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88. ダンジョンの魔物
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ご連絡鳥の知らせを聞いて皆の間に緊張が走った。
ブラックさんとグリーンさんは顔を見合わせると
「思ったより早いな」
「うん。まだ時間がかかると思っていたのに、ダンジョンから外に出てくるなんて」
「でも、前回より100年は経ってない。60年ぐらいだったか。そこまで魔物は大きくならないはず」
「勇者様、小太郎様、よろしくお願いいたします」
国王陛下とノヴァ神官が頭を下げているけど
「いや、俺たち今は勇者じゃないし、ただの依頼を受けた冒険者のブラックとグリーン。人前で勇者とか呼ぶなよ」
「そうだ。過去は過去、今は今。アドバイスはできるけど。で、今代の水魔法の使い手が必要だね」
「魔王が変わったからこれまでと違うが、協力はする」
「でも、俺、今回も水魔法じゃないんだ。土だよ~あっ、光もあるか」
「そうだった。俺も火と風魔法だ。ダンジョン向けじゃないな」
「それでも、チャッチャッ、とやっちゃうか。えーと、リーナさん、水魔法の氷で頼むね」
ブラックさんとグリーンさんがやる気になっているのは頼もしいけど、私、水魔法じゃなくて『液体の加護』なんです。
「リーナ。大丈夫。皆で渡れば怖くない」
「いざとなれば、俺がせ、聖女だ」
お兄様は良く分からないけど、殿下の気持ちは嬉しい。
魔王のダンジョン。
魔獣と魔物の違いが何かというと、魔獣は動物が変異したものだから、その元になった動物の肢体や性質を受け継いでいる。
でも、魔物はまったく異質な別な生き物であると言えるし、姿かたちも下位の魔物は昆虫に似ているけど、上位の魔物は別の生態系で進化したように見える。
何が言いたいかというと、魔物は魔獣より強い。だからダンジョンから魔物が出てくると、警備をしている人は大変だと思う。
私達は急いで魔王のダンジョンに移動した。
ちょうど、蟻と蜂の魔物が出てくるところに遭遇した。ブラックさんとグリーンさんが走り寄ってスパッと切り裂いた。早い。普通はダンジョンから出てくることはないけど、飽和状態になって出て来たのだろうとの事。
この後は王宮の魔物対策部隊をダンジョンの入り口に配置して、出てくる魔物に対処する事になった。そこまで魔物の数は出てこないはず、との事。
「このまま、下の階層までノンストップでいくぞ」
元気なグリーンさんの声が響く。1階層には蟻と蜂がウヨウヨしていた。
「よし、複合でいこう。風と土」
「いいぞ」
と冒険者の二人は同時に魔法を発動し、竜巻に土が混ざったトルネードがダンジョンの中を駆け抜けた。その後には蜂と蟻の死骸が倒れている。
「凄い」
「魔物も呼吸しないといけないから、弱いのはこれでいけるんだ。3階層から下には直通で魔王の近くまで行けるのがあるから、下まで行こう」
という事で出てくる魔物を切り伏せながら、途中をショートカットして最下層の一つ上の層まで来た。最下層の魔物は氷魔法で凍らせて、そこを砕いてしまおうとの事
ここは死霊やゾンビなど、アンデッドが主に出てくるところらしい。
扉を開けたとたんにダンジョンの上から下までドロドロしたモノがうごめいていた。こんなところを抜けるなんて生理的に無理かもしれない。凍らせても隙間がないみたいだし、近づきたくない。
「よし、殿下、風と光魔法でいくぞ。せーの1、2、3で発動する。皆、目をつぶれ!」
「はい」
「せーの、1、2、3」
パァーッと光が溢れ、目を開けるとそこには何もなかった。きれいにアンデットは消え失せていた。
「凄えな。光魔法」
「殿下の魔法、光に治癒が混ざっていた。アンデットに治癒は効くな」
「魔力の強さも大きいな」
殿下の『治癒の加護』は『光の加護』と一緒になる事で効果が上がるみたい。良かった。
さて、何もいなくなった通路を抜けて階段を下りる。いよいよ、魔王、じゃない魔女のいる最下層。下に降りると床に扉があった。その扉を下りると最下層の通路。その通路は広い。だけど、その広い通路を各種の魔物が埋め尽くしている。
「凄いな」
「何でこんなに多いんだ」
「魔女が暴れて裂け目が広がったんじゃないか」
「これ、何とかしないと溢れるな」
「これだと、魔女は聖女の杖がないと封印すらできないかもしれん」
「聖女の杖は戦えるのか?」
「わからん。封印しかした事がない」
「おい、おまけに大型までいるぞ」
「いや、これどうなってんだ。普通の氷魔法で凍らせるの無理じゃない?」
「凍えさせて、削るか」
「仕方ないな」
「リーナさん、できるだけで良いから凍えさせてくれる?」
アルファント殿下とお兄様が私を見た。
「リーナ、無理はしないで良いから」
「いや、リーナ、もう殲滅してしまえ! そして、あきらめて聖女になっちゃおう。リーナってチートなんだから」
「いや、確かにリーナはチートだが、この数は無理だろ」
「リーナ!」
はい。確かにこの数は見なかったことにしていたあの、攻撃魔法でないと無理だと思う。
「魔法攻撃します」
「おう、できるだけでいいから」
ブラックさんの声を受けてあの恐ろしい攻撃魔法『氷雨』を範囲指定して……レベルが上がったせいで前は円形だった範囲指定がこの最下層のダンジョン全体にまで広げる事が出来た。
濃度指定も前は確かメモリが90だったのに100まで上がっている。
これ、使った事無いんだけど大丈夫だろうか。
私達、扉を開けたところでまだ中に入ってないから範囲には含まれないし、魔物の群れも徐々にこちらに来てる、というか積みあがってきてるけど、距離はある。魔物も押し合いへし合いで戸惑っているように見える。
「氷雨、発動」
小さく呟くと辺りに霧が立ち込めてまわりが真っ白になった。
そして、その霧が晴れると氷の世界が広がっていた。
氷のなかの魔物たちは少しづつ縮んでいっている。
氷雨、本来の意味とかなり違っているけど、魔物に対しての効果は凄まじい、と思う。
本当に氷の世界が出来上がってしまった。
ブラックさんとグリーンさんは顔を見合わせると
「思ったより早いな」
「うん。まだ時間がかかると思っていたのに、ダンジョンから外に出てくるなんて」
「でも、前回より100年は経ってない。60年ぐらいだったか。そこまで魔物は大きくならないはず」
「勇者様、小太郎様、よろしくお願いいたします」
国王陛下とノヴァ神官が頭を下げているけど
「いや、俺たち今は勇者じゃないし、ただの依頼を受けた冒険者のブラックとグリーン。人前で勇者とか呼ぶなよ」
「そうだ。過去は過去、今は今。アドバイスはできるけど。で、今代の水魔法の使い手が必要だね」
「魔王が変わったからこれまでと違うが、協力はする」
「でも、俺、今回も水魔法じゃないんだ。土だよ~あっ、光もあるか」
「そうだった。俺も火と風魔法だ。ダンジョン向けじゃないな」
「それでも、チャッチャッ、とやっちゃうか。えーと、リーナさん、水魔法の氷で頼むね」
ブラックさんとグリーンさんがやる気になっているのは頼もしいけど、私、水魔法じゃなくて『液体の加護』なんです。
「リーナ。大丈夫。皆で渡れば怖くない」
「いざとなれば、俺がせ、聖女だ」
お兄様は良く分からないけど、殿下の気持ちは嬉しい。
魔王のダンジョン。
魔獣と魔物の違いが何かというと、魔獣は動物が変異したものだから、その元になった動物の肢体や性質を受け継いでいる。
でも、魔物はまったく異質な別な生き物であると言えるし、姿かたちも下位の魔物は昆虫に似ているけど、上位の魔物は別の生態系で進化したように見える。
何が言いたいかというと、魔物は魔獣より強い。だからダンジョンから魔物が出てくると、警備をしている人は大変だと思う。
私達は急いで魔王のダンジョンに移動した。
ちょうど、蟻と蜂の魔物が出てくるところに遭遇した。ブラックさんとグリーンさんが走り寄ってスパッと切り裂いた。早い。普通はダンジョンから出てくることはないけど、飽和状態になって出て来たのだろうとの事。
