110 / 135
〈本編〉
サム、長老から秘密を聞く
しおりを挟む
サムは長老の言うこの国の事を忘れるという事を信じられなくても、納得しなければならないという事はわかりますが、なぜ忘れなくてはいけないのかが、わからないので長老に聴きます。
「長老様、さっきも聞いたんですが、どうして忘れなくっちゃいけないんですか?」
「そうだのう、その事を言わなければならないかのう。……サムちゃんは《人の国》からこの国に帰って来られないのは知ってるじゃろ」
「は、調べた時に知りました」
「そうじゃ、帰って来られないからの、覚えているとあちらの生活に慣れるまで辛いことになるんじゃよ」
「何と無く分かります」
「だからの、忘れた方が幸せなんじゃよ。わかったかの、サムちゃん」
サムは長老から理由を聞いてやっと、なぜこの国で暮らした事を忘れるのかわかりました。それとともに、兄弟や友達のことを忘れちゃうなんて寂しいと思いました。
もしこの国に帰って来た時には兄弟は自分の事を覚えていてくれるのに、自分は忘れていて、あった時には知らない人として威嚇してしまうなんて……。悲しすぎると思い、長老に覚えている事は出来ないか聞きました。
「長老様、もしこの国に帰って来られた時も思い出せないんですか?」
「……サムちゃん、例外はないんじゃよ。もう一度この国に帰って来ても、思い出せないじゃろうな」
「そ、そんな~!!……なんとかならないんですか?」
「サムちゃん、調べたのならわかっているじゃろ。この国を出て、帰って来たものはいないんじゃよ。だからの、忘れた方がいいんじゃよ」
「どうしても忘れることが前提なんですね……」
「そうじゃ。寂しいし悲しくなるが、覚えていても幸せになれないからのう」
「そうなんですね。長老様」
「サムちゃん、わかっておくれ。じゃがな、忘れたからっと帰ってくるなと言っているわけじゃないんじゃ。だからのう、《人の国》の養子先の方が、この国に行こうと言ってくれたら、帰っておいで」
「はい、長老様。忘れてしまってもここが僕の故郷に変わりないですもん。機会があったら帰ってきます」
「そうじゃ、ここはサムちゃんの故郷なんじゃからの。いつでも帰っておいで。……おおそうじゃ、養子先が決まったんじゃよ」
「そうなんですか。いつになるんですか?」
「サムちゃん、ちょっと待っておくれ。《人の国》からのお迎えはまだじゃよ」
「えぇ、いつになるんですか?」
「そうじゃのう、年末になると聞いておるよ」
「え、そんなに先になるんですか?」
「そうなんじゃ。向こうの人の都合でな」
「長老様。じゃぁ、僕が行くのは年末になるって兄弟や友達に教えてもいいんですか?」
「そうじゃのう。この国の事を忘れてしまう事は秘密じゃが、サムちゃんがこの国を離れる時期を教える分にはいいよ」
「ありがとうございます。長老様。今日はありがとうございました。失礼します。」
「サムちゃん。気を付けてお帰り」
サムは《人の国》ヘ行くまでにまだ時間がある事に安堵しました。しかし、この国を出た途端に兄弟も友人も忘れてしまう事は心が引き裂かれそうに辛い事でした。でも自分で決めたことです。長老にお礼を言って家に帰る事にしました。
「長老様、さっきも聞いたんですが、どうして忘れなくっちゃいけないんですか?」
「そうだのう、その事を言わなければならないかのう。……サムちゃんは《人の国》からこの国に帰って来られないのは知ってるじゃろ」
「は、調べた時に知りました」
「そうじゃ、帰って来られないからの、覚えているとあちらの生活に慣れるまで辛いことになるんじゃよ」
「何と無く分かります」
「だからの、忘れた方が幸せなんじゃよ。わかったかの、サムちゃん」
サムは長老から理由を聞いてやっと、なぜこの国で暮らした事を忘れるのかわかりました。それとともに、兄弟や友達のことを忘れちゃうなんて寂しいと思いました。
もしこの国に帰って来た時には兄弟は自分の事を覚えていてくれるのに、自分は忘れていて、あった時には知らない人として威嚇してしまうなんて……。悲しすぎると思い、長老に覚えている事は出来ないか聞きました。
「長老様、もしこの国に帰って来られた時も思い出せないんですか?」
「……サムちゃん、例外はないんじゃよ。もう一度この国に帰って来ても、思い出せないじゃろうな」
「そ、そんな~!!……なんとかならないんですか?」
「サムちゃん、調べたのならわかっているじゃろ。この国を出て、帰って来たものはいないんじゃよ。だからの、忘れた方がいいんじゃよ」
「どうしても忘れることが前提なんですね……」
「そうじゃ。寂しいし悲しくなるが、覚えていても幸せになれないからのう」
「そうなんですね。長老様」
「サムちゃん、わかっておくれ。じゃがな、忘れたからっと帰ってくるなと言っているわけじゃないんじゃ。だからのう、《人の国》の養子先の方が、この国に行こうと言ってくれたら、帰っておいで」
「はい、長老様。忘れてしまってもここが僕の故郷に変わりないですもん。機会があったら帰ってきます」
「そうじゃ、ここはサムちゃんの故郷なんじゃからの。いつでも帰っておいで。……おおそうじゃ、養子先が決まったんじゃよ」
「そうなんですか。いつになるんですか?」
「サムちゃん、ちょっと待っておくれ。《人の国》からのお迎えはまだじゃよ」
「えぇ、いつになるんですか?」
「そうじゃのう、年末になると聞いておるよ」
「え、そんなに先になるんですか?」
「そうなんじゃ。向こうの人の都合でな」
「長老様。じゃぁ、僕が行くのは年末になるって兄弟や友達に教えてもいいんですか?」
「そうじゃのう。この国の事を忘れてしまう事は秘密じゃが、サムちゃんがこの国を離れる時期を教える分にはいいよ」
「ありがとうございます。長老様。今日はありがとうございました。失礼します。」
「サムちゃん。気を付けてお帰り」
サムは《人の国》ヘ行くまでにまだ時間がある事に安堵しました。しかし、この国を出た途端に兄弟も友人も忘れてしまう事は心が引き裂かれそうに辛い事でした。でも自分で決めたことです。長老にお礼を言って家に帰る事にしました。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ
鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。
「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」
ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。
「では、私がいただいても?」
僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!
役立たずの僕がとても可愛がられています!
BLですが、R指定がありません!
色々緩いです。
1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。
本編は完結済みです。
小話も完結致しました。
土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)
小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました!
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する
くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。
世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。
意味がわからなかったが悲観はしなかった。
花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。
そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。
奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。
麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。
周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。
それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。
お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。
全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。
カメリア・シネンシス・オブ・キョート
龍騎士団茶舗
ファンタジー
異世界に召喚された5人。性別・年齢も違うそれぞれは、異世界の“キョート”の、5つの国の命運を問う旅へと出発する。
魔法の発達した国『シュロッス・イン・デル・ゾーネ』
サイバーパンクな科学技術大国『United Japanese tea varieties of Iratsuko』
清廉な武士たちが住まう『南山城国』
スチームパンクな北方の大国『テラ・ドス・ヴェルメロス』
ポストアポカリプス後の自然豊かな『バクエット・ド・パクス』
それぞれの国、それぞれの旅人たちの運命は?
異世界系ジャンル越境メタフィクション日本茶ファンタジー、開幕!
※ ※ ※
日本茶を擬人化した物語です。
異世界に召喚される人物以外は皆、日本茶です。
“キョート”は異世界ですが、登場するそれぞれの国は実際の京都府内の、日本茶の著名な産地をモチーフにしています。
旅をする物語ですが、旅や物語の背景も、実際の日本茶に関する歴史を下敷きにしています。
とは言え勿論、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
Fate、刀剣乱舞、艦これ、ウマ娘などの日本茶ver.とでも思っていただければ。
ちなみに筆者は日本茶問屋ですので、日本茶に関する知識についてはガチですが、この物語自体はサブカル成分6:日本茶4です。悪しからず。
ゲーム化を目指し、その分野に強いということでアルファポリス様にて、連載を開始させていただきました!
ひぐらしや東方のようにメディアミックスもしたい! 絵師さまも募集中です!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる