90 / 103
90. 水魔法の加護
しおりを挟む
「アルファント、アルファント殿下!」
倒れてしまった殿下の顔色は真っ青で息も荒く、今にも息絶えてしまいそうに見える。
グリーンさんとブラックさんが慌てて駆け寄ってきて
「何故、これが!?」
「魔族が使う薄杯の毒網じゃないか、こんなもの、なんで残っていたんだ! これは治癒が効かないぞ」
「解毒薬がいる」
そう言うと、二人はお互いの顔を見て頷いた。
「ほほっ、奪い取ろうとしても無駄よ! この解毒薬、私が使わないと効果がでないわ! 契約しているのだから! さぁ、この石板に宣誓して! そして、私に渡しなさい。そうしたら解毒薬を投げてあげる」
「本当に解毒薬を渡すという保証はどこにある!」
「私だって、ハッピーエンドのほうがいいわ。アル殿下と結ばれるのはこの私! アル殿下は聖女が相手でないと結婚できないんだから、私が本当の聖女になるのよ!」
(ちがう~! 聖女はあたし!)
「本当の聖女!?」
「水魔法の加護が要るのよ! 魔女ルートだとリーナから水魔法の加護を取らないと本当の聖女にはなれないし。私、知っているんだから。アル殿下が聖女と結ばれないと、この国が亡ぶかもしれないって!」
「何だと!」
「こんな事をして聖女になれると思うのか!」
「なれるわよ! この国は聖女を必要としている。そして、聖女はこの私! 大事にせざるを得ないわ!」
(聖女はあたしよ!)
「もう、煩いわね。亡霊のくせして」
(亡霊じゃない! ここにいるのに!)
「完全な聖女になったらアンタもお祓いしてお払い箱よ! ふふっ」
(何がオカシイのよ!)
「フン。とにかくこの石板に向かって宣誓しなさい」
そう言うと、茶ピンクさんはどこからか出してきた石板を投げつけてきた。石板は私に向かってフヨフヨと飛んできて目の前でピタリと止まった。その石板には
【リーナ・アプリコットの持っている『水魔法の加護』をキミカ・タチワルーイに渡す。キミカ・タチワルーイの持っている『探し物の加護』をリーナ・アプリコットに渡す。これは双方の同意の元に行われる。魔王の名の元に宣誓されたこの約束を覆らす事はできない】
と刻まれていた。
「さあ、早く読み上げて!」
「止めろ! これは魔族の古代宣誓書だ!」
「こんなものまで持っていたのか!」
「さぁ、早くしないとアル殿下、死んじゃうかもね。その毒は魔族のものだから、この解毒薬じゃないと、助からないわ。人間にはきついはずよ」
「殿下! 治癒を使えば!」
「治癒の加護は本人には使えないのよ! ホホホッ! さあ、リーナ、早く!」
「リーナ・アプリコットの持っている『水魔法の加護』をキミカ・タチワルーイに渡す。キミカ・タチワルーイの持っている『探し物の加護』をリーナ・アプリコットに渡す。これは双方の同意の元に行われる。魔王の名の元に宣誓されたこの約束を覆らす事はできない」
私がその文言を読み上げたと同時に石板が眩く光った。そして、光を帯びたまま又、フヨフヨと茶ピンクさんの元に戻っていく。
「ホホホッ! やったわ!」
そう言うと、茶ピンクさんは嬉しそうにその文言を読み上げた、と同時に茶ピンクさんの身体が光った。そして、
「ほら! アル殿下を助けてあげて!」
そういうと、解毒剤をこちらに投げてきた。急いで、その解毒剤を殿下に飲ませると、息も絶え絶えだった殿下の顔色が赤味を帯びて息遣いも元に戻ってきた。でも、
「どうして、『水魔法の加護』を渡してしまったんだ……、あんなに頑張ってレベルを上げたのに、俺の為に……不甲斐ない」
アルファント殿下が泣いている。
グリーンさんとブラックさんも沈痛な顔でまるでお通夜のような雰囲気になった。
「ホッホーッホ! さぁ! 魔法にレベルはないけど、使いこんでいるみたいね。どうなのかしら~楽しみ♪」
(あたしの水魔法~)
「煩いわね。もうこの拘束も水魔法があれば、というかまずは正式な聖女にならなくては」
茶ピンクさんが煩い。でも、茶ピンクさんの『探し物の加護』は私の所に来たみたい。古代宣誓書もこの探し物の加護で手に入れたのかもしれない。
「えーと、大丈夫ですよ。リーナの加護は取られていませんから」
お兄様の能天気な声が響いた。
「オーホッホ! 何を言っているのやら! もう、アークに水鉄砲! えっ! あれ! 加護を覚えたばかりは発動できないのかしら。『探し物の加護』はないわ。『水魔法の加護』はどこ? どこにあるの? まさか、フレグランス!? あんたんとこに行った?!」
「見つかるはずないよ。リーナは『水魔法の加護』なんて持ってないから」
「へっ」
「「「えっ、えっー」」」
「リーナ、水魔法の加護じゃないのか」
「そう、水魔法の加護の上位互換の加護ですよ。進化したんです」
「良かった」
「そうか、凄かったものな」
「安心しました」
「ウソーっ、どうして! どうしてなの! 卑怯者! ウソつき!」
(ウソつき!」
お兄様、流石です。いつも口が軽い! 何て思っていてごめんなさい。そう、『液体の加護』は『水魔法の加護』の進化系なんです。
「進化系なら『水魔法の加護』という名前のはずよ! なんで加護が来ないのよ!」
「進化と共に名称が変化したんだ。その名称は悪用されるといけないから教えない」
「うそ! うそよ! ズルいわ! 私の加護を返して!」
泣きわめく茶ピンクさんと安堵のあまりその場に崩れ落ちたり、茫然と立っている皆さん。お兄様だけはとても嬉しそう。
そうね。あの石板の文言、他の人にはとんでもない内容に見えただろうけど、お兄様は内心、やった~とでも思っていたのね。
私の加護、『液体の加護』で良かった。
『水魔法の加護』と名称も全然掠らないんですもの。
殿下も助かって本当に良かった。
神様、感謝します。
倒れてしまった殿下の顔色は真っ青で息も荒く、今にも息絶えてしまいそうに見える。
グリーンさんとブラックさんが慌てて駆け寄ってきて
「何故、これが!?」
「魔族が使う薄杯の毒網じゃないか、こんなもの、なんで残っていたんだ! これは治癒が効かないぞ」
「解毒薬がいる」
そう言うと、二人はお互いの顔を見て頷いた。
「ほほっ、奪い取ろうとしても無駄よ! この解毒薬、私が使わないと効果がでないわ! 契約しているのだから! さぁ、この石板に宣誓して! そして、私に渡しなさい。そうしたら解毒薬を投げてあげる」
「本当に解毒薬を渡すという保証はどこにある!」
「私だって、ハッピーエンドのほうがいいわ。アル殿下と結ばれるのはこの私! アル殿下は聖女が相手でないと結婚できないんだから、私が本当の聖女になるのよ!」
(ちがう~! 聖女はあたし!)
「本当の聖女!?」
「水魔法の加護が要るのよ! 魔女ルートだとリーナから水魔法の加護を取らないと本当の聖女にはなれないし。私、知っているんだから。アル殿下が聖女と結ばれないと、この国が亡ぶかもしれないって!」
「何だと!」
「こんな事をして聖女になれると思うのか!」
「なれるわよ! この国は聖女を必要としている。そして、聖女はこの私! 大事にせざるを得ないわ!」
(聖女はあたしよ!)
「もう、煩いわね。亡霊のくせして」
(亡霊じゃない! ここにいるのに!)
「完全な聖女になったらアンタもお祓いしてお払い箱よ! ふふっ」
(何がオカシイのよ!)
「フン。とにかくこの石板に向かって宣誓しなさい」
そう言うと、茶ピンクさんはどこからか出してきた石板を投げつけてきた。石板は私に向かってフヨフヨと飛んできて目の前でピタリと止まった。その石板には
【リーナ・アプリコットの持っている『水魔法の加護』をキミカ・タチワルーイに渡す。キミカ・タチワルーイの持っている『探し物の加護』をリーナ・アプリコットに渡す。これは双方の同意の元に行われる。魔王の名の元に宣誓されたこの約束を覆らす事はできない】
と刻まれていた。
「さあ、早く読み上げて!」
「止めろ! これは魔族の古代宣誓書だ!」
「こんなものまで持っていたのか!」
「さぁ、早くしないとアル殿下、死んじゃうかもね。その毒は魔族のものだから、この解毒薬じゃないと、助からないわ。人間にはきついはずよ」
「殿下! 治癒を使えば!」
「治癒の加護は本人には使えないのよ! ホホホッ! さあ、リーナ、早く!」
「リーナ・アプリコットの持っている『水魔法の加護』をキミカ・タチワルーイに渡す。キミカ・タチワルーイの持っている『探し物の加護』をリーナ・アプリコットに渡す。これは双方の同意の元に行われる。魔王の名の元に宣誓されたこの約束を覆らす事はできない」
私がその文言を読み上げたと同時に石板が眩く光った。そして、光を帯びたまま又、フヨフヨと茶ピンクさんの元に戻っていく。
「ホホホッ! やったわ!」
そう言うと、茶ピンクさんは嬉しそうにその文言を読み上げた、と同時に茶ピンクさんの身体が光った。そして、
「ほら! アル殿下を助けてあげて!」
そういうと、解毒剤をこちらに投げてきた。急いで、その解毒剤を殿下に飲ませると、息も絶え絶えだった殿下の顔色が赤味を帯びて息遣いも元に戻ってきた。でも、
「どうして、『水魔法の加護』を渡してしまったんだ……、あんなに頑張ってレベルを上げたのに、俺の為に……不甲斐ない」
アルファント殿下が泣いている。
グリーンさんとブラックさんも沈痛な顔でまるでお通夜のような雰囲気になった。
「ホッホーッホ! さぁ! 魔法にレベルはないけど、使いこんでいるみたいね。どうなのかしら~楽しみ♪」
(あたしの水魔法~)
「煩いわね。もうこの拘束も水魔法があれば、というかまずは正式な聖女にならなくては」
茶ピンクさんが煩い。でも、茶ピンクさんの『探し物の加護』は私の所に来たみたい。古代宣誓書もこの探し物の加護で手に入れたのかもしれない。
「えーと、大丈夫ですよ。リーナの加護は取られていませんから」
お兄様の能天気な声が響いた。
「オーホッホ! 何を言っているのやら! もう、アークに水鉄砲! えっ! あれ! 加護を覚えたばかりは発動できないのかしら。『探し物の加護』はないわ。『水魔法の加護』はどこ? どこにあるの? まさか、フレグランス!? あんたんとこに行った?!」
「見つかるはずないよ。リーナは『水魔法の加護』なんて持ってないから」
「へっ」
「「「えっ、えっー」」」
「リーナ、水魔法の加護じゃないのか」
「そう、水魔法の加護の上位互換の加護ですよ。進化したんです」
「良かった」
「そうか、凄かったものな」
「安心しました」
「ウソーっ、どうして! どうしてなの! 卑怯者! ウソつき!」
(ウソつき!」
お兄様、流石です。いつも口が軽い! 何て思っていてごめんなさい。そう、『液体の加護』は『水魔法の加護』の進化系なんです。
「進化系なら『水魔法の加護』という名前のはずよ! なんで加護が来ないのよ!」
「進化と共に名称が変化したんだ。その名称は悪用されるといけないから教えない」
「うそ! うそよ! ズルいわ! 私の加護を返して!」
泣きわめく茶ピンクさんと安堵のあまりその場に崩れ落ちたり、茫然と立っている皆さん。お兄様だけはとても嬉しそう。
そうね。あの石板の文言、他の人にはとんでもない内容に見えただろうけど、お兄様は内心、やった~とでも思っていたのね。
私の加護、『液体の加護』で良かった。
『水魔法の加護』と名称も全然掠らないんですもの。
殿下も助かって本当に良かった。
神様、感謝します。
1
お気に入りに追加
718
あなたにおすすめの小説
初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜
まつおいおり
恋愛
毎日毎日、国のトラブル解決に追われるミレイ・ノーザン、水の魔法を失敗して道を浸水させてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して火事を消火してほしいとか、このガルシア国はほぼ全ての事柄に魔法や魔道具を使っている、そっちの方が効率的だからだ、しかしだからこそそういった魔力の揉め事が後を絶たない………彼女は八光聖女の一人、退魔の剣の振るい手、この剣はあらゆる魔力を吸収し、霧散させる、………なので義妹達にあらゆる国の魔力トラブル処理を任せられていた、ある日、彼女は八光聖女をクビにされ、さらに婚約者も取られ、トドメに国外追放………あてもなく彷徨う、ひょんなことからハルバートという男に助けられ、何でも屋『ブレーメンズ』に所属、舞い込む依頼、忙しくもやり甲斐のある日々………一方、義妹達はガルシア国の魔力トラブルを処理が上手く出来ず、今更私を連れ戻そうとするが、はいそうですかと聞くわけがない。
私をこき使って「役立たず!」と理不尽に国を追放した王子に馬鹿にした《聖女》の力で復讐したいと思います。
水垣するめ
ファンタジー
アメリア・ガーデンは《聖女》としての激務をこなす日々を過ごしていた。
ある日突然国王が倒れ、クロード・ベルト皇太子が権力を握る事になる。
翌日王宮へ行くと皇太子からいきなり「お前はクビだ!」と宣告された。
アメリアは聖女の必要性を必死に訴えるが、皇太子は聞く耳を持たずに解雇して国から追放する。
追放されるアメリアを馬鹿にして笑う皇太子。
しかし皇太子は知らなかった。
聖女がどれほどこの国に貢献していたのか。どれだけの人を癒やしていたのか。どれほど魔物の力を弱体化させていたのかを……。
散々こき使っておいて「役立たず」として解雇されたアメリアは、聖女の力を使い国に対して復讐しようと決意する。
パーティをクビにされた聖女は、親が最強故に自分が規格外という自覚がない!!!
三月べに
ファンタジー
リヴィア・ヴァルキュールは、聖女の称号を持つ。母親は大聖女、父親は大魔法使い。
勇者クラスと謳われるほどのパーティからクビを通告されたリヴィアは、落ち込みつつ仕事を探して冒険者ギルドへ相談に行く。
すると、回復役としてパーティに加わってほしいとダークエルフの少年に頼まれた。
臨時で組んだシルバーランクの冒険者パーティと、フェンリルの森に行くとーーーー?
ひだまりを求めて
空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」
星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。
精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。
しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。
平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。
ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。
その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。
このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。
世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる