【完結】ねこの国のサム

榊咲

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〈本編〉

サムに長老から手紙が届く

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 長老から《人の国》へ行く時期を聞いてから数十日後、長老からサムに手紙が届きました。それを見たサムは驚きました。いつもは長老から呼び出されていたので、それだけ重要な事が書かれているのかと、不安にも思いました。

 長老からは今度の休日に1人で来るようにと書いてありました。これまた、いつもと違う長老からの指定です。いつもはアゴ母さんと一緒に長老の家に行っていたからです。

 サムはいつもと違う長老からの呼び出しに困惑しています。兎に角、今度の休日には1人で行かなければなりません。サムはアゴ母さんに話して、相談しようとも思いましたが、手の込んだ手紙というツールで呼び出しが来た事の意味を考えて、誰にも相談せずに長老の家に行こうと思いました。

※※※※※※

 サムはアゴ母さんに内緒で長老の家に向かいました。いつもはアゴ母さんと2人で向かうので、ちょっとドキドキしながら向かっていました。そんな時にクロに会ってしまいました。

「あれ、サムちゃん。どこに行くの?」
「あ、クロちゃん。えぇとね、長老様のとこに行くとこ……」
「へぇ、そうなんだ。まだ《人の国》の事、調べてるの?」
「う~ん、まあね」

「そなんだね。またオレに《人の国》の事をも教えてよ!」
「うん、わかった。じゃぁ、またね。クロちゃん」
「うん、またね」

 クロはサムが言う事を疑う事なく、手を振って、離れて行きました。サムはクロに内緒にしている事がある為、ちょっと気不味い気分になってしまいました。

 クロと話していた為に長老の家に行くのが、約束の時間より到着が少し遅くなってしまいました。少し焦って向かいました。

「長老様、サムです。入ってもいいですか?」
「ああ、サムちゃんかい?入っておいで」
「長老様、今日は何かありましたか?」

「今日はのう、サムちゃんの《人の国》へ行く日時が決まったんじゃよ」
「え、もう決まったんですか?」
「ああ、そうじゃよ」

「いつですか?」
「12月30日じゃよ。……ほんに年末じゃな!」
「そうですね。長老様」
「サムちゃん。何かわからない事はあるかい?」

 サムは長老から聞いた《人の国》へ行く日時にビックリしました。年末と聞いていましたが、本当に年末になるとは思っていなかったからです。サムは年末か~と思い、掃除で忙しのになぁ~と、いらない事を考えてしまいました。サムはさっき会ったクロの事を思い出して、長老にこの日時は家族以外に教えてもいいか聞く事にしました。

「長老様。あの、この《人の国》へ行く日時は家族以外の友達に話してもいいですか?」
「なんじゃ、そんなことかい。もちろんいいよ」
「長老様。ありがとうございます」
「……もう一度、聞くよ。サムちゃん」

「なんですか?」
「そうさな、本当に《人の国》に行くんじゃな」
「はい。決心は変わりません!……長老様、心配してもらってありがとうございます」

「なに、ワシはサムちゃんの決心を確認しただけじゃよ」
「それでも、僕の知らない事を教えてもらったし、養子先も探してくれたじゃないですか。長老様には感謝しかありません。ありがとうございます」

「そうか、まだ行くまでには、少しあるから、お別れはしておきなさいよ」
「はい。それじゃ、僕は帰ります。ありがとうございました」
「ああ、気をつけてお帰り」

 サムは長老からの話を聞いて、家に帰る為に挨拶をして長老の家を後にしました。
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