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53. 冬休み
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短い冬休みは去年と変わらず、辺境伯家とウオーター公爵家の集まりがあって忙しかった。
ただ、今年はラクアート様が挨拶の時にも私の隣にいた。昨年、姿をくらましたせいで今年はきちんと挨拶をするように言い含められたとの事。
居なくていいのに。
そして、ラクアート様の愚痴が煩い。
どうもピンクさんがピンク教の布教に忙しいせいで前のようにずっと引っ付いて居られないのが不満らしい。
ピンクさんはアチコチ出かけているので、ラクアート様もそれに付き合っているのだが、彼女が色々な男性と話している間、放って置かれるみたいでイライラするそうだ。
「器の大きい男にならなくてはいけないし、フレーが自分のために人脈を広げているのはわかるけど、でも、フレーを独り占めしたいという気持ちが抑えられなくて嫉妬してしまう」のだそう。
今もピンクさんが親戚の家に行ってしまった為にずっと会えず寂しい気持ちが募っている、ですって。
貴方が愚痴をこぼしている相手、一応婚約者ですけど。他の人に聞かれたらまずいんじゃないですか?
と思いつつ、「大変ですねぇ」と相槌を打ちながら聞いてあげている私は辛抱強いと思う。
もし、万が一、私がラクアート様の事を好きだったら、これはかなり辛いと思うけど何とも思ってないから只管ウザい。
ラクアート様の顔を見るのもうんざり。
冬休みの前にダンジョン攻略が2日あり、アルファント殿下たちに会ってホッとした。
ダンジョン攻略も慣れてきたし、『液体の加護』のおかげで水魔法風攻撃や防御もとても滑らかにできるようになったのも良かった。
お兄様の『鑑定の加護』も普通の鑑定よりもダンジョンの魔獣相手のほうがスムーズに発動する。今は魔獣に有効な攻撃や弱点の場所が指摘できる。
やはり、聖女の加護だからダンジョンに対して有効なのかもしれない。
アルファント殿下の『治癒の加護』も物理的な治癒の効果だけではなく、疲れを取ったり、状態異常を直す効果があるので、それも聖女の加護のおかげかもしれないと殿下が言っていた。
『隠蔽』と『鑑定』と『治癒』の加護が聖女一人に宿ると、ダンジョン攻略の時、聖女はとても忙しいのではないだろうか。
そう考えると、3人に分散した今の状態は有難いのだと思う。
後はこの聖女の杖が殿下の元にいってくれたらいいのだけれど。ツンデレというので聖女の杖が殿下にデレてくれるといいなぁと思ってアルファント殿下を見ていると、
「リーナ、何か良くないことを考えてないかな?」
殿下が良い笑顔で尋ねてきた。
「多分、聖女の杖が殿下に行くといいなぁとか思っていたんですよ。時々、聖女の杖に「アルファント殿下の治癒は素晴らしい、聖女に相応しいし光の魔法も聖女にピッタリ」と話しかけていますから」
「ああ、それはまた」
「まさに、ありがた迷惑という奴だなぁ」
「そうですよ。無駄なのに。聖女の杖も迷惑そうに点滅していますから。リーナが杖を取り出した時は喜んで光り輝いているのに」
「もう、お兄様!」
「それより、リーナ。休憩にしよう。あれ、作ってきてくれた?」
「はい。作ってきました」
という事で殿下から届いたお米で作った梅干し入りお握りと、豚汁ならぬ魔獣汁でお昼を兼ねた休憩になった。
殿下はお米を手に入れてからは家のタウンハウスにセッセとお米を大量に寄こすようになった。
他の大陸から輸入しているのでかなりお高いと思うのだけど、私の炊いたお米とか炊き込みご飯とかは国王陛下を始め王家の人たちにも分けずにアルファント殿下と侍従のランディ様と護衛のトーリスト様とで食べているらしい。
時折、ノヴァ神官に取られるそうだけど。
ご飯も王家の料理人が炊くより、私が炊いたほうが格別に美味しいと言っていた。
「ああ、美味い。懐かしい味だが記憶にあるより、はるかに美味い」
「本当にリーナ、さま、様だよ。何でこんなに美味しいんだろう。お握りも美味いし豚汁も美味い。味噌と醤油が出せるなんてリーナの加護は最高だ」
「私も殿下の侍従になれて本当に良かったです。こんな美味しいものがこの世にあったなんて。知らずに損するところでした。ダンジョン攻略と学生会の仕事がもう楽しみでたまりません」
「美味しいです」
皆が本当に嬉しそうにお握りと魔獣汁を食べていた。
梅干しはウメンの塩漬けだけど梅干しとそんなに変わらないと思う。ただ、梅の実よりもウメンのほうが少し大きいだけで。海苔は何とお米を輸入した大陸からこんなのもあります、と付いてきた。
殿下は喜んで追加で輸入する手配をしたそうだ。おかげで海苔つき醤油煎餅を作る事ができて殿下は両手を上げて喜んだ。オヤツの幅が広がったと言える。
今回のオヤツはアンコロ餅。殿下の顔が緩んで嬉しそうだ。やっぱり殿下はアンコがかなり好きみたい。実は、もち米も問い合わせたら輸入できたので、お兄様がタウンハウスで餅つきをした。
作ったお餅はお雑煮にして大鍋を年末に届けておいた。
アルファント殿下は1月1日に3人でお雑煮を食べたそうだ。毎年の恒例にしたいと言われてしまった。
私、ここから逃げようと思っているんですけど。加護は『水魔法の加護』ではなくて『液体の加護』だし。
とりあえず、問題は先送り、先送り。
私のポーションがピンク教の洗脳に効果あり、とわかったのでまずは高位貴族の子息に配られるポーションを学園に納入する事になった。ピンクさんが『ゲームが始まった』と攻略対象の人たちに寄ってくる事が予想できたので、高位貴族の子息には私のポーションが行き渡るように手配をした。
ポーションは良い値段がするので、隠れた現金収入を得る事ができたのは嬉しい。
でも、ないとは思うけどゲームが始まってアルファント殿下がピンクさんにデレるかもと考えたらすごく嫌な気分になる。気にしないようにしているけど、本当はすごく不安。
初恋は実らない、けどピンクさんに盗られるのだけは嫌。
ただ、今年はラクアート様が挨拶の時にも私の隣にいた。昨年、姿をくらましたせいで今年はきちんと挨拶をするように言い含められたとの事。
居なくていいのに。
そして、ラクアート様の愚痴が煩い。
どうもピンクさんがピンク教の布教に忙しいせいで前のようにずっと引っ付いて居られないのが不満らしい。
ピンクさんはアチコチ出かけているので、ラクアート様もそれに付き合っているのだが、彼女が色々な男性と話している間、放って置かれるみたいでイライラするそうだ。
「器の大きい男にならなくてはいけないし、フレーが自分のために人脈を広げているのはわかるけど、でも、フレーを独り占めしたいという気持ちが抑えられなくて嫉妬してしまう」のだそう。
今もピンクさんが親戚の家に行ってしまった為にずっと会えず寂しい気持ちが募っている、ですって。
貴方が愚痴をこぼしている相手、一応婚約者ですけど。他の人に聞かれたらまずいんじゃないですか?
