【完結】ねこの国のサム

榊咲

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〈本編〉

ブチとミケの帰省

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 あっという間にブチが帰ってくる日になった。チビはワクワクしながらブチが帰って来るのを待っています。アゴ母さんが注意する位には浮かれていました。そして、ブチとミケが家まで帰ってきました。

「皆んな、ただいま」
「おかえり、ブチ。ミケちゃんもお帰りなさい」
「アゴおばさん、お久しぶりです。ニセイちゃん達も久しぶりだね」

「「「ブチ兄ちゃん、ミケ兄ちゃん、お帰りなさい」」」
「ブチ兄ちゃん、お話聞かせて~」
「これチビ、まだダメよ。今、帰って来たばかりでしょう。明日にしなさい!」

 チビは我慢できずにブチに話しかけましたが、アゴ母さんに叱られてしまいました。まだ帰って来たばかりで、ミケも居たからです。それでも、懲りずに、ブチやミケに話し掛けようとするので、慌ててニセイやサムがチビの口をフサいだり、飛び出さない様に押さえ付けたりしています。するとミケの母親のハナの姿が見え隠れするのが、ブチ達には見えました。

 アゴ母さんとサム達には見えません。しかしブチとミケには見えていました。そうして今あったサム達の光景を見て、ブチとミケは久しぶりに見たサム達の微笑ましい姿に,『フフフ』と笑ってしまい、アゴ母さんは額に手を当てて、『ハァ』とため息を吐いてしまいました。そこに、ミケの母親のハナがやって来て、サムやニセイとチビの姿を見て、何が合ったかわからないけど、ブチやミケと同じ様に微笑んでしまいました。

「あらハナさん、いらっしゃい。ミケちゃんのお迎えかしら?」
「ええそうよ、アゴさん。だってミケったら、アゴさんの所に寄ってから家に来るって言うんですもの」
「ちょっと母さん。何言ってるの?」

「あらミケ。本当のことじゃぁないの」
「やめてよ。恥ずかしいじゃぁないか!」
「あらあら、そう言う事は、家に帰ってからにしたほうがいいわよ、ハナさん」

「そうかしら。やっぱり、ここだからイイのよ!」
「もう、やめてよね!恥ずかしい……じゃぁ皆さん、また後で」
「ミケ、明日また会おうな!」

「ああ、明日な、ブチ!……ほら母さん、帰るよ」
「もう、なに恥ずかしがってるの。それじゃぁ、アゴさんまた」
「ええハナさんまた」

 ハナがミケを揶揄からかう様な事がありましたが、『カラカラ』と笑いながらハナとミケは帰っていき、アゴ母さんと子ども達だけになって、すぐに家に入る事にしました。家に入りながら、チビは我慢できずにブチに話し掛けます。

「ブチ兄ちゃん、お話して欲しいな」
「これチビ。ブチは今帰って来たばかりなんだから、後にしなさい!」
「だって、ずうっとブチ兄ちゃんが帰って来るのを待ってたのに……」

 チビはアゴ母さんにまた叱られて、項垂ウナダれてしまいます。これにはアゴ母さんも、言い過ぎたかと思いました。するとブチがアゴ母さんのフォローをしました。

「チビ、兄ちゃんな、少し疲れてるから、明日にしてくれるか?明日ならミケも来るから、ミケからも話が聞けるぞ。どうする?」
「ブチ兄ちゃん、わがまま言ってゴメンなさい。チビ、明日、話を聞く!」
「そうか、チビはいい子だな」
「うん、チビはいい子だもん!」

 アゴ母さんは咄嗟とっさのブチの機転に苦笑いが出ました。でも、機転がスルッと出るだけ、ブチが成長したのだと思い、嬉しくも頼もしくもなったと1人、心の中で拍手喝采しました。
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