いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

日色

文字の大きさ
上 下
132 / 287
第6章

第268話 番外編:クライスSIDE チョロいんオメガバース④

しおりを挟む
※ここからはクライスSIDEになります。蛇足……かもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです(^ ^)


***

『ぷはぁ! ごほっ…げほっ…』
『大丈夫か!? なっ……(なんだこの可愛さ……。妖精!? いや、まさか)』
『あ、ありがと。えと、なまえ…なんだっけ?』
『俺はクライス=アステリア』
『クライス、ありがと。ぼくはキルナ=フェルライト。キルナとよんで』

昔、母に付き添い貴族の邸宅で茶会に参加した時、噴水で溺れていた彼を助けた。
ひと目見てすぐにわかった。

ーー彼が俺の運命の番だと。

もう彼は忘れているかもしれないが、俺はその時からずっと彼に恋をしている。


あれから10年。同じ学園に入学した俺は運良くキルナと同じクラスになった。しかし彼はアルファを避けているようで、俺はなかなか距離を詰められないでいた。

そんなある日。

(これは…キルナの香り!? なぜこんなに強い香りを?)

普段から甘く匂い立つような彼だが、今日はいつにも増して甘い甘いシフォンケーキのような香りを漂わせている。彼の出すフェロモンの香りに誘われて、すれ違う生徒たちが次々と振り向く。これはまずい。前々から思っていたが、せめてネックガードはしてもらわないと。

それを伝えるため、放課後帰ろうとする彼を呼び止めた。だが近付くともうダメだった。口から飛び出したのはネックガードの話ではなく、

「番になって結婚しよう!!!」

という言葉だった。


濃厚なフェロモンにあてられ、抑制剤を飲んでいるにもかかわらずクラクラと眩暈がする。彼もそれは同じようで、話の途中でぐらりと身体が傾いだ。軽い体を横抱きにし、保健室へ運ぼうとしたところで思い出す。

そういえば彼は自分のことをなぜか“ベータ”だと言い張っていた。分厚い黒縁眼鏡やわざとボサボサに崩した髪の毛で、オメガらしい美しい容貌を隠しているようだ。

隠していてもアルファの自分には彼がオメガだとはっきりわかるのだが、学生の大半であるベータの連中はおそらく気付いていない。隠していることに何か理由があるなら保健医に診せるのは良くないかもしれない。

そう考え、とりあえずうちへ運ぶことにした。


(熱い……意識が朦朧とする。まずいな……)

彼を自室のベッドに寝かせた後もう一度薬を飲んだが、やはり運命の番がこう近くにいてはどうにもならない。離れた方がいいのはわかっているが、誰かに託すのも心配で、ただただ忍耐強く彼が起きるのを待つ。

「ん…うぅ……」

身じろぎしてズレた拍子に布団からちらりと覗いた白いうなじに噛みつきたい衝動にかられ……、


ガブリッ!!!


自分の腕を代わりに噛んだ。
しおりを挟む
感想 687

あなたにおすすめの小説

嵌められた悪役令息の行く末は、

珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】 公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。 一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。 「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。 帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。 【タンザナイト王国編】完結 【アレクサンドライト帝国編】完結 【精霊使い編】連載中 ※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。