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第5章
第185話 カリムは意外と良い子説(最後だけ※)
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結果、ものすご~く頑張ったのだけど、残念ながら補習を一つ獲得してしまった。打ち合いが終わったらヘトヘトになってしまって、素振り50回ができないままチャイムを聞くことになってしまったのだ。
ちなみに僕の剣術のペアになったカリムは、思っていたのとは違ってとても真面目でいい子だった。
「フェルライト様もうお身体は大丈夫なのですか?」
社交辞令、かもしれないけれど優しく接してくれて、打ち合いも、「今の、痛くなかったですか?」「少し休みますか?」なんて労わりながら相手をしてくれた。何も知らなければ、普通に親切なクラスメイトだ。
そんな彼の態度を見ていると、ゲームのイメージだけで悪者扱いするのは可哀想かも、と思う。もちろんアレンを虐めていた一人には違いないし、「平民のくせに」と暴言を吐いているところは見たけれど、実際に手を出していたのはニールだけだった。あの時は周りに釣られただけで、本当はそんなに悪い子じゃないのかもしれない。
目つきの悪いキツネっぽい顔はどうしても少しキツい印象を与えるけれど、それだけで判断するのは良くないよね。悪役仲間にするかどうかは彼のことをもっと知ってから決めよう。
ああ、それにしてもやっぱり二日休んだ分、身体がなまっているのか、疲れ方が半端ない。二の腕が痛くて腕が上がらないから50回素振りするにはとても時間がかかりそう。(やばいよ、遅くなるとリリーに怒られるのに……なんてこと。)
その後魔法生物学、薬草学の授業はなんとかクリアしたものの、今まで一度も成功したことがない魔法基礎学のルルクの卵大魔力作りはやっぱりうまくいかず、危うく補習になるところだった。前回は魔力不足で失敗したけど、今回はむしろ張り切りすぎて魔力をもらう量が多すぎた。
「こ、これ、止まらない! どうしよ!?」
「落ち着け、左手のリングに集中しろ」
「ふ、あああ、うわああああ」
右手の平に集まった魔力の水はどんどん大きくなってバスケットボールみたいになり、僕が制御できる量をはるかに超えていく。やがて制御できなくなった水は形を保つことができなくなり、バシャーッと音を立て手からこぼれ落ちた。もちろん僕も机も床もびしょびしょだ。
(やってしまった! なんとかしなきゃ。拭くものはどこ?)
雑巾を探そうとすると、大量の魔力が流れて体力を奪われ魔力に酔った身体が傾いだ。と同時に差し伸べられるのはやっぱり彼の手。頼ってばかりじゃいけない、と思うのにふにゃふにゃの体は彼の助けなしでは立っていることもできない。
「ごめん……」
「いいから」
溢れた水は彼の火と風の魔法でシュワーっと蒸発して消えた。
「先生、キルナを医務室に連れて行きます」
「はい、お願いしますね。キルナ君、今日は補習はいいです。ゆっくりと休んでくださいね」
メビス先生の天女のような微笑みが眩しい。
そのままクライスは僕を抱えてさっと医務室、ではなく自室に飛ぶと、「んぁ」いつものように口を少し開いて彼を待つ僕から魔力を吸い取った。もうすっかりおなじみの流れだ。こんなのばっかりでごめん、と(声に出すと彼は謝らなくていいというから)心の中でたくさん謝りながらキスをする。
しばらくすると唇を離し、彼は僕の状態を見ながら言った。
「大丈夫か? 大半は水になって外に流れていったから身体に残った魔力はそこまで多くはないが。昨夜あんなことをしたばかりだ。魔力を動かすとまだ身体が辛いだろう。今日はもう休んで、残りは明日吸い出すか?」
そのセリフで昨日の夜の出来事をまざまざと思い出し、僕の顔がボッと発火する。
(もうもうもう、考えないようにしてたのに! お尻の穴にまだ何か入ってるみたいで変なかんじなのを、考えないように~って脳みそをコントロールしてきた僕の努力が今一瞬で無駄になったよ!)
ふぅ、でもわかってる。クライスに悪気はないってことは。昨日のことだって僕のお仕置きに彼は巻き込まれただけ。ここで彼に腹を立てるのは完全にお門違いだ。よし、もう一度、昨夜のことは鍵付きの思い出ボックスに仕舞って頭を冷やそう。冷静に、冷静に。
(そうだ、今日は薬草探しに行くから魔力酔いは治してもらわないといけないんだった。)
「まだ、大丈夫そうだから、全部吸って」
大事なことを思い出した僕は彼に残りの魔力を吸い出すよう頼んだ。
「わかった。なら残りも吸い出すぞ。辛かったら言え」
こくんと頷いて目を瞑る。
「はぁ、はぁ、ん、ん、んぅ……」
長いキスを終えて身体を離しふっと彼と僕の視線が交わると、それだけで厳重に仕舞い込んだはずの記憶があっという間に脳内を占拠しまたまた自然発火した。このアイスブルーの瞳が、「気持ちいぃ」「もっともっとずぶずぶしてぇ!」と発情期の獣のように強請る自分の姿を映していたなんて。この美しく長い指が僕のお尻の中をかき回していたなんて……。んっぎゃあああああ!!
(クライスの顔が見れないよぉ!!)
俯いたまま一人羞恥に悶える僕の顔を覗き込み、彼は心配そうに言った。
「余分な魔力はもう残っていないはずだが、顔も赤いし目も潤んでいる。やはりまだ辛そうだ。もう少し休んでおけ」
「ち、違うの。ちょっと、色々考え事してただけ。そ、そうだ。僕、補習のあとリリーとベルトと一緒に薬草園に行って宿題の薬草を採りに行くんだけど、クライスも行く?」
「そうだな。行きたいが、理事長室に呼ばれている。終わったらすぐに向かうから先に行っておいてくれ」
「ん、わかった。僕も素振り50回してから行くから、急がなくてもいいよ」
頷いたクライスは僕を剣術訓練所に送ってから、「またあとで」と言って自分は理事長室へと飛んだ。
ちなみに僕の剣術のペアになったカリムは、思っていたのとは違ってとても真面目でいい子だった。
「フェルライト様もうお身体は大丈夫なのですか?」
社交辞令、かもしれないけれど優しく接してくれて、打ち合いも、「今の、痛くなかったですか?」「少し休みますか?」なんて労わりながら相手をしてくれた。何も知らなければ、普通に親切なクラスメイトだ。
そんな彼の態度を見ていると、ゲームのイメージだけで悪者扱いするのは可哀想かも、と思う。もちろんアレンを虐めていた一人には違いないし、「平民のくせに」と暴言を吐いているところは見たけれど、実際に手を出していたのはニールだけだった。あの時は周りに釣られただけで、本当はそんなに悪い子じゃないのかもしれない。
目つきの悪いキツネっぽい顔はどうしても少しキツい印象を与えるけれど、それだけで判断するのは良くないよね。悪役仲間にするかどうかは彼のことをもっと知ってから決めよう。
ああ、それにしてもやっぱり二日休んだ分、身体がなまっているのか、疲れ方が半端ない。二の腕が痛くて腕が上がらないから50回素振りするにはとても時間がかかりそう。(やばいよ、遅くなるとリリーに怒られるのに……なんてこと。)
その後魔法生物学、薬草学の授業はなんとかクリアしたものの、今まで一度も成功したことがない魔法基礎学のルルクの卵大魔力作りはやっぱりうまくいかず、危うく補習になるところだった。前回は魔力不足で失敗したけど、今回はむしろ張り切りすぎて魔力をもらう量が多すぎた。
「こ、これ、止まらない! どうしよ!?」
「落ち着け、左手のリングに集中しろ」
「ふ、あああ、うわああああ」
右手の平に集まった魔力の水はどんどん大きくなってバスケットボールみたいになり、僕が制御できる量をはるかに超えていく。やがて制御できなくなった水は形を保つことができなくなり、バシャーッと音を立て手からこぼれ落ちた。もちろん僕も机も床もびしょびしょだ。
(やってしまった! なんとかしなきゃ。拭くものはどこ?)
