いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第5章

第210話 大浴場と汚い悪役令息④※

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終わりのない上書きにもうフニャフニャの僕は、やっと彼の口から抜け出すことに成功した。

だけど、彼はまだ何かしようと狙っている!? そのまま僕をひっくり返して四つん這いにさせ、よりにもよって一番汚い場所を舐めてきた。ひぃ! まさか、ここも上書きする気?? 今洗ったとこだけど、そこはおしりの穴だから、絶対汚いのに!

「ふぎゃっ!!」

あんまりびっくりして立つこともできず、四つん這いのままで逃げようとし、僕はツルッと滑ってお尻だけ上げた状態で止まってしまった。フッ、と後ろからクライスの吹き出す声が聞こえる。やばい、今の僕の格好。クライスにおしりを見せつけているような……。

(なんてこと!!! こんな格好悪い姿を見られるなんて!)

「そんなおいしそうな格好をされると、我慢できないんだが。キルナ、ここでは最後までできない。温まって部屋に戻ってから続きをしよう」

そう言いながら、彼は僕の無防備なおしりにちゅっちゅとキスをする。その時舌をぺろっと擦りつけられ、気持ちよさにぴくんと動くとまた笑われてしまった。

「むぅ…、クライスが、変なことばっかりするから…もう体に力が入らないよぅ」

変な体勢のまま頬をぷくりと膨らませて怒ると、彼は涙目になって恥ずかしがる僕をお姫様抱っこし、湯船へと連れていく。今日のお湯は淡いオレンジ色。真っ赤に染まったお肌が隠せそうないい色だ。


「はぁ、いい気持ち」

(最高! やっぱりお風呂って最高!!)

ちゃぽ~んと熟した桃のような甘い香りのするお湯に浸かると、色んなことを忘れて幸せな気持ちになる。

(ん~というか、クライスがさっき言ってた、ここじゃってどういうことだろ。最後までするって、何を?)

気持ちが落ち着くにつれ、色々と疑問が頭に浮かんできたけれど、複雑なことを考えるには僕の頭は疲れ過ぎていた。もう、いいや、なんでも。と僕は大浴場の気持ちよさにうっとりと目をつぶった。牢屋の中でひたすら寒さに耐えた身体は、今この瞬間喜びに震えている。このぽかぽかのために生きてたって気すらしてくる。

(朝はリリーとお出かけでルンルン気分だったのに、さらわれて牢屋に囚われて脱獄して、逃げて……なんだか今日は、ほんとに忙しかったな……。)

身体はやっぱり疲れが溜まっていたみたいで、どんどん重たくなり、僕の体はぷくぷくと沈んでいく。クライスがさっとすくい上げてくれてお湯の底まで行かずに済んだ。膝の上にちょんと乗せられ彼の逞しい胸にもたれると、暗闇の中この胸にぽすんとぶつかったあの瞬間を思い出した。あの時、変態男の剣はもうすぐそこに迫っていて、正直もう死ぬって思った。だけど、

ーークライスのおかげで、僕は変態男に殺されずに済んだ。

(また、助けてもらっちゃったな……。ぶくぶくぶく。)

泡で妖精と遊びながら横目でお湯に浸かる彼を見る。入学式の時よりも精悍せいかんな顔つきになって、なんだかさらに大人っぽくなった気がする。もともとハイパーイケメンだったけど、ますます格好良くなったような……ふぅ、なんか顔が熱っ。

(ん、やばい。目が合った……。)

「なんだ?」
「ふぇ、な、なんにもないよ。ぶくぶくぶく」

猛烈な力を秘めたアイスブルーの目に優しく見つめられ、僕の顔はもっと熱くなる。今は何もされていないのに、一人で赤くなってるなんて、変な奴だと思われる。僕は自然に見えるようにそろそろ~っと彼から視線を逸らし、大事なイベントのことを考えることにした。

誕生日パーティーはもう今週。何か彼が好きなものをプレゼントしたいって思っていたのだけど、ココットタウンでは結局何も買えなかった。

だからと言ってせっかくの誕生日、さすがに何もなしなんて嫌だ。これはもしかしてもしかすると、を採用するしかないんじゃないかしら? 

『甘~いキッスでいいよ。ねぇ、こっち向いてクライス、お誕生日おめでとう。愛してるよ♡ちゅう~って』

僕は彼の最高に整った薄い唇を見て、またぼぉっと燃えるように顔が熱くなるのを感じた。
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