【完結】ねこの国のサム

榊咲

文字の大きさ
上 下
108 / 135
〈本編〉

ニセイとチビ達

しおりを挟む
 サムがクロと話をしている間にニセイとチビが公園に遊びにきました。公園に入ってすぐにサムとクロが話をしているのを目にしたニセイは、チビを促してチャシロとチロが遊んでいる所に行きました。

「よう、悪いが一緒に遊んでくれるか?」
「チャシロちゃん、チロちゃん、一緒に遊んで~?」
「あ、チビちゃん。えぇとニセイさん、いいですよ。なあ、チロ」
「うん、一緒に遊ぼう!」

 こうして4人は一緒に遊ぶことにしました。サムとクロはニセイとチビが公園に来ていることに気が付いていないようで、公園の隅で話し込んでいました。

「おい、チャシロ。サムとクロはいつから話してんだ?」
「えぇとですね。かれこれ、1時間ぐらいかな~」
「おいおい、そんなにか?」

「そうですよ。……チロ、兄ちゃん達が話し始めて1時間ぐらいだよな?」
「え、なあに兄ちゃん?』
「だから、兄ちゃん達が話し始めて1時間ぐらいだよな?」
「そういえば、それぐらい経つかな……」

 ニセイにサムとクロが話を始めてどれくらいの時間経ったか聞かれて、チャシロは公園にある時計を見てニセイに話しました。でもニセイが時間を聞いて驚いたような顔をするので、チロにも聞いてみました。やはりチロも時計をチラッと見てチャシロと同じ時間を言いました。

 それを聞いたニセイは驚いて、誰に言うともなくつぶやきます。

「本当かよ!長すぎるだろ!」
「でも……、本当なんですよ、ニセイさん」
「チャシロ、クロと一緒に遊ばなくていいのか?」

 ニセイはチャシロに兄であるクロと一緒に遊んでいた筈のところに、サムが話をしに来てしまった為に、一緒に遊べなくなってしまったことに、少し罪悪感があったのでチャシロに聞きました。何せ、サムにクロに話をしに行けとけしかけたのが、自分だったからです。

「ニセイさん、心配いりませんよ」
「だがなぁ、一時間はいくらなんでも長いと思うぞ!」
「本当に大丈夫です。いつも僕たちと一緒遊んでいるんだから、たまにはこう言う時間が兄ちゃんにあってもいいと思います」

「そうか?……もしこう言うことがあったら俺に言えよ。チビと一緒に遊んでやるから!」
「あ、ありがとうございます。ニセイさん」
「いいってことよ。サムがお前達からクロを奪ってんだからさ」
「それにチビと2人で遊ぶより、4人で遊んだ方が楽しいだろうが……」
「そうですね。じゃぁ、またあったらお願いしますね」
「おう、ヨロシクな。チャシロ」

 チャシロはニセイの優しさに触れて、嬉しく思いました。本当なら自分達と遊ぶのは楽しく無いはずなのに、遊んでくれると言うのだから、ニセイはお人好しなんだなと思いました。

 チャシロはサムとクロが話をしている、公園の隅に目をやって思います。ニセイとチビが公園に来てくれてよかったと……。それでなかったら、チャシロはクロに『もう話は終わった~?』と何回も聞いていたと思ったからです。そうなったら、クロに迷惑を掛けていただろうと思いました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

御大尽与力と稲荷神使

克全
キャラ文芸
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 七右衛門は日本一の商人の孫であったが、将来の事を心配した祖父に南町奉行所の与力株を買ってもらった。跡継ぎから外れた七右衛門であったが、祖父を日本一の商人にした稲荷神の神使は七右衛門について行き、数々の事件を解決するのであった。

処理中です...