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第7章
第312話 隣の部屋のお泊まり会③ クライスSIDE
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くたくたになった後もう一度交代で風呂に入り、ソファで紅茶を飲んでひと息つき、ようやく本題に入る。(こんなことをしている場合じゃなかったことを思い出した)
「お前たちに聞きたいことがある。以前からキルナを狙っていた青フードのことだ。王宮で大まかな話は聞いたのだが、時間がなくてまだ詳細を把握できていない。知っていることを教えてくれ」
「はい。クライス様がいない間に、青フードたちの動きが活発になってきました。どうやらキルナ様の居場所を探っているようなのです」
仕事モードに切り替えたロイルが報告を始める。
「はじめのうち連中はこそこそと隠れていたのですが、ここ一年はなりふり構わず聞き込みをしているようで、あちこちの宿屋や飲食店でキルナ様の居場所を聞き出そうとする様子が目撃されています。留学という情報が公にされてからは、国外の学園からも青フードの目撃情報が寄せられるようになりました」
青いフードの連中は何人もの手下を使って国外まで聞き込み調査をしているらしい。
「そして同じく一年ほど前から、王都に魔獣が出没するようになりました。それを扇動しているのも、どうやら青フードのようです。何度か一般人が襲われる事件も起きており、現在騎士団が厳戒態勢で動いています」
「それだけ派手に動き情報が集まっているのに、まだ青フードたちを捕らえることはできないのか」
「はい、残念ながら」とギアが歯軋りしながら頷く。
「何人か捕縛に成功したものの、下っ端ばかりです。尋問し情報を吐かせようとすると、すぐさま呪いのようなものが発動し命を奪う仕組みになっていて、肝心の情報が集まりません。あの青いフードには強力な目眩しの魔法がかけられているようで、顔や性別も不明なまま。高度な魔術を駆使してうまく逃げられてしまいます」
魔獣を使って彼らは何をしようとしているのか。
資料を見ても、魔獣が狙う相手には一貫性がない。たまたま遭遇したものを襲っている、という印象だ。ただ、フェルライト公爵領と王都、とりわけ学園周辺に出没する数が多いということがわかる。
「もしかしたら、魔獣の鋭い嗅覚を利用してキルナの居場所を探していたのかもしれないな。結界を掻い潜り、人が多く警備の厳重な王都の中にまで魔獣を放つなど……。そんなに目立つことまでしてキルナを探している理由は何なのか、調べる必要がある。ここ一年で急に大きく動き出している理由も気になるな」
俺の言葉を受けてロイルが頷いた。
「キルナ様が学園に戻ってきたという情報は奴らに伝わっているでしょう。いつこの学園に押し寄せてくるやもしれません。セントラ理事長の強力な結界があるとはいえ、相手はドラゴンさえも操れる強力な魔術師たち。くれぐれも目をお離しになりませんよう」
「俺たちも常にキルナ様のお近くにいて警護します!」
「ああ、ロイル、ギア頼む」
話を終えるともう0時を回っていた。
「俺たちは交代で隣の部屋の警護をしますので、クライス様は俺のベッドをお使いください! 昨日戻ってきたばかりでお疲れでしょう。シーツも枕も新しいものに替えていますので」
「すまないな」
ベッドに横になると隣の部屋から三人の楽しそうな声が聞こえてくる。やっと日常が戻ってきたことに心からホッとする。だが一方で青フードの動向が気になって仕方がなかった。
キルナの居場所を奴らが血眼になって探っている。
昨日王宮に戻り妖精の世界についての報告を終えると、父がそう教えてくれた。彼の身に危険が迫っている。だが下手に隠すよりセントラの守りがある学園が一番安全だろうと判断され、俺たちはここに戻ってくることになった。
(なんとしてでも奴らの手からキルナを守らなければ……契約も……やることはたくさんある)
隣から聞こえてくる可愛らしいおしゃべりをいつまでも聴いていたいと思いながら耳をすます。
しかし、ひたすら妖精の世界を歩き、セントラにキルナを託した後王宮に報告に行き、帰っても目覚めない彼の看病をし、休む間も無く入学式を迎え、謎の魔道具で訓練した身体……は、思っていた以上に疲れていたらしく、すぐに眠ってしまった。
