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44. リーナの初恋?
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結局、アルファント殿下は
「リーナの水魔法って本当にチートだな。出し汁まで出せるなんて素晴らしい。小さい頃からレベルを上げていただけの事はある」
と『水魔法』の拡大解釈で『出し汁』が出せるようになったと納得してくれたし、出し汁を使って、今度は鍋を食べようと言われた。
聖女イコール『水魔法』になっているという思い込みのせいかもしれない。5歳のころから『隠蔽』のレベルを上げると同時に『水魔法』のレベルも上げていたと勝手に思ってもらえたようだ。
お出汁が『水魔法』でだせるなんて無理があると思うけど。
『水魔法』と『液体』の加護って被っている部分も結構あると思うから、これからもバレないように気を付けたいと思う。特にお兄様が最近、アルファント殿下に気を許し過ぎて心配。ゆるくなったお口にチャックをしておかなくては。
ノヴァ神官は過去の資料を色々持ってきてくれたけど、『始まりの書』と言われる最初のころの文書は見当たらなかったそうだ。宝物庫の中に隠し扉があるかもしれないし、この神殿の中にも隠し金庫みたいなものがあるかもしれない、という事で調べてみると言われた。
魔王の封印は100年ごとの大きな出来事ではあるが、どうしても同じことをしているので、過去の文書などは埋もれてしまうらしい。
「転生者の聖女がキーマンになるな」
アルファント殿下が私を見たけど、私だけが聖女の資格があるわけじゃないし。
「アルファント殿下とリーナ様、アーク様が三位一体の聖女の加護持ちですし、三人とも転生者という事は何か、意味があるのかもしれませんね」
「三位一体!」
「そうだった……」
「ええ、聖女の加護は『治癒』『隠蔽』『鑑定』です。今回はお三人がこの加護を分け合って受け取っています。聖女の杖はリーナ様が持ち主のようですが、魔王、小太郎様の封印、もしくは解放に関してはお三人の協力が欠かせないのではないでしょうか」
「か、考えてなかった」
「言われてみれば確かにそうだ」
「万が一に備えてできるだけ加護のレベルを上げるようにされたほうが良いと思います」
という会話があって、アルファント殿下は『治癒』のレベルを上げる為に神殿にお忍びで通う事になった。
お兄様も鑑定の結果がつまらなくても地道に鑑定をする事になり、私は言われなくても常時発動しているので褒められた。
「ねぇ、お兄様、ハニートラップって知っている?」
「ハニトラ? 甘いお菓子?」
「もう、知っているくせに」
「いや、知っているけどリーナが殿下にハニトラ仕掛けるの?」
「どうして、殿下なのよ。お兄様がピンクさんに仕掛けるの」
「ハニトラって女が男に仕掛けるんだよ」
「それの男版。ほら、ピンクさんが星の王子様が18くらいになったらタイプって前、言っていたじゃない。お兄様が大人っぽく装ってピンクさんを誘惑するの」
「ウ、ゲェ」
「もう、お兄様。どうして星の王子様なのか、パズルはどこにあるのか、ドラゴンってどこにいるのか知りたくない?」
「いや、無理だから。俺、あの手の女、無理だから。近づくだけで蕁麻疹出てきそう。殿下も同じような事を言っていた。何故、ラクちゃんがあれに引っかかったのか全く理解できない。もう、リーナだけが頼りだよ。リーナがピンク頭に普通に接する事ができるのが、ほんと、尊敬に値するよ」
「尊敬?」
「皆、言っているよ。あの頭おかしいピンク頭に対応するリーナは聖女のようだって。いや、もう本当に聖女に成ってしまえばいい。聖女だし。小太郎さんも助かるし、リーナと殿下ってお似合いだし、殿下と一緒のリーナ楽しそうじゃないか」
「えっ!? 楽しそう?」
そりゃ、最近、アルファント殿下と一緒にいる事が多くてちょっと、意識してしまう事もあるけど、でも、でも、殿下が相手だと次期王妃? いえ、いえ、いえ、無理。私に王妃なんて無理だから。
私は平凡な恋をして、平凡な結婚をして今度こそ幸せに暮らすのよ。前世では、夫は最初から愛人の元に行っていたし、学校はずっと女子校で、学校出てすぐ結婚したから恋も愛も知らないままだったし、今度こそ普通の幸せを……。
殿下は確かにカッコいいし優しいし、でも、見ていると恥ずかしいのはそんなに男の人と一緒になった事がないというか、男の人とお話したこともほとんどないし、そのせい。でも、でも、殿下は。
「リーナ、顔、真っ赤」
「えっ、ウソ!」
「リーナ、最近、殿下の事、凄く意識しているだろう?」
「えっ、-と、確かに男の人とあまり話したことがなかったから、ちょっとドキマギしているかもしれないけど」
「俺も男だよ」
「えっ! あー、確かにお兄様も男だったわ。男だって思ったこともなかった。お兄様は家族だから」
「うん。リーナ。リーナの殿下に対する気持ち、それはたぶん初恋だよ」
「えっ、あの、初恋は実らない、っていうあの初恋?」
「いや、どういう認識なんだよ。初恋を実らせて結婚する人もいるから。リーナはラクちゃんと婚約破棄をして殿下と結ばれたら良いと思う。聖女である事が広く周知されれば外野も黙らせることができるしね」
「だって、殿下にだって、選ぶ権利が」
「殿下はリーナの事が好きだと思うよ。リーナが側に来ると微妙に喜んでいるから。隠そうとして変な顔になっているけど、侍従のランディ様なんてあきれた顔している」
「うそ!」
「本当だって。問題は魔王こと『小太郎』さんの覚醒と乙女ゲームの関係だな。これまでのセオリー通りに40年後に封印で、乙女ゲームのほうはピンク頭がラクちゃんを攻略して終わりならいいけど、色々知ってしまったからにはこのまま知らん顔して逃げられないだろう? というか、リーナ、聞いてる?」
「えっ? 殿下が私の初恋? 殿下も私が好きかも?」
私の頭の中はグルグルしていた。目が回りそう。
『好きだよと言えないのが初恋』
『初恋はかなわない』
じゃぁ、殿下が初恋だと実らない。殿下が初恋だとまずいじゃない。
どうしよう。もう、どこかへ逃げてしまいたい。
「リーナの水魔法って本当にチートだな。出し汁まで出せるなんて素晴らしい。小さい頃からレベルを上げていただけの事はある」
と『水魔法』の拡大解釈で『出し汁』が出せるようになったと納得してくれたし、出し汁を使って、今度は鍋を食べようと言われた。
聖女イコール『水魔法』になっているという思い込みのせいかもしれない。5歳のころから『隠蔽』のレベルを上げると同時に『水魔法』のレベルも上げていたと勝手に思ってもらