74 / 286
第5章
第210話 大浴場と汚い悪役令息④※
しおりを挟む
終わりのない上書きにもうフニャフニャの僕は、やっと彼の口から抜け出すことに成功した。
だけど、彼はまだ何かしようと狙っている!? そのまま僕をひっくり返して四つん這いにさせ、よりにもよって一番汚い場所を舐めてきた。ひぃ! まさか、ここも上書きする気?? 今洗ったとこだけど、そこはおしりの穴だから、絶対汚いのに!
「ふぎゃっ!!」
あんまりびっくりして立つこともできず、四つん這いのままで逃げようとし、僕はツルッと滑ってお尻だけ上げた状態で止まってしまった。フッ、と後ろからクライスの吹き出す声が聞こえる。やばい、今の僕の格好。クライスにおしりを見せつけているような……。
(なんてこと!!! こんな格好悪い姿を見られるなんて!)
「そんなおいしそうな格好をされると、我慢できないんだが。キルナ、ここでは最後までできない。温まって部屋に戻ってから続きをしよう」
そう言いながら、彼は僕の無防備なおしりにちゅっちゅとキスをする。その時舌をぺろっと擦りつけられ、気持ちよさにぴくんと動くとまた笑われてしまった。
「むぅ…、クライスが、変なことばっかりするから…もう体に力が入らないよぅ」
変な体勢のまま頬をぷくりと膨らませて怒ると、彼は涙目になって恥ずかしがる僕をお姫様抱っこし、湯船へと連れていく。今日のお湯は淡いオレンジ色。真っ赤に染まったお肌が隠せそうないい色だ。
「はぁ、いい気持ち」
(最高! やっぱりお風呂って最高!!)
ちゃぽ~んと熟した桃のような甘い香りのするお湯に浸かると、色んなことを忘れて幸せな気持ちになる。
(ん~というか、クライスがさっき言ってた、ここじゃ最後までできないってどういうことだろ。最後までするって、何を?)
気持ちが落ち着くにつれ、色々と疑問が頭に浮かんできたけれど、複雑なことを考えるには僕の頭は疲れ過ぎていた。もう、いいや、なんでも。と僕は大浴場の気持ちよさにうっとりと目を瞑った。牢屋の中でひたすら寒さに耐えた身体は、今この瞬間喜びに震えている。このぽかぽかのために生きてたって気すらしてくる。
(朝はリリーとお出かけでルンルン気分だったのに、攫われて牢屋に囚われて脱獄して、逃げて……なんだか今日は、ほんとに忙しかったな……。)
身体はやっぱり疲れが溜まっていたみたいで、どんどん重たくなり、僕の体はぷくぷくと沈んでいく。クライスがさっと掬い上げてくれてお湯の底まで行かずに済んだ。膝の上にちょんと乗せられ彼の逞しい胸にもたれると、暗闇の中この胸にぽすんとぶつかったあの瞬間を思い出した。あの時、変態男の剣はもうすぐそこに迫っていて、正直もう死ぬって思った。だけど、
ーークライスのおかげで、僕は変態男に殺されずに済んだ。
(また、助けてもらっちゃったな……。ぶくぶくぶく。)
泡で妖精と遊びながら横目でお湯に浸かる彼を見る。入学式の時よりも精悍な顔つきになって、なんだかさらに大人っぽくなった気がする。もともとハイパーイケメンだったけど、ますます格好良くなったような……ふぅ、なんか顔が熱っ。
(ん、やばい。目が合った……。)
「なんだ?」
「ふぇ、な、なんにもないよ。ぶくぶくぶく」
猛烈な力を秘めたアイスブルーの目に優しく見つめられ、僕の顔はもっと熱くなる。今は何もされていないのに、一人で赤くなってるなんて、変な奴だと思われる。僕は自然に見えるようにそろそろ~っと彼から視線を逸らし、大事なイベントのことを考えることにした。
誕生日パーティーはもう今週。何か彼が好きなものをプレゼントしたいって思っていたのだけど、ココットタウンでは結局何も買えなかった。
だからと言ってせっかくの誕生日、さすがに何もなしなんて嫌だ。これはもしかしてもしかすると、リリーの案を採用するしかないんじゃないかしら?
『甘~いキッスでいいよ。ねぇ、こっち向いてクライス、お誕生日おめでとう。愛してるよ♡ちゅう~って』
僕は彼の最高に整った薄い唇を見て、またぼぉっと燃えるように顔が熱くなるのを感じた。
だけど、彼はまだ何かしようと狙っている!? そのまま僕をひっくり返して四つん這いにさせ、よりにもよって一番汚い場所を舐めてきた。ひぃ! まさか、ここも上書きする気?? 今洗ったとこだけど、そこはおしりの穴だから、絶対汚いのに!
「ふぎゃっ!!」
あんまりびっくりして立つこともできず、四つん這いのままで逃げようとし、僕はツルッと滑ってお尻だけ上げた状態で止まってしまった。フッ、と後ろからクライスの吹き出す声が聞こえる。やばい、今の僕の格好。クライスにおしりを見せつけているような……。
(なんてこと!!! こんな格好悪い姿を見られるなんて!)
「そんなおいしそうな格好をされると、我慢できないんだが。キルナ、ここでは最後までできない。温まって部屋に戻ってから続きをしよう」
そう言いながら、彼は僕の無防備なおしりにちゅっちゅとキスをする。その時舌をぺろっと擦りつけられ、気持ちよさにぴくんと動くとまた笑われてしまった。
「むぅ…、クライスが、変なことばっかりするから…もう体に力が入らないよぅ」
変な体勢のまま頬をぷくりと膨らませて怒ると、彼は涙目になって恥ずかしがる僕をお姫様抱っこし、湯船へと連れていく。今日のお湯は淡いオレンジ色。真っ赤に染まったお肌が隠せそうないい色だ。
「はぁ、いい気持ち」
(最高! やっぱりお風呂って最高!!)
ちゃぽ~んと熟した桃のような甘い香りのするお湯に浸かると、色んなことを忘れて幸せな気持ちになる。
(ん~というか、クライスがさっき言ってた、ここじゃ最後までできないってどういうことだろ。最後までするって、何を?)
気持ちが落ち着くにつれ、色々と疑問が頭に浮かんできたけれど、複雑なことを考えるには僕の頭は疲れ過ぎていた。もう、いいや、なんでも。と僕は大浴場の気持ちよさにうっとりと目を瞑った。牢屋の中でひたすら寒さに耐えた身体は、今この瞬間喜びに震えている。このぽかぽかのために生きてたって気すらしてくる。
(朝はリリーとお出かけでルンルン気分だったのに、攫われて牢屋に囚われて脱獄して、逃げて……なんだか今日は、ほんとに忙しかったな……。)
身体はやっぱり疲れが溜まっていたみたいで、どんどん重たくなり、僕の体はぷくぷくと沈んでいく。クライスがさっと掬い上げてくれてお湯の底まで行かずに済んだ。膝の上にちょんと乗せられ彼の逞しい胸にもたれると、暗闇の中この胸にぽすんとぶつかったあの瞬間を思い出した。あの時、変態男の剣はもうすぐそこに迫っていて、正直もう死ぬって思った。だけど、
ーークライスのおかげで、僕は変態男に殺されずに済んだ。
(また、助けてもらっちゃったな……。ぶくぶくぶく。)
泡で妖精と遊びながら横目でお湯に浸かる彼を見る。入学式の時よりも精悍な顔つきになって、なんだかさらに大人っぽくなった気がする。もともとハイパーイケメンだったけど、ますます格好良くなったような……ふぅ、なんか顔が熱っ。
(ん、やばい。目が合った……。)
「なんだ?」
「ふぇ、な、なんにもないよ。ぶくぶくぶく」
猛烈な力を秘めたアイスブルーの目に優しく見つめられ、僕の顔はもっと熱くなる。今は何もされていないのに、一人で赤くなってるなんて、変な奴だと思われる。僕は自然に見えるようにそろそろ~っと彼から視線を逸らし、大事なイベントのことを考えることにした。
誕生日パーティーはもう今週。何か彼が好きなものをプレゼントしたいって思っていたのだけど、ココットタウンでは結局何も買えなかった。
だからと言ってせっかくの誕生日、さすがに何もなしなんて嫌だ。これはもしかしてもしかすると、リリーの案を採用するしかないんじゃないかしら?
『甘~いキッスでいいよ。ねぇ、こっち向いてクライス、お誕生日おめでとう。愛してるよ♡ちゅう~って』
僕は彼の最高に整った薄い唇を見て、またぼぉっと燃えるように顔が熱くなるのを感じた。
232
お気に入りに追加
10,228
あなたにおすすめの小説
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。