この後は王宮の魔物対策部隊をダンジョンの入り口に配置して、出てくる魔物に対処する事になった。そこまで魔物の数は出てこないはず、との事。
「このまま、下の階層までノンストップでいくぞ」
元気なグリーンさんの声が響く。1階層には蟻と蜂がウヨウヨしていた。
「よし、複合でいこう。風と土」
「いいぞ」
と冒険者の二人は同時に魔法を発動し、竜巻に土が混ざったトルネードがダンジョンの中を駆け抜けた。その後には蜂と蟻の死骸が倒れている。
「凄い」
「魔物も呼吸しないといけないから、弱いのはこれでいけるんだ。3階層から下には直通で魔王の近くまで行けるのがあるから、下まで行こう」
という事で出てくる魔物を切り伏せながら、途中をショートカットして最下層の一つ上の層まで来た。最下層の魔物は氷魔法で凍らせて、そこを砕いてしまおうとの事
ここは死霊やゾンビなど、アンデッドが主に出てくるところらしい。
扉を開けたとたんにダンジョンの上から下までドロドロしたモノがうごめいていた。こんなところを抜けるなんて生理的に無理かもしれない。凍らせても隙間がないみたいだし、近づきたくない。
「よし、殿下、風と光魔法でいくぞ。せーの1、2、3で発動する。皆、目をつぶれ!」
「はい」
「せーの、1、2、3」
パァーッと光が溢れ、目を開けるとそこには何もなかった。きれいにアンデットは消え失せていた。
「凄えな。光魔法」
「殿下の魔法、光に治癒が混ざっていた。アンデットに治癒は効くな」
「魔力の強さも大きいな」
殿下の『治癒の加護』は『光の加護』と一緒になる事で効果が上がるみたい。良かった。
さて、何もいなくなった通路を抜けて階段を下りる。いよいよ、魔王、じゃない魔女のいる最下層。下に降りると床に扉があった。その扉を下りると最下層の通路。その通路は広い。だけど、その広い通路を各種の魔物が埋め尽くしている。
「凄いな」
「何でこんなに多いんだ」
「魔女が暴れて裂け目が広がったんじゃないか」
「これ、何とかしないと溢れるな」
「これだと、魔女は聖女の杖がないと封印すらできないかもしれん」
「聖女の杖は戦えるのか?」
「わからん。封印しかした事がない」
「おい、おまけに大型までいるぞ」
「いや、これどうなってんだ。普通の氷魔法で凍らせるの無理じゃない?」
「凍えさせて、削るか」
「仕方ないな」
「リーナさん、できるだけで良いから凍えさせてくれる?」
アルファント殿下とお兄様が私を見た。
「リーナ、無理はしないで良いから」
「いや、リーナ、もう殲滅してしまえ! そして、あきらめて聖女になっちゃおう。リーナってチートなんだから」
「いや、確かにリーナはチートだが、この数は無理だろ」
「リーナ!」
はい。確かにこの数は見なかったことにしていたあの、攻撃魔法でないと無理だと思う。
「魔法攻撃します」
「おう、できるだけでいいから」
ブラックさんの声を受けてあの恐ろしい攻撃魔法『氷雨』を範囲指定して……レベルが上がったせいで前は円形だった範囲指定がこの最下層のダンジョン全体にまで広げる事が出来た。
濃度指定も前は確かメモリが90だったのに100まで上がっている。
これ、使った事無いんだけど大丈夫だろうか。
私達、扉を開けたところでまだ中に入ってないから範囲には含まれないし、魔物の群れも徐々にこちらに来てる、というか積みあがってきてるけど、距離はある。魔物も押し合いへし合いで戸惑っているように見える。
「氷雨、発動」
小さく呟くと辺りに霧が立ち込めてまわりが真っ白になった。
そして、その霧が晴れると氷の世界が広がっていた。
氷のなかの魔物たちは少しづつ縮んでいっている。
氷雨、本来の意味とかなり違っているけど、魔物に対しての効果は凄まじい、と思う。
本当に氷の世界が出来上がってしまった。
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