【完結】ねこの国のサム

榊咲

文字の大きさ
上 下
96 / 135
〈本編〉

サムとクロ《将来》への……

しおりを挟む
 ブチとミケはチビの質問を聞いたあとにそれぞれの母親に料理を教えて貰うと、その翌日のは修行先に帰ってしまいました。サムは久しぶりに、ブチとミケの2人と遊べると思っていたので、ガックリとしていました。

 それでも、将来の事を思えば、《人の国》の事を調べなければならず、図書室に通いました。サムが図書室に顔を出すと、クロが待っていました。

「クロちゃん、おはよう。今日は早いね」
「あ、サムちゃん。おはよう。久しぶりだね」
「そうかな?あ、そうか、2・3日来てなかったな。ゴメンねクロちゃん」

「しばらく見なかったけど、忙しかったの?サムちゃん」
「違うんだ。昨日までブチ兄ちゃん達が帰って来てたんだよ」
「えぇ~、そうだったの?……それなら教えて欲しかったな!サムちゃん」

 クロは憧れのブチとミケが帰って来ていたのに会えなかった事を残念に思い、なぜ教えてくれなかったのかサムに聞きます。

「ゴメンね、クロちゃん。ブチ兄ちゃん達はチビが聞きたい事があったから、帰って来てくれたんだよね。だからクロちゃんを呼べなかたんだよね」
「そっか、でもそれならチビちゃんがした質問の答えを聞いてみたかったな」

 クロは理由を聞いて残念そうにサムに言います。

「クロちゃん、本当にゴメン。内輪で話が進んでたから、クロちゃんを呼ぶって事が頭から抜けてたよ」
「じゃぁさ、今度ブチさん達が帰って来た時は読んでよ。約束だよ」
「うん、わかったよ、クロちゃん。約束ね!」

 サムもちょっとクロに悪い事をしたと思ったので、クロの希望通り約束しました。

「そういえば、サムちゃん、《人の国》の事はもういいの?」
「ええとね、もう少し調べたいと思ってるんだけど……」
「でもさ、もうここの資料じゃぁ、調べようがないと思うよ、サムちゃん」

 クロはサムに《人の国》の事を調べるのは、ここでは無理ではないかと聞きました。それに対してサムはクロに言います。

「そうだけどねぇ、クロちゃん。もう少し調べたいんだよね」
「どんな事を調べたいの?」
「それは、クロちゃんにも言えない!」

「えぇ、どうして?友達じゃぁないか。教えてよ」
「ゴメンね。クロちゃん。どうしても言えないよ!」
「どうしてもなの?」

「ゴメンね。言えない」
「わかったよ、サムちゃん。でも、言えるようになったら、教えてね」
「うん。わかったよ、クロちゃん。絶対、教えるから。……ゴメンね」

 サムが調べたい事、それは《人の国》の人との養子制度の事だったので、クロに対して絶対に口を割る事は無かった。クロはサムの口の堅さに、あまり良い事ではないのだろうと思い、問い詰める事はヤメて、教えてくれるまで待つ事にしました。

「そういえば、クロちゃんは将来はここに残るって言ってたけど、どうするか決めたの?」
「それがさ~、サムちゃん。聞いてよ!オレが将来の事を母さんに話したら、『まだ早い』って言うんだよ~」
「へぇ~、チィおばさん、そんな事言うんだ。でもさ、それだけ、クロちゃんの事、心配してるんだよ」

「うん。それはわかってるんだけどさ、サムちゃん達がもう将来に向けて準備してるんだもん、焦せるじゃんか」
「まあ気持ちはわかるよ。ウチは放任って言うか、自分で準備しなさい!て言う方針だからね」
「それって、サムちゃん達を信頼してるって事だろう。いいよな~」

「そんな事ないよ。自分では無理だと思って相談するまでは口出ししてこないからね。アゴ母さん」
「それは……、厳しいなぁ。オレだったら、すぐ母さんに聞いちゃうだろうな……」
「ね、だからチィおばさんは優しいんだよ。その時が来たら手伝ってくれると思うよ。だからね、それまではやらなくても、いいんじゃぁないの」

「そうだね、サムちゃん。ありがとう、俺のグチを聞いてくれて」
「それこそ友達じゃぁない!クロちゃん。それに、僕の《人の国》の事を調べるのを手伝ってくれたじゃん」
「それは……、俺も勉強になったし……」

「じゃぁ、お合いこって事でいいじゃん、クロちゃん」
「うん、そうだね、サムちゃん」

 サムとクロは《人の国》の事を調べる事で将来の夢のことを話し、お互い勉強しながら頑張ってきました。ただ、サムの家の方針とクロの家の方針が違っていた為に、少し行き違いが出てしまったようです。でも、それはその家の方針だから仕方がないとサムもクロも納得しました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

猫スタ募集中!(=^・・^=)

五十鈴りく
ライト文芸
僕には動物と話せるという特技がある。この特技をいかして、猫カフェをオープンすることにした。というわけで、一緒に働いてくれる猫スタッフを募集すると、噂を聞きつけた猫たちが僕のもとにやってくる。僕はそんな猫たちからここへ来た経緯を聞くのだけれど―― ※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

恋するジャガーノート

まふゆとら
SF
【全話挿絵つき!巨大怪獣バトル×怪獣擬人化ラブコメ!】 遊園地のヒーローショーでスーツアクターをしている主人公・ハヤトが拾ったのは、小さな怪獣・クロだった。 クロは自分を助けてくれたハヤトと心を通わせるが、ふとしたきっかけで力を暴走させ、巨大怪獣・ヴァニラスへと変貌してしまう。 対怪獣防衛組織JAGD(ヤクト)から攻撃を受けるヴァニラス=クロを救うため、奔走するハヤト。 道中で事故に遭って死にかけた彼を、母の形見のペンダントから現れた自称・妖精のシルフィが救う。 『ハヤト、力が欲しい? クロを救える、力が』 シルフィの言葉に頷いたハヤトは、彼女の協力を得てクロを救う事に成功するが、 光となって解けた怪獣の体は、なぜか美少女の姿に変わってしまい……? ヒーローに憧れる記憶のない怪獣・クロ、超古代から蘇った不良怪獣・カノン、地球へ逃れてきた伝説の不死蝶・ティータ── 三人(体)の怪獣娘とハヤトによる、ドタバタな日常と手に汗握る戦いの日々が幕を開ける! 「pixivFANBOX」(https://mafuyutora.fanbox.cc/)と「Fantia」(fantia.jp/mafuyu_tora)では、会員登録不要で電子書籍のように読めるスタイル(縦書き)で公開しています!有料コースでは怪獣紹介ミニコーナーも!ぜひご覧ください! ※登場する怪獣・キャラクターは全てオリジナルです。 ※全編挿絵付き。画像・文章の無断転載は禁止です。

転生して悲劇の王女になったつもりが魔王でした!勇者から斬りつけられて素手で殴り返した、前世コミュ障引き籠りだった弱小王国王女の帝国建国物語

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
ファンタジー
両親を幼い頃に殺された王女アンネローゼはその仇を討つために母国スカンディーナ王国に仲間とともに進出、アンネローゼ王国を建国した。悲劇の王女として祖国に暖かく迎え入れられると思ったのに、周りの民の反応は疫病神に対するようで、その上、そこに現れた勇者と名乗る男に魔王と言われ、自分が前世のゲーム『スカンディーナの聖女』のラスボス魔王だと知るのだ。何でこうなった? 自分は悲劇のヒロインのはずが・・・・。ラスボスは両親の仇、悪逆非道の摂政ブルーノのはずなのに・・・・。ブルーノが慈悲深い聖王だと・・・・そんな訳あるか!  弱小国の軍隊を率いて必至にあがく可憐な王女のはずが、素手で勇者を粉砕、付いた渾名が暴虐の山姥、とか赤髪の魔王、私を見ると皆逃げていくんだけど、なんで・・・・。 前世コミュ障引きこもりだった私が気弱なふりをすればするだけドツボに嵌って・・・・。隣国の暴虐令嬢の先輩と大魔術師、冷酷非道な内務卿に良いように振り回されて、いく国盗り物語です。 『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/337638866  の続編のはずです。 小説家になろう カクヨムでも掲載中です

僕たちは正義の味方

八洲博士
ファンタジー
都内のお手軽な行楽スポット、天狗山。そこで僕たちは神様から「義を正すための力」を託される。

メサイア

渡邉 幻月
ファンタジー
幻想が現実になる日。あるいは世界が転生する日。 三度目の核が落ちたあの日、天使が天使であることを止めた。 そして、人は神にさえ抗う術を得る。 リアルが崩壊したあとにあったのは、ファンタジーな日常だった。 世界のこの有り様は、神の気紛れか魔王の戯れか。 世界は、どこへ向かうのか。 人は、かつての世界を取り戻せるのか。今や、夢物語となった、世界を。 ※エブリスタ様、小説家になろう様で投稿中の作品です

処理中です...