102 / 287
第5章
第238話 八つ当たりとオムライス
しおりを挟む
お仕置きって何されるの!?
(やばいやばいやばい。どうしよぅ!!)
ベッドに両手を押さえつけられながら、迫りくるイケメンをどう対処すべきか考えていると、突然ぐう~~っきゅるるるる……とお腹が鳴った。かなり大きな音だ。この部屋には僕とクライスの二人きり。誤魔化しようがない。
「…………」
「…………」
(んな、なんてこと……よりにもよって逃げられないこの状況で…恥ずかしすぎる)
カァーッと赤くなった顔を見られないように首を目一杯横に向けると、それを見たクライスがフハッと吹き出した。
「だってだってもうお昼ご飯の時間で、すっごくお腹がすいてたんだもの」
彼は笑いを止められないらしく、息継ぎの合間に「すまない、そうだな。先に昼ごはんにしないとな」と言う。
「むぅ、そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
(ご飯の時間が遅くなったのはクライスのせいでもあるのに!)
手を治してもらった立場だからあまり追求できないけど、明らかに無駄な時間をかけてたよね? 指とか舐める必要なかったよね? と八つ当たりに近い感情が芽生える。ジト~ッと彼を見上げると、彼の口から嬉しい情報が。
「笑って悪かった。あまりに可愛い音だったから、つい。今日はお前の好きなオムライスだから機嫌を直せ」
「オムライス!?」
それを聞いて、下降気味の僕のテンションは一気に跳ね上がった。
クライスが転移魔法陣に魔力を流し込むと、鮮やかな黄色いお日様のような卵が載ったオムライスが二つ現れた。クライスのは大きいサイズ、僕のは小さいサイズ。
ぽってりと載っている卵の中央にスーッとナイフを入れると、トロトロ~っと卵が崩れて中のチキンライスと混ざり合う。それをスプーンで掬って口に入れると。
ん~とろとろぉ!! ふあふあ、卵がとろけるよぉ!! となるわけで……。
「おいっし~!!!!!」
スプーンが止まらない。この絶品オムライス、まさに奇跡!!!
こんなおいしいものが作れるベンスはもう神様だと思う。今度家に帰ったら、絶対絶対作り方を教えてもらおう。でもこんなふうにふわとろの卵を作れるようになるまで、どれくらいかかるのだろう。長期休暇中にマスターするのは難しいかな。う~んと考えていると、柔らかいものが触れた。
「んぇ? 何?」
「頬に卵が付いていた」
「そか、ごめん」
ほっぺたに卵がついていたらしい。隣で食べていたクライスが軽いキスをしてそれを取ってくれた。オムライスは大きなお口で食べた方が美味しく感じるから、スプーンにライスも卵もたっぷり載せていただく。
(んぅ~、間違いないお味! ミルキーで香ばしいバターの香りがたまらない)
ちゅっぺろっ…。
「もぐ? もぐもぐ?(ふぇ?また何かついてた?)」
「ああ、ソースが唇についてた」
「ん、もぐ(そか。ありがと)」
「はい、水」
「んぅ、ごくごく。ぷはぁ、おいしっ!」
「よかったな」
さっきからお口にソースやら卵やらがついてると言っては唇や頬にやたらとキスしてくるクライス。
(そんなに僕って食べるの下手だったかしら。食べるのに夢中になりすぎて、いつもよりお行儀が悪くなってるのかも。気をつけないと……。)
注意して食べているつもりが、その後も何度もクライスに手間をかけさせてしまった。
腹ペコなところに大好物が出てきたせいで、ついついがっついちゃうのがいけないのだろうな……と頭ではわかってはいるのだけど、おいし過ぎて手が止まらない。
(もういいか、もうすぐ食べ終わるし、後でまとめて謝ろう)
途中から諦めて食べることに専念することにした。こんな素晴らしいものを食べながら他のことを考えるのはもったいないもの。
「ごちそうさまでしたっ!」
デザートのシフォンケーキも食べ終えて、ナプキンで口を拭きながら、ふと気づく。
(あれ? いちいちキスしなくてもナプキンで拭いてくれたらよかったんじゃ? 普通は汚れてたらそうするよね)
クリーンの魔法で自分の口元と机をピカピカにし、優雅に紅茶を飲む彼は僕の唇を見ながら爽やかに「ご馳走様」と言った。
釈然としない何かを感じながらも、オムライスとシフォンケーキを食べた幸福感は、僕を満たしてくれている。ゆっくりソファで紅茶を飲んでからテアの病室に戻ろうと頭の中で今後の予定を立てたけど、甘かった。そういえばクライスは抜群に記憶力が良いのだった。
「腹も満たされたことだし。さぁキルナ、さっきの続きだ。体の隅々までとことん調べるから覚悟しろ」
え、と気づいた時には服を全部脱がされ、僕の体はベッドの上に移動していた。
(やばいやばいやばい。どうしよぅ!!)
ベッドに両手を押さえつけられながら、迫りくるイケメンをどう対処すべきか考えていると、突然ぐう~~っきゅるるるる……とお腹が鳴った。かなり大きな音だ。この部屋には僕とクライスの二人きり。誤魔化しようがない。
「…………」
「…………」
(んな、なんてこと……よりにもよって逃げられないこの状況で…恥ずかしすぎる)
カァーッと赤くなった顔を見られないように首を目一杯横に向けると、それを見たクライスがフハッと吹き出した。
「だってだってもうお昼ご飯の時間で、すっごくお腹がすいてたんだもの」
彼は笑いを止められないらしく、息継ぎの合間に「すまない、そうだな。先に昼ごはんにしないとな」と言う。
「むぅ、そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
(ご飯の時間が遅くなったのはクライスのせいでもあるのに!)
手を治してもらった立場だからあまり追求できないけど、明らかに無駄な時間をかけてたよね? 指とか舐める必要なかったよね? と八つ当たりに近い感情が芽生える。ジト~ッと彼を見上げると、彼の口から嬉しい情報が。
「笑って悪かった。あまりに可愛い音だったから、つい。今日はお前の好きなオムライスだから機嫌を直せ」
「オムライス!?」
それを聞いて、下降気味の僕のテンションは一気に跳ね上がった。
クライスが転移魔法陣に魔力を流し込むと、鮮やかな黄色いお日様のような卵が載ったオムライスが二つ現れた。クライスのは大きいサイズ、僕のは小さいサイズ。
ぽってりと載っている卵の中央にスーッとナイフを入れると、トロトロ~っと卵が崩れて中のチキンライスと混ざり合う。それをスプーンで掬って口に入れると。
ん~とろとろぉ!! ふあふあ、卵がとろけるよぉ!! となるわけで……。
「おいっし~!!!!!」
スプーンが止まらない。この絶品オムライス、まさに奇跡!!!
こんなおいしいものが作れるベンスはもう神様だと思う。今度家に帰ったら、絶対絶対作り方を教えてもらおう。でもこんなふうにふわとろの卵を作れるようになるまで、どれくらいかかるのだろう。長期休暇中にマスターするのは難しいかな。う~んと考えていると、柔らかいものが触れた。
「んぇ? 何?」
「頬に卵が付いていた」
「そか、ごめん」
ほっぺたに卵がついていたらしい。隣で食べていたクライスが軽いキスをしてそれを取ってくれた。オムライスは大きなお口で食べた方が美味しく感じるから、スプーンにライスも卵もたっぷり載せていただく。
(んぅ~、間違いないお味! ミルキーで香ばしいバターの香りがたまらない)
ちゅっぺろっ…。
「もぐ? もぐもぐ?(ふぇ?また何かついてた?)」
「ああ、ソースが唇についてた」
「ん、もぐ(そか。ありがと)」
「はい、水」
「んぅ、ごくごく。ぷはぁ、おいしっ!」
「よかったな」
さっきからお口にソースやら卵やらがついてると言っては唇や頬にやたらとキスしてくるクライス。
(そんなに僕って食べるの下手だったかしら。食べるのに夢中になりすぎて、いつもよりお行儀が悪くなってるのかも。気をつけないと……。)
注意して食べているつもりが、その後も何度もクライスに手間をかけさせてしまった。
腹ペコなところに大好物が出てきたせいで、ついついがっついちゃうのがいけないのだろうな……と頭ではわかってはいるのだけど、おいし過ぎて手が止まらない。
(もういいか、もうすぐ食べ終わるし、後でまとめて謝ろう)
途中から諦めて食べることに専念することにした。こんな素晴らしいものを食べながら他のことを考えるのはもったいないもの。
「ごちそうさまでしたっ!」
デザートのシフォンケーキも食べ終えて、ナプキンで口を拭きながら、ふと気づく。
(あれ? いちいちキスしなくてもナプキンで拭いてくれたらよかったんじゃ? 普通は汚れてたらそうするよね)
クリーンの魔法で自分の口元と机をピカピカにし、優雅に紅茶を飲む彼は僕の唇を見ながら爽やかに「ご馳走様」と言った。
釈然としない何かを感じながらも、オムライスとシフォンケーキを食べた幸福感は、僕を満たしてくれている。ゆっくりソファで紅茶を飲んでからテアの病室に戻ろうと頭の中で今後の予定を立てたけど、甘かった。そういえばクライスは抜群に記憶力が良いのだった。
「腹も満たされたことだし。さぁキルナ、さっきの続きだ。体の隅々までとことん調べるから覚悟しろ」
え、と気づいた時には服を全部脱がされ、僕の体はベッドの上に移動していた。
203
お気に入りに追加
10,309
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。