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番外編③ 双子15歳 過保護(リーナ視点)
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今年の夏は暑い。
けれど王宮のアチコチには氷の彫像が立っているので、結構涼しい。
家族は皆、水魔法が使えるので子供たちが色々な氷の像を作ってまわっている。魔法の訓練にもなるし、皆が喜ぶのでまぁ、良いかな、と思う。
そう、私の子供は皆、水魔法が使える。双子が小さい頃から魔法を使いまくっていたせいで、下の子たちも自然と魔法を使うようになってしまい、まだ次女は11歳で3男は8歳なのに魔法を使いこなしている。困った事に。
「お母様、シャワーのようにお水を出したら虹ができたの。でもお姉さまのように虹に乗れない」
「そうね。普通は虹に乗る事はできないのよ」
「ええっ、私もルク兄さまとリル姉さまみたいにアチコチ行ってみたいのに」
「僕も行きたい」
「二人はまだ駄目よ。外に出たいならきちんと身を守れるようにならないと」
「護身術はよくできた、と言われるわ」
「僕も」
「大人の兵士、ううん、指南役の方に余裕で勝てるようになったら、お父様に頼んであげるわ」
「やったー。がんばる」
「ワーイ」
でも……、この二人は普通の子供なのでそんなに強くはならないと思う。
長男のアクティースも含めて、次女と3男の魔力はとても多いけど普通の範疇に入る。でも、双子は規格外に育ってしまった。4月生まれのせいだろうか。
双子はもう15歳。ルクスは『水魔法の加護』と『植物の加護』を持ち、リィールウは『水魔法の加護』と『虹の加護』を持つ。
特にリルが魔法を使うと桜の花びらが浮かぶのがなんとも言えない。加護の他にも何かあるような気がして。
二人はアークお兄様が大好きでいつも纏わりついている。子供でなければまるでストーカーのような、でも、もう15歳だからいい加減、お兄様離れをしてもらわなくては。
お兄様もいつも困った顔をしているし。
それにしても、外は暑いらしい。「ユラユラと陽炎が立っているそうです」と侍女が教えてくれた。
私は水の障壁を張る事ができるのでその障壁の温度を少しだけ下げるととても快適。
動くエアコンを完備しているようなものだけど、前の世界でもこんな事は出来なかったので「魔法万歳」なんて思ってしまう。
アルファントもお仕事中は私が水の障壁を張っているから他の人達よりも快適な状態になっているはず。
「ねぇ、リーナ。涼しそうな顔をしているけど、いつもエアコンをつけっぱなしだと身体に良くないよ。どうしても暑くてたまらない時だけ使ったほうが良いかもしれない」
「そうね。たしかに少し暑さが和らぐ程度のほうが身体にいいかもね」
アルファントのご要望に応えて障壁の温度を上げてみた。
「暑いよ。もう少し下げて」
「涼しいのは身体に良くないんじゃないの?」
「ごめん。涼しいほうが作業能率が上がるから、温度下げて、お願い」
お願いされたので温度を少し下げた。羨ましそうにしている側近の皆さまの近くに氷の彫像をいくつか増やすと、感謝されたけど、私の水の障壁は年中無休で稼働できるので、身体に感じる温度差は無しにできるし問題ないんじゃないかなって思う。
暑いのであまり外に出ている人はいないのに、内庭にいるお兄様を見つけた。どうやら、王宮神殿にお参りしてきたらしい。
「お兄様、良かったら冷たいプリンアラモードはいかが? ソフトクリームを乗せているの」
「わお、嬉しいね。ソフトクリーム大好き。かき氷も好きだけど」
「かき氷も出すわね。でも、お兄様についている障壁を解除したほうが美味しく食べられると思うわ」
「そうだね。よし、解除」
お兄様は水の障壁に守られているけど、これは双子が代わりばんこに張っている。私が張ってもいいんだけど、
「お母様は大事なお父様を守らなくてはいけないでしょう。アーク兄さまは私達が守るから」
「僕らが守る」
と言って、二人は喜々としてお兄様に障壁を重ね掛けしている。お兄様は最初、やんわりとそれから、かなり抵抗して断っていたけど結局折れてしまった。お兄様は双子、いえ、子供たちにかなり甘い。
「アーク兄さま、大丈夫!?」
「どうした? 何があった?」
双子、登場。お兄様の障壁が無くなると直ぐにこの二人が飛んでくる。
「もう、二人とも過保護ね。冷たいモノを食べるのに、涼しい障壁があると邪魔でしょう? だから解除したのよ」
「何だ~。何か、あったのかと思った」
「良かったわ。無事で」
「いや、君たち、俺はもういい大人なんだから」
「アーク兄さまは大人だけど、何処か抜けているから心配なの」
「俺たちで守らないと」
お兄様は微妙な顔をしていた。確かに何れは最強の龍王になるらしいけど、今は特別、強いわけではないし、異次元に行くときは護衛をつけている。けど、ねぇ……。
「アーク兄さま、明日から異次元にいくんでしょう?」
「ああ、その予定」
「今回はどのくらい行くの?」
「えーと、1か月ぐらいかな」
「護衛は?」
「ブラックさんとグリーンさん」
「じゃぁ、安心だ」
「そうね。でも、心配だから水の障壁は解除しないでね。4月ぐらいの温度にしとくから」
「有り難う。いつも悪いね」
「どういたしまして。異次元に行っても水の障壁が消えないのは良かった」
「本当だよ」
「でもね、君たち、障壁が消えても異次元には来ないでね」
「大丈夫」
「うん。障壁が消えなければ大丈夫」
もう、お兄様が困った顔をしている。
これで水の障壁を消す事は出来ないわね。でも、障壁があったほうがいざという時に安心だからその点は良いと思うけど。
本当にこの双子はお兄様に過保護。
けれど王宮のアチコチには氷の彫像が立っているので、結構涼しい。
家族は皆、水魔法が使えるので子供たちが色々な氷の像を作ってまわっている。魔法の訓練にもなるし、皆が喜ぶのでまぁ、良いかな、と思う。
そう、私の子供は皆、水魔法が使える。双子が小さい頃から魔法を使いまくっていたせいで、下の子たちも自然と魔法を使うようになってしまい、まだ次女は11歳で3男は8歳なのに魔法を使いこなしている。困った事に。
「お母様、シャワーのようにお水を出したら虹ができたの。でもお姉さまのように虹に乗れない」
「そうね。普通は虹に乗る事はできないのよ」
「ええっ、私もルク兄さまとリル姉さまみたいにアチコチ行ってみたいのに」
「僕も行きたい」
「二人はまだ駄目よ。外に出たいならきちんと身を守れるようにならないと」
「護身術はよくできた、と言われるわ」
「僕も」
「大人の兵士、ううん、指南役の方に余裕で勝てるようになったら、お父様に頼んであげるわ」
「やったー。がんばる」
「ワーイ」
でも……、この二人は普通の子供なのでそんなに強くはならないと思う。
長男のアクティースも含めて、次女と3男の魔力はとても多いけど普通の範疇に入る。でも、双子は規格外に育ってしまった。4月生まれのせいだろうか。
双子はもう15歳。ルクスは『水魔法の加護』と『植物の加護』を持ち、リィールウは『水魔法の加護』と『虹の加護』を持つ。
特にリルが魔法を使うと桜の花びらが浮かぶのがなんとも言えない。加護の他にも何かあるような気がして。
二人はアークお兄様が大好きでいつも纏わりついている。子供でなければまるでストーカーのような、でも、もう15歳だからいい加減、お兄様離れをしてもらわなくては。
お兄様もいつも困った顔をしているし。
それにしても、外は暑いらしい。「ユラユラと陽炎が立っているそうです」と侍女が教えてくれた。
私は水の障壁を張る事ができるのでその障壁の温度を少しだけ下げるととても快適。
動くエアコンを完備しているようなものだけど、前の世界でもこんな事は出来なかったので「魔法万歳」なんて思ってしまう。
アルファントもお仕事中は私が水の障壁を張っているから他の人達よりも快適な状態になっているはず。
「ねぇ、リーナ。涼しそうな顔をしているけど、いつもエアコンをつけっぱなしだと身体に良くないよ。どうしても暑くてたまらない時だけ使ったほうが良いかもしれない」
「そうね。たしかに少し暑さが和らぐ程度のほうが身体にいいかもね」
アルファントのご要望に応えて障壁の温度を上げてみた。
「暑いよ。もう少し下げて」
「涼しいのは身体に良くないんじゃないの?」
「ごめん。涼しいほうが作業能率が上がるから、温度下げて、お願い」
お願いされたので温度を少し下げた。羨ましそうにしている側近の皆さまの近くに氷の彫像をいくつか増やすと、感謝されたけど、私の水の障壁は年中無休で稼働できるので、身体に感じる温度差は無しにできるし問題ないんじゃないかなって思う。
暑いのであまり外に出ている人はいないのに、内庭にいるお兄様を見つけた。どうやら、王宮神殿にお参りしてきたらしい。
「お兄様、良かったら冷たいプリンアラモードはいかが? ソフトクリームを乗せているの」
「わお、嬉しいね。ソフトクリーム大好き。かき氷も好きだけど」
「かき氷も出すわね。でも、お兄様についている障壁を解除したほうが美味しく食べられると思うわ」
「そうだね。よし、解除」
お兄様は水の障壁に守られているけど、これは双子が代わりばんこに張っている。私が張ってもいいんだけど、
「お母様は大事なお父様を守らなくてはいけないでしょう。アーク兄さまは私達が守るから」
「僕らが守る」
と言って、二人は喜々としてお兄様に障壁を重ね掛けしている。お兄様は最初、やんわりとそれから、かなり抵抗して断っていたけど結局折れてしまった。お兄様は双子、いえ、子供たちにかなり甘い。
「アーク兄さま、大丈夫!?」
「どうした? 何があった?」
双子、登場。お兄様の障壁が無くなると直ぐにこの二人が飛んでくる。
「もう、二人とも過保護ね。冷たいモノを食べるのに、涼しい障壁があると邪魔でしょう? だから解除したのよ」
「何だ~。何か、あったのかと思った」
「良かったわ。無事で」
「いや、君たち、俺はもういい大人なんだから」
「アーク兄さまは大人だけど、何処か抜けているから心配なの」
「俺たちで守らないと」
お兄様は微妙な顔をしていた。確かに何れは最強の龍王になるらしいけど、今は特別、強いわけではないし、異次元に行くときは護衛をつけている。けど、ねぇ……。
「アーク兄さま、明日から異次元にいくんでしょう?」
「ああ、その予定」
「今回はどのくらい行くの?」
「えーと、1か月ぐらいかな」
「護衛は?」
「ブラックさんとグリーンさん」
「じゃぁ、安心だ」
「そうね。でも、心配だから水の障壁は解除しないでね。4月ぐらいの温度にしとくから」
「有り難う。いつも悪いね」
「どういたしまして。異次元に行っても水の障壁が消えないのは良かった」
「本当だよ」
「でもね、君たち、障壁が消えても異次元には来ないでね」
「大丈夫」
「うん。障壁が消えなければ大丈夫」
もう、お兄様が困った顔をしている。
これで水の障壁を消す事は出来ないわね。でも、障壁があったほうがいざという時に安心だからその点は良いと思うけど。
本当にこの双子はお兄様に過保護。
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