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第7章
第304話 黒縁眼鏡卒業
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ゲームが無事はじまったのかどうかもよくわからないまま入学式を迎えた。新入生、在校生の挨拶はどちらも完璧で、会場に大きな拍手と称賛の声が響き渡る。クライスが人気者だということは知っていたけど、ユジンの人気も相当なものだった。
「ユジン様~!! 貴方についていきます~!」
「かっこいい~こっち向いて下さい~」
「好きです! 結婚して下さい!!!」
自分の弟がアイドル扱いされているのはなんだか変な気分だけど、悪い気はしない。むしろ兄として誇らしい。僕はそれを遠いところから眺めている予定だったのだけど、
「キル兄様!! 僕の挨拶どうでした?」
「キルナ!! ちゃんと聞いていたか?」
どうして二人は一目散に僕のところへ来ちゃったのだろう。なんだあの眼鏡、今日の主役を独り占めして、という視線をひしひしと感じる。
「えと…二人とも堂々としていて格好良かったよ」
「そうか」
「嬉しいです!」
満面の笑みを浮かべる二人は、なんだかハッピーエンドを迎えた彼らの姿を連想させ、僕は首を捻った。(まだゲームは始まったところなのに、二人ともすでに最高に幸せそう……)
ユジンと別れ、僕はクライスと一緒に教室へと向かう。あっという間に4年が過ぎてしまったせいで準備が整わないままゲームがはじまってしまい、正直まだ悪役としてどう動いたらいいのかわからない。
見た目から始めるために、僕はとりあえず眼鏡を外してみることにした。やはり、というべきか、すれ違う生徒はみんな僕の顔を凝視している。立ち止まって振り返る生徒もいれば、わざわざ見にくる生徒もいる。真っ赤になって逃げ出す子や鼻血を出して倒れる子までいた。
(さすが悪役フェイス……顔面凶器すぎる……)
覚悟は決めたものの心が痛い。クライスや友達のおかげで瞳を見られるのはもう大丈夫だと思ったのに、こんな反応をされると辛い。思わず隠すように俯くと、クライスが少し屈んで僕の瞳を覗き込んだ。
「キルナ、眼鏡はどうした?」
「もうかけないことにしたの。僕の瞳、綺麗だってクライス言ってくれたでしょう? だからもう隠さなくてもいいかなって思って」
「ああ。綺麗だ。今すぐキスして食べたいくらいに」
「な、何言ってるの!?」
「だが、気をつけろ。俺から離れるなよ」
「ん、わかった」
そんなことを言い合っているうちに6年生の教室に着いた。
この学園、クラス替えはないらしい。教室にいるメンバーは1年の時と同じで席も同じだった。でもなんかちょっと少ないような。誰がいないのかな? 思い出そうとしていると明るい声が聞こえた。
「キルナ様! クライス王子! お久しぶりです。お元気でしたか!?」
相変わらず好奇心旺盛なキャラメル色の瞳をキラキラさせ走り寄ってきたのはベルト。(背がぐんと伸びている)
「どこの国で何の勉強をしてこられたのですか? ぜひ聞かせて下さい!!」
「えっと……」
興味津々の彼にどう答えたらよいか悩んでいるとクライスが横から返事をする。
「ああ、すまない。留学の話はしない約束になっている」
その説明にベルトは大きく頷いた。
「そうでしたか。すみません軽率でした。なるほど、超機密事項に関わる勉強をしてこられたのですね。羨ましいです。私も留学して他国の商売を現地で学んでみたい」
「ふふ、やっぱりベルトは根っからの商売人なんだね」
見た目が変わっても変わらないなぁとベルトに癒されていると、すらりとした美人がやってきてヒラヒラと僕に手を振った。
「キルナサマ~」
「ん? テア!!」
テアは麗しさに拍車がかかってスーパーモデルみたいになっている。腰まである青い髪を靡かせ耳元のサファイアのピアスが歩くたびにシャラリと揺れる。桃のような良い香りまでする。おしゃれすぎてもはや自分とは別の人種だ。
「…なんか……見ないうちに…美人になっちゃって……」
彼の圧倒的美貌にドギマギしすぎて親戚のおばさんみたいなコメントをしてしまう僕。
「会いたかったぁ~」
ふわりと華奢な腕に抱きつかれ、いい香りと柔らかな感触を堪能する。やばいこれ。テアは男の子のはずなのに……なんだかいけない気分に……。ぷるんと艶やかな唇を耳元に寄せ、甘い声でひそひそと内緒話をしてくるテアに心臓がドキドキする。
「眼鏡もないし、髪も綺麗。ねぇ~キルナサマ、もう妖精のお姫様だって隠すのはやめたの~?」
「えと、それは……」
色々説明したいけどここじゃ無理だから、と話そうとしたところでテアとは反対側の耳元にこれまた魅惑のうるうるリップが寄せられる。
「ちょっとバカメガネ。なんで眼鏡してないわけ? 留学してる間に僕の忠告忘れちゃった?」
甘く可愛らしい声だけど高圧的な女王様の喋り方。両耳の鼓膜が甘い声の振動で振るわされゾクゾクする。しかもなんか怪しい手つきで僕の体を触ってくる二人。ちょっとそれやばいよ、離れてぇ……。
僕の僕がちょっと危ないところで二人が離れてホッとする。
「んはぁ、びっくりした、リリー!! 久しぶりだね」
オレンジの巻き毛は器用に編み込まれキュートさを際立たせている。たった今までぷりぷり怒ってる様子だったのに、ガバリと僕の胸に抱きつき顔を埋めた。
「…………」
彼の肩が小刻みに揺れている。
「泣かないで、リリー。ごめんね」
何も言わずに4年も離れてしまった。リリーはこう見えてとても寂しがり屋なのに。
「もう黙ってどこかにいったりしないから」
「本当? 今日はずっと一緒にいてくれる? 夜も?」
「夜? それってお泊まりするってこと?」
リリーとお泊まり!? なにそれやりたい!
「テアも!! キルナサマとリリーとお泊まり会するぅ!!」
リリーとテアとお泊まり会、それはすっごく楽しそう!!
「クライス、いいかな?」
振り返って尋ねると、彼はすぐに了承してくれた。
「それなら俺は今晩ロイルたちの部屋に泊まることにする。彼らに色々伝えたいこともあるからちょうどいい。明日は休みだ。久しぶりに友達とゆっくり過ごせ」
「わかった。じゃあ、二人とも今日は学校の後、僕の部屋に来て」
お泊まり会の開催が決定した。
「ユジン様~!! 貴方についていきます~!」
「かっこいい~こっち向いて下さい~」
「好きです! 結婚して下さい!!!」
自分の弟がアイドル扱いされているのはなんだか変な気分だけど、悪い気はしない。むしろ兄として誇らしい。僕はそれを遠いところから眺めている予定だったのだけど、
「キル兄様!! 僕の挨拶どうでした?」
「キルナ!! ちゃんと聞いていたか?」
どうして二人は一目散に僕のところへ来ちゃったのだろう。なんだあの眼鏡、今日の主役を独り占めして、という視線をひしひしと感じる。
「えと…二人とも堂々としていて格好良かったよ」
「そうか」
「嬉しいです!」
満面の笑みを浮かべる二人は、なんだかハッピーエンドを迎えた彼らの姿を連想させ、僕は首を捻った。(まだゲームは始まったところなのに、二人ともすでに最高に幸せそう……)
ユジンと別れ、僕はクライスと一緒に教室へと向かう。あっという間に4年が過ぎてしまったせいで準備が整わないままゲームがはじまってしまい、正直まだ悪役としてどう動いたらいいのかわからない。
見た目から始めるために、僕はとりあえず眼鏡を外してみることにした。やはり、というべきか、すれ違う生徒はみんな僕の顔を凝視している。立ち止まって振り返る生徒もいれば、わざわざ見にくる生徒もいる。真っ赤になって逃げ出す子や鼻血を出して倒れる子までいた。
(さすが悪役フェイス……顔面凶器すぎる……)
覚悟は決めたものの心が痛い。クライスや友達のおかげで瞳を見られるのはもう大丈夫だと思ったのに、こんな反応をされると辛い。思わず隠すように俯くと、クライスが少し屈んで僕の瞳を覗き込んだ。
「キルナ、眼鏡はどうした?」
「もうかけないことにしたの。僕の瞳、綺麗だってクライス言ってくれたでしょう? だからもう隠さなくてもいいかなって思って」
「ああ。綺麗だ。今すぐキスして食べたいくらいに」
「な、何言ってるの!?」
「だが、気をつけろ。俺から離れるなよ」
「ん、わかった」
そんなことを言い合っているうちに6年生の教室に着いた。
この学園、クラス替えはないらしい。教室にいるメンバーは1年の時と同じで席も同じだった。でもなんかちょっと少ないような。誰がいないのかな? 思い出そうとしていると明るい声が聞こえた。
「キルナ様! クライス王子! お久しぶりです。お元気でしたか!?」
相変わらず好奇心旺盛なキャラメル色の瞳をキラキラさせ走り寄ってきたのはベルト。(背がぐんと伸びている)
「どこの国で何の勉強をしてこられたのですか? ぜひ聞かせて下さい!!」
「えっと……」
興味津々の彼にどう答えたらよいか悩んでいるとクライスが横から返事をする。
「ああ、すまない。留学の話はしない約束になっている」
その説明にベルトは大きく頷いた。
「そうでしたか。すみません軽率でした。なるほど、超機密事項に関わる勉強をしてこられたのですね。羨ましいです。私も留学して他国の商売を現地で学んでみたい」
「ふふ、やっぱりベルトは根っからの商売人なんだね」
見た目が変わっても変わらないなぁとベルトに癒されていると、すらりとした美人がやってきてヒラヒラと僕に手を振った。
「キルナサマ~」
「ん? テア!!」
テアは麗しさに拍車がかかってスーパーモデルみたいになっている。腰まである青い髪を靡かせ耳元のサファイアのピアスが歩くたびにシャラリと揺れる。桃のような良い香りまでする。おしゃれすぎてもはや自分とは別の人種だ。
「…なんか……見ないうちに…美人になっちゃって……」
彼の圧倒的美貌にドギマギしすぎて親戚のおばさんみたいなコメントをしてしまう僕。
「会いたかったぁ~」
ふわりと華奢な腕に抱きつかれ、いい香りと柔らかな感触を堪能する。やばいこれ。テアは男の子のはずなのに……なんだかいけない気分に……。ぷるんと艶やかな唇を耳元に寄せ、甘い声でひそひそと内緒話をしてくるテアに心臓がドキドキする。
「眼鏡もないし、髪も綺麗。ねぇ~キルナサマ、もう妖精のお姫様だって隠すのはやめたの~?」
「えと、それは……」
色々説明したいけどここじゃ無理だから、と話そうとしたところでテアとは反対側の耳元にこれまた魅惑のうるうるリップが寄せられる。
「ちょっとバカメガネ。なんで眼鏡してないわけ? 留学してる間に僕の忠告忘れちゃった?」
甘く可愛らしい声だけど高圧的な女王様の喋り方。両耳の鼓膜が甘い声の振動で振るわされゾクゾクする。しかもなんか怪しい手つきで僕の体を触ってくる二人。ちょっとそれやばいよ、離れてぇ……。
僕の僕がちょっと危ないところで二人が離れてホッとする。
「んはぁ、びっくりした、リリー!! 久しぶりだね」
オレンジの巻き毛は器用に編み込まれキュートさを際立たせている。たった今までぷりぷり怒ってる様子だったのに、ガバリと僕の胸に抱きつき顔を埋めた。
「…………」
彼の肩が小刻みに揺れている。
「泣かないで、リリー。ごめんね」
何も言わずに4年も離れてしまった。リリーはこう見えてとても寂しがり屋なのに。
「もう黙ってどこかにいったりしないから」
「本当? 今日はずっと一緒にいてくれる? 夜も?」
「夜? それってお泊まりするってこと?」
リリーとお泊まり!? なにそれやりたい!
「テアも!! キルナサマとリリーとお泊まり会するぅ!!」
リリーとテアとお泊まり会、それはすっごく楽しそう!!
「クライス、いいかな?」
振り返って尋ねると、彼はすぐに了承してくれた。
「それなら俺は今晩ロイルたちの部屋に泊まることにする。彼らに色々伝えたいこともあるからちょうどいい。明日は休みだ。久しぶりに友達とゆっくり過ごせ」
「わかった。じゃあ、二人とも今日は学校の後、僕の部屋に来て」
お泊まり会の開催が決定した。
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