だからロイルとギアが隣の部屋から聞こえてくる会話の凄まじい内容のせいで、朝まで眠れなかったことには気づかなかった。
「お前たちに聞きたいことがある。以前からキルナを狙っていた青フードのことだ。王宮で大まかな話は聞いたのだが、時間がなくてまだ詳細を把握できていない。知っていることを教えてくれ」
「はい。クライス様がいない間に、青フードたちの動きが活発になってきました。どうやらキルナ様の居場所を探っているようなのです」
仕事モードに切り替えたロイルが報告を始める。
「はじめのうち連中はこそこそと隠れていたのですが、ここ一年はなりふり構わず聞き込みをしているようで、あちこちの宿屋や飲食店でキルナ様の居場所を聞き出そうとする様子が目撃されています。留学という情報が公にされてからは、国外の学園からも青フードの目撃情報が寄せられるようになりました」
青いフードの連中は何人もの手下を使って国外まで聞き込み調査をしているらしい。
「そして同じく一年ほど前から、王都に魔獣が出没するようになりました。それを扇動しているのも、どうやら青フードのようです。何度か一般人が襲われる事件も起きており、現在騎士団が厳戒態勢で動いています」
「それだけ派手に動き情報が集まっているのに、まだ青フードたちを捕らえることはできないのか」
「はい、残念ながら」とギアが歯軋りしながら頷く。
「何人か捕縛に成功したものの、下っ端ばかりです。尋問し情報を吐かせようとすると、すぐさま呪いのようなものが発動し命を奪う仕組みになっていて、肝心の情報が集まりません。あの青いフードには強力な目眩しの魔法がかけられているようで、顔や性別も不明なまま。高度な魔術を駆使してうまく逃げられてしまいます」
魔獣を使って彼らは何をしようとしているのか。
資料を見ても、魔獣が狙う相手には一貫性がない。たまたま遭遇したものを襲っている、という印象だ。ただ、フェルライト公爵領と王都、とりわけ学園周辺に出没する数が多いということがわかる。
「もしかしたら、魔獣の鋭い嗅覚を利用してキルナの居場所を探していたのかもしれないな。結界を掻い潜り、人が多く警備の厳重な王都の中にまで魔獣を放つなど……。そんなに目立つことまでしてキルナを探している理由は何なのか、調べる必要がある。ここ一年で急に大きく動き出している理由も気になるな」
俺の言葉を受けてロイルが頷いた。
「キルナ様が学園に戻ってきたという情報は奴らに伝わっているでしょう。いつこの学園に押し寄せてくるやもしれません。セントラ理事長の強力な結界があるとはいえ、相手はドラゴンさえも操れる強力な魔術師たち。くれぐれも目をお離しになりませんよう」
「俺たちも常にキルナ様のお近くにいて警護します!」
「ああ、ロイル、ギア頼む」
話を終えるともう0時を回っていた。
「俺たちは交代で隣の部屋の警護をしますので、クライス様は俺のベッドをお使いください! 昨日戻ってきたばかりでお疲れでしょう。シーツも枕も新しいものに替えていますので」
「すまないな」
ベッドに横になると隣の部屋から三人の楽しそうな声が聞こえてくる。やっと日常が戻ってきたことに心からホッとする。だが一方で青フードの動向が気になって仕方がなかった。
キルナの居場所を奴らが血眼になって探っている。
昨日王宮に戻り妖精の世界についての報告を終えると、父がそう教えてくれた。彼の身に危険が迫っている。だが下手に隠すよりセントラの守りがある学園が一番安全だろうと判断され、俺たちはここに戻ってくることになった。
(なんとしてでも奴らの手からキルナを守らなければ……契約も……やることはたくさんある)
隣から聞こえてくる可愛らしいおしゃべりをいつまでも聴いていたいと思いながら耳をすます。
しかし、ひたすら妖精の世界を歩き、セントラにキルナを託した後王宮に報告に行き、帰っても目覚めない彼の看病をし、休む間も無く入学式を迎え、謎の魔道具で訓練した身体……は、思っていた以上に疲れていたらしく、すぐに眠ってしまった。
だからロイルとギアが隣の部屋から聞こえてくる会話の凄まじい内容のせいで、朝まで眠れなかったことには気づかなかった。
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