雑巾を探そうとすると、大量の魔力が流れて体力を奪われ魔力に酔った身体が傾いだ。と同時に差し伸べられるのはやっぱり彼の手。頼ってばかりじゃいけない、と思うのにふにゃふにゃの体は彼の助けなしでは立っていることもできない。
「ごめん……」
「いいから」
溢れた水は彼の火と風の魔法でシュワーっと蒸発して消えた。
「先生、キルナを医務室に連れて行きます」
「はい、お願いしますね。キルナ君、今日は補習はいいです。ゆっくりと休んでくださいね」
メビス先生の天女のような微笑みが眩しい。
そのままクライスは僕を抱えてさっと医務室、ではなく自室に飛ぶと、「んぁ」いつものように口を少し開いて彼を待つ僕から魔力を吸い取った。もうすっかりおなじみの流れだ。こんなのばっかりでごめん、と(声に出すと彼は謝らなくていいというから)心の中でたくさん謝りながらキスをする。
しばらくすると唇を離し、彼は僕の状態を見ながら言った。
「大丈夫か? 大半は水になって外に流れていったから身体に残った魔力はそこまで多くはないが。昨夜あんなことをしたばかりだ。魔力を動かすとまだ身体が辛いだろう。今日はもう休んで、残りは明日吸い出すか?」
そのセリフで昨日の夜の出来事をまざまざと思い出し、僕の顔がボッと発火する。
(もうもうもう、考えないようにしてたのに! お尻の穴にまだ何か入ってるみたいで変なかんじなのを、考えないように~って脳みそをコントロールしてきた僕の努力が今一瞬で無駄になったよ!)
ふぅ、でもわかってる。クライスに悪気はないってことは。昨日のことだって僕のお仕置きに彼は巻き込まれただけ。ここで彼に腹を立てるのは完全にお門違いだ。よし、もう一度、昨夜のことは鍵付きの思い出ボックスに仕舞って頭を冷やそう。冷静に、冷静に。
(そうだ、今日は薬草探しに行くから魔力酔いは治してもらわないといけないんだった。)
「まだ、大丈夫そうだから、全部吸って」
大事なことを思い出した僕は彼に残りの魔力を吸い出すよう頼んだ。
「わかった。なら残りも吸い出すぞ。辛かったら言え」
こくんと頷いて目を瞑る。
「はぁ、はぁ、ん、ん、んぅ……」
長いキスを終えて身体を離しふっと彼と僕の視線が交わると、それだけで厳重に仕舞い込んだはずの記憶があっという間に脳内を占拠しまたまた自然発火した。このアイスブルーの瞳が、「気持ちいぃ」「もっともっとずぶずぶしてぇ!」と発情期の獣のように強請る自分の姿を映していたなんて。この美しく長い指が僕のお尻の中をかき回していたなんて……。んっぎゃあああああ!!
(クライスの顔が見れないよぉ!!)
俯いたまま一人羞恥に悶える僕の顔を覗き込み、彼は心配そうに言った。
「余分な魔力はもう残っていないはずだが、顔も赤いし目も潤んでいる。やはりまだ辛そうだ。もう少し休んでおけ」
「ち、違うの。ちょっと、色々考え事してただけ。そ、そうだ。僕、補習のあとリリーとベルトと一緒に薬草園に行って宿題の薬草を採りに行くんだけど、クライスも行く?」
「そうだな。行きたいが、理事長室に呼ばれている。終わったらすぐに向かうから先に行っておいてくれ」
「ん、わかった。僕も素振り50回してから行くから、急がなくてもいいよ」
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