と思いつつ、「大変ですねぇ」と相槌を打ちながら聞いてあげている私は辛抱強いと思う。
もし、万が一、私がラクアート様の事を好きだったら、これはかなり辛いと思うけど何とも思ってないから只管ウザい。
ラクアート様の顔を見るのもうんざり。
冬休みの前にダンジョン攻略が2日あり、アルファント殿下たちに会ってホッとした。
ダンジョン攻略も慣れてきたし、『液体の加護』のおかげで水魔法風攻撃や防御もとても滑らかにできるようになったのも良かった。
お兄様の『鑑定の加護』も普通の鑑定よりもダンジョンの魔獣相手のほうがスムーズに発動する。今は魔獣に有効な攻撃や弱点の場所が指摘できる。
やはり、聖女の加護だからダンジョンに対して有効なのかもしれない。
アルファント殿下の『治癒の加護』も物理的な治癒の効果だけではなく、疲れを取ったり、状態異常を直す効果があるので、それも聖女の加護のおかげかもしれないと殿下が言っていた。
『隠蔽』と『鑑定』と『治癒』の加護が聖女一人に宿ると、ダンジョン攻略の時、聖女はとても忙しいのではないだろうか。
そう考えると、3人に分散した今の状態は有難いのだと思う。
後はこの聖女の杖が殿下の元にいってくれたらいいのだけれど。ツンデレというので聖女の杖が殿下にデレてくれるといいなぁと思ってアルファント殿下を見ていると、
「リーナ、何か良くないことを考えてないかな?」
殿下が良い笑顔で尋ねてきた。
「多分、聖女の杖が殿下に行くといいなぁとか思っていたんですよ。時々、聖女の杖に「アルファント殿下の治癒は素晴らしい、聖女に相応しいし光の魔法も聖女にピッタリ」と話しかけていますから」
「ああ、それはまた」
「まさに、ありがた迷惑という奴だなぁ」
「そうですよ。無駄なのに。聖女の杖も迷惑そうに点滅していますから。リーナが杖を取り出した時は喜んで光り輝いているのに」
「もう、お兄様!」
「それより、リーナ。休憩にしよう。あれ、作ってきてくれた?」
「はい。作ってきました」
という事で殿下から届いたお米で作った梅干し入りお握りと、豚汁ならぬ魔獣汁でお昼を兼ねた休憩になった。
殿下はお米を手に入れてからは家のタウンハウスにセッセとお米を大量に寄こすようになった。
他の大陸から輸入しているのでかなりお高いと思うのだけど、私の炊いたお米とか炊き込みご飯とかは国王陛下を始め王家の人たちにも分けずにアルファント殿下と侍従のランディ様と護衛のトーリスト様とで食べているらしい。
時折、ノヴァ神官に取られるそうだけど。
ご飯も王家の料理人が炊くより、私が炊いたほうが格別に美味しいと言っていた。
「ああ、美味い。懐かしい味だが記憶にあるより、はるかに美味い」
「本当にリーナ、さま、様だよ。何でこんなに美味しいんだろう。お握りも美味いし豚汁も美味い。味噌と醤油が出せるなんてリーナの加護は最高だ」
「私も殿下の侍従になれて本当に良かったです。こんな美味しいものがこの世にあったなんて。知らずに損するところでした。ダンジョン攻略と学生会の仕事がもう楽しみでたまりません」
「美味しいです」
皆が本当に嬉しそうにお握りと魔獣汁を食べていた。
梅干しはウメンの塩漬けだけど梅干しとそんなに変わらないと思う。ただ、梅の実よりもウメンのほうが少し大きいだけで。海苔は何とお米を輸入した大陸からこんなのもあります、と付いてきた。
殿下は喜んで追加で輸入する手配をしたそうだ。おかげで海苔つき醤油煎餅を作る事ができて殿下は両手を上げて喜んだ。オヤツの幅が広がったと言える。
今回のオヤツはアンコロ餅。殿下の顔が緩んで嬉しそうだ。やっぱり殿下はアンコがかなり好きみたい。実は、もち米も問い合わせたら輸入できたので、お兄様がタウンハウスで餅つきをした。
作ったお餅はお雑煮にして大鍋を年末に届けておいた。
アルファント殿下は1月1日に3人でお雑煮を食べたそうだ。毎年の恒例にしたいと言われてしまった。
私、ここから逃げようと思っているんですけど。加護は『水魔法の加護』ではなくて『液体の加護』だし。
とりあえず、問題は先送り、先送り。
私のポーションがピンク教の洗脳に効果あり、とわかったのでまずは高位貴族の子息に配られるポーションを学園に納入する事になった。ピンクさんが『ゲームが始まった』と攻略対象の人たちに寄ってくる事が予想できたので、高位貴族の子息には私のポーションが行き渡るように手配をした。
ポーションは良い値段がするので、隠れた現金収入を得る事ができたのは嬉しい。
でも、ないとは思うけどゲームが始まってアルファント殿下がピンクさんにデレるかもと考えたらすごく嫌な気分になる。気にしないようにしているけど、本当はすごく不安。
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