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第6章
第268話 番外編:クライスSIDE チョロいんオメガバース④
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※ここからはクライスSIDEになります。蛇足……かもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです(^ ^)
***
『ぷはぁ! ごほっ…げほっ…』
『大丈夫か!? なっ……(なんだこの可愛さ……。妖精!? いや、まさか)』
『あ、ありがと。えと、なまえ…なんだっけ?』
『俺はクライス=アステリア』
『クライス、ありがと。ぼくはキルナ=フェルライト。キルナとよんで』
昔、母に付き添い貴族の邸宅で茶会に参加した時、噴水で溺れていた彼を助けた。
ひと目見てすぐにわかった。
ーー彼が俺の運命の番だと。
もう彼は忘れているかもしれないが、俺はその時からずっと彼に恋をしている。
あれから10年。同じ学園に入学した俺は運良くキルナと同じクラスになった。しかし彼はアルファを避けているようで、俺はなかなか距離を詰められないでいた。
そんなある日。
(これは…キルナの香り!? なぜこんなに強い香りを?)
普段から甘く匂い立つような彼だが、今日はいつにも増して甘い甘いシフォンケーキのような香りを漂わせている。彼の出すフェロモンの香りに誘われて、すれ違う生徒たちが次々と振り向く。これはまずい。前々から思っていたが、せめてネックガードはしてもらわないと。
それを伝えるため、放課後帰ろうとする彼を呼び止めた。だが近付くともうダメだった。口から飛び出したのはネックガードの話ではなく、
「番になって結婚しよう!!!」
という言葉だった。
濃厚なフェロモンにあてられ、抑制剤を飲んでいるにもかかわらずクラクラと眩暈がする。彼もそれは同じようで、話の途中でぐらりと身体が傾いだ。軽い体を横抱きにし、保健室へ運ぼうとしたところで思い出す。
そういえば彼は自分のことをなぜか“ベータ”だと言い張っていた。分厚い黒縁眼鏡やわざとボサボサに崩した髪の毛で、オメガらしい美しい容貌を隠しているようだ。
隠していてもアルファの自分には彼がオメガだとはっきりわかるのだが、学生の大半であるベータの連中はおそらく気付いていない。隠していることに何か理由があるなら保健医に診せるのは良くないかもしれない。
そう考え、とりあえずうちへ運ぶことにした。
(熱い……意識が朦朧とする。まずいな……)
彼を自室のベッドに寝かせた後もう一度薬を飲んだが、やはり運命の番がこう近くにいてはどうにもならない。離れた方がいいのはわかっているが、誰かに託すのも心配で、ただただ忍耐強く彼が起きるのを待つ。
「ん…うぅ……」
身じろぎしてズレた拍子に布団からちらりと覗いた白いうなじに噛みつきたい衝動にかられ……、
ガブリッ!!!
自分の腕を代わりに噛んだ。
***
『ぷはぁ! ごほっ…げほっ…』
『大丈夫か!? なっ……(なんだこの可愛さ……。妖精!? いや、まさか)』
『あ、ありがと。えと、なまえ…なんだっけ?』
『俺はクライス=アステリア』
『クライス、ありがと。ぼくはキルナ=フェルライト。キルナとよんで』
昔、母に付き添い貴族の邸宅で茶会に参加した時、噴水で溺れていた彼を助けた。
ひと目見てすぐにわかった。
ーー彼が俺の運命の番だと。
もう彼は忘れているかもしれないが、俺はその時からずっと彼に恋をしている。
あれから10年。同じ学園に入学した俺は運良くキルナと同じクラスになった。しかし彼はアルファを避けているようで、俺はなかなか距離を詰められないでいた。
そんなある日。
(これは…キルナの香り!? なぜこんなに強い香りを?)
普段から甘く匂い立つような彼だが、今日はいつにも増して甘い甘いシフォンケーキのような香りを漂わせている。彼の出すフェロモンの香りに誘われて、すれ違う生徒たちが次々と振り向く。これはまずい。前々から思っていたが、せめてネックガードはしてもらわないと。
それを伝えるため、放課後帰ろうとする彼を呼び止めた。だが近付くともうダメだった。口から飛び出したのはネックガードの話ではなく、
「番になって結婚しよう!!!」
という言葉だった。
濃厚なフェロモンにあてられ、抑制剤を飲んでいるにもかかわらずクラクラと眩暈がする。彼もそれは同じようで、話の途中でぐらりと身体が傾いだ。軽い体を横抱きにし、保健室へ運ぼうとしたところで思い出す。
そういえば彼は自分のことをなぜか“ベータ”だと言い張っていた。分厚い黒縁眼鏡やわざとボサボサに崩した髪の毛で、オメガらしい美しい容貌を隠しているようだ。
隠していてもアルファの自分には彼がオメガだとはっきりわかるのだが、学生の大半であるベータの連中はおそらく気付いていない。隠していることに何か理由があるなら保健医に診せるのは良くないかもしれない。
そう考え、とりあえずうちへ運ぶことにした。
(熱い……意識が朦朧とする。まずいな……)
彼を自室のベッドに寝かせた後もう一度薬を飲んだが、やはり運命の番がこう近くにいてはどうにもならない。離れた方がいいのはわかっているが、誰かに託すのも心配で、ただただ忍耐強く彼が起きるのを待つ。
「ん…うぅ……」
身じろぎしてズレた拍子に布団からちらりと覗いた白いうなじに噛みつきたい衝動にかられ……、
ガブリッ!!!
自分の腕を代わりに噛んだ。
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