91 / 103
91. 聖女
しおりを挟む
「殿下はもう大丈夫なのですか?」
ランディ様の心配そうな声に
「大事無い。不覚を取ってしまった」
「私も役に立たず……」
「いや、あれは想定外だし、しょうがない」
殿下の声も普通に戻って一安心。
「いや、本当に安心した」
「本当だよ。あの威力の『水魔法の加護』の上位版が悪い奴に移ると考えたら恐ろしい」
「良かった」
「良かったです」
皆が安心したのかホッとしたような空気が流れた。そっと、殿下にポーション入りのリンゴジュースを出してあげた。
「美味しい。ありがとう。リーナ。もう、どうなる事かと思って、正直、怖かった」
「どういたしまして」
「本当に良かった。君を失わずに済んで。もっとも、いざとなればリーナを連れて逃げるつもりだった」
「そうじゃないかと思っていました。良かったです。聖女があんなのでなくて」
ランディ様の声に殿下は静かに肯いた。殿下、本当に私の事、その、す、好きなのですね。嬉しい。そっとアイテムボックスから聖女の杖を取り出すと、杖は喜んで光り輝いた。私の気持ちが伝わったようだ。
「リーナ!」
「リーナ様」
「おお、聖女の杖だ」
どこからどう見ても枝なんだけど、ピカピカと輝いている杖は空中に浮くと、私の周りをクルクルと回った。
枝からの嬉しい、よろしく、との気持ちが流れ込んでくる。
そして、私は聖女に成った。
と同時に髪の色が七色に輝きレインボーカラーの髪色になった。金髪が七色に輝きピカピカしている。これはない! 私の髪がまるでイルミネーション。
「ウソ! ありえない髪色」
「おおー、久々に見る聖女の髪。でもちょっと、光り過ぎ!」
「いや、虹色の髪はいいけど、なんでそんなにピカピカしているんだ?」
「聖女の杖が張り切っているせいじゃないか」
「リーナ、きれいだ」
アルファント殿下、可笑しい! どうしてこの髪で綺麗なんて言えるの!? ピカピカなのよ!
「リーナ! 聖女の杖に光るのは止めて! って言えば」
「ピカピカ、止めて!」
ピカピカ光っていた私の髪は落ち着いたレインボーカラーに変わった。虹色は変わらないのね。聖女がお役目の後、直ぐ引退する訳が分かったわ。こんな髪だと凄く落ち着かない。
「あーっ、動揺している所、悪いが魔王、じゃない魔女を封印してくれるか」
「封印、どうやって?」
「聖女の杖持って〈封〉っていえば杖が何とかしてくれる」
「〈伐〉でもいいけど、取り合えず動かなくしてほしい。また、何かされると困るし」
ブラックさんの言葉を受けて聖女の杖に
「お任せします。あの二人、動けなくしてください」
と頼むと茶ピンクさんが呆けてこちらを見ていたのが大声で喚きだした。
「何よ! なんで聖女の杖があんたんとこにあるの!」
(なんで、ピカピカ!?)
「私が聖女よ! 私が聖女に成るの!」
(違う! あたし!)
聖女の杖がまたピカピカと輝き、茶ピンクさんのところに飛んでいくと王座? の周りをクルクル回りだした。
すると、これまでは茶ピンクさんだけが見えていたのに、ピンクさんが重なって見えだして、最終的には王座の前に立っている二人の表は茶ピンクさん、裏はピンクさんというように背中同士がくっ付いた状態になってしまった。
二人は一体だけど、お互いは見えない。これは、……見えなくても同化しているほうが良かったかもしれない。
見ているうちに二人は凍り付いて氷像になってしまった。ただし、まだ、顔の部分はそのままで凍っていない。
「何よ! これ! どういう事!?」
「やだ! なんで氷!」
「君たちはこれまでの行いの報いを受けている。その、君たちの魂はかなり濁っているから今世だけでなく、前世やその前も悪行を重ねているんじゃないかな」
「本来なら、氷で封印された後はその精神だけは転生できるんだが、無理だな」
「イヤよ! 助けて!」
「その魂の濁りが薄れたら、また輪廻の輪に入れると思う」
「イヤよ! どうしろというの!」
「反省して良い行いをシミュレーション?」
「何よ! 悪い事なんか何もしてない!」
「ウソ! 自覚ないの! 君たち、二人とも凄い濁りだよ。ああ、もう封印してしまったほうが良いか?」
「色々聞き出さなくていいのか?」
「いや、もう封じてしまえば悪さはできないし」
という事で申し訳ない気もするけど、お二人を完全に氷像にしてしまった。ちょうど喚いていたのでひどい顔で固まってしまったのは気の毒だと思う。
「フゥー、これで一旦片付いた。さて、異次元との裂け目だけど、どうする? 完全に塞ぐか?」
「どうしましょう? アルファント殿下?」
「うーん。俺らだけでは判断がつかないな。陛下とノヴァ神官に相談するか」
「お二人とも、驚くでしょうね。リーナ様の髪色を見て。でも、喜ばしい事です。これで殿下も王太子に」
「ランディ!」
「あの、聖女と王太子の関係って?」
「いや、リーナが気にする事は」
「殿下! いつまでも内緒にしていないで、打ち明けるべきです」
「そうだな。でも、それは場所を変えて」
「そうですね」
「その前にさっきアイツら、いや、茶ピンクだったか、あれが飛ばした魔物を片付けておかないと」
「それは一応、穴を塞いだので今は出て来てないようですが」
「いや、あれは仮止めのようなものだから完全に塞いでしまわないといけないと思う」
「仮止め、ですか?」
「リーナ、俺、お腹空いちゃたよ」
「もう、お兄様ったら」
お兄様は通常運転。色々あって、何か食べたくなったのね。
でも、突然、突然にお兄様が光った。そして
「リーナ!」
と一声、叫ぶと消えてしまった。跡形もなく。
ウソ! お兄様、何処へ消えたの?!
ランディ様の心配そうな声に
「大事無い。不覚を取ってしまった」
「私も役に立たず……」
「いや、あれは想定外だし、しょうがない」
殿下の声も普通に戻って一安心。
「いや、本当に安心した」
「本当だよ。あの威力の『水魔法の加護』の上位版が悪い奴に移ると考えたら恐ろしい」
「良かった」
「良かったです」
皆が安心したのかホッとしたような空気が流れた。そっと、殿下にポーション入りのリンゴジュースを出してあげた。
「美味しい。ありがとう。リーナ。もう、どうなる事かと思って、正直、怖かった」
「どういたしまして」
「本当に良かった。君を失わずに済んで。もっとも、いざとなればリーナを連れて逃げるつもりだった」
「そうじゃないかと思っていました。良かったです。聖女があんなのでなくて」
ランディ様の声に殿下は静かに肯いた。殿下、本当に私の事、その、す、好きなのですね。嬉しい。そっとアイテムボックスから聖女の杖を取り出すと、杖は喜んで光り輝いた。私の気持ちが伝わったようだ。
「リーナ!」
「リーナ様」
「おお、聖女の杖だ」
どこからどう見ても枝なんだけど、ピカピカと輝いている杖は空中に浮くと、私の周りをクルクルと回った。
枝からの嬉しい、よろしく、との気持ちが流れ込んでくる。
そして、私は聖女に成った。
と同時に髪の色が七色に輝きレインボーカラーの髪色になった。金髪が七色に輝きピカピカしている。これはない! 私の髪がまるでイルミネーション。
「ウソ! ありえない髪色」
「おおー、久々に見る聖女の髪。でもちょっと、光り過ぎ!」
「いや、虹色の髪はいいけど、なんでそんなにピカピカしているんだ?」
「聖女の杖が張り切っているせいじゃないか」
「リーナ、きれいだ」
アルファント殿下、可笑しい! どうしてこの髪で綺麗なんて言えるの!? ピカピカなのよ!
「リーナ! 聖女の杖に光るのは止めて! って言えば」
「ピカピカ、止めて!」
ピカピカ光っていた私の髪は落ち着いたレインボーカラーに変わった。虹色は変わらないのね。聖女がお役目の後、直ぐ引退する訳が分かったわ。こんな髪だと凄く落ち着かない。
「あーっ、動揺している所、悪いが魔王、じゃない魔女を封印してくれるか」
「封印、どうやって?」
「聖女の杖持って〈封〉っていえば杖が何とかしてくれる」
「〈伐〉でもいいけど、取り合えず動かなくしてほしい。また、何かされると困るし」
ブラックさんの言葉を受けて聖女の杖に
「お任せします。あの二人、動けなくしてください」
と頼むと茶ピンクさんが呆けてこちらを見ていたのが大声で喚きだした。
「何よ! なんで聖女の杖があんたんとこにあるの!」
(なんで、ピカピカ!?)
「私が聖女よ! 私が聖女に成るの!」
(違う! あたし!)
聖女の杖がまたピカピカと輝き、茶ピンクさんのところに飛んでいくと王座? の周りをクルクル回りだした。
すると、これまでは茶ピンクさんだけが見えていたのに、ピンクさんが重なって見えだして、最終的には王座の前に立っている二人の表は茶ピンクさん、裏はピンクさんというように背中同士がくっ付いた状態になってしまった。
二人は一体だけど、お互いは見えない。これは、……見えなくても同化しているほうが良かったかもしれない。
見ているうちに二人は凍り付いて氷像になってしまった。ただし、まだ、顔の部分はそのままで凍っていない。
「何よ! これ! どういう事!?」
「やだ! なんで氷!」
「君たちはこれまでの行いの報いを受けている。その、君たちの魂はかなり濁っているから今世だけでなく、前世やその前も悪行を重ねているんじゃないかな」
「本来なら、氷で封印された後はその精神だけは転生できるんだが、無理だな」
「イヤよ! 助けて!」
「その魂の濁りが薄れたら、また輪廻の輪に入れると思う」
「イヤよ! どうしろというの!」
「反省して良い行いをシミュレーション?」
「何よ! 悪い事なんか何もしてない!」
「ウソ! 自覚ないの! 君たち、二人とも凄い濁りだよ。ああ、もう封印してしまったほうが良いか?」
「色々聞き出さなくていいのか?」
「いや、もう封じてしまえば悪さはできないし」
という事で申し訳ない気もするけど、お二人を完全に氷像にしてしまった。ちょうど喚いていたのでひどい顔で固まってしまったのは気の毒だと思う。
「フゥー、これで一旦片付いた。さて、異次元との裂け目だけど、どうする? 完全に塞ぐか?」
「どうしましょう? アルファント殿下?」
「うーん。俺らだけでは判断がつかないな。陛下とノヴァ神官に相談するか」
「お二人とも、驚くでしょうね。リーナ様の髪色を見て。でも、喜ばしい事です。これで殿下も王太子に」
「ランディ!」
「あの、聖女と王太子の関係って?」
「いや、リーナが気にする事は」
「殿下! いつまでも内緒にしていないで、打ち明けるべきです」
「そうだな。でも、それは場所を変えて」
「そうですね」
「その前にさっきアイツら、いや、茶ピンクだったか、あれが飛ばした魔物を片付けておかないと」
「それは一応、穴を塞いだので今は出て来てないようですが」
「いや、あれは仮止めのようなものだから完全に塞いでしまわないといけないと思う」
「仮止め、ですか?」
「リーナ、俺、お腹空いちゃたよ」
「もう、お兄様ったら」
お兄様は通常運転。色々あって、何か食べたくなったのね。
でも、突然、突然にお兄様が光った。そして
「リーナ!」
と一声、叫ぶと消えてしまった。跡形もなく。
ウソ! お兄様、何処へ消えたの?!
2
お気に入りに追加
719
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄感謝します!~え!?なんだか思ってたのと違う~
あゆむ
ファンタジー
ラージエナ王国の公爵令嬢である、シーナ・カルヴァネルには野望があった。
「せっかく転生出来たんだし、目一杯楽しく生きなきゃ!!」
だがどうやらこの世界は『君は儚くも美しき華』という乙女ゲームで、シーナが悪役令嬢、自分がヒロインらしい。(姉談)
シーナは婚約破棄されて国外追放になるように努めるが……
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる