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第5章
第201話 絶体絶命の悪役令息(ちょい※)
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「はぁ、はぁ、はぁ……」
走りすぎて足がガクガクだ。光を追いかけてまたかなり走った。牢屋のあった場所からはだいぶ離れたはずだ。あの変態男だってそう簡単には追いつけないだろうと思い、速度を緩める。するとさっきの光の球が僕の方へと寄ってきた。
「……あ、妖精」
光の球の正体は妖精だった。そうか、そういえば彼らは発光するのだった。普段はそんなに意識しないけれど、こんなに真っ暗な場所だとその光が七色だということがはっきりとわかる。
妖精は見た感じ、男の子のようだ。短めの緑の髪に金色の大きな目。水色と紺のチェックのショートパンツを履いている。なんだかとってもおしゃれだ。(妖精の服ってどこで調達するんだろう。妖精の国? お店があるのかな?)頭も体も疲れ切っていて、どうでも良いことをぼぉっと考えてしまう。いやいや、そんなこと考えている場合じゃなかった……。
僕は頑張って息を整えながら聞いた。
「ね、君、ここの出口がわかる?」
妖精はコロコロと笑いながらひゅるりと円を描くように飛び分かれ道の一番左の道を指差した。
「こっちだよ~」
迷いなく案内してくれる妖精に、僕は安心して少し泣きそうになる。さっきまで不安に押しつぶされそうだった気持ちが、少しずつ希望に満ちていく。彼のいう通りに進んでいくと、なんだかさっきよりも道幅が広くなってきた。真っ暗だった道も、すこし明るくなってきたような……。薄暗いけどこれなら足元ぐらいは見える。
「もうすぐだよ~。あ、でもここ、にんげんにはとおりにくいかも~」
妖精の言葉に僕は首を傾げる。どうしてだろう。狭くて通りにくい道なのかな? と思ったけれど、違った。道はさっきよりも断然広い。だけど、通れそうにはなかった。
ーー何か、いる。
出口へと向かう通路の横道をどっしりと塞いでいる大きな岩の隙間から、僕の背丈よりも大きな目がギョロリとこちらを覗き込んでいるのが見えた。今にも岩を押し退けて出てきそうだ。あの前を通り過ぎるなんて、どう考えても無謀すぎる。
グルルルルル……
大地を揺るがすような低くてゾクっとする唸り声が聞こえた。暗くてその怪しく光る赤い目以外はよく見えないけれど、あれが恐ろしいものだということは、鳴き声と鋭い眼光から簡単に予想がつく。
「あれは……何なの?」
「びびっどどらごん。このやまのぬしだよ~」
「ふぇ!? ドラゴン!?」
そんなものがいるなんて! でも魔獣も魔法も存在する世界だ。ドラゴンだっていてもおかしくないのかも。ドラゴン……昔漫画でみたやつはめちゃくちゃカッコ良かった。見てみたい気もする。遠くから望遠鏡で、ならいくらでも見ていたい。
でもでもでも、今、僕とドラゴンの距離はおよそ3メートル。いくらなんでも近過ぎる! そう考えた時だった。
ブワーーン!!
生臭く生温かい風が吹いてきた。ドラゴンの息だ。ただの息がこんな暴風だなんて……。 僕はあまりの恐怖に体がカチコチになって動くことができない。一方僕の肩にとまっている妖精は危機感なんて持ち合わせていないらしく、相変わらずニコニコと楽しげに笑っている。
「あいさつする~?」
「挨拶……? ドラゴンなんでしょ? 行ったら食べられるんじゃ?」
「こわくないよ~だいじょうぶ~」
「ドラゴンって、人間は食べないの?」
「びびっどどらごんはにくしょくだから、にんげんもたべるよ~」
コロコロコロと笑う妖精。やばい。前に行くと間違いなくドラゴンに食べられる。でもこのままじっとしているとあいつが追いかけてくるかもしれない。
(ど、どうしたらいいの!?)
絶体絶命の中、僕をさらなる悲劇が襲う。ギィギィと頭上から鳴き声が聞こえて見上げると大量の生き物がピカッと目を光らせてこちらを見ていた。一匹一匹は小さいけれど、ぎっしりと天井を埋め尽くしていて気持ち悪い。足元を見るのに必死で全然気づかなかった……。妖精をチラリとみると親切にも謎の生き物の解説をしてくれる。
「ちすいこうもり。あれにちをすわれるとひからびてしんじゃうよ~。ちのにおいでえさをさがすんだよ~」
(血吸い蝙蝠……!? 血を吸われるなんて怖すぎる。早く離れなくちゃ)
一匹がバタバタと飛び立つと、他の蝙蝠もそれに続いて動き出す。膝と手首から滴る血が、奴らに僕の居場所を正確に伝えている。前にはドラゴンがいて進めないから急いで後ろに戻ろうと振り返ると、そこには青フードを被った下着姿の変態男がニタリと不気味に笑いながら立っていた。
「ははっ、やっと見つけたぜェ。こんなとこまで来てたのか、じゃじゃ馬ちゃん。だがもう鬼ごっこは終わりだ。ドラゴンがいるこの坑道からは出られない。お前も、俺もな! さぁてと、悪い子にはお仕置きしないとなあ。手も足も可愛いちんぽも縛ってお前の小さいケツの穴に俺のを突っ込んでめちゃくちゃによがらせてやるからよぉ。覚悟しろ」
「や、やぁ、来ないで……」
僕はもうどこへも行けず岩の壁に追い詰められながら、小さく悲鳴を上げた。
走りすぎて足がガクガクだ。光を追いかけてまたかなり走った。牢屋のあった場所からはだいぶ離れたはずだ。あの変態男だってそう簡単には追いつけないだろうと思い、速度を緩める。するとさっきの光の球が僕の方へと寄ってきた。
「……あ、妖精」
光の球の正体は妖精だった。そうか、そういえば彼らは発光するのだった。普段はそんなに意識しないけれど、こんなに真っ暗な場所だとその光が七色だということがはっきりとわかる。
妖精は見た感じ、男の子のようだ。短めの緑の髪に金色の大きな目。水色と紺のチェックのショートパンツを履いている。なんだかとってもおしゃれだ。(妖精の服ってどこで調達するんだろう。妖精の国? お店があるのかな?)頭も体も疲れ切っていて、どうでも良いことをぼぉっと考えてしまう。いやいや、そんなこと考えている場合じゃなかった……。
僕は頑張って息を整えながら聞いた。
「ね、君、ここの出口がわかる?」
妖精はコロコロと笑いながらひゅるりと円を描くように飛び分かれ道の一番左の道を指差した。
「こっちだよ~」
迷いなく案内してくれる妖精に、僕は安心して少し泣きそうになる。さっきまで不安に押しつぶされそうだった気持ちが、少しずつ希望に満ちていく。彼のいう通りに進んでいくと、なんだかさっきよりも道幅が広くなってきた。真っ暗だった道も、すこし明るくなってきたような……。薄暗いけどこれなら足元ぐらいは見える。
「もうすぐだよ~。あ、でもここ、にんげんにはとおりにくいかも~」
妖精の言葉に僕は首を傾げる。どうしてだろう。狭くて通りにくい道なのかな? と思ったけれど、違った。道はさっきよりも断然広い。だけど、通れそうにはなかった。
ーー何か、いる。
出口へと向かう通路の横道をどっしりと塞いでいる大きな岩の隙間から、僕の背丈よりも大きな目がギョロリとこちらを覗き込んでいるのが見えた。今にも岩を押し退けて出てきそうだ。あの前を通り過ぎるなんて、どう考えても無謀すぎる。
グルルルルル……
大地を揺るがすような低くてゾクっとする唸り声が聞こえた。暗くてその怪しく光る赤い目以外はよく見えないけれど、あれが恐ろしいものだということは、鳴き声と鋭い眼光から簡単に予想がつく。
「あれは……何なの?」
「びびっどどらごん。このやまのぬしだよ~」
「ふぇ!? ドラゴン!?」
そんなものがいるなんて! でも魔獣も魔法も存在する世界だ。ドラゴンだっていてもおかしくないのかも。ドラゴン……昔漫画でみたやつはめちゃくちゃカッコ良かった。見てみたい気もする。遠くから望遠鏡で、ならいくらでも見ていたい。
でもでもでも、今、僕とドラゴンの距離はおよそ3メートル。いくらなんでも近過ぎる! そう考えた時だった。
ブワーーン!!
生臭く生温かい風が吹いてきた。ドラゴンの息だ。ただの息がこんな暴風だなんて……。 僕はあまりの恐怖に体がカチコチになって動くことができない。一方僕の肩にとまっている妖精は危機感なんて持ち合わせていないらしく、相変わらずニコニコと楽しげに笑っている。
「あいさつする~?」
「挨拶……? ドラゴンなんでしょ? 行ったら食べられるんじゃ?」
「こわくないよ~だいじょうぶ~」
「ドラゴンって、人間は食べないの?」
「びびっどどらごんはにくしょくだから、にんげんもたべるよ~」
コロコロコロと笑う妖精。やばい。前に行くと間違いなくドラゴンに食べられる。でもこのままじっとしているとあいつが追いかけてくるかもしれない。
(ど、どうしたらいいの!?)
絶体絶命の中、僕をさらなる悲劇が襲う。ギィギィと頭上から鳴き声が聞こえて見上げると大量の生き物がピカッと目を光らせてこちらを見ていた。一匹一匹は小さいけれど、ぎっしりと天井を埋め尽くしていて気持ち悪い。足元を見るのに必死で全然気づかなかった……。妖精をチラリとみると親切にも謎の生き物の解説をしてくれる。
「ちすいこうもり。あれにちをすわれるとひからびてしんじゃうよ~。ちのにおいでえさをさがすんだよ~」
(血吸い蝙蝠……!? 血を吸われるなんて怖すぎる。早く離れなくちゃ)
一匹がバタバタと飛び立つと、他の蝙蝠もそれに続いて動き出す。膝と手首から滴る血が、奴らに僕の居場所を正確に伝えている。前にはドラゴンがいて進めないから急いで後ろに戻ろうと振り返ると、そこには青フードを被った下着姿の変態男がニタリと不気味に笑いながら立っていた。
「ははっ、やっと見つけたぜェ。こんなとこまで来てたのか、じゃじゃ馬ちゃん。だがもう鬼ごっこは終わりだ。ドラゴンがいるこの坑道からは出られない。お前も、俺もな! さぁてと、悪い子にはお仕置きしないとなあ。手も足も可愛いちんぽも縛ってお前の小さいケツの穴に俺のを突っ込んでめちゃくちゃによがらせてやるからよぉ。覚悟しろ」
「や、やぁ、来ないで……」
僕はもうどこへも行けず岩の壁に追い詰められながら、小さく悲鳴を上げた。
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