50 / 103
50. 食欲の秋
しおりを挟む
新学期はまだ暑い。
夏休みは新しいダンジョンがいくつかできてその対処で忙しかったし、新学期が始まっても行事や雑事で忙しい。合間を見てお茶会も開かなくてはならないし。
お茶会は公爵令嬢のエーアリア様が卒業されてしまったので、規模と回数を減らして開催している。
4年生に侯爵令嬢がいらっしゃるので彼女を中心に企画し、エーアリア様と一緒に卒業されたとはいえ、服飾関係を一手に握っているグラース家のファリア様がタウンハウスの皆さまのドレスを変わらずに見て下さる事になった。
グラース家の商会がドレスを手配し、一度着た後は引き取ってタウンハウスのお茶会ドレスという名目で転売しているらしい。
タウンハウスの皆さまと高位貴族の方とは相変わらず仲良くしてもらっている。
しかし、問題はピンク教の人たちで、彼らからは私に対して冷たい視線が送られてくるようになった。
ヒソヒソとこちらを見て話しているしこの間は通りすがりに舌打ちをされた。
「殿下に媚びを売っている」
「学生会に無理やり入った」
「大人しそうな顔をして実は意地が悪い」
聞こえるように悪口を言ってくるピンク教の人達にはまいってしまう。悪口って堪える。これってピンクさんが私の悪口を言っているんだと思うけど、彼女は知らん顔して時々お菓子を食べにくる。
相変わらず悪口と愚痴と自慢話だけど、最近はいかにピンク教の人たちからチヤホヤされているか、得意げに話してくる。
「恋の季節だからモテモテなんだ~。もう、ラクアートが焼きもち焼いちゃって煩いから器を大きく持つように、って説教したりして。あの連中ってあたしの熱烈なファンクラブだから、あたしはアイドルのようなものね。あたしのハンカチ、大人気なんだ。ほら、リーナもこのハンカチを肌身離さず持っていてよ」
と言いながらまた、使い古しのレースのハンカチをくれた。
やっぱり、あの臭い香水がタップリとかかっていたので、直ぐに水球に包んでアイテムボックスの危険物置き場に入れておいた。
もう、ピンクさんが来ると部屋が臭くなるから喚起と掃除をしないといけないから面倒。でも、水球の周りに水を纏わせて部屋を掃除すると直ぐ綺麗になるから、まぁ、いいけど。私の水魔法の腕は確実に上がっている。
「ねぇ、お兄様、アッという間に日々は過ぎるモノね」
「本当だよ。夏休みはダンジョン攻略で忙しかったし、2学期は行事が目白押し。俺は学生会の一員じゃないのに忙しいったらないね。ピンク頭があまり来なくなったのは良いけど」
「ホント、それでも時々は顔を出すのよね。来なくて良いのに」
「ほんと、アイツ臭いから。でも、ピンク教の奴らはピンク頭の臭いハンカチの切れ端をロケットペンダントに入れて持ち歩いているらしいよ。気持ち悪い」
「うそ! 見たの?」
「ペンダントから出して臭いをかいでいるところをランディが見たって言っていた」
「そうなんだ。それはちょっと引くわね」
「だろう。しかも「フレグランス様の良い臭いだ」って何人かでウットリと話していたって、ドン引きだよ」
「そうね。でも、ピンク教は下級貴族を中心に広がりつつあるみたい」
「何故だろう。そういえば、リーナ、この間ピンク教の奴に絡まれてなかったか?」
「ええ、何だか凄い誤解をしているみたいで困ったわ。私がピンクさんに迷惑をかけているんですって。逆なのに。借りっぱなしになっているモノを早く返してやってくれですって」
「ピンク頭からは何にも借りてなんかないのに、あっ、まさか『水魔法の加護』の事か?」
「どうやって加護の貸し借りなんてするのか、わからないわ。それなのに、真面目な顔して早く返せっていうの」
「第一、『水魔法の加護』なんて持っていないのに。バカだな、あいつら。でも、ピンク教の奴らはなんか臭いからピンク頭の奴、臭いで操ってないか? この世界で人を操るアイテムなんてあるのか、いや、乙女ゲームの世界の課金アイテムとかで手に入れた? どっかでそんな怪しいアイテム、売っているのか? 前に好意がカンストしたアイテムとか喚いていたし」
「でも、ピンクさんには王家の影が付いていてその行動はチェックされているのよ。特に怪しい事はしてないみたい。でも、あの香水をつけだしたのは、というか香水はどこで買っているのかしら?」
私達はイモ羊羹と冷たい抹茶オレでオヤツを食べていた。
夏休みにダンジョンを攻略した時にダンジョンから魔虫が出てくるのを駆除してくれたからと、近所の農家の人がサツマイモを沢山お土産に持たせてくれたのだ。アルファント殿下は良い笑顔で
「サツマイモの炊き込みご飯とサツマイモのコロッケとスイートポテトが食べたいから頼むね。お米の手配はできたからお米と植物油は届けるし。面倒かけて悪いけど助けると思って作ってくれないか。リーナ、頼むよ」
私に大量のサツマイモを渡してきた。そう、出し汁とお醤油が私の加護で出せる事がばれてしまったのだ。お兄様のせいで。
もっとも『水魔法の加護』から派生したと思い込んでいるので、そこはそのままにしておいた。多分、『液体の加護』から出した材料が良いモノのせいだとは思うんだけど、私が料理すると、とても美味しくなるのだ。
「私達もご相伴に預かれるのがとてもラッキーだと喜んでいます。もう、ダンジョン攻略もリーナ様がいるおかげで美味しいモノが食べられるし、アークのおかげで焼き立て熱々の美味しいパンが食べられるし、前は面倒だったダンジョン攻略が今はとても楽しみです」
「楽しみです」
ランディ様とトーリスト様もすごく料理を褒めてくれる。トーリスト様は無口なので一言だけだけど。
私を除いた4人はこのダンジョン攻略の間にすっかり仲良くなって名前で呼び合っている。
でも、私の事はアルファント殿下とお兄様だけがリーナと呼び捨てでランディ様とトーリスト様は様を付けてくる。
様でなくても、とお話したけど、聖女様に恐れ多いと言われてしまった。その後、殿下にまだ聖女に成ってないと訂正されて、お菓子の女神様と言い直していた。
聖女より、女神様のほうが上なんですけど。
王宮の桜は変わらず一輪だけ元気に咲いている。
このままゲームの始まりを迎えると桜の花にも何か変化が出てくるのだろうか。
夏休みは新しいダンジョンがいくつかできてその対処で忙しかったし、新学期が始まっても行事や雑事で忙しい。合間を見てお茶会も開かなくてはならないし。
お茶会は公爵令嬢のエーアリア様が卒業されてしまったので、規模と回数を減らして開催している。
4年生に侯爵令嬢がいらっしゃるので彼女を中心に企画し、エーアリア様と一緒に卒業されたとはいえ、服飾関係を一手に握っているグラース家のファリア様がタウンハウスの皆さまのドレスを変わらずに見て下さる事になった。
グラース家の商会がドレスを手配し、一度着た後は引き取ってタウンハウスのお茶会ドレスという名目で転売しているらしい。
タウンハウスの皆さまと高位貴族の方とは相変わらず仲良くしてもらっている。
しかし、問題はピンク教の人たちで、彼らからは私に対して冷たい視線が送られてくるようになった。
ヒソヒソとこちらを見て話しているしこの間は通りすがりに舌打ちをされた。
「殿下に媚びを売っている」
「学生会に無理やり入った」
「大人しそうな顔をして実は意地が悪い」
聞こえるように悪口を言ってくるピンク教の人達にはまいってしまう。悪口って堪える。これってピンクさんが私の悪口を言っているんだと思うけど、彼女は知らん顔して時々お菓子を食べにくる。
相変わらず悪口と愚痴と自慢話だけど、最近はいかにピンク教の人たちからチヤホヤされているか、得意げに話してくる。
「恋の季節だからモテモテなんだ~。もう、ラクアートが焼きもち焼いちゃって煩いから器を大きく持つように、って説教したりして。あの連中ってあたしの熱烈なファンクラブだから、あたしはアイドルのようなものね。あたしのハンカチ、大人気なんだ。ほら、リーナもこのハンカチを肌身離さず持っていてよ」
と言いながらまた、使い古しのレースのハンカチをくれた。
やっぱり、あの臭い香水がタップリとかかっていたので、直ぐに水球に包んでアイテムボックスの危険物置き場に入れておいた。
もう、ピンクさんが来ると部屋が臭くなるから喚起と掃除をしないといけないから面倒。でも、水球の周りに水を纏わせて部屋を掃除すると直ぐ綺麗になるから、まぁ、いいけど。私の水魔法の腕は確実に上がっている。
「ねぇ、お兄様、アッという間に日々は過ぎるモノね」
「本当だよ。夏休みはダンジョン攻略で忙しかったし、2学期は行事が目白押し。俺は学生会の一員じゃないのに忙しいったらないね。ピンク頭があまり来なくなったのは良いけど」
「ホント、それでも時々は顔を出すのよね。来なくて良いのに」
「ほんと、アイツ臭いから。でも、ピンク教の奴らはピンク頭の臭いハンカチの切れ端をロケットペンダントに入れて持ち歩いているらしいよ。気持ち悪い」
「うそ! 見たの?」
「ペンダントから出して臭いをかいでいるところをランディが見たって言っていた」
「そうなんだ。それはちょっと引くわね」
「だろう。しかも「フレグランス様の良い臭いだ」って何人かでウットリと話していたって、ドン引きだよ」
「そうね。でも、ピンク教は下級貴族を中心に広がりつつあるみたい」
「何故だろう。そういえば、リーナ、この間ピンク教の奴に絡まれてなかったか?」
「ええ、何だか凄い誤解をしているみたいで困ったわ。私がピンクさんに迷惑をかけているんですって。逆なのに。借りっぱなしになっているモノを早く返してやってくれですって」
「ピンク頭からは何にも借りてなんかないのに、あっ、まさか『水魔法の加護』の事か?」
「どうやって加護の貸し借りなんてするのか、わからないわ。それなのに、真面目な顔して早く返せっていうの」
「第一、『水魔法の加護』なんて持っていないのに。バカだな、あいつら。でも、ピンク教の奴らはなんか臭いからピンク頭の奴、臭いで操ってないか? この世界で人を操るアイテムなんてあるのか、いや、乙女ゲームの世界の課金アイテムとかで手に入れた? どっかでそんな怪しいアイテム、売っているのか? 前に好意がカンストしたアイテムとか喚いていたし」
「でも、ピンクさんには王家の影が付いていてその行動はチェックされているのよ。特に怪しい事はしてないみたい。でも、あの香水をつけだしたのは、というか香水はどこで買っているのかしら?」
私達はイモ羊羹と冷たい抹茶オレでオヤツを食べていた。
夏休みにダンジョンを攻略した時にダンジョンから魔虫が出てくるのを駆除してくれたからと、近所の農家の人がサツマイモを沢山お土産に持たせてくれたのだ。アルファント殿下は良い笑顔で
「サツマイモの炊き込みご飯とサツマイモのコロッケとスイートポテトが食べたいから頼むね。お米の手配はできたからお米と植物油は届けるし。面倒かけて悪いけど助けると思って作ってくれないか。リーナ、頼むよ」
私に大量のサツマイモを渡してきた。そう、出し汁とお醤油が私の加護で出せる事がばれてしまったのだ。お兄様のせいで。
もっとも『水魔法の加護』から派生したと思い込んでいるので、そこはそのままにしておいた。多分、『液体の加護』から出した材料が良いモノのせいだとは思うんだけど、私が料理すると、とても美味しくなるのだ。
「私達もご相伴に預かれるのがとてもラッキーだと喜んでいます。もう、ダンジョン攻略もリーナ様がいるおかげで美味しいモノが食べられるし、アークのおかげで焼き立て熱々の美味しいパンが食べられるし、前は面倒だったダンジョン攻略が今はとても楽しみです」
「楽しみです」
ランディ様とトーリスト様もすごく料理を褒めてくれる。トーリスト様は無口なので一言だけだけど。
私を除いた4人はこのダンジョン攻略の間にすっかり仲良くなって名前で呼び合っている。
でも、私の事はアルファント殿下とお兄様だけがリーナと呼び捨てでランディ様とトーリスト様は様を付けてくる。
様でなくても、とお話したけど、聖女様に恐れ多いと言われてしまった。その後、殿下にまだ聖女に成ってないと訂正されて、お菓子の女神様と言い直していた。
聖女より、女神様のほうが上なんですけど。
王宮の桜は変わらず一輪だけ元気に咲いている。
このままゲームの始まりを迎えると桜の花にも何か変化が出てくるのだろうか。
0
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜
黄舞
ファンタジー
勇者パーティの支援職だった私は、自己を超々強化する秘法と言われた魔法を使い、幼女になってしまった。
そんな私の姿を見て、パーティメンバーが決めたのは……
「アリシアちゃん。いい子だからお留守番しててね」
見た目は幼女でも、最強の肉体を手に入れた私は、付いてくるなと言われた手前、こっそりひっそりと陰から元仲間を支援することに決めた。
戦神の愛用していたという神器破城槌を振り回し、神の乗り物だと言うもふもふ神獣と旅を続ける珍道中!
主人公は元は立派な大人ですが、心も体も知能も子供です
基本的にコメディ色が強いです
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
聖女だと名乗り出たら、偽者呼ばわりをされて国外に追放されました。もうすぐ国が滅びますが、もう知りません
柚木ゆず
ファンタジー
厄災が訪れる直前に誕生するとされている、悲劇から国や民を守る存在・聖女。この国の守り神であるホズラティア様に選ばれ、わたしシュゼットが聖女に覚醒しました。
厄災を防ぐにはこの体に宿った聖なる力を、王城にあるホズラティア様の像に注がないといけません。
そのためわたしは、お父様とお母様と共にお城に向かったのですが――そこでわたし達家族を待っていたのは、王家の方々による『偽者呼ばわり』と『聖女の名を騙った罪での国外追放』でした。
陛下や王太子殿下達は、男爵家の娘如きが偉大なる聖女に選ばれるはずがない、と思われているようでして……。何を言っても、意味はありませんでした……。
わたし達家族は罵声を浴びながら国外へと追放されてしまい、まもなく訪れる厄災を防げなくなってしまったのでした。
――ホズラティア様、お願いがございます――。
――陛下達とは違い、他の方々には何の罪もありません――。
――どうか、国民の皆様をお救いください――。
親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい
咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。
新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。
「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」
イルザは悪びれず私に言い放った。
でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ?
※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる