にゃんこの居場所【完結】

榊咲

文字の大きさ
上 下
4 / 37
【ムサシの章】

俺と優しいおばあちゃん

しおりを挟む
 ケガをしてから、家のみんなが過保護になった様だ。俺は強いんだから、そんな心配しなくてもいいのにさ。俺の強さを見せつけなくっちゃいけないな!

…………………………     …………………………    …………………………     …………………………

 この家に来て数年経った頃かな、俺も歳を取ってネズミはなんとか取ってるが、ケンカは滅法弱くなっちまったて、家の外に出る事もメッキリ減っちまった。特に冬は寒いからコタツから出られなくなっちまう。

 この頃、身体も動かなくなって来た。昔の農家だった家は二階建てでネズミは二階によくいたな。二階に行く事もメッキリ減っちまった。まあ、若い頃からずっとネズミを取っていたから、この頃はあんま、ネズミを見なかったがな。身体が鈍るから、少しは動くか。

 コタツから出て、風呂場に向かう。途中でおばあちゃんが心配そうに、俺をみている。「うにゃーん(心配ないぜ)」と言って前を歩いて行く。風呂場は閉まっていたが、おばあちゃんが気がつい、開けてくれた。「ニャンニャン(ありがと)」と言って入って行って、トイレを済ませる。

 ここの所のトイレは風呂場になった。トイレを済ますとおばあちゃんが臭いが籠らない様に水を流してくれるんだ。おばあちゃんは『ムサは偉いな!よそでトイレをしないで、ここでして』と言ってくれた。褒めてくれてるようだ。俺はおばあちゃんの手を煩わせたくないんだ!何時も優しくしてくれたからな!そうそう『ムサ』って言うのは『ムサシ』を縮めた呼び方。ムサシだと呼びにくいからな。仕方ないぜ!

 でももうそろそろ、おばあちゃんの手を煩わせそうだ。自分の寿命がどれだけ残っているのか?絶対におばあちゃんの手を煩わせたくないんだよ!でも、身体が動かなくなってきているのもわかるんだ!どうしようか?

 本当は寿命までには、家を出なければならないのに、ここが居心地がよくて、おばあちゃんが優しいから出て行くのが寂しくて、なかなか決心がつかない。昔の俺なら、即決即断だったのによう、今は未練がましく迷ってる。おばあちゃんにサヨナラするのが辛いよ!今日は寒いしコタツで暖まってから、いつ出て行くか考えるかな。

 はあ、暖かい。もう朝かな。あ、おばあちゃんだだ、「ニャンニャンニャン(おはよう、おばあちゃん)」おばあちゃんも「ムサ、おはよう」とあいさつしてくれた。いつものように風呂場でトイレを済ましてコタツに入る。今日はなんだかいつもより眠いぞ。段々、おばあちゃん達の声も聞こえなくなってきた。そうか、今日でおばあちゃん達とお別れなんだ。お別れのあいさつが出来なかったなあ!ここの家にきて良かったよ、ありがとう、おばあちゃん。

 おばあちゃんがコタツの中を掃除しようと中を見ると《ムサシ》が眠っていた。いつもなら掃除機の音で起き上がるのに起きない。不思議に思い触ってみると、冷くなっていた。おばあちゃんはああ、死んでしまったんだなぁと思った。

 この子はトイレも風呂場でやって、粗相をしない子で良い子だったなと思いながら、亡骸を箱に入れてお寺に行き、お参りして貰ってから火葬場に連れて行って貰った。ムサ、居てくれてありがとう。安らかに眠ってね、とおばあちゃん達は思いました。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

僕とシロ

マネキネコ
ファンタジー
【完結済】僕とシロの異世界物語。 ボクはシロ。この世界の女神に誘われてフェンリルへと転生した犬のシロ。前回、ボクはやり遂げた。ご主人様を最後まで守り抜いたんだ。「ありがとう シロ。楽しかったよ。またどこかで……」ご主人様はそう言って旅立たっていかれた。その後はあっちこっちと旅して回ったけど、人と交われば恐れられたり うまく利用されたりと、もうコリゴリだった。そんなある日、聞こえてきたんだ、懐かしい感覚だった。ああ、ドキドキが止まらない。ワクワクしてどうにかなっちゃう。ホントにご主人様なの。『――シロおいで!』うん、待ってて今いくから…… ……異世界で再び出会った僕とシロ。楽しい冒険の始まりである………

きぼうダイアリー  ~三つ目看板猫の平凡で優雅な日常~

矢立まほろ
恋愛
 とある個人経営の小さな喫茶店。  そこには、額に目のような傷がついた黒猫がいた。  名前はソルテ。自由気ままに毎日を生きる元気な男の子。  彼の日常はひどく平凡。  しかし、彼を取り巻く人間達は違う様子。  ある日、「昔の思い人」が自分に当てた暗号のようなメッセージを持った少女が来客する。彼女との奇妙な縁により、平凡だったソルテの日常が、ほんの少し、変わっていく。  他にも、いつまでも深い絆で繋がれている老夫婦や、少女の友人達の恋模様。いろいろな人間達がソルテの周りで生活し、一喜一憂に心を動かしていく。  喫茶店の看板猫からの視点で描かれる、十人十色の群像劇。  ささやかで、けれども大切で、少しほろっとするような、日常ハートフルストーリーがいま、始まります。 ※小説家になろうにて全話先行公開中!  応援よろしくお願いいたします!

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

吾輩はネコである。名前はちび太。

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
キャラ文芸
作家志望の「ご主人様」と、同居するネコの「ちび太」が織りなす へーわでゆるーい日常。 ときどき「いもうと」。 猫の「ちび太」視点です。 しゃべれないけど言葉を解すのでちょっとだけファンタジー。 異世界転生しません。 チートありません。 天狼、ドラゴン、精霊神竜、ロボット倒しません。 荷電粒子砲うちません。

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑) 本編完結しました! 『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル 『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました! おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。 ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです! 第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。 心から、ありがとうございます!

処理中です...