上 下
48 / 287
第5章

第184話 オタクキャラスタイル

しおりを挟む
昨晩なんだか色々あったことで朝の眠さは最高レベルだったけど、なんとか起きて白い制服に着替え、黒縁メガネをかけた。鏡を見て、変なところはないか最終チェックする。

「あ、そだ。忘れてた」

髪が綺麗にまとまりすぎていることに気付き、これじゃ駄目だ、と髪の毛にオイルをつけ、少しラフな感じに整えた。これは最初の頃クライスに習った。こうやってボサボサっとするのが最近の流行りなのだって。正直前世の感覚で言うと黒縁眼鏡にボッサボサの髪の毛、という組み合わせは、重度のオタクキャラみたいであんまり格好良くは見えないのだけど、ルゥもメアリーもこの方がいいと言っていたからきっとこれでいいのだろう。

よぉし、トイレも済ませたし(何も出なかったのはスライムローションの効果!?)身支度も完璧。鞄を持ってクライスの腕に掴まってシュンっと転移して校舎に飛ぶ。上靴に履き替えていると、後からベルトがやって来た。

「おはようございますキルナ様。ライン先生に風邪だと聞きましたが、もう大丈夫なんですか?」
「あ、ベルト。う、うん。もう、治ったよ。だいじょぶ……」
「でもまだ顔が赤いような」
「ふぇ!? そんなことないよ。もう元気いっぱい!」
「ならよかったです」

にっこり八重歯で爽やかに微笑まれると、嘘をついている罪悪感が募る。でも本当のことを言うわけにはいかないから仕方がない。魔力酔いで色々やらかしてしまったことは友達には内緒にしたい。

(変なことを言って実は風邪で休んでたんじゃないってバレないようにしないと……。)

ドキドキしながら教室のドアを開けると、入った瞬間にリリーに声をかけられビクッと体が跳ね上がった。

「キルナ様」
「ふわあ、はいィ! なん…で、しょぅ」
「なんですか? その変な返事……。休んでいた間のノートです。ばちっと勉強してこれ以上補習が増えないようにしてくださいね」
「あ、ありがと。リリー」

賢い友達を持って幸せだ、とうるっとしかけていると……またもや小悪魔な彼が顔を出す。

「あれ~? なんかちょっと見ない間に色気が出て綺麗になったんじゃないですか? 目元と頬がほんのりピンク色で肌がツヤツヤ、うなじにはキスマーク。も、し、や、休んでいたのって……。ふふ~ん、キルナ様ったら、えっちぃ~!」
「んやぁあああ、も、なんでもないから。風邪!! ただの風邪だからぁ!」

僕はノートを握りしめながら一生懸命反論した。勘が良すぎるリリーになんとか風邪だとわかってもらわないと、と必死に。

「そんなに必死だと余計に怪しいですけど。まぁいいや。それより薬草学の宿題のこと聞きました?」
「へ? ううん、知らない」
「教科書の25ページに載っている薬草を、今週中に採取して提出しないといけないんです。だから一緒に薬草園に採りに行きませんか? 薬草学が得意な馬鹿ベルトもいるので、早く探せると思いますよ」

「ん、行く! 今日の放課後?」
「はい。ですから今日は補習、せめて一個にしてくださいね。あんまり遅くなって暗くなると探しにくいので」
「が、頑張る……」
しおりを挟む
感想 686

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。