154 / 286
第6章
第290話 気持ちの正体⑤※
しおりを挟む
クライスが挿れてくれないなら、自分で挿れるしかない。
どうやったら入る? お尻の穴を彼のペニスの先端に当ててそのままぐうっと座れば、うまく入るかな? やってみる? 流血沙汰になったとしても悔いはない。痛くたって我慢できる。
(よし、やってみよ)
手で彼のペニスを持ち、穴にあてがって、挿れて、腰を下ろす。
「んぅ…あれ?」
何度かやってみたけれど、太くて硬いペニスはお互いの先走りやら唾液やらに塗れてにゅるんと滑ってしまい、うまく入らない。
穴が狭すぎるのかな。と腰を浮かして膝立ちになって、自分の指を一本挿れてみた。いっぱい唾液で濡らせばなんとか入ったけど、クライスがやってくれた時とは違い、ちょっと痛い。どうにかぬくぬくと動かして、二本目を挿れる。
「ん……ん……ひぅ……ん。……はぁ、はぁ、もうちょい……ンッ……」
長い時間をかけ、ふぅ、ふぅ、と荒い息を上げながら穴を広げていき、三本目に挑戦。入らない。何度やっても自分で三本の指を挿れるのは難しい。
二本の指をぐちゃぐちゃと中で懸命に動かしながら彼の方を見た。
「ぐぅ……はぁ、はぁん、クライスぅ……手伝ってぇ……入らないの。はやくつながりたいのに」
彼はまた固まっている。無理もない。
たぶん僕は今信じられないくらい恥ずかしいことをしてる。彼の脚を挟んで膝立ちになって、自分の指をお尻に突っ込んで穴を広げてるわけだから、まぁ誰がどうみても変態に違いない。
三本目が入らずどうしようもなくなり、助けを求める僕。呆然と僕の痴態を見ている彼。
二人の視線が交差した。たった数秒の交わりが、永遠のように感じる。彼は今何を思ってる? 驚き呆れているかもしれない。こんな淫乱な変態男が婚約者だなんて最低だって思ってるかも。想像するのが怖くなって僕は俯いた。
「キルナ」
呼びかけられ、おずおずと顔を上げる。蔑むような目で見られたらどうしよう、と思ったけれど。彼のアイスブルーの瞳は、どこまでも優しかった。
「どうしてお前はそんなに焦っているんだ?」
問いかけてきた彼に、僕は高まって熱くなった息とともに、お腹をちくちくさせている気持ちを吐き出す。
「はぁ、はぁ、だって……。ぼくは記憶を無くしちゃってる。大事なクライスとの思い出も、覚えてない……。もしかしたら、クライスのことをまた忘れるかもしれない……。せっかく気づいたこの気持ちも、泡みたいに消えてしまうかも……」
そう思うと、堪らなかった。何か、確かな証が欲しかった。
「覚えてるうちに、どうしてもクライスが欲しくて。愛し合いたくて。……だから…ぼく…ふぇ……ぇえええん」
我慢していたはずの涙が後から後から出てくる。泣きたくなんてないのに。僕のバカ。今は泣くんじゃなくてクライスを誘惑しなきゃいけないときなのに。
ぽふ、ぽふっと頭を撫でられ、興奮していた気持ちが少し落ち着いた。
「お前の気持ちはよくわかった。だが焦る必要はない。記憶だってきっと取り戻せる。たとえお前が俺のことを忘れても俺はこれから先ずっとお前と一緒にいるから、もう絶対離さないから、大丈夫だ」
「だい…じょうぶ……?」
『大丈夫』
そうだ、これも何回ももらった言葉。すごく安心する言葉。
ぽふっぽふっぽふっと頭を撫でながら何度も大丈夫だと言ってくれるクライスに、僕は安心して身を任せた。体がぐっと彼の胸元に引き寄せられ、抱きしめられたのだとわかる。クライスの匂いに包まれながら、僕は目を閉じ彼の言葉に耳を澄ませた。
「実を言うと、俺も今猛烈にキルナが欲しい。こんなふうにお前が俺を求めてくれるなんて本当は嬉しくて仕方ないんだ。早く愛し合いたい」
彼も同じ気持ちだったことがうれしくて、ぎゅうっと彼の体を抱きしめ返した。肌から伝わる温もりが心地良い。ちくちくしていたお腹が温まっていく。
(あ、これ。なんだかもう、幸せすぎて死んじゃいそう。)
そう思うと同時に、天からパァーっと光が差した。
まるで、お空から天使がお迎えに来る時みたいな演出に僕は焦る。
(え、ほんとに死んだ? 天国からお迎えが来た? そんなまさか!)
でもよく見ると、降りてきたのは天使じゃなかった。
「妖精……?」
虹色の光を帯びたたくさんの妖精たちがくるくる回りながら降りてくる。どうやらみんなで一緒に何か茶色い物体を持っているみたい。それはふわふわとゆっくり空から降ってきて、僕らのすぐそばの草むらに着地した。
「ん? なんだ?」
「なんだろ。妖精が運んできてくれたみたいだけど」
二人でそれに近寄って確認する。
落ちてきた茶色い物体は、大きなバスケットのようだった。その中をのぞいてみると……、ピンクの液体が入った瓶(キラキラのラメ入り)。
「これは……」
「んぇ? ローション!?」
ローション以外にも大人の魔道具が山盛り入っている。
魔道具の山の頂上に、美しい花柄の封筒が添えられているのを発見した。
「あ、手紙……」
恐る恐る手紙を開くと美しい字でこう書かれていた。
“キルナ様へ。
セントラから、新しい魔道具ができたので、キルナ様にぜひ渡してくれと頼まれていたものです。「前よりワンランクレベルアップしてさらに使いやすくなっているのでお試しください」とのことです。後で直接お渡ししようと思っていたのですが、カーナ様が今すぐ送った方がよいというのでお任せしました。どうぞ王子と幸せな時間をお過ごしください。
あなたの執事ルゥ”
どうやったら入る? お尻の穴を彼のペニスの先端に当ててそのままぐうっと座れば、うまく入るかな? やってみる? 流血沙汰になったとしても悔いはない。痛くたって我慢できる。
(よし、やってみよ)
手で彼のペニスを持ち、穴にあてがって、挿れて、腰を下ろす。
「んぅ…あれ?」
何度かやってみたけれど、太くて硬いペニスはお互いの先走りやら唾液やらに塗れてにゅるんと滑ってしまい、うまく入らない。
穴が狭すぎるのかな。と腰を浮かして膝立ちになって、自分の指を一本挿れてみた。いっぱい唾液で濡らせばなんとか入ったけど、クライスがやってくれた時とは違い、ちょっと痛い。どうにかぬくぬくと動かして、二本目を挿れる。
「ん……ん……ひぅ……ん。……はぁ、はぁ、もうちょい……ンッ……」
長い時間をかけ、ふぅ、ふぅ、と荒い息を上げながら穴を広げていき、三本目に挑戦。入らない。何度やっても自分で三本の指を挿れるのは難しい。
二本の指をぐちゃぐちゃと中で懸命に動かしながら彼の方を見た。
「ぐぅ……はぁ、はぁん、クライスぅ……手伝ってぇ……入らないの。はやくつながりたいのに」
彼はまた固まっている。無理もない。
たぶん僕は今信じられないくらい恥ずかしいことをしてる。彼の脚を挟んで膝立ちになって、自分の指をお尻に突っ込んで穴を広げてるわけだから、まぁ誰がどうみても変態に違いない。
三本目が入らずどうしようもなくなり、助けを求める僕。呆然と僕の痴態を見ている彼。
二人の視線が交差した。たった数秒の交わりが、永遠のように感じる。彼は今何を思ってる? 驚き呆れているかもしれない。こんな淫乱な変態男が婚約者だなんて最低だって思ってるかも。想像するのが怖くなって僕は俯いた。
「キルナ」
呼びかけられ、おずおずと顔を上げる。蔑むような目で見られたらどうしよう、と思ったけれど。彼のアイスブルーの瞳は、どこまでも優しかった。
「どうしてお前はそんなに焦っているんだ?」
問いかけてきた彼に、僕は高まって熱くなった息とともに、お腹をちくちくさせている気持ちを吐き出す。
「はぁ、はぁ、だって……。ぼくは記憶を無くしちゃってる。大事なクライスとの思い出も、覚えてない……。もしかしたら、クライスのことをまた忘れるかもしれない……。せっかく気づいたこの気持ちも、泡みたいに消えてしまうかも……」
そう思うと、堪らなかった。何か、確かな証が欲しかった。
「覚えてるうちに、どうしてもクライスが欲しくて。愛し合いたくて。……だから…ぼく…ふぇ……ぇえええん」
我慢していたはずの涙が後から後から出てくる。泣きたくなんてないのに。僕のバカ。今は泣くんじゃなくてクライスを誘惑しなきゃいけないときなのに。
ぽふ、ぽふっと頭を撫でられ、興奮していた気持ちが少し落ち着いた。
「お前の気持ちはよくわかった。だが焦る必要はない。記憶だってきっと取り戻せる。たとえお前が俺のことを忘れても俺はこれから先ずっとお前と一緒にいるから、もう絶対離さないから、大丈夫だ」
「だい…じょうぶ……?」
『大丈夫』
そうだ、これも何回ももらった言葉。すごく安心する言葉。
ぽふっぽふっぽふっと頭を撫でながら何度も大丈夫だと言ってくれるクライスに、僕は安心して身を任せた。体がぐっと彼の胸元に引き寄せられ、抱きしめられたのだとわかる。クライスの匂いに包まれながら、僕は目を閉じ彼の言葉に耳を澄ませた。
「実を言うと、俺も今猛烈にキルナが欲しい。こんなふうにお前が俺を求めてくれるなんて本当は嬉しくて仕方ないんだ。早く愛し合いたい」
彼も同じ気持ちだったことがうれしくて、ぎゅうっと彼の体を抱きしめ返した。肌から伝わる温もりが心地良い。ちくちくしていたお腹が温まっていく。
(あ、これ。なんだかもう、幸せすぎて死んじゃいそう。)
そう思うと同時に、天からパァーっと光が差した。
まるで、お空から天使がお迎えに来る時みたいな演出に僕は焦る。
(え、ほんとに死んだ? 天国からお迎えが来た? そんなまさか!)
でもよく見ると、降りてきたのは天使じゃなかった。
「妖精……?」
虹色の光を帯びたたくさんの妖精たちがくるくる回りながら降りてくる。どうやらみんなで一緒に何か茶色い物体を持っているみたい。それはふわふわとゆっくり空から降ってきて、僕らのすぐそばの草むらに着地した。
「ん? なんだ?」
「なんだろ。妖精が運んできてくれたみたいだけど」
二人でそれに近寄って確認する。
落ちてきた茶色い物体は、大きなバスケットのようだった。その中をのぞいてみると……、ピンクの液体が入った瓶(キラキラのラメ入り)。
「これは……」
「んぇ? ローション!?」
ローション以外にも大人の魔道具が山盛り入っている。
魔道具の山の頂上に、美しい花柄の封筒が添えられているのを発見した。
「あ、手紙……」
恐る恐る手紙を開くと美しい字でこう書かれていた。
“キルナ様へ。
セントラから、新しい魔道具ができたので、キルナ様にぜひ渡してくれと頼まれていたものです。「前よりワンランクレベルアップしてさらに使いやすくなっているのでお試しください」とのことです。後で直接お渡ししようと思っていたのですが、カーナ様が今すぐ送った方がよいというのでお任せしました。どうぞ王子と幸せな時間をお過ごしください。
あなたの執事ルゥ”
152
お気に入りに追加
10,259
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。