出せるかも。
机に座りメモ帳を広げ、できる限りプレゼント渡しに最適な空間を作るため、自分にできることを考える。
「結構難しい……」
あーでもないこうでもないと書いたり消したりしているうちに、前世病院に入院していたときに開かれたサプライズパーティーのことが頭に浮かんだ。
病院で過ごす子どもたちのために開かれたイベントで、それは日々退屈なばかりの病院生活を楽しい気分にさせてくれた。可愛い飾り付けに美味しいお菓子、綺麗な音楽があれば、病院が素敵な場所に様変わりした。
もともとこの時計は誕生日プレゼントとして用意したのだし、サプライズの誕生日パーティーを開いて渡しちゃおう。
そうと決まるとイメージが湧いてきて、必要なものをどんどんメモしていった。
〈用意するもの〉
・おいしいご飯(オムライス、ハンバーグ、ポタージュスープ)
・甘いお菓子(クッキー、マフィン、シフォンケーキ)
・シフォンケーキに合う紅茶
・良い香りのするキャンドル
・お風呂に浮かべる花びら。
こんなかんじかな? 何度も見直して「ん、完璧!」と頷く。
あと、衣装はどうしよう。病院のパーティーはピエロの格好をしたお兄さんが盛り上げてくれたけど、もちろんここにそんなものはない。だからと言って、いつも通りだとつまらないし……。派手な服はあったかな? う~んと考えたのち、はっと自分の恥ずかしい服をしげしげと見た。
(これは…派手かも……)
この姿で彼に誕生日プレゼントを渡すと喜ぶかしら。恥ずかしいけれどこれで彼を喜ばせることができるならアリかもしれない。
プレゼントを渡した後は、リリーとテアが教えてくれたとっておきの言葉を言うつもり。(喧嘩したときとか、いざという時に使えばいいと習った)
「待っててね。クライス。すっごい誕生日パーティーにするから」
まだ眠っている彼に小さく呟いて、ちゅっと額にキスをした。
ああ、どうしよう。彼の寝顔を見ているとなんだか愛しい気持ちが込み上げてきて無性にキスしたくなるから危険だ。あんまり近づかないようにしないとキス魔になってしまう……(魔力風邪の時の自分の行動を考えると、そういう要素が自分にはあるみたいだし…気をつけないと)。
書き終えたメモ用紙をちぎっていると、ベルが鳴った。「はーい」と返事してドアを開けると、絶世の美女二人、じゃなくって、テアとリリーがそこにいた。
アーチ型の大きな窓からきらきらと朝日が差し込み、鳥たちがピッピと鳴いておしゃべりしているみたい。花がたくさん花瓶に生けられていて、部屋中に甘く高貴な香りが満ちている。
腕の中には大きなメフメフのぬいぐるみ。
そして僕は、逞しいクライスの腕の中にいた。
(よく寝てる……)
長い金色のまつ毛はいつもよりぎゅっときつく閉じられ、全然起きそうにない。
(ランニング、行かなかったのかな?)
いつもなら早朝ランニングに行っているか、戻ってきて読書しながら優雅にコーヒーを飲んでいるかどちらかなのに。なんで?
クライスを起こさないようにそっと腕から抜け出てベッドから出る。
冷たい水をグラスに入れ、ごくごくと飲みながらふと全身鏡を見た。え? 一瞬目を疑う。
「な、な、なんてこと!!!」
白いワンピース……軽やかで暖かく着心地抜群だけれど。問題はそこじゃない。ほぼ裸!? ほとんど透けて肌の色がまるわかり。そしてこの衝撃的にエロい下着……え? 紐? お股のとことか紐しかないけど!!
僕こんな格好でクライスの腕の中で寝て……何してたのだっけ。
『クライスぅ、こっちきて手伝って?』
クライスによりかかりながら脚を広げて、おねだり…して……、その他諸々、二週間分の自分の所業が一気に蘇ってきて、治ったはずの頭に痛みを感じた。
(迷惑かけていいって言われたけど、さすがにこれは酷すぎる!)
もう一度クライスを見ると、目の下に濃いクマができていて、全体的に少しやつれたように見える。元がハイパーイケメンだからすこしアンニュイなかんじもカッコいいけど、こんな風になっちゃったのは僕のせい。
「クライスごめん」
咄嗟に、ふにっと柔らかな唇にごめんなさいのキスをしたけれど、それでも彼は起きなかった。死んで…ないよね? 脈を測ったり息をしてるか調べて、生存を確認し、僕はズルズルとベッドの横にへたり込んだ。
床に座ったままクライスのベッドにもたれ、恥ずかしさに熱くなった頭を冷ましながら今までのことを振り返る。
砂時計を無くして走っていったときは妖精の森まで、誘拐されたときはドラゴンのいる洞窟まで、妖精に呼ばれたときは妖精の世界にまで迎えにきてもらって、今回は温室に……。そして魔力風邪の看病をさせ……あんなエッチなお手伝いまでさせて。
(ずっとずっと迷惑ばかりかけている。僕からは何もしてあげられてないのに)
プレゼントの懐中時計も渡すタイミングを逃しっぱなしで渡せていない。机の引き出しにしまった懐中時計は、綺麗な箱に入れてラッピングし直してからまた日にちが経ってしまった。
(いっそのこと、今日渡すというのはどうかな?)
海とか湖とか……ロマンチックな場所で渡したい、とか思ってまだぐずぐずと持っていたけれど、そんなこと言ってたらいつになるかわからない。プレゼントを渡して、他にも彼のためにできることをいっぱいして、ありがとうって伝えたい。
最高のシチュエーション、とまではいかなくても、美味しい料理やお菓子、お花をいっぱい飾れば少しは雰囲気が出せるかも。
机に座りメモ帳を広げ、できる限りプレゼント渡しに最適な空間を作るため、自分にできることを考える。
「結構難しい……」
あーでもないこうでもないと書いたり消したりしているうちに、前世病院に入院していたときに開かれたサプライズパーティーのことが頭に浮かんだ。
病院で過ごす子どもたちのために開かれたイベントで、それは日々退屈なばかりの病院生活を楽しい気分にさせてくれた。可愛い飾り付けに美味しいお菓子、綺麗な音楽があれば、病院が素敵な場所に様変わりした。
もともとこの時計は誕生日プレゼントとして用意したのだし、サプライズの誕生日パーティーを開いて渡しちゃおう。
そうと決まるとイメージが湧いてきて、必要なものをどんどんメモしていった。
〈用意するもの〉
・おいしいご飯(オムライス、ハンバーグ、ポタージュスープ)
・甘いお菓子(クッキー、マフィン、シフォンケーキ)
・シフォンケーキに合う紅茶
・良い香りのするキャンドル
・お風呂に浮かべる花びら。
こんなかんじかな? 何度も見直して「ん、完璧!」と頷く。
あと、衣装はどうしよう。病院のパーティーはピエロの格好をしたお兄さんが盛り上げてくれたけど、もちろんここにそんなものはない。だからと言って、いつも通りだとつまらないし……。派手な服はあったかな? う~んと考えたのち、はっと自分の恥ずかしい服をしげしげと見た。
(これは…派手かも……)
この姿で彼に誕生日プレゼントを渡すと喜ぶかしら。恥ずかしいけれどこれで彼を喜ばせることができるならアリかもしれない。
プレゼントを渡した後は、リリーとテアが教えてくれたとっておきの言葉を言うつもり。(喧嘩したときとか、いざという時に使えばいいと習った)
「待っててね。クライス。すっごい誕生日パーティーにするから」
まだ眠っている彼に小さく呟いて、ちゅっと額にキスをした。
ああ、どうしよう。彼の寝顔を見ているとなんだか愛しい気持ちが込み上げてきて無性にキスしたくなるから危険だ。あんまり近づかないようにしないとキス魔になってしまう……(魔力風邪の時の自分の行動を考えると、そういう要素が自分にはあるみたいだし…気をつけないと)。
書き終えたメモ用紙をちぎっていると、ベルが鳴った。「はーい」と返事してドアを開けると、絶世の美女二人、じゃなくって、テアとリリーがそこにいた。
127
お気に入りに追加
10,241
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。