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87. 始まりの予言
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「ではその、お嬢さん。リーナさん、このリモコンのスイッチを入れてもらえる?」
「凄いな、これだけ年月が経ってもリモコンは起動するのか?」
「あっ!」
グリーンさんが失敗ったという顔をした。
「それ、魔道具だろう? 魔力が枯渇してないか?」
ブラックさんの指摘にグリーンさんは
「魔力のことなんて全然、思いつかなかった。早く、言ってくれよ」
「お前は昔からどこか抜けていたから。ほれ!」
グリーンさんの指先からキラキラ光る光線がリモコンに向かって飛んでいき、リモコンが光に包まれた。と思ったら私達の知っているリモコンになった。
「アーッ、これだったらリモコンのスイッチを入れてみようと思ったかも知れない」
「確かに。でも、リモコンが見つけられたらの話だが」
「このテレビは聖女の覚醒を促すための、勇者が作られたオブジェだと思われていましたし、この引き出しにも気がつきませんでした」
「そもそも、引き出しはテレビ台と一体化しているし、聖女か勇者か小太郎しか開けられなかったとは思うけど」
ノヴァ神官にグリーンさんが答えると
「だから、アルファント殿下が触っても、分からなかったのですね。殿下は聖女ではなくて聖人ですから」
「いや、アーク。俺はまだ聖女の杖に認められていない」
「何ですか、それ?」
「いや、実は……」
「つまり、聖女の杖はリーナさんが良いのに、アルファント殿下がその間に割り込もうとして、ソッポを向かれていると」
「プっ!」
「いや、俺は聖女の杖にご機嫌伺いをしているだけで」
「ああ、確かに殿下にも聖女の欠片はありますね」
「あるのか!」
「男なのに?」
「聖女の杖が認めれば、聖女になれますよ」
「いや、俺は聖女ではなく聖人……」
「聖女の杖の持ち主は聖女です」
「ウッ!」
殿下は何とも言えないような顔をした。
殿下はずっと、聖女ではなく聖人と、呼び方に拘っていたから許容しがたいのだと思う。私の為に変わってあげよう、としてくださるのは嬉しいけど殿下の為にも私が聖女に成ったほうが良いのかも。でも、どうしたらいいんだろう。
「リーナさん。とりあえず、そのリモコンを操作して」
「あっ、ハイ」
そうしてテレビから取り出されたシンプルな箱には3枚の紙が入っていた。状態保存の魔法がかけられているため劣化はしていない。流石、魔法の世界。
勇者の涙で分からなくなっていた部分もはっきりと記されている。
『始まりの予言をここに記す。この世界の魔力が満ちる時、転生者の聖女によって次元の穴は完全に塞がれるだろう。ただし、転生者たる聖女によって分岐点で選択がされる。聖女が覚醒した時、魔女が存在しその行く手を阻む。星の行方は聖女によって選択される。関わるものは乙女ゲーム。偽りの魔王は解放され、魔女がその役目を担うが、この世界が救われるためには聖女の真の力の解放が必要になる。星の力は未知数。三位一体の加護と愛はこの世界を救うだろう』
うん。どうしよう。
何となく想像のできる予言だった。結局、私は聖女になるのだろうけど聖女の真の力って何だろう。あの恐ろしくて封印している攻撃方法だろうか?
私の加護が本当は『液体の加護』だってバラしてしまう? 何時? どこで?
あぁ、どうしよう。もう逃げ出したい。
「リーナ。大丈夫だ。俺が聖女になれば問題はない」
「リーナ、やっと殿下が聖女になっても良いと言って下さっているんだ。三位一体だったら、俺と殿下とリーナだし、殿下とリーナの間には愛が溢れている。俺もリーナと、ついでに殿下も愛している」
「おい、ついでかよ」
「ついで、ですが愛はあります」
「そうか、俺もリーナを愛しているし、アークにもまぁ、愛? があるような気がする。後は杖の覚悟だけだな」
「どうして愛? と疑問形ですか?」
「いや、アークへの愛なんて考えたこともなかった」
「そうですか、まぁ、お互い様ですけど」
もう、殿下とお兄様は。二人の気持ちは嬉しい、けど……。
「お兄様、次元の穴が完全に塞がれると異次元との行き来はできなくなるのよ!」
「ほとんど顔も忘れかけている母親より、リーナと殿下を取る」
「お兄様……」
「リーナが俺と結ばれても、アークはリーナの大切な家族だから何時でも一緒だ」
「殿下、俺、殿下について行きます」
私達は三人でお互いに見つめ合っていた。
「あーっと、良いかな。盛り上がっている所、悪いんだが次元の穴は完全に塞ぐって事で良いのかな?」
「そうですね。それでいいと思います」
「そうすると、魔女たちの扱いだが」
「あっ、そうなると、彼女たちはどうなるのでしょう? もう、栓は必要ないので解放されますか?」
「いや。彼女たちは二人で一体になってしまっているし、多分、心根が濁り過ぎているから、その精神も転生はできないんじゃないかな」
「えっ、じゃぁ、どうなるんですか?」
「わからない。でも、彼女たちの心根があれだけ濁っているのは本人たちの自業自得だ。多分だけど、栓の役目はなしでそのまま魔王、いや、魔女として封印されるかな」
「でも、その精神は転生できないんだろう?」
「濁りが取れれば、転生できるんじゃないか。それまでは封印されたまま反省の日々だ」
「二人でか」
「そう、その二人ってのが、どうなのかな? 孤独にならないのはいいけど、いがみ合ったりすると濁りが増してしまうような気がする」
「それも本人次第だし気にしても仕方ない。全くこれから先、救われないわけでもないし」
ピンクさんと茶ピンクさん、困った事になっているけど、その自覚はあるのだろうか。色々片付いたら、きちんと救われる道を教えてあげないと。
と、そこへご連絡鳥がやって来た。
「大変です。魔王のダンジョンから魔物が出てきました」
魔王のダンジョン、これまで魔物が出て来た事なんてないのに、何が起こっているの?
どうしよう。
「凄いな、これだけ年月が経ってもリモコンは起動するのか?」
「あっ!」
グリーンさんが失敗ったという顔をした。
「それ、魔道具だろう? 魔力が枯渇してないか?」
ブラックさんの指摘にグリーンさんは
「魔力のことなんて全然、思いつかなかった。早く、言ってくれよ」
「お前は昔からどこか抜けていたから。ほれ!」
グリーンさんの指先からキラキラ光る光線がリモコンに向かって飛んでいき、リモコンが光に包まれた。と思ったら私達の知っているリモコンになった。
「アーッ、これだったらリモコンのスイッチを入れてみようと思ったかも知れない」
「確かに。でも、リモコンが見つけられたらの話だが」
「このテレビは聖女の覚醒を促すための、勇者が作られたオブジェだと思われていましたし、この引き出しにも気がつきませんでした」
「そもそも、引き出しはテレビ台と一体化しているし、聖女か勇者か小太郎しか開けられなかったとは思うけど」
ノヴァ神官にグリーンさんが答えると
「だから、アルファント殿下が触っても、分からなかったのですね。殿下は聖女ではなくて聖人ですから」
「いや、アーク。俺はまだ聖女の杖に認められていない」
「何ですか、それ?」
「いや、実は……」
「つまり、聖女の杖はリーナさんが良いのに、アルファント殿下がその間に割り込もうとして、ソッポを向かれていると」
「プっ!」
「いや、俺は聖女の杖にご機嫌伺いをしているだけで」
「ああ、確かに殿下にも聖女の欠片はありますね」
「あるのか!」
「男なのに?」
「聖女の杖が認めれば、聖女になれますよ」
「いや、俺は聖女ではなく聖人……」
「聖女の杖の持ち主は聖女です」
「ウッ!」
殿下は何とも言えないような顔をした。
殿下はずっと、聖女ではなく聖人と、呼び方に拘っていたから許容しがたいのだと思う。私の為に変わってあげよう、としてくださるのは嬉しいけど殿下の為にも私が聖女に成ったほうが良いのかも。でも、どうしたらいいんだろう。
「リーナさん。とりあえず、そのリモコンを操作して」
「あっ、ハイ」
そうしてテレビから取り出されたシンプルな箱には3枚の紙が入っていた。状態保存の魔法がかけられているため劣化はしていない。流石、魔法の世界。
勇者の涙で分からなくなっていた部分もはっきりと記されている。
『始まりの予言をここに記す。この世界の魔力が満ちる時、転生者の聖女によって次元の穴は完全に塞がれるだろう。ただし、転生者たる聖女によって分岐点で選択がされる。聖女が覚醒した時、魔女が存在しその行く手を阻む。星の行方は聖女によって選択される。関わるものは乙女ゲーム。偽りの魔王は解放され、魔女がその役目を担うが、この世界が救われるためには聖女の真の力の解放が必要になる。星の力は未知数。三位一体の加護と愛はこの世界を救うだろう』
うん。どうしよう。
何となく想像のできる予言だった。結局、私は聖女になるのだろうけど聖女の真の力って何だろう。あの恐ろしくて封印している攻撃方法だろうか?
私の加護が本当は『液体の加護』だってバラしてしまう? 何時? どこで?
あぁ、どうしよう。もう逃げ出したい。
「リーナ。大丈夫だ。俺が聖女になれば問題はない」
「リーナ、やっと殿下が聖女になっても良いと言って下さっているんだ。三位一体だったら、俺と殿下とリーナだし、殿下とリーナの間には愛が溢れている。俺もリーナと、ついでに殿下も愛している」
「おい、ついでかよ」
「ついで、ですが愛はあります」
「そうか、俺もリーナを愛しているし、アークにもまぁ、愛? があるような気がする。後は杖の覚悟だけだな」
「どうして愛? と疑問形ですか?」
「いや、アークへの愛なんて考えたこともなかった」
「そうですか、まぁ、お互い様ですけど」
もう、殿下とお兄様は。二人の気持ちは嬉しい、けど……。
「お兄様、次元の穴が完全に塞がれると異次元との行き来はできなくなるのよ!」
「ほとんど顔も忘れかけている母親より、リーナと殿下を取る」
「お兄様……」
「リーナが俺と結ばれても、アークはリーナの大切な家族だから何時でも一緒だ」
「殿下、俺、殿下について行きます」
私達は三人でお互いに見つめ合っていた。
「あーっと、良いかな。盛り上がっている所、悪いんだが次元の穴は完全に塞ぐって事で良いのかな?」
「そうですね。それでいいと思います」
「そうすると、魔女たちの扱いだが」
「あっ、そうなると、彼女たちはどうなるのでしょう? もう、栓は必要ないので解放されますか?」
「いや。彼女たちは二人で一体になってしまっているし、多分、心根が濁り過ぎているから、その精神も転生はできないんじゃないかな」
「えっ、じゃぁ、どうなるんですか?」
「わからない。でも、彼女たちの心根があれだけ濁っているのは本人たちの自業自得だ。多分だけど、栓の役目はなしでそのまま魔王、いや、魔女として封印されるかな」
「でも、その精神は転生できないんだろう?」
「濁りが取れれば、転生できるんじゃないか。それまでは封印されたまま反省の日々だ」
「二人でか」
「そう、その二人ってのが、どうなのかな? 孤独にならないのはいいけど、いがみ合ったりすると濁りが増してしまうような気がする」
「それも本人次第だし気にしても仕方ない。全くこれから先、救われないわけでもないし」
ピンクさんと茶ピンクさん、困った事になっているけど、その自覚はあるのだろうか。色々片付いたら、きちんと救われる道を教えてあげないと。
と、そこへご連絡鳥がやって来た。
「大変です。魔王のダンジョンから魔物が出てきました」
魔王のダンジョン、これまで魔物が出て来た事なんてないのに、何が起こっているの?
どうしよう。
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