いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます

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第5章

第221話 テアSIDE 絵本の中の王子さま①

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テアと彼の運命の出会いは、第一王子の16歳の誕生日パーティーだった。

彼の誕生を祝うパーティーは盛大な催しで、たくさんの貴族が集まる。お誕生日パーティーの主役、クライス王子の年齢に合わせ、今日は子どもがたくさん来ている。侯爵家三男のテアも同じ16歳ということで招待されていた。

「キレ~! すてき~!」

華やかな衣装や飾り付けや繊細に盛り付けられた料理。美しいものに満ちた世界を、思う存分見て回っていた。すると、大変なことが起きてしまった。

「いったぁ……もう、なんでこんな滑りやすい床なのぉ!?」

お菓子コーナーに向かって走っていて、盛大に転けたのだ。痛いしサイアク~と思っていると、目の前に手が差し伸べられた。

「大丈夫か?」

そんな僕の手を優しくとって助け起こしてくれた男の子はアイスブルーの瞳に煌めくプラチナブロンドの髪をしていた。その姿はまるで絵本の中の王子様みたい。彼が血が出ているテアの膝に手を当てると。

キラキラキラっと膝のところにお星様のようなキレイな光が集まった。

「あれあれあれぇ~!?」

もう痛くない。ひどい擦り傷だったのに一瞬で治ってしまった。

「会場で走ると危ない。気をつけろ」
「はぁ~い」

それだけ言うと彼は颯爽と姿を消してしまった。

(王子さまみたいにキレイな人に助けてもらっちゃったぁ~)

その後しばらく探したけれど彼を見つけることはできず、お父様とお母様の元に戻った。ときめきで胸がいっぱいで素敵な気分だった。


「ふへへへへへ~」
「なんだ?テア、変な笑い方をして。」
「優しくてかっこいい王子さまをみつけたんだよぉ~。テアの王子さま~!」
「ほぉ、誰のことだろうね」

お父様は首を傾げている。
彼のことを想像していると、みんなの前にテアの王子様が現れ、挨拶を始めた。

「あの人だよぉ! ねぇ~おとうさまぁ、テアあのひとがほしぃ~」

彼の方を指差すと、コラッ、人を指差すなとお母様に怒られた。お父様が言う。

「クライス王子に惚れたのか、テアは見る目があるな。彼はこの国の第一王子、将来この国の王になられるお方だ」
「えっ!? あの人ほんとうの王子さまなの? 」
「何を今更。今日は彼の誕生日パーティーだろう?しっかりしなさい。きちんと挨拶をして気に入られるんだよ。もし見染められたなら、結婚も夢じゃない」

ケッコン!! テアは世界一キレイなお嫁さんになるのが夢。相手は世界一キレイな王子さまがいい。

「ケッコンするぅ~!」

もうちょっと小さい声でしゃべりなさい、とお父様が慌てている。はぁ~い、とお返事していると、

「でも、彼にはもう婚約者がいるからなぁ」

とお母様が笑った。


コンヤクシャ。

「え、お母様本当にぃ!? 誰なのぉ?」
「フェルライト公爵家の長男だという話だ。でも実際王子がその婚約者と一緒にいるところを誰も見たことがないというから、よくわからん。今日もその婚約者は来ていないみたいだし……どうなっているんだろうな」

「なぁんだ。そうなんだ~。じゃあ、そんな話は嘘かもしれないよねぇ~」

とテアが言うと、お父様も頷き「ははっ、確かにそうかもしれない」と言った。

(よかったぁ。婚約者がいるとか言うから、ちょっと心配しちゃったよぉ。あの綺麗な王子さまは絶対絶対テアのものだ。誰にもあげない。)

順番が来て、プレゼントを渡す番になった。まずは何回も練習したご挨拶。

「テア=リメットと申しますぅ~。クライス王子、あの、お誕生日おめでとうございます~」

彼はにこりと笑って、「ああ、ありがとう」といった。テアだけに向けられた笑みに釘付けになる。なんって素敵な笑顔なんだろぉ。胸がドキドキする。ほっぺたが熱い~。これが、恋!?

ドキドキドキ。

ドキドキしながらプレゼントを渡した。あ、ちょっとだけ指が当たった。もしかしてぇ、王子はテアのことが好きなのかもしれない。(きっとそうだ。)だから指に触ったんだぁ。前からテアのことが好きだったってこともありえる。さっきだってずぅっとテアのことを見ていたんだ。だから転けた時すぐに助けてくれたんだ。(うんうん。きっとそ~。)

渡した箱の中には、リメット侯爵領で採れたガーネット付きのオルゴールが入っている。とてもいい品だからきっと王子も気に入るってお母様も言ってた。そぅしたらテアと結婚したい、って思うかも。(婚約者になってって、言われたらどうしよ~!)

みんながプレゼントを渡した後は、ダンス。
クライス王子は優しくテアの手を取る。王子さまとお姫さまのダンスがはじまった。

(さっすがテアの王子さまぁ。ダンスもとっても上手ですっごく楽し~!!)



二人は絶対に結ばれる運命なんだ~って、思った。
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