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小話3 子供の日(リーナ視点)
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「屋根より高い鯉のぼり~♪」
折り紙で作った鯉のぼりを手に持って、ヒラヒラさせながらリビングに降りていくとお兄様が満面の笑顔でこちらを見た。両手に何やら紙包みを持っているし、目つきが怪しい。
「お早う。お兄様。何だかキョロキョロしているけど、どうしたの?」
「リーナ、いつもながら可愛いね」
「お兄様……、取り合えずありがとう」
「今日は子供の日なんだよ」
「そうね。だから、折り紙で鯉のぼりを作ってみたの」
「かわいい鯉のぼりだね」
「お兄様、何だかキョロキョロしているわね」
「いや、柏餅はどこかな、って」
そう言いながら、お兄様はコテッと首を傾げて見せた。そんな仕草をされても困る。だって柏餅なんて考えてもなかったから。
5月5日は子供の日。だから鯉のぼりでたい焼き! って思ったのよね~。そういえば柏餅とかチマキが『子供の日』のお菓子だった。
「やっぱり、リーナ、つまみ食いは良くないと思っている?」
「ええ、つまみ食いは良くないわ」
「俺、反省はしているんだ。いつもすみません。お詫びにというか、これ、頑張ってみた、たい焼き」
そう言ってお兄様が差し出した紙包みには金魚? が入っていた。まん丸だけどシッポは丸っこい三角で……、どうみても丸と三角がくっ付いて一応、目とかウロコの形がついているけど、たい焼きにはとても見えない。
「お兄様、これ」
「可愛いだろう。女の子ってプクッって丸いのが好きだし、クロワッサンとアンパンを融合してみたんだ」
「お兄様、まさか!」
「パンの木で作ったんだ。アンコ入りクロワッサン、魚の形にしたからつまり懐かしい、たい焼きだよ」
「す、凄いわね。型に嵌めて作ったみたいに見えるわ」
「あっ、型は頼んで作ってもらったんだ。さすがにそこまではできなくてさ。だから、パンを型にはめて焼いてみたら、魚に見えますって褒められた」
「これ、クロワッサンのパンなのね」
「そうなんだ。まだ誰にも、あっ、型を頼んだ職人は別にして誰にも見せてないから、食べてみて」
「あ、有り難う。いただくわ。あれ、美味しい」
「リーナにはいつもお世話になっているから」
お兄様はちょっと照れくさそうに笑った。でも、この金魚パン、じゃない金魚焼きは本当に美味しい。やっぱりお兄様のパンの木に成ったというのがミソなのね。
「それで、その、リーナ、柏餅は?」
ワォ、お兄様の期待に満ちたお顔がまぶしい。どうしよう。私が作ったのもたい焼きなのよね。
でも、二人ともたい焼きを作ってしまうなんて思考回路が同じみたいで、ちょっと焦る。
私が作ったのはミニたい焼きで中にアンコ、白あん、カスタード、チョコレート、チーズとベーコンがそれぞれに入っているので5つの味が楽しめます、のセットなんだけど、美味しいと思うし、ちゃんとたい焼きの形をしているけど、お兄様の期待を裏切るようで……。と悩んでいると
「リーナ、お早う」
「「おはようございます」」
アルファント殿下が来てしまった。ちょっと、早くない?
「あっ、殿下、お早うございます。早いですね」
「お早うございます。アルファント様」
「ごめん。まだ早いとは思ったんだけど、今日は朝食を一緒に、という話だったから早めに来てみたんだ」
アルファント殿下、約束の時間まであと30分以上はありますけど……。
あっと、朝食会なのに金魚焼きを食べてしまったわ。これ、普通のパンの大きさがあるし……まぁ、半分くらいしか食べてないからいいか。
「リーナ、それは何かな?」
「えっ、これですか? これはお兄様が作った金魚焼き、」
「違いますよ。クロワッサンたい焼きです」
私の手には半分の金魚焼き。私はシッポから食べる派なので頭はわりと残っていたけど、これ、しまってもいいかしら、と思ったら殿下に取られて、アッという間に食べられてしまった。それ、私の食べかけです……。
「美味いな。こんな美味しいものを隠していたなんて」
「違いますよ。今日が初お目見えです。こどもの日だからたい焼きを作ってみました」
「たい焼き?」
「たい焼きです」
「丸に目が付いているから何かと思ったが、たい焼きだったのか」
「シッポもあったんです。シッポの先までアンコいりです。しかもクロワッサンたい焼き」
「確かに餡入りクロワッサンだった。それはそれとして、今日は子供の日だからチマキがあるのかな?」
「チマキ! そっちか」
二人が期待に満ちた顔で私を見た。……
「ごめんなさい。チマキも柏餅もないの。私もたい焼きを作ってしまって」
そう言いながら、ミニたい焼きセットをそっと取り出すと、
「おお、これぞたい焼き」
「わぁ、悔しいけど、見るからにたい焼き。負けた。あっ、チョコレート味だ」
「俺は白あん」
「私はクリーム、これは美味しい、です」
「アンコですね」
「おお、チーズとベーコン、なんて初めて食べた。イケるな」
あっと言う間に5つのたい焼きはアルファント様とお兄様とランディ様と、トーリスト様に食べられてしまった。二つ食べたのはアルファント様だった。
いつの間にか部屋にいたラシーヌ様の哀しそうな視線が気になったけど、後から差し上げるので許してね。
ミニたい焼きは好評で、それぞれにセットを差し上げたら凄く喜ばれた。柏餅とチマキはなかったけど、今度作ります、という事で子供の日の朝食会に向かったのでした。この世界に子供の日はないけどね。
今度、何か前世のイベントでお菓子を作る時は、お兄様とアルファント様の希望を聞いて、いや、ハードルが上がると困るから、お兄様だけにさりげなくリサーチしておこうと思う。
折り紙で作った鯉のぼりを手に持って、ヒラヒラさせながらリビングに降りていくとお兄様が満面の笑顔でこちらを見た。両手に何やら紙包みを持っているし、目つきが怪しい。
「お早う。お兄様。何だかキョロキョロしているけど、どうしたの?」
「リーナ、いつもながら可愛いね」
「お兄様……、取り合えずありがとう」
「今日は子供の日なんだよ」
「そうね。だから、折り紙で鯉のぼりを作ってみたの」
「かわいい鯉のぼりだね」
「お兄様、何だかキョロキョロしているわね」
「いや、柏餅はどこかな、って」
そう言いながら、お兄様はコテッと首を傾げて見せた。そんな仕草をされても困る。だって柏餅なんて考えてもなかったから。
5月5日は子供の日。だから鯉のぼりでたい焼き! って思ったのよね~。そういえば柏餅とかチマキが『子供の日』のお菓子だった。
「やっぱり、リーナ、つまみ食いは良くないと思っている?」
「ええ、つまみ食いは良くないわ」
「俺、反省はしているんだ。いつもすみません。お詫びにというか、これ、頑張ってみた、たい焼き」
そう言ってお兄様が差し出した紙包みには金魚? が入っていた。まん丸だけどシッポは丸っこい三角で……、どうみても丸と三角がくっ付いて一応、目とかウロコの形がついているけど、たい焼きにはとても見えない。
「お兄様、これ」
「可愛いだろう。女の子ってプクッって丸いのが好きだし、クロワッサンとアンパンを融合してみたんだ」
「お兄様、まさか!」
