いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第5章

第211話 ロイルSIDE 恥じらう天使①※

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制服に着替え学校に行く用意を済ませてから、朝早くに隣室を訪れるとそこには、

「身体がつらいか? すまない、キルナ。昨日は無理をさせたな。お前の体力を一番に考えるべきだったのに。やはり最後までするのは負担が大き過ぎたか……」
「ん、だいじょぶ、僕が…お願いしたのだもの」
「よく頑張ったな」
「ちょっと大変だったけど…でもちゃんと最後までできてよかった」

頬を赤らめベッドの上で仲睦まじく微笑み合う二人の姿があった。
これは、もしかして、もしかしなくとも……。

「さ、最後までされたのですか!?」

キルナ様は満面の笑みで、「そうなの、僕、頑張ったよ」と答える。

「それは、おめでとうございます!!!」


昨日、囚われたキルナ様を見事一人で悪の手から救い出したクライス様。その後二人はどうなったのか……えぇ、わかります、と俺は深く頷いた。

こんなに美しく愛らしい婚約者と同じ部屋、同じベッドで眠り、今まで我慢していたという方が驚きだと思う。セントラ理事長が色々な魔道具を授けてくださったこともあり、準備は整っていた。結婚初夜までは待つべきだ、というお堅い国も世界のどこかにはあるらしいが、我が国はその辺は大らかだし、なによりお二人は婚約者同士。止める理由はどこにもない。

ついに二人は身体の奥まで結ばれたのだ。(それにしては音が聞こえなかったな。防音魔法を使っていたのだろうか。いつもなら防犯のため俺たちには聞こえるようにしているはずなのに。)二人のお声が聞けなかったのは少し残念だが、鉱山の調査に加わってヘトヘトになっていたギアの疲労を考えるとそれでよかったのかもしれない。

「キルナ様、お身体は大丈夫でしょうか」
「平気。クライスが魔法で治してくれたから、もうはないよ。ちょっとだけ、けど……」

傷がつくほど激しく交わったと? 朝まで? まぁ、王子のアレは見たことがあるがかなり立派だし、この華奢なお体で受け入れるのはさぞかし大変だったのだろう。なにせだ。裂けていたりしたら大変だ。このお身体に少しでも傷が残ることがあったりしたら、フェルライト公爵が黙ってはいないだろう。

「念の為、保健医を呼びましょうか? それとも王宮から侍医を呼んだ方が良いでしょうか。何かあってはいけませんし」

するとクライス様は首を横に振った。

「いや、必要ない。昨日の傷は全て俺が癒した。それよりロイル、何か用があって来たんじゃないのか?」
「え? ああ、そうでした。大切な報告があったんでした!」

危ない、あまりの衝撃に自分の仕事を忘れていた。

昨日クルーゼン伯爵家から大急ぎで王宮に戻ると、もうキルナ様はクライス様によって無事保護された後だった。それから俺は王宮で調査報告を聞き、クライス様に伝えるという役目を与えられた。一緒に助けに行くこともできなかったのだから、せめてしっかり側近候補としての仕事を果たさなければ。俺が仕事モードに頭を切り替えていると、クライス様も、ベッドから下りてきた。

「キルナ、ベンスの料理はもう届いている。先にダイニングテーブルで朝食を食べて、学校に行く支度をしておいてくれ」
「報告って昨日のこと? 僕が聞いたら駄目なの?」

キルナ様に関わることだから気になるのは当然だろう。だが残念ながら全て伝えるわけにはいかない。

「ああ、昨日の件の報告だ。一緒に聞かせるわけにはいかないが、もし伝えるべきことがあれば後できちんと説明する」
「ん、わかった。んじゃ、朝ご飯食べとくね」

彼はクライス様の言葉に納得した様子で、可愛らしいうさぎの姿のままトテトテとテーブルの方へと歩いて行った。
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