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第5章
第190話 クライスからの贈り物
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お父様から無事許しをもらって今日はリリーとお出かけ。
クライスは知らない人について行かないこと、迷ったらすぐ護衛騎士に場所を聞くこと、リリーの側を離れないことを僕に言い聞かせ、おでこにおまじないをしてくれた。
「これ首につけていいか?」
「なに? チョーカー?」
差し出されたのは金の土台にアイスブルーの宝石がついた黒い革製のチョーカー。宝石の色…クライスの目の色にそっくりだ。きれい……。
「ああ、キルナのために用意した。つけて欲しい」
前にメアリーが庶民の間でチョーカーが流行っていると教えてくれた。今日は庶民の服装だからぴったりだ。こくんと頷いて巻きやすいように首元の髪をよけると、首の後ろでパチっと留め具を嵌める音がした。
「ああ、よく似合う」
「ありが…と」
なぜか甘くとろけるような目で見てくるクライスの視線に、僕は耐えきれなくなって俯いた。
(くっ、イケメン王子にそんなふうに見つめられると、なんだか照れるよぉ……。)
繁華街へは魔法学園にある転移塔から飛ぶことができるらしい。部屋に迎えにきてくれたリリーと一緒にそこに向かいながら簡単に塔について説明してもらった。
「まず、前提として、魔法学園は不審者が入ってこないように結界が張ってあるから、外から中には徒歩以外で入ることはできないし、必ず門から入ることになってるってことはメガネも知ってるよね?」
「うん、知ってる。あのめちゃくちゃ大きい門でしょ。あそこを通るには徒歩じゃなきゃいけないって聞いたよ」
「そう。でも中から外に出ることは身分証明になる学園のキーカードと、今から行く転移塔を使えば可能なんだよ。塔と、いくつかの大きな街が魔法陣でつながれているから、その中に行きたい街があれば飛べるようになっていて、今から向かう街ココットタウンもつながっているから簡単に行けるってわけ」
「ん~わかったような……」
「まぁ、やってみたらわかるよ」
とか言っているうちに着いた。転移塔は雲まで届くほど高く細い建物で緑の蔦が天辺まで巻き付いていて、一階部分に四角い入り口が見える。(ん~これは、どこからどう見ても……エレベーター!?)
「さあ、じゃあここに入って」
リリーに続いてエレベーターらしきものに乗り込むと、背の高い男性(エレベーターガール的な人)が「どちらへ?」と聞いた。「ココットタウンへ」とリリーが答えると、扉が閉まり男性が静かに告げた。
「ココットタウンに参ります」
次の瞬間、床に描かれた魔法陣がぱあっと緑色に光った。上に動いている? 窓がないから外は見えないけれど、少しふわっと浮かぶような感じがした。
チ~ン。
「到着しました。ココットタウンにお越しの方は、こちらでお降りください」
そう言われ、降りて振り返るともうエレベーター?は消えて無くなっている。不思議だな、と消えた場所を見ていると、隣にいたリリーが「迷子にならないでよ」と言って僕の手をきゅっと握った。迷わないように握っていてくれるのかな? 優しいな、と胸がほぁっと温かくなる。
彼の小さな手は、見た目より逞しくてごつごつしてる。この手は家族を支えて仕事をし、一人でも諦めずに勉強する彼の努力の現れだと僕は知ってる。リリーの手、いいな、好きだな、と思って僕もきゅっと握り返した。
「転移完了だよ。もう街だ」
目の前には見たこともない大きな街が広がっていた。
クライスは知らない人について行かないこと、迷ったらすぐ護衛騎士に場所を聞くこと、リリーの側を離れないことを僕に言い聞かせ、おでこにおまじないをしてくれた。
「これ首につけていいか?」
「なに? チョーカー?」
差し出されたのは金の土台にアイスブルーの宝石がついた黒い革製のチョーカー。宝石の色…クライスの目の色にそっくりだ。きれい……。
「ああ、キルナのために用意した。つけて欲しい」
前にメアリーが庶民の間でチョーカーが流行っていると教えてくれた。今日は庶民の服装だからぴったりだ。こくんと頷いて巻きやすいように首元の髪をよけると、首の後ろでパチっと留め具を嵌める音がした。
「ああ、よく似合う」
「ありが…と」
なぜか甘くとろけるような目で見てくるクライスの視線に、僕は耐えきれなくなって俯いた。
(くっ、イケメン王子にそんなふうに見つめられると、なんだか照れるよぉ……。)
繁華街へは魔法学園にある転移塔から飛ぶことができるらしい。部屋に迎えにきてくれたリリーと一緒にそこに向かいながら簡単に塔について説明してもらった。
「まず、前提として、魔法学園は不審者が入ってこないように結界が張ってあるから、外から中には徒歩以外で入ることはできないし、必ず門から入ることになってるってことはメガネも知ってるよね?」
「うん、知ってる。あのめちゃくちゃ大きい門でしょ。あそこを通るには徒歩じゃなきゃいけないって聞いたよ」
「そう。でも中から外に出ることは身分証明になる学園のキーカードと、今から行く転移塔を使えば可能なんだよ。塔と、いくつかの大きな街が魔法陣でつながれているから、その中に行きたい街があれば飛べるようになっていて、今から向かう街ココットタウンもつながっているから簡単に行けるってわけ」
「ん~わかったような……」
「まぁ、やってみたらわかるよ」
とか言っているうちに着いた。転移塔は雲まで届くほど高く細い建物で緑の蔦が天辺まで巻き付いていて、一階部分に四角い入り口が見える。(ん~これは、どこからどう見ても……エレベーター!?)
「さあ、じゃあここに入って」
リリーに続いてエレベーターらしきものに乗り込むと、背の高い男性(エレベーターガール的な人)が「どちらへ?」と聞いた。「ココットタウンへ」とリリーが答えると、扉が閉まり男性が静かに告げた。
「ココットタウンに参ります」
次の瞬間、床に描かれた魔法陣がぱあっと緑色に光った。上に動いている? 窓がないから外は見えないけれど、少しふわっと浮かぶような感じがした。
チ~ン。
「到着しました。ココットタウンにお越しの方は、こちらでお降りください」
そう言われ、降りて振り返るともうエレベーター?は消えて無くなっている。不思議だな、と消えた場所を見ていると、隣にいたリリーが「迷子にならないでよ」と言って僕の手をきゅっと握った。迷わないように握っていてくれるのかな? 優しいな、と胸がほぁっと温かくなる。
彼の小さな手は、見た目より逞しくてごつごつしてる。この手は家族を支えて仕事をし、一人でも諦めずに勉強する彼の努力の現れだと僕は知ってる。リリーの手、いいな、好きだな、と思って僕もきゅっと握り返した。
「転移完了だよ。もう街だ」
目の前には見たこともない大きな街が広がっていた。
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