「パンの木で作ったんだ。アンコ入りクロワッサン、魚の形にしたからつまり懐かしい、たい焼きだよ」
「す、凄いわね。型に嵌めて作ったみたいに見えるわ」
「あっ、型は頼んで作ってもらったんだ。さすがにそこまではできなくてさ。だから、パンを型にはめて焼いてみたら、魚に見えますって褒められた」
「これ、クロワッサンのパンなのね」
「そうなんだ。まだ誰にも、あっ、型を頼んだ職人は別にして誰にも見せてないから、食べてみて」
「あ、有り難う。いただくわ。あれ、美味しい」
「リーナにはいつもお世話になっているから」
お兄様はちょっと照れくさそうに笑った。でも、この金魚パン、じゃない金魚焼きは本当に美味しい。やっぱりお兄様のパンの木に成ったというのがミソなのね。
「それで、その、リーナ、柏餅は?」
ワォ、お兄様の期待に満ちたお顔がまぶしい。どうしよう。私が作ったのもたい焼きなのよね。
でも、二人ともたい焼きを作ってしまうなんて思考回路が同じみたいで、ちょっと焦る。
私が作ったのはミニたい焼きで中にアンコ、白あん、カスタード、チョコレート、チーズとベーコンがそれぞれに入っているので5つの味が楽しめます、のセットなんだけど、美味しいと思うし、ちゃんとたい焼きの形をしているけど、お兄様の期待を裏切るようで……。と悩んでいると
「リーナ、お早う」
「「おはようございます」」
アルファント殿下が来てしまった。ちょっと、早くない?
「あっ、殿下、お早うございます。早いですね」
「お早うございます。アルファント様」
「ごめん。まだ早いとは思ったんだけど、今日は朝食を一緒に、という話だったから早めに来てみたんだ」
アルファント殿下、約束の時間まであと30分以上はありますけど……。
あっと、朝食会なのに金魚焼きを食べてしまったわ。これ、普通のパンの大きさがあるし……まぁ、半分くらいしか食べてないからいいか。
「リーナ、それは何かな?」
「えっ、これですか? これはお兄様が作った金魚焼き、」
「違いますよ。クロワッサンたい焼きです」
私の手には半分の金魚焼き。私はシッポから食べる派なので頭はわりと残っていたけど、これ、しまってもいいかしら、と思ったら殿下に取られて、アッという間に食べられてしまった。それ、私の食べかけです……。
「美味いな。こんな美味しいものを隠していたなんて」
「違いますよ。今日が初お目見えです。こどもの日だからたい焼きを作ってみました」
「たい焼き?」
「たい焼きです」
「丸に目が付いているから何かと思ったが、たい焼きだったのか」
「シッポもあったんです。シッポの先までアンコいりです。しかもクロワッサンたい焼き」
「確かに餡入りクロワッサンだった。それはそれとして、今日は子供の日だからチマキがあるのかな?」
「チマキ! そっちか」
二人が期待に満ちた顔で私を見た。……
「ごめんなさい。チマキも柏餅もないの。私もたい焼きを作ってしまって」
そう言いながら、ミニたい焼きセットをそっと取り出すと、
「おお、これぞたい焼き」
「わぁ、悔しいけど、見るからにたい焼き。負けた。あっ、チョコレート味だ」
「俺は白あん」
「私はクリーム、これは美味しい、です」
「アンコですね」
「おお、チーズとベーコン、なんて初めて食べた。イケるな」
あっと言う間に5つのたい焼きはアルファント様とお兄様とランディ様と、トーリスト様に食べられてしまった。二つ食べたのはアルファント様だった。
いつの間にか部屋にいたラシーヌ様の哀しそうな視線が気になったけど、後から差し上げるので許してね。
ミニたい焼きは好評で、それぞれにセットを差し上げたら凄く喜ばれた。柏餅とチマキはなかったけど、今度作ります、という事で子供の日の朝食会に向かったのでした。この世界に子供の日はないけどね。
今度、何か前世のイベントでお菓子を作る時は、お兄様とアルファント様の希望を聞いて、いや、ハードルが上がると困るから、お兄様だけにさりげなくリサーチしておこうと思う。
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