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78. ダンジョン前で
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山の麓にポッカリと開いた洞窟。
奥から生暖かい空気が流れてくる。少しだけどちょっと生臭いような気もする。
「リーナ、何だか前の洞窟と全然雰囲気が違うと思わないか?」
「ええ。周りの雰囲気もなんとなく不気味になっているかも」
「魔王のダンジョンってホラー系なのか?」
「まさか、違うはず。魔獣じゃなくて魔物が出てくるダンジョンって聞いているけど、私たち魔物はまだ遭遇した事が無いのよね。大丈夫かしら」
「魔物も魔獣も倒し方はそんなに変わらないって話だし、リーナは後ろから魔法でボン、だから大丈夫だよ」
「そうね。でも一応、防御膜は常時、張っておいたほうがいいかもしれない」
お兄様と私は後ろのほうでコソコソと小さな声で話をしていた。
アルファント殿下は冒険者の二人と打ち合わせをしているし、茶ピンクさんはラクアート様に何やら話しかけているみたいだ。
ダンジョン前に集合している人達はかなりの数になった。アルファント殿下を中心としたこちらのメンバーは既にダンジョン攻略を何度もしているし、準備にも慣れているといえる。
そして、貴族だけどダンジョンに入るのだからそれなりの装備に身を包んでいる。
私だって多分これはミスリルの糸で編んだんじゃないかなと思う女性用の鎧、と言っても軽量化の魔法がかけられて裾が少し短めになったワンピースタイプの上着に、スパッツに見える足元までカバーした冒険者の服装をしているし、靴はしっかりと裏打ちがされたブーツを履いている。
一番上に銀色のキラキラしたローブを纏っているけど、これにも攻撃を防ぐ魔法障壁がかけられている。
最も私の場合は薄い水の障壁を纏えるのでそんなに装備にお金をかけなくてもいいのだけれど、頂いた装備は着心地がいいし見た目が美しいので割と気に入っている。かなりの高額装備だと思うけど、王家から贈られたものだからいくらぐらいするのかは分からない。
アルファント殿下にお兄様、ランディ様とトーリスト様も王家から装備は用意されて、はっきり言ってかなり格好の良い冒険者スタイルになっている。
見た目もだけど、ポテンシャルもかなり高い装備でこのまま魔王城に行っても良いくらいの優れた格好と言える。
私達を見たグリーンさんが
「すげえ! 金かかっている!」
と指さしてブラックさんに小突かれていた。
ブラックさんとグリーンさんはもう、見ただけでわかった。ブラックさんは漆黒の髪と切れ長の美しい黒い目、グリーンさんは艶やかな緑の髪と目をしていたのだから。そして彼らはとてもカッコ良かった。
高位冒険者である為、身に付けている装備もかなりのものだった。
それはもう、見ただけでわかる。
帯剣した彼らはアニメの世界に存在する主人公のように見える。
もちろん、アルファント殿下のほうが美形だしステキだし、中身も断然殿下のほうが魅力的だけど、それはそれとして、彼らはとても鑑賞に値する見た目をしていた。
ブラックさんとグリーンさんの本名は別にあるけど、冒険者ギルドでは本名とは違う通称での呼び名で通しているそうだ。冒険者に登録した時に通称名を設定できるので自分の名前が好きでなかったり、カッコいい名前にあこがれている人は通称名を登録し、冒険者の間はその名前で呼ばれる。
ブラックさんはブラック・ブルー、グリーンさんはグリーン・ルビーというお名前だそうだ。
ランディ様とトーリスト様もそれぞれ見た目がいいし、お兄様だって顔が良いから、ここは乙女ゲーム、と言われれば納得の目福の世界が広がっている。私、ここにいて良いのだろうか、とちょっと思ってしまった。
ただ、茶ピンクさんの格好はダンジョン攻略に適した姿とは到底いえないと思う。浮いている。そういえば、誰もダンジョンに入る為の服装について説明はしなかったのかもしれない。
茶ピンクさんはとても鮮やかで綺麗なピンクのワンピースに短いマントを羽織っていた。頭には銀色のティアラ。
一応、ピンクのブーツを履いているのは良かったけどダンジョンに入る自覚はあるのだろうか。
「お早うございます。本日は私、アルファントがまとめ役をさせていただきますので何かありましたらこちらへご報告下さい。それでは二つのパーティーに分かれてダンジョンに入りたいと思いますが、今日は偵察とダンジョンの方向性をさぐるのが主な目的となります。では、本日はよろしくお願いします」
アルファント殿下が皆の前に立って挨拶をした。
と、思ったら茶ピンクさんが殿下の横に並んで
「皆さん、本日は魔王討伐のため、また、聖女である私の為に集まってくださって有り難うございます。できるだけ進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
と余計な挨拶をした。殿下はムッとした顔をすると
「魔王は討伐ではなく、封印です。間違っても魔王に対して攻撃はしないように。また、本日は偵察が目的です。余計な事はしないようにしてください」
直ぐさま茶ピンクさんの言葉を打ち消した。
「もう、アル殿下。私が心配なのはわかるけどチャッチャッと終わらせて、お休みを楽しみたいじゃないですか。ねぇ、ラクアート~」
「はい。早く終わらせたほうが良いと思います」
ラクアート様が棒読みで返事をしたけど、いつの間にか茶ピンクさんの斜め後ろに立っていてまるで従者のよう。声にも生気がない。
だ、大丈夫かしら。服装はきちんと冒険者モードの装備を身に付けているけど。
「ラクアート、何故ち、キミカ・タチワルーイ嬢は冒険者装備をしていないんだ。装備についてはウオーター公爵家で用意するのではなかったのか」
「はい。用意はしていたのですが、」
「もう、冒険者の装備ってなんかダサくって、着たくなかったの~、ほら、王宮に聖女用の衣装があったでしょ。それ、持ってきて! 忘れてたのよね~。ゲームだとボタン一つで着れちゃたから」
茶ピンクさんが殿下に甘えた声をだして腕を絡めようとした。殿下はサッと茶ピンクさんを避けると、
「今日の所は浅い階層を確認するだけだから、その恰好でも構わない。ただ、明日からはきちんとするように。では、まずはいつものメンバーが先発隊として突入する」
「「はい」」
殿下は茶ピンクさんをスルーして私達の所にやって来た。
そして、私達はいつもの陣形ではなく、殿下が殿になってダンジョンに入っていく。私が真ん中なのは、もし、茶ピンクさんが良くない考えを起こした時の為。念のためと言われた。
まさか、ダンジョン内で味方に攻撃するなんて、いくら非常識でもありえないと思うけど。
それにしても、茶ピンクさんと一緒の攻略なんて、気が重い。
奥から生暖かい空気が流れてくる。少しだけどちょっと生臭いような気もする。
「リーナ、何だか前の洞窟と全然雰囲気が違うと思わないか?」
「ええ。周りの雰囲気もなんとなく不気味になっているかも」
「魔王のダンジョンってホラー系なのか?」
「まさか、違うはず。魔獣じゃなくて魔物が出てくるダンジョンって聞いているけど、私たち魔物はまだ遭遇した事が無いのよね。大丈夫かしら」
「魔物も魔獣も倒し方はそんなに変わらないって話だし、リーナは後ろから魔法でボン、だから大丈夫だよ」
「そうね。でも一応、防御膜は常時、張っておいたほうがいいかもしれない」
お兄様と私は後ろのほうでコソコソと小さな声で話をしていた。
アルファント殿下は冒険者の二人と打ち合わせをしているし、茶ピンクさんはラクアート様に何やら話しかけているみたいだ。
ダンジョン前に集合している人達はかなりの数になった。アルファント殿下を中心としたこちらのメンバーは既にダンジョン攻略を何度もしているし、準備にも慣れているといえる。
そして、貴族だけどダンジョンに入るのだからそれなりの装備に身を包んでいる。
私だって多分これはミスリルの糸で編んだんじゃないかなと思う女性用の鎧、と言っても軽量化の魔法がかけられて裾が少し短めになったワンピースタイプの上着に、スパッツに見える足元までカバーした冒険者の服装をしているし、靴はしっかりと裏打ちがされたブーツを履いている。
一番上に銀色のキラキラしたローブを纏っているけど、これにも攻撃を防ぐ魔法障壁がかけられている。
最も私の場合は薄い水の障壁を纏えるのでそんなに装備にお金をかけなくてもいいのだけれど、頂いた装備は着心地がいいし見た目が美しいので割と気に入っている。かなりの高額装備だと思うけど、王家から贈られたものだからいくらぐらいするのかは分からない。
アルファント殿下にお兄様、ランディ様とトーリスト様も王家から装備は用意されて、はっきり言ってかなり格好の良い冒険者スタイルになっている。
見た目もだけど、ポテンシャルもかなり高い装備でこのまま魔王城に行っても良いくらいの優れた格好と言える。
私達を見たグリーンさんが
「すげえ! 金かかっている!」
と指さしてブラックさんに小突かれていた。
ブラックさんとグリーンさんはもう、見ただけでわかった。ブラックさんは漆黒の髪と切れ長の美しい黒い目、グリーンさんは艶やかな緑の髪と目をしていたのだから。そして彼らはとてもカッコ良かった。
高位冒険者である為、身に付けている装備もかなりのものだった。
それはもう、見ただけでわかる。
帯剣した彼らはアニメの世界に存在する主人公のように見える。
もちろん、アルファント殿下のほうが美形だしステキだし、中身も断然殿下のほうが魅力的だけど、それはそれとして、彼らはとても鑑賞に値する見た目をしていた。
ブラックさんとグリーンさんの本名は別にあるけど、冒険者ギルドでは本名とは違う通称での呼び名で通しているそうだ。冒険者に登録した時に通称名を設定できるので自分の名前が好きでなかったり、カッコいい名前にあこがれている人は通称名を登録し、冒険者の間はその名前で呼ばれる。
ブラックさんはブラック・ブルー、グリーンさんはグリーン・ルビーというお名前だそうだ。
ランディ様とトーリスト様もそれぞれ見た目がいいし、お兄様だって顔が良いから、ここは乙女ゲーム、と言われれば納得の目福の世界が広がっている。私、ここにいて良いのだろうか、とちょっと思ってしまった。
ただ、茶ピンクさんの格好はダンジョン攻略に適した姿とは到底いえないと思う。浮いている。そういえば、誰もダンジョンに入る為の服装について説明はしなかったのかもしれない。
茶ピンクさんはとても鮮やかで綺麗なピンクのワンピースに短いマントを羽織っていた。頭には銀色のティアラ。
一応、ピンクのブーツを履いているのは良かったけどダンジョンに入る自覚はあるのだろうか。
「お早うございます。本日は私、アルファントがまとめ役をさせていただきますので何かありましたらこちらへご報告下さい。それでは二つのパーティーに分かれてダンジョンに入りたいと思いますが、今日は偵察とダンジョンの方向性をさぐるのが主な目的となります。では、本日はよろしくお願いします」
アルファント殿下が皆の前に立って挨拶をした。
と、思ったら茶ピンクさんが殿下の横に並んで
「皆さん、本日は魔王討伐のため、また、聖女である私の為に集まってくださって有り難うございます。できるだけ進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
と余計な挨拶をした。殿下はムッとした顔をすると
「魔王は討伐ではなく、封印です。間違っても魔王に対して攻撃はしないように。また、本日は偵察が目的です。余計な事はしないようにしてください」
直ぐさま茶ピンクさんの言葉を打ち消した。
「もう、アル殿下。私が心配なのはわかるけどチャッチャッと終わらせて、お休みを楽しみたいじゃないですか。ねぇ、ラクアート~」
「はい。早く終わらせたほうが良いと思います」
ラクアート様が棒読みで返事をしたけど、いつの間にか茶ピンクさんの斜め後ろに立っていてまるで従者のよう。声にも生気がない。
だ、大丈夫かしら。服装はきちんと冒険者モードの装備を身に付けているけど。
「ラクアート、何故ち、キミカ・タチワルーイ嬢は冒険者装備をしていないんだ。装備についてはウオーター公爵家で用意するのではなかったのか」
「はい。用意はしていたのですが、」
「もう、冒険者の装備ってなんかダサくって、着たくなかったの~、ほら、王宮に聖女用の衣装があったでしょ。それ、持ってきて! 忘れてたのよね~。ゲームだとボタン一つで着れちゃたから」
茶ピンクさんが殿下に甘えた声をだして腕を絡めようとした。殿下はサッと茶ピンクさんを避けると、
「今日の所は浅い階層を確認するだけだから、その恰好でも構わない。ただ、明日からはきちんとするように。では、まずはいつものメンバーが先発隊として突入する」
「「はい」」
殿下は茶ピンクさんをスルーして私達の所にやって来た。
そして、私達はいつもの陣形ではなく、殿下が殿になってダンジョンに入っていく。私が真ん中なのは、もし、茶ピンクさんが良くない考えを起こした時の為。念のためと言われた。
まさか、ダンジョン内で味方に攻撃するなんて、いくら非常識でもありえないと思うけど。
それにしても、茶ピンクさんと一緒の攻略なんて、気が重い。
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