99 / 103
小話1 初めてのバレンタイン(リーナ視点)
しおりを挟む
「リーナ、何作ってんの?」
「もう、お兄様、内緒だからこっちに来ちゃだめよ」
「だって匂いでバレバレだよ」
「わかっていても知らないふりをするのが大人なのよ」
「こっちの世界じゃ成人だけど、あっちの世界じゃまだまだ子供」
「しょうがないわねぇ」
お兄様はウキウキした顔で厨房に入って来た。味見をする気満々で顔が緩んでいる。私が作っているのはハート形のチョコレート。そのハートにアイシングでまた小さなハートを飛ばしている。
「あれ、文字は書かないの?」
「文字?」
「アイラブユー」
「もう、お兄様のバカ! そんなの恥ずかしいじゃない」
「いや、俺のチョコはハートでなくて爆弾型でいいけど。沢山食べられるし。でも、殿下にあげるのは《アイラブユー》だろう。殿下、最近ソワソワして楽しみにしているみたいだ」
「お兄様、殿下にばらしたの?」
「いや、両想いになって初めてのバレンタインだからもらえるんじゃないかって、期待してるみたいだから」
「この国にバレンタインはないのよ」
「無いけど、「来週は2月14日か、後6日だな……」って呟いていたから」
「えっ、そうなの?」
「鼻歌歌っていたし。無意識に」
「まぁ、そうなのね。あっ、お兄様、これ上げる」
「えっ、ウソ」
お兄様は食いしんぼうのくせに、ちょっとショックな顔をした。ハートが見事に真ん中からギザギザに割れたチョコレートは失敗作なので溶かして再利用しようかと思ったけど、ちょうどいいからオヤツに半分ずつ食べる事にした。
「リーナ、これ、縁起が悪くない?」
「大丈夫よ。ただのチョコレートだから。さっき、爆弾型のチョコレートが食べたいって言っていたじゃない? これは爆弾でハートブレイクになったチョコよ」
「いや、そっちのほうが酷い」
結局、殿下への初めてのバレンタインチョコは裏側に小さくLOVE♡YOUと描いてみた。だって、恥ずかしかったから。
チョコを渡した時にアルファント殿下が凄く喜んでくれたから、絶対に人に見せないでくださいね、と念押ししてたのに……。
お兄様から
「裏にこっそりLOVE♡YOUと描いてあったんだ。恥ずかしがり屋なリーナらしいよね。愛されてるなぁ」
と殿下が喜んで吹聴していたと言うのを聞いて、口止めするのを忘れたことに気づいて凄く恥ずかしかった。だので、来年はしっかりと口止めする事にしよう、と心に誓った。
でも、アルファント殿下、大好き。
「もう、お兄様、内緒だからこっちに来ちゃだめよ」
「だって匂いでバレバレだよ」
「わかっていても知らないふりをするのが大人なのよ」
「こっちの世界じゃ成人だけど、あっちの世界じゃまだまだ子供」
「しょうがないわねぇ」
お兄様はウキウキした顔で厨房に入って来た。味見をする気満々で顔が緩んでいる。私が作っているのはハート形のチョコレート。そのハートにアイシングでまた小さなハートを飛ばしている。
「あれ、文字は書かないの?」
「文字?」
「アイラブユー」
「もう、お兄様のバカ! そんなの恥ずかしいじゃない」
「いや、俺のチョコはハートでなくて爆弾型でいいけど。沢山食べられるし。でも、殿下にあげるのは《アイラブユー》だろう。殿下、最近ソワソワして楽しみにしているみたいだ」
「お兄様、殿下にばらしたの?」
「いや、両想いになって初めてのバレンタインだからもらえるんじゃないかって、期待してるみたいだから」
「この国にバレンタインはないのよ」
「無いけど、「来週は2月14日か、後6日だな……」って呟いていたから」
「えっ、そうなの?」
「鼻歌歌っていたし。無意識に」
「まぁ、そうなのね。あっ、お兄様、これ上げる」
「えっ、ウソ」
お兄様は食いしんぼうのくせに、ちょっとショックな顔をした。ハートが見事に真ん中からギザギザに割れたチョコレートは失敗作なので溶かして再利用しようかと思ったけど、ちょうどいいからオヤツに半分ずつ食べる事にした。
「リーナ、これ、縁起が悪くない?」
「大丈夫よ。ただのチョコレートだから。さっき、爆弾型のチョコレートが食べたいって言っていたじゃない? これは爆弾でハートブレイクになったチョコよ」
「いや、そっちのほうが酷い」
結局、殿下への初めてのバレンタインチョコは裏側に小さくLOVE♡YOUと描いてみた。だって、恥ずかしかったから。
チョコを渡した時にアルファント殿下が凄く喜んでくれたから、絶対に人に見せないでくださいね、と念押ししてたのに……。
お兄様から
「裏にこっそりLOVE♡YOUと描いてあったんだ。恥ずかしがり屋なリーナらしいよね。愛されてるなぁ」
と殿下が喜んで吹聴していたと言うのを聞いて、口止めするのを忘れたことに気づいて凄く恥ずかしかった。だので、来年はしっかりと口止めする事にしよう、と心に誓った。
でも、アルファント殿下、大好き。
0
お気に入りに追加
717
あなたにおすすめの小説

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。

「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~
土偶の友
ファンタジー
龍を狩る者、龍脈衆のセレットは危険な龍が湧く場所――龍脈で毎日何十体と龍を狩り、国と城の安全を守っていた。
しかし「サボっているのだろう?」と彼は私利私欲のために龍脈を利用したい者達に無実の罪を着せられて追放されてしまう。
絶望に暮れて追放されている時に助けてくれたのは幼馴染のアイシャだった。「私と一緒に帝国に亡命しない?」彼女に助けられ請われる形で実力主義の帝国に行く。
今まで人前に晒されていなかったセレットの力が人の目に見られ、その実力が評価される。何十人と集まり、連携を深め、時間をかけて倒す龍を一撃で切り裂いていくセレットの実力は規格外だった。
亡命初日に上級騎士、そして、彼のために作られた龍騎士という称号も得て人々から頼りにされていく。
その一方でセレットを追放した前の国は、龍脈から龍が溢れて大事件に。首謀者たちはその責任を取らされて落ちぶれていくのだった。
これはいいように使われていた最強の龍脈衆が、最高最強の龍騎士になる物語。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる