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第5章

第174話 二学期初日

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久しぶりに分厚い黒縁メガネを装着し、ピシッと白い制服を着て、いざ登校!
朝からランニングという爽やかなスタートを切った僕はもう、くたくたで死にそうになっていた。

「どうしたのですか? 元気がありませんね」

心配してくれるメビス先生に、大丈夫です、と答え、魔法基礎学の課題、ルルクの卵大の魔力集めに励む。左手はクライスの手を握り、魔力をもらいながら右の手の平に魔力の水を集める。

(僕の魔力とクライスの魔力~~~~集まれ!!)

卵の大きさまであと小さじ1……というところでチャイムが鳴ってしまった。

「うん、おしいですね! でも一学期より上手にできていますよ。あともうちょっとです」

褒められはしたけど、残念ながら補習を免れることはなかった。(魔力酔いを恐れ過ぎたことが敗因かもしれない。)


剣術の授業は相変わらず校庭10周から始まる。
もうすでに体力が底を尽きている僕にはきつい試練だったけど、なんとか真ん中くらいの集団と一緒に走り切ることができた。その後はいつものように体育館、ではなく、剣術訓練所に集合…なのだって。何をするんだろう!

「では、二学期は素振りに加えて、打ち合いの練習をする。では、手本に、クライス=アステリアとブラン=オルタ、前に出てゆっくりと打ち合ってみてくれ」

木剣で軽くゆっくり打ち合っているとは思えないほど力強く格好がいい二人に僕は釘付けだ。
あんな風に剣を使いこなすことができたら、モースにも一矢報いることができたかもしれない……。
逃げるだけじゃなくて、戦えたかもしれない……。

ーーもっと強くなりたい。

そう思うと、クタクタの体もなんとか動かすことができた。素振り50回をこなし、次は打ち合いというところまでできた。

「打ち合いのペアは同じ実力者同士がいい。経験のないもの同士、あるもの同士でペアを組み、わからないところは俺に聞け」

ムッキムキのライン先生はニカッと人好きのする笑みでそう言いながら、剣術訓練所を見回る。


誰と組もうかしら。と思っていると、クラスメイトから遠巻きにされている三人組を見つけた。
ニールとカリムとトリム。僕の未来の悪役仲間だ。

アレンの事件以来話をする機会がなかったのだけど、僕は将来のために彼らと友達にならないといけない。これはチャンスかもしれない。奇数だから、一人余るってことでしょ? ならその人と組めばいい。

「あのさ、僕と組んでくれない?」

近付いて声をかけると三人はぎょっとした表情でこちらを見た。まぁ、そりゃそうだよね。別に仲良くもないし、向こうにしてみたら不可抗力だったにしても、以前火魔法で攻撃しちゃった相手で、そのせいで謹慎処分になっているのだから、僕にいいイメージはないはずだ。だけど、この先一緒に悪役活動をしていかなきゃいけない都合上、このまま疎遠でいるわけにはいかない。僕は勇気を振り絞って言った。

「僕、打ち合いの経験は全然ないのだけど、君たちの中にも経験がない人いる?」

と尋ねてみる。すると、

「フェ、フェルライト様……。俺たち全員経験はありませんけど……」
「そか、じゃあ、お願いしていいかな?」

顔を見合わせる彼ら。

「はい、お願いします……」

こうして僕と、三人のうちで一番背の高い狐色の髪の少年、カリムがペアを組むことになった。目はつり目で細く、口は小さくて、顎が尖っている。なんだか見れば見るほどキツネっぽい少年だった。




そして補習の後、呼び出されて正座させられている僕……。

「なんっでよりによってあいつらとペアを組むわけ?」

リリーにしこたま怒られ僕は彼の部屋で小さくなっていた。

「だって、別に…誰でもいいかなと思って……」

「良くないよ! 今日決めたペアとは二学期中ずっと一緒に練習しなくちゃいけないんだよ。あんな奴らと一緒に居たら、メガネ、犯されちゃうよ!!」

「んぇ? 犯される?」

えと、男が、男を犯すってこと? そんな馬鹿な。でもここはBLゲームの世界だから、そんなこともあり得るの? う~ん、と考えている僕にイライラした様子でリリーが続ける。

「あいつらはね、力の弱い可愛い子を見つけてはこっそり裏で甚振って好き勝手してるの。もちろんメガネは公爵家っていう身分と王子の婚約者って肩書きがあるからそう簡単に手を出してはこないと思うけど……。なんにせよ、身を守るためには授業以外でこれ以上関わらないことだよ。わかった!?」

「は、はい!」

でも、関わらなくちゃ友達になれないんだよね…っと思ったけど、リリーの剣幕に負けて頷いてしまった。

「俺様も心配だよ。奴らは本当にいい噂は聞かないし、実際にいじめをしているところを見たこともある。キルナ、何かあったらすぐに王子に言えよ。あとその眼鏡を絶対に外さないこと。好みの男の子はすぐに食っちゃうって話は俺様も聞いたことがある。とくにニールには気をつけるんだ」

リリーだけじゃなくてベルトも心配してくれている。こんな風に心配してくれる人がいるってことが、なんだか嬉しいような気がしてにへっと笑いそうになるけれど、また怒られると困るので我慢した。

二人はこんな風に心配してくれているけれど、彼らが悪いってことは僕も重々承知しているから大丈夫だ。なんてったって、なんだから。
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