【完結】ねこの国のサム

榊咲

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〈本編〉

【幕間】ブチとミケの予防接種

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 ブチとミケも予防接種を受ける時期になっていました。帰省した時にもアゴ母さん達に『予防接種を受けなさいよ』と言われていました。

「ミケ、予防接種はいつ行く?」
「え、ブチまだ受けてなかったの?」
「まさか、ミケ、もう受けたのか」
「うん。帰省した時に受けたよ」

 ブチは『ガーン』と頭を金槌で打たれた様な衝撃を受けました。いつも一緒に話し合っていたのに、予防接種は相談も受けてもいなかったのでその衝撃は計り知れない位、ブチを叩きつけました。

「なんで言ってくれなかったんだよ、ミケ」
「だってさ、うちは母一人子一人だろう。健康には人一倍気を付けてるんだ。だから母さんと一緒に受けて来た」
「そっか、それなら仕方ないな。来年は一緒に受けに行ってもいいか?」
「うんいいよ。母さんもブチとだったらいいと思うし」
「じゃあ約束な」
「わかったよ。母さんにも言っておく」
「はあ、今年は一人か」
「まあこういう時もあるさ」
「そうだな」

 ブチは今年の予防接種を受けに行く為の準備をし始めました。そこへ近所に住むお年寄りのブッチがブチとミケを訪ねて来ました。

「ブチ君とミケ君、ちょおーと頼みたい事があるんだが……」
「なんです、ブッチさん」
「ブッチさんからの頼み事は断りづらいなー。どんな事ですか?」

「すまんが、近所の年寄り連中を予防接種に連れて行って欲しいんだよ」
「ああ、予防接種ですか。今俺たちも予防接種の事を話していたんですよ」
「そうなんです。今年はミケはもう受けてしまったんで、俺はいつ行こうかと思ってたんです」
「おおそうか。それじゃあすまんが一緒に行ってくれるか?ブチ君」
「ええ、俺で良ければ」

「ブチ君はいつ頃受けに行くんじゃ」
「そうですねえ、2~3日後に行こうと思ってますが…そちらの都合は?」
「そうじゃなあ、ブチ君に合わせるかのう」
「いいんですか?俺なら大丈夫ですよ」
「ブチ、折角ブッチさんが言ってくれてるんだから、お言葉に甘えたら」
「そうじゃぞ、ミケ君のいう通りじゃ」
「では、お言葉に甘えさせてもらいます」
「じゃあ、僕も手伝いますよ。ブッチさん」
「いいのかい、ミケ君」
「いいんですよ。人手は幾らあってもいいじゃないですか」
「そうかい、悪いね。多分、4~5人ずつの2グループになるから、よろしくの」
「そうだ、ブッチさん。集合場所はどこにしますか?あと時間は?」
「おおそうじゃそうじゃ、忘れるところじゃった。集合場所は公園でお願いする。時間は9時でどうかな。ミケ君」
「わかりました。集合場所は公園で時間は9時ですね。だって、ブチ忘れない様にね」
「くぅー、わかったよ。ミケ」
「じゃあ、よろしくの。ブチ君、ミケ君」

 ブッチは予防接種の会場である病院へ連れて行ってくれるブチとミケと話がついたので、上機嫌で家に帰って行きました。ブチとミケ、特にブチは『はあ』とため息を吐きました。突然、予防接種へ行く人数が増えたので少し戸惑っているのもあります。人を連れて行くのはニセイやサムを連れて行った事があるので良いのですが、人生の大先輩を連れて行くのが気が引けてしまうのです。

「ブチ、どうしたの。ため息なんか出して」
「そりゃでるさ。大先輩を連れて行くんだぞ」
「まあなる様にしかならないだろう?」
「そうだが……気が重い!」
「一人じゃないんだから、一緒に頑張ろうぜ」
「わかったよ」

 ブチとミケはブッチに頼まれた予防接種の案内は無事に終わり、お年寄り達に『ありがとね』とお礼を言われて、ブチとミケは恐縮しまくりでした。そしてブチも予防接種を受けられて、お手伝いも出来て一石二鳥となりました。

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