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第7章
第303話 ゲーム開始
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「ね、クライス見て~この花びら、赤とオレンジと黄色のグラデーションになってるよ! きれぃ~」
「ああ、本当だな。リリームという名前の花らしいぞ」
「え、そうなの? んじゃあ今度買ってリリーにプレゼントしようかな。名前が似てるし色も夕日色でぴったり! あ、これは、ジーンの花……」
ジーン? あ、そうだ。こんなことしてる場合じゃない! 花があんまり綺麗に咲いているせいで夢中になってしまった。
えっとユジンはもう来てるかな? こそこそと探す。本当はクライス一人で温室に行ってユジンと再会してほしかったのだけど、一人で行くように言うときっぱりと断られてしまった。そして仕方なく僕もここにいるのだけど。
(どこにいるのだろ……)
学園の温室は想像以上に広い。主人公ユジンと攻略対象者のクライスが遭遇する場所が温室のどこら辺だったかまでは覚えていない。困ったな、と手当たり次第探していると、ピンクゴールドのフワフワ癖毛の子がキョロキョロしているのを発見した! 後ろ姿しか見えないけれど、あんな珍しい髪色をしているのだから間違いない。
「ユジン……」
そう呟いたら、後ろを向いていた彼がクルッとこちらを向いた。ふわりと花の綻ぶような笑みを浮かべ歩み寄ってくる。スッと姿勢を正し美しい礼をする彼。もともとマナーも完璧だったけれど、さらに磨きがかかっている。
「キル兄様!……とクライス王子。お久しぶりです」
「会うのはパーティー以来か、本当に久しぶりだな」
「久しぶり……だね」
湖に行った日の朝彼にキャラ弁を渡したから、正直一ヶ月ぶりくらいの感覚だけど、ユジンにとっては4年と少しぶりってことになる。すごく、不思議な感じだ。一ヶ月でこんなに見た目が変わるなんて。
見た目10歳(実年齢20歳)に成長したユジンは、ゲームでは、儚い美少年キャラになっているはずなのだけど。ん? なんか。大きくない? 儚いというよりは…かなり凛々しいような。
「ユジン……大きくなったね?」
「兄様は相変わらず美しいままですね! いえ、より艶やかで色っぽくなったような……王子……」
「なんだ?」
「僕の兄様に無体なことをしておられませんよね?」
「ふっ、俺の婚約者だからな。可愛がってもいいだろう?」
「なんという……」
二人の会話はそっちのけで、僕は目測でユジンと自分の身長を比べる。僕より10センチは大きい! まだ一年生なのに、どうしてそんなに大きいの? 身長だけじゃない。筋肉もしっかりついた細マッチョというかんじで逞しくなっている。
「何を食べたらそんなに大きくなったの!? 教えて!?」
やっぱりお肉!? それともミルク!?
僕は必死にユジンに迫る。立派な胸板に触れてその硬さに驚いた。
(おお! これはかなり鍛えてる……でも髪は前と一緒でふわふわだ)
絹のように艶やかで、しかも柔らかな髪の毛をサワサワと触っていると、ぐいっとクライスに引き離された。顔を真っ赤にして俯いているユジンを見て僕は自分の軽率な行動を反省する。うっかり小さい頃のままの距離感で接してしまった。もうユジンは大きくなったのだから気をつけないと。
「ご、ごめん。久しぶりに会えたのが嬉しくて、ちょっとくっつき過ぎちゃった」
「いいんです、なんならもっとくっついて下さい!!」
そう言って近づこうとするユジンと僕の間に、クライスが割り込んできた。
「おい、ユジン、今から入学式だろう? お前が新入生の代表挨拶をすると聞いたぞ。こんなところを彷徨いていていいのか?」
え、すごい。それって入学テストで一番だったってことだよね、さすがユジン。天才だ。
「大丈夫です。王子こそ、在校生の代表挨拶をするんですよね? 早く会場に向かったほうが良いのでは?」
クライスもいつも成績トップだし、二人とも優秀すぎる。
ユジンとクライス。とても絵になる二人を見つめ、僕はその眩しさに目を細めた。
ーーすごいお似合い。僕は……ここには必要ない。
「そだ。ユジン、ここで迷子になってたのでしょ?」
この温室から入学式会場はだいぶ離れている。こんなところで迷っているなんて相当な方向音痴だとしか思えない。
「大丈夫。会場までクライスが送ってくれるよ」
クライスがユジンの手を取り転移魔法で会場に向かう。これでほぼストーリー通りだ。
僕は一人で歩いて行けばいい。二人と違って挨拶とかもないし。ちょっと遅れても平気だろう。えと、どっちが会場の方角だったかな。彼らが行く前にそれだけは聞いておこう。
「あの、会場ってどっちだったかしら」
「あちらですよ。キル兄様」
方角を指し示されて僕は首を傾げる。あれ? 方向音痴じゃないの?
「案内は不要です。キル兄様がお元気そうでよかった。挨拶、頑張るので見ていて下さいね」
にこりと笑い、ユジンはあっさりと消えてしまった。転移魔法が使えるらしい。中級魔法で、すごく便利だけど僕がまだ習得できていない憧れの魔法……。弟に色々と負けている。
「俺たちも行こう」
彼の腕に掴まって会場へと飛んだ。
あれ? イベント…終わっちゃった?
「ああ、本当だな。リリームという名前の花らしいぞ」
「え、そうなの? んじゃあ今度買ってリリーにプレゼントしようかな。名前が似てるし色も夕日色でぴったり! あ、これは、ジーンの花……」
ジーン? あ、そうだ。こんなことしてる場合じゃない! 花があんまり綺麗に咲いているせいで夢中になってしまった。
えっとユジンはもう来てるかな? こそこそと探す。本当はクライス一人で温室に行ってユジンと再会してほしかったのだけど、一人で行くように言うときっぱりと断られてしまった。そして仕方なく僕もここにいるのだけど。
(どこにいるのだろ……)
学園の温室は想像以上に広い。主人公ユジンと攻略対象者のクライスが遭遇する場所が温室のどこら辺だったかまでは覚えていない。困ったな、と手当たり次第探していると、ピンクゴールドのフワフワ癖毛の子がキョロキョロしているのを発見した! 後ろ姿しか見えないけれど、あんな珍しい髪色をしているのだから間違いない。
「ユジン……」
そう呟いたら、後ろを向いていた彼がクルッとこちらを向いた。ふわりと花の綻ぶような笑みを浮かべ歩み寄ってくる。スッと姿勢を正し美しい礼をする彼。もともとマナーも完璧だったけれど、さらに磨きがかかっている。
「キル兄様!……とクライス王子。お久しぶりです」
「会うのはパーティー以来か、本当に久しぶりだな」
「久しぶり……だね」
湖に行った日の朝彼にキャラ弁を渡したから、正直一ヶ月ぶりくらいの感覚だけど、ユジンにとっては4年と少しぶりってことになる。すごく、不思議な感じだ。一ヶ月でこんなに見た目が変わるなんて。
見た目10歳(実年齢20歳)に成長したユジンは、ゲームでは、儚い美少年キャラになっているはずなのだけど。ん? なんか。大きくない? 儚いというよりは…かなり凛々しいような。
「ユジン……大きくなったね?」
「兄様は相変わらず美しいままですね! いえ、より艶やかで色っぽくなったような……王子……」
「なんだ?」
「僕の兄様に無体なことをしておられませんよね?」
「ふっ、俺の婚約者だからな。可愛がってもいいだろう?」
「なんという……」
二人の会話はそっちのけで、僕は目測でユジンと自分の身長を比べる。僕より10センチは大きい! まだ一年生なのに、どうしてそんなに大きいの? 身長だけじゃない。筋肉もしっかりついた細マッチョというかんじで逞しくなっている。
「何を食べたらそんなに大きくなったの!? 教えて!?」
やっぱりお肉!? それともミルク!?
僕は必死にユジンに迫る。立派な胸板に触れてその硬さに驚いた。
(おお! これはかなり鍛えてる……でも髪は前と一緒でふわふわだ)
絹のように艶やかで、しかも柔らかな髪の毛をサワサワと触っていると、ぐいっとクライスに引き離された。顔を真っ赤にして俯いているユジンを見て僕は自分の軽率な行動を反省する。うっかり小さい頃のままの距離感で接してしまった。もうユジンは大きくなったのだから気をつけないと。
「ご、ごめん。久しぶりに会えたのが嬉しくて、ちょっとくっつき過ぎちゃった」
「いいんです、なんならもっとくっついて下さい!!」
そう言って近づこうとするユジンと僕の間に、クライスが割り込んできた。
「おい、ユジン、今から入学式だろう? お前が新入生の代表挨拶をすると聞いたぞ。こんなところを彷徨いていていいのか?」
え、すごい。それって入学テストで一番だったってことだよね、さすがユジン。天才だ。
「大丈夫です。王子こそ、在校生の代表挨拶をするんですよね? 早く会場に向かったほうが良いのでは?」
クライスもいつも成績トップだし、二人とも優秀すぎる。
ユジンとクライス。とても絵になる二人を見つめ、僕はその眩しさに目を細めた。
ーーすごいお似合い。僕は……ここには必要ない。
「そだ。ユジン、ここで迷子になってたのでしょ?」
この温室から入学式会場はだいぶ離れている。こんなところで迷っているなんて相当な方向音痴だとしか思えない。
「大丈夫。会場までクライスが送ってくれるよ」
クライスがユジンの手を取り転移魔法で会場に向かう。これでほぼストーリー通りだ。
僕は一人で歩いて行けばいい。二人と違って挨拶とかもないし。ちょっと遅れても平気だろう。えと、どっちが会場の方角だったかな。彼らが行く前にそれだけは聞いておこう。
「あの、会場ってどっちだったかしら」
「あちらですよ。キル兄様」
方角を指し示されて僕は首を傾げる。あれ? 方向音痴じゃないの?
「案内は不要です。キル兄様がお元気そうでよかった。挨拶、頑張るので見ていて下さいね」
にこりと笑い、ユジンはあっさりと消えてしまった。転移魔法が使えるらしい。中級魔法で、すごく便利だけど僕がまだ習得できていない憧れの魔法……。弟に色々と負けている。
「俺たちも行こう」
彼の腕に掴まって会場へと飛んだ。
あれ? イベント…終わっちゃった?
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