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〈本編〉
サムと長老【《人の国》の件】
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サムと長老だけが、部屋に残りました。長老はどこから話そうかと逡巡しました。そして、もう一度、帰って来ることが出来ない事の覚悟を聞こうと思いました。
「サムちゃんや、本当に《人の国》へ養子に行きたいのかね」
「はい、行きたいです!」
「帰っては来れないぞ。それでもかね」
「長老様、僕は将来《人の国》へ行きたいです」
「決心は堅いみたいだのう」
「長老様、僕は前々から興味があったんです」
「そうか、そうか。では、話そうかのう」
「はい、お願いします」
長老はサムの決心が堅いことを確認してから話始めました。
「サムちゃんは、《人の国》については調べたと言っておったのう」
「はい、図書館で調べました」
「そうかそうか。頑張ったんじゃのう」
「でも長老様。養子の事はわかりませんでした。なぜですか?」
「それは、余りこの国にとっては良くない事じゃからじゃよ」
「それは禁忌になるんですか?」
「イヤ、禁忌とまではいかぬよ。ただ、この国に帰って来れなくなるしの、あとはこの国と《人の国》の間には結界が貼ってあるからの、余り人に知られたくないんじゃよ」
「え、結界が貼ってあるんですか?」
「ああ、そうじゃよ。この事は秘密じゃ。シィーじゃ」
「はい、誰にも言いません。約束します」
「うん、うん。よろしく頼むな」
「でも、どうして結界の事は秘密なんですか?僕、前にアゴ母さん達と一緒に《人の国》へ行きましたよ」
「ああ、それはじゃ、わしがアゴさんに頼まれて、結界を解除しておいたから行く事が出来たんじゃよ」
「そうだったんですね。じゃぁ、どうして結界を張る様になったんですか?」
「それはのう、遙か昔は結界は無かったそうじゃ。《人の国》とは自由に行き来が出来たそうじゃよ。ある時、《人の国》からこの国に来た者がこの国の子どもを攫う様になったんじゃ……」
「え、攫う?」
「そう、誘拐じゃよ。親から無理矢理、子どもを引き離す事じゃな」
長老はサムに昔あった《人の国》との確執を話始めました。サムは、まさか昔にそんなことがあったとは思っておらず、呆然としてしまいました。そして何故、そんな事が起こったのか知りたくなりました。
「長老様、どうして《人の国》の人はそんな酷い事をしたの?」
「昔はこの国も栄えておってな。この国にも人は沢山おった。そこに目を付けられた様じゃ。《人の国》では当時、ネズミが大繁殖しておったと記録されとるからのう」
「長老様、僕が調べた書物にはその様な事は書いてありませんでしたよ?」
「ほんに、サムちゃんは勉強家じゃなぁ。そう表の図書館にはその様な事が書いてある書物はないよ」
「どうしてですか?」
「そうさな、この様な事は余り表沙汰にはしたくないからじゃよ。代々の長老が隠してきたんじゃよ」
「そうなんですね。じゃぁ、僕もナイショにします」
「そう、しぃーじゃよ。サムちゃんは賢いなぁ」
「長老様、《人の国》へ行ったらこの国に帰って来れないのは、結界があるからなんですね」
「そうじゃよ。ただ、《人の国》からは《人の国》の人と一緒なら帰って来れるんじゃよ。だから、養子に行った先の人が良い人なら、帰って来れるかもわからないのじゃ」
「そっかぁ。帰って来れるのは養子先の人によるんだぁ。……長老様、この国に帰ってきた人はいるんですか?」
「わしが知る限りは、無いのう」
「そうなんですね。本当に《人の国》の人はによるんですね」
「そうなんじゃよ。だからの、もし考え直すなら今のうちじゃよ。サムちゃんはどうするかね」
「それでも、僕は行きたいです」
「ここまで聞いても、決心は変わらずか……。じゃぁ、もしサムちゃんが行く時はわしが養子先を探してやろうかのう。どうじゃな?」
「え、長老様が探してくれるんですか?」
「ああ、わしが探してやろう」
「本当に…!長老様、ありがとうございます。よろしくお願いします」
サムは長老から昔あった話を聞いても、《人の国》へ行く事を諦められませんでした。そんなサムの決心を聞いた長老はサムの養子先を探す事を約束しました。それを聞いたサムは、大喜びしました。
「サムちゃんや、本当に《人の国》へ養子に行きたいのかね」
「はい、行きたいです!」
「帰っては来れないぞ。それでもかね」
「長老様、僕は将来《人の国》へ行きたいです」
「決心は堅いみたいだのう」
「長老様、僕は前々から興味があったんです」
「そうか、そうか。では、話そうかのう」
「はい、お願いします」
長老はサムの決心が堅いことを確認してから話始めました。
「サムちゃんは、《人の国》については調べたと言っておったのう」
「はい、図書館で調べました」
「そうかそうか。頑張ったんじゃのう」
「でも長老様。養子の事はわかりませんでした。なぜですか?」
「それは、余りこの国にとっては良くない事じゃからじゃよ」
「それは禁忌になるんですか?」
「イヤ、禁忌とまではいかぬよ。ただ、この国に帰って来れなくなるしの、あとはこの国と《人の国》の間には結界が貼ってあるからの、余り人に知られたくないんじゃよ」
「え、結界が貼ってあるんですか?」
「ああ、そうじゃよ。この事は秘密じゃ。シィーじゃ」
「はい、誰にも言いません。約束します」
「うん、うん。よろしく頼むな」
「でも、どうして結界の事は秘密なんですか?僕、前にアゴ母さん達と一緒に《人の国》へ行きましたよ」
「ああ、それはじゃ、わしがアゴさんに頼まれて、結界を解除しておいたから行く事が出来たんじゃよ」
「そうだったんですね。じゃぁ、どうして結界を張る様になったんですか?」
「それはのう、遙か昔は結界は無かったそうじゃ。《人の国》とは自由に行き来が出来たそうじゃよ。ある時、《人の国》からこの国に来た者がこの国の子どもを攫う様になったんじゃ……」
「え、攫う?」
「そう、誘拐じゃよ。親から無理矢理、子どもを引き離す事じゃな」
長老はサムに昔あった《人の国》との確執を話始めました。サムは、まさか昔にそんなことがあったとは思っておらず、呆然としてしまいました。そして何故、そんな事が起こったのか知りたくなりました。
「長老様、どうして《人の国》の人はそんな酷い事をしたの?」
「昔はこの国も栄えておってな。この国にも人は沢山おった。そこに目を付けられた様じゃ。《人の国》では当時、ネズミが大繁殖しておったと記録されとるからのう」
「長老様、僕が調べた書物にはその様な事は書いてありませんでしたよ?」
「ほんに、サムちゃんは勉強家じゃなぁ。そう表の図書館にはその様な事が書いてある書物はないよ」
「どうしてですか?」
「そうさな、この様な事は余り表沙汰にはしたくないからじゃよ。代々の長老が隠してきたんじゃよ」
「そうなんですね。じゃぁ、僕もナイショにします」
「そう、しぃーじゃよ。サムちゃんは賢いなぁ」
「長老様、《人の国》へ行ったらこの国に帰って来れないのは、結界があるからなんですね」
「そうじゃよ。ただ、《人の国》からは《人の国》の人と一緒なら帰って来れるんじゃよ。だから、養子に行った先の人が良い人なら、帰って来れるかもわからないのじゃ」
「そっかぁ。帰って来れるのは養子先の人によるんだぁ。……長老様、この国に帰ってきた人はいるんですか?」
「わしが知る限りは、無いのう」
「そうなんですね。本当に《人の国》の人はによるんですね」
「そうなんじゃよ。だからの、もし考え直すなら今のうちじゃよ。サムちゃんはどうするかね」
「それでも、僕は行きたいです」
「ここまで聞いても、決心は変わらずか……。じゃぁ、もしサムちゃんが行く時はわしが養子先を探してやろうかのう。どうじゃな?」
「え、長老様が探してくれるんですか?」
「ああ、わしが探してやろう」
「本当に…!長老様、ありがとうございます。よろしくお願いします」
サムは長老から昔あった話を聞いても、《人の国》へ行く事を諦められませんでした。そんなサムの決心を聞いた長老はサムの養子先を探す事を約束しました。それを聞いたサムは、大喜びしました。
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