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第7章

第323話 サプライズ誕生日パーティー①(ちょい※)

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爽快な朝だった。

アーチ型の大きな窓からきらきらと朝日が差し込み、鳥たちがピッピと鳴いておしゃべりしているみたい。花がたくさん花瓶に生けられていて、部屋中に甘く高貴な香りが満ちている。

腕の中には大きなメフメフのぬいぐるみ。
そして僕は、逞しいクライスの腕の中にいた。

(よく寝てる……)

長い金色のまつ毛はいつもよりぎゅっときつく閉じられ、全然起きそうにない。

(ランニング、行かなかったのかな?)

いつもなら早朝ランニングに行っているか、戻ってきて読書しながら優雅にコーヒーを飲んでいるかどちらかなのに。なんで? 

クライスを起こさないようにそっと腕から抜け出てベッドから出る。
冷たい水をグラスに入れ、ごくごくと飲みながらふと全身鏡を見た。え? 一瞬目を疑う。

「な、な、なんてこと!!!」

白いワンピース……軽やかで暖かく着心地抜群だけれど。問題はそこじゃない。ほぼ裸!? ほとんど透けて肌の色がまるわかり。そしてこの衝撃的にエロい下着……え? 紐? お股のとことか紐しかないけど!!

僕こんな格好でクライスの腕の中で寝て……何してたのだっけ。


『クライスぅ、こっちきて手伝って?』

クライスによりかかりながら脚を広げて、おねだり…して……、その他諸々、二週間分の自分の所業が一気に蘇ってきて、治ったはずの頭に痛みを感じた。

(迷惑かけていいって言われたけど、さすがにこれは酷すぎる!)

もう一度クライスを見ると、目の下に濃いクマができていて、全体的に少しやつれたように見える。元がハイパーイケメンだからすこしアンニュイなかんじもカッコいいけど、こんな風になっちゃったのは僕のせい。

「クライスごめん」

咄嗟に、ふにっと柔らかな唇にごめんなさいのキスをしたけれど、それでも彼は起きなかった。死んで…ないよね? 脈を測ったり息をしてるか調べて、生存を確認し、僕はズルズルとベッドの横にへたり込んだ。


床に座ったままクライスのベッドにもたれ、恥ずかしさに熱くなった頭を冷ましながら今までのことを振り返る。

砂時計を無くして走っていったときは妖精の森まで、誘拐されたときはドラゴンのいる洞窟まで、妖精に呼ばれたときは妖精の世界にまで迎えにきてもらって、今回は温室に……。そして魔力風邪の看病をさせ……あんなエッチなお手伝いまでさせて。

(ずっとずっと迷惑ばかりかけている。僕からは何もしてあげられてないのに)

プレゼントの懐中時計も渡すタイミングを逃しっぱなしで渡せていない。机の引き出しにしまった懐中時計は、綺麗な箱に入れてラッピングし直してからまた日にちが経ってしまった。


(いっそのこと、今日渡すというのはどうかな?)

海とか湖とか……ロマンチックな場所で渡したい、とか思ってまだぐずぐずと持っていたけれど、そんなこと言ってたらいつになるかわからない。プレゼントを渡して、他にも彼のためにできることをいっぱいして、ありがとうって伝えたい。

最高のシチュエーション、とまではいかなくても、美味しい料理やお菓子、お花をいっぱい飾れば少しは雰囲気が出せるかも。

机に座りメモ帳を広げ、できる限りプレゼント渡しに最適な空間を作るため、自分にできることを考える。

「結構難しい……」

あーでもないこうでもないと書いたり消したりしているうちに、前世病院に入院していたときに開かれたサプライズパーティーのことが頭に浮かんだ。

病院で過ごす子どもたちのために開かれたイベントで、それは日々退屈なばかりの病院生活を楽しい気分にさせてくれた。可愛い飾り付けに美味しいお菓子、綺麗な音楽があれば、病院が素敵な場所に様変わりした。

もともとこの時計は誕生日プレゼントとして用意したのだし、サプライズの誕生日パーティーを開いて渡しちゃおう。

そうと決まるとイメージが湧いてきて、必要なものをどんどんメモしていった。

〈用意するもの〉

・おいしいご飯(オムライス、ハンバーグ、ポタージュスープ)
・甘いお菓子(クッキー、マフィン、シフォンケーキ)
・シフォンケーキに合う紅茶
・良い香りのするキャンドル
・お風呂に浮かべる花びら。

こんなかんじかな? 何度も見直して「ん、完璧!」と頷く。

あと、衣装はどうしよう。病院のパーティーはピエロの格好をしたお兄さんが盛り上げてくれたけど、もちろんここにそんなものはない。だからと言って、いつも通りだとつまらないし……。派手な服はあったかな? う~んと考えたのち、はっと自分の恥ずかしい服をしげしげと見た。

(これは…派手かも……)


この姿で彼に誕生日プレゼントを渡すと喜ぶかしら。恥ずかしいけれどこれで彼を喜ばせることができるならアリかもしれない。

プレゼントを渡した後は、リリーとテアが教えてくれたとっておきの言葉を言うつもり。(喧嘩したときとか、いざという時に使えばいいと習った)

「待っててね。クライス。すっごい誕生日パーティーにするから」

まだ眠っている彼に小さく呟いて、ちゅっと額にキスをした。

ああ、どうしよう。彼の寝顔を見ているとなんだか愛しい気持ちが込み上げてきて無性にキスしたくなるから危険だ。あんまり近づかないようにしないとキス魔になってしまう……(魔力風邪の時の自分の行動を考えると、そういう要素が自分にはあるみたいだし…気をつけないと)。

書き終えたメモ用紙をちぎっていると、ベルが鳴った。「はーい」と返事してドアを開けると、絶世の美女二人、じゃなくって、テアとリリーがそこにいた。
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