上 下
36 / 286
第4章

第143話 番外編:異世界でハロウィンごっこ※

しおりを挟む
異世界でハロウィーンごっこを楽しんでいた僕(キルナ=フェルライト)は、料理長のベンスにおいしいお菓子をもらうことに成功した!!その後、婚約者のクライスに悪戯を仕掛けた……のだけど、なぜだかそれは失敗して!?美味しくいただかれちゃうというお話です。時系列としては本編より先の話になります。他サイトのハロウィン企画で書いた作品です。



 *******

とりっくおあとりーと!!

厨房に乱入してきたのは黒いトンガリ帽子を被り、黒いワンピースを着た坊ちゃんだった。

「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!!」

甘いものが好きな坊ちゃんはお菓子に目がない。今日も甘いものを強請ねだりに来たのだろうか。
手にはお菓子を入れる用の大きなバスケットを持っている。ここに入れて。と差し出され、俺はふむ、何をいれようか、と考えた。

坊ちゃんはとてつもない偏食で、放っておくとお菓子しか食べない。その上かなり少食だ。
こんなバスケットいっぱいにお菓子を詰めたらご飯が食べられなくなってしまう。

「バスケットいっぱいにお菓子をいれてね。でないといたずらするんだから!!」

ふんふん、と鼻息が荒い坊ちゃんを見て、その可愛らしさに笑みが溢れる。張り切っている坊ちゃんに何か作って差し上げよう。

「なるほど、では今からお作りしますね。」

俺は大きな冷蔵庫を睨みながらどんなものを作ろうか、全力で考えた。


「ふわぁ、こんなにたくさんお菓子!! ありがとっ!!」

たくさんの菓子の入ったバスケットを抱えて坊ちゃんは満面の笑みでたたたた~っと走ってどこかに消えてしまった。

実はバスケットの中にはお菓子に見せかけたご飯がいっぱいに入っている。マッシュポテトを生クリームのようにデコレーションし、ケーキに見せかけたサンドイッチ、モンブランに見せかけたパスタ、プリンに見せかけたグラタン、クッキーに見せかけた肉。
鮮やかな色の星型の野菜を散りばめ(坊ちゃんでも食べられるようにごく小さなもの)、見た目は完璧に菓子だ。食べたら驚くだろうか。ああ、その表情を見てみたかった。


 

 *******


たたたた~と僕は僕の婚約者であるクライス=アステリアの元へと走った。今日は朝から彼が遊びにきているのだ。

「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃ、ん、きゃあ! もう、クライスったら、急に抱きつかないでよ」
「すまない、でも、あんまりキルナが可愛い格好をしているからつい。なんだ? その格好」
「え~知らないの? 魔女だよ。魔女! 魔法をつかう女の子!」
「はぁ、そんなのあちこちにいるだろ。貴族の女の子は大体魔女だということか?」

ん~冷静に指摘されると、その通りでなんとも言えない。この国は魔女で満ちている。
じゃあ僕はなんでとんがり帽子を被って杖を持ってマントをつけているの? って話だ。
えと、えと、ん~わかんない。

「そんなことより、ね、クライス。今ねベンスにいいものもらってきたの! じゃーん」

と言って見せたのはさっきお菓子をいっぱい詰めてもらったバスケット。おお、うまそうだ。と言う彼と分け合って一緒に食べることになった。


でも、これが、思ってたのと全然違って、びっくり!!

「ん!?これ。ケーキじゃない!サンドイッチだ!!」
「これは……プリンじゃないぞ、グラタンじゃないか。驚いた、が味はいつも通り、最高だな」
「ほぇ!? これ、お肉だよ!! どこからどう見てもクッキーなのに! なんで?」

僕たちはきゃあきゃあ言いながらどんどん食べていき、気がつくとほとんど完食していた。最後にシフォンケーキを食べると、それはなんと、普通にシフォーンケーキだった! よかった~一番大好物のこれだけはちゃんと本物が食べたかったの。

「あ~、おいしかったね」とクライスを見ると。

彼がぺろりと僕の口を舐めた。

え? 舐めた? 僕が戸惑っていると、またしても彼の唇が近づいてくる。

待って!

「クリームがついていた」

という彼。へ? どこに? と手で探すけど、わからない。もう取れたのかな?

「ここにも」

と口の中に、彼の舌がするりと潜り込む。

「ん、」

ちゅく、ちゅくっと僕の口の中をウロウロした後、彼はふわりと王子様フェイスで「ごちそうさま」と言った。何がごちそうさま!?もうもうもう、僕のお口の中までクリームを探しに来るなんて!! びっくりするじゃない! 僕は怒った。

そうだ、こうなったら僕もびっくりさせてやろ。



 *******


夜中。僕は客室で寝ている彼の元を訪れた。ドアはノックなんてせずにそおっと開けて、こっそりこっそり忍び寄る。真っ黒な魔女の衣装はこっそり侵入するのにうってつけだから装備したまま。

「ふふっ、わあ!! ってのしかかってびっくりさせてやるんだから」

ベッドのふくらみまで近寄って「わあああああ!」

驚いたのは僕の方だった。ぐるんとひっくり返され、知らない間に僕の方が押し倒されている。

「なんだ? キルナ? ああ、夢。か」

クライスはそんなことをぶつぶついいながらなぜか僕の服をどんどん脱がせていく。んぇ? なんで?

「ああ、マントの下は黒いワンピースになっているのか、これは、いいな。着せたままにしておこう。すこし捲って、ああ、これでいい。パンツはいらないな。靴下は黒のニーソックスね。エロ可愛いからこのままにしておこう」

あ、も、やめてぇ。

彼は半分寝ている感じで僕の声があまり聞こえていないみたい。衣装を好き勝手にいじって、こんどは僕の大事なとこをあろうことかぱくりと咥えてしまった。

い、嘘でしょ?

ねろねろと舐め回されて僕はヒクヒクと喉を鳴らす。

「ひあ……あ……あァ……、ぁんや……。」

彼の口の中で捏ね回されて気持ち良くなって僕はぷるぷる震えている。

「んく、イクぅ、イケないのはわかってるのに。あ、イッちゃう!!」

前世の射精の記憶としゃぶられ限界を超えた気持ちよさが重なって、脳内がスパークした。

「ああああん。もう。むっりああああああああああ」



僕の本格的な叫びにどたどたと屋敷のみんなの集まってくる足音が聞こえる。あ、だめ。僕今すごいカッコしている。
パンツを脱いで靴下はぴっちり膝まで履き、スカートはお臍のところまでたくし上げられ手は押さえつけられ、大事なところをクライスに咥えられている。

あああ、こんなの見られたら!! 絶体絶命!! どうしよっ、と思った時、信じられないという顔をしたクライスと目が合った。

「クライス、たす……けて……」

目の前の相手がこの状況を作り上げた元凶なのにそれに助けを求める僕。馬鹿。
だけど、しっかりと覚醒した彼の対応は早かった。
僕にパンツを履かせ、さっとクリーンの魔法をかけ、きちんと布団をかけ、自分の隣に寝かせる。

「どうされました!!!?」

と入ってきた使用人たちには、ああ、大きな虫が出てキルナがびっくりしたんだ。もう始末したから大丈夫、と説明した。みんな、そうですか……と納得し、僕たちが並んで寝ていることに、何も触れず戻っていった。

ああ、助かったような、もうそんなレベルでもないような。
寝たふりをしながら僕は思った。


異世界でハロウィーンごっこをするのは止めようと!!



 *******

お読みくださりありがとうございます。ハッピーハロウィン(*´꒳`*)
しおりを挟む
感想 684

あなたにおすすめの小説

嵌められた悪役令息の行く末は、

珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】 公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。 一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。 「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。 帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。 【タンザナイト王国編】完結 【アレクサンドライト帝国編】完結 【精霊使い編】連載中 ※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。