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第5章
第233話 番外編:大人の味覚
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※こちらは本編ではありませんのでご注意ください。206話(本編では『小動物たちの会話』)をう~ん、どうしようか、と考えていた時に、とりあえず書いてみたお話です。これではお清め回につながらないのでボツになりましたが、最近書けていないほのぼの系の話なので、載せてみます(*´∇`*)
→キルナが鉱山から救出され、キルリリ🐰🐱二人で一緒に眠り、起きたらリリーが号泣、それをキルナが宥めて寝かしつけ、再びリリーが目覚めた…という場面からスタートです。
*****
「キルナ様、今日は危なかったと聞きました。ご無事でよかった。猫被り、そろそろ帰らないとキルナ様と王子に迷惑だろ。今日は俺様が夕飯係代わってやるから」
クライスが帰ってきて、外が暗くなってきた頃、僕らの部屋にベルトがリリーを迎えにきた。いつも彼らは交代で自炊をしていて、本当なら今日はリリーが作る日らしいのだけど。
「帰らない。メガネといる」
リリーは今起きたところで少し不機嫌な上、僕から離れないオーラを出していて、全然動こうとしない。帰ってご飯という雰囲気ではない。どうしたらいいのだろ、と考えて名案を思いついた。
「ん~じゃあ、一緒に食べる?」
いい?とクライスの方を見ると、
「ああ、それはいいな。その方がキルナもリリーも落ち着くだろう」
ということで、今日はみんなでご飯を食べることになった。
「申し訳ありません、私まで」
ベルトは恐縮しながらも、とってもうれしそうだ。目の前にベンスの作ったご馳走が並んでいるのだから当たり前か。
「ふふ、大勢で食べるのうれしい」
「本当においしいね、これ。キルナ様も食べてみて、はい、あ~ん」
「んぇ。あ、あ~ん、もぐもぐもぐ。ん、おいしっ!」
リリーがお口に入れてくれたのは、ミートパイ。サックリとしたパイ生地の中に肉汁がギュッと詰まっていて、最高においしい。リリーはなんだかいつもと違って、細々と僕の世話を焼いて忙しそうにしている。変なの、なんだかルゥみたい。今日はたまたまそういうことがしたい気分なのかな?
「なんだ? リリーはもしやキルナに惚れて……? いやいや、それはやばいだろ、さすがに」
もごもごと何かを呟いている彼に、なんと言ったのか聞いてみる。
「えと、ベルト何か言った?」
「いえ、なんでも、このパイ本当においしいですね~ははは、ん?この緑の調味料なんだろう」
「あ、それわさびだよ。あ、そんなにつけちゃ……」
「おお、刺激的でうまい!!」
「ベルト、うるさい」
リリーがベルトの頭をペシリと叩く。わさびを山盛りで食べて平気だなんて、ベルト、すごすぎる。
「キルナ、このわさびというのはどれにつけるんだ?」
「このお刺身につけるんだよ。クライスはわさび初めて? じゃあちょびっとにしておいた方がいいよ(ちなみに僕はわさびは食べられない。おすしはいつもサビ抜きだ。優斗はそんなの邪道だと言っていたけれど……)」
クライスはアドバイス通り少しだけつけ、醤油をつけた刺身を優雅に口に運ぶ。舌がヒリヒリするから、これは無理、っていうのかなとちょっと期待しながら見ていたら、
「お、初めて食べたが結構うまいな」
と大人の発言をした。くっ。やっぱりイケメンは味覚もイケメンらしい。
二人の反応を見て、もしかしたらこの世界のわさびは食べられるんじゃ? と思った僕。ちょっとだけ付けてみよ、とこっそり挑戦した。
ツーーーーン
「っ…!?」
なんと前世と同じ味。
(ふええええええん、辛~~~~~い。こんなの食べられない!!)
べっと舌を出して涙目になっているとみんなが真っ赤になって俯いてしまった。変な顔を見ないように気を遣ってくれるなんて、大人の反応!(さすが、大人の味がわかるだけある。)
悔しいけど、あの緑の物体にはまた来年挑戦してみることにしよう。さて、次はどれを食べようかな、ハンバーグもおいしそうだけどお肉食べ過ぎかな? そろそろデザート?
あれこれ悩んでいると世話焼きモードのリリーが、さっと僕の前にお皿を置いてくれた。のはいいけど、なに…これ。
「わさびもいいけど、まずは野菜を食べてね。キルナ様」
取り皿に美しく盛られたサラダを見て、僕は「ひぃっ」と絶望の声を上げた。
🍅おしまい🐰💦
*****
わさび美味しいのに…キルナは食べられないようです。大人への道は遠い(笑)
→キルナが鉱山から救出され、キルリリ🐰🐱二人で一緒に眠り、起きたらリリーが号泣、それをキルナが宥めて寝かしつけ、再びリリーが目覚めた…という場面からスタートです。
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「キルナ様、今日は危なかったと聞きました。ご無事でよかった。猫被り、そろそろ帰らないとキルナ様と王子に迷惑だろ。今日は俺様が夕飯係代わってやるから」
クライスが帰ってきて、外が暗くなってきた頃、僕らの部屋にベルトがリリーを迎えにきた。いつも彼らは交代で自炊をしていて、本当なら今日はリリーが作る日らしいのだけど。
「帰らない。メガネといる」
リリーは今起きたところで少し不機嫌な上、僕から離れないオーラを出していて、全然動こうとしない。帰ってご飯という雰囲気ではない。どうしたらいいのだろ、と考えて名案を思いついた。
「ん~じゃあ、一緒に食べる?」
いい?とクライスの方を見ると、
「ああ、それはいいな。その方がキルナもリリーも落ち着くだろう」
ということで、今日はみんなでご飯を食べることになった。
「申し訳ありません、私まで」
ベルトは恐縮しながらも、とってもうれしそうだ。目の前にベンスの作ったご馳走が並んでいるのだから当たり前か。
「ふふ、大勢で食べるのうれしい」
「本当においしいね、これ。キルナ様も食べてみて、はい、あ~ん」
「んぇ。あ、あ~ん、もぐもぐもぐ。ん、おいしっ!」
リリーがお口に入れてくれたのは、ミートパイ。サックリとしたパイ生地の中に肉汁がギュッと詰まっていて、最高においしい。リリーはなんだかいつもと違って、細々と僕の世話を焼いて忙しそうにしている。変なの、なんだかルゥみたい。今日はたまたまそういうことがしたい気分なのかな?
「なんだ? リリーはもしやキルナに惚れて……? いやいや、それはやばいだろ、さすがに」
もごもごと何かを呟いている彼に、なんと言ったのか聞いてみる。
「えと、ベルト何か言った?」
「いえ、なんでも、このパイ本当においしいですね~ははは、ん?この緑の調味料なんだろう」
「あ、それわさびだよ。あ、そんなにつけちゃ……」
「おお、刺激的でうまい!!」
「ベルト、うるさい」
リリーがベルトの頭をペシリと叩く。わさびを山盛りで食べて平気だなんて、ベルト、すごすぎる。
「キルナ、このわさびというのはどれにつけるんだ?」
「このお刺身につけるんだよ。クライスはわさび初めて? じゃあちょびっとにしておいた方がいいよ(ちなみに僕はわさびは食べられない。おすしはいつもサビ抜きだ。優斗はそんなの邪道だと言っていたけれど……)」
クライスはアドバイス通り少しだけつけ、醤油をつけた刺身を優雅に口に運ぶ。舌がヒリヒリするから、これは無理、っていうのかなとちょっと期待しながら見ていたら、
「お、初めて食べたが結構うまいな」
と大人の発言をした。くっ。やっぱりイケメンは味覚もイケメンらしい。
二人の反応を見て、もしかしたらこの世界のわさびは食べられるんじゃ? と思った僕。ちょっとだけ付けてみよ、とこっそり挑戦した。
ツーーーーン
「っ…!?」
なんと前世と同じ味。
(ふええええええん、辛~~~~~い。こんなの食べられない!!)
べっと舌を出して涙目になっているとみんなが真っ赤になって俯いてしまった。変な顔を見ないように気を遣ってくれるなんて、大人の反応!(さすが、大人の味がわかるだけある。)
悔しいけど、あの緑の物体にはまた来年挑戦してみることにしよう。さて、次はどれを食べようかな、ハンバーグもおいしそうだけどお肉食べ過ぎかな? そろそろデザート?
あれこれ悩んでいると世話焼きモードのリリーが、さっと僕の前にお皿を置いてくれた。のはいいけど、なに…これ。
「わさびもいいけど、まずは野菜を食べてね。キルナ様」
取り皿に美しく盛られたサラダを見て、僕は「ひぃっ」と絶望の声を上げた。
🍅おしまい🐰💦
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わさび美味しいのに…キルナは食べられないようです。大人への道は遠い(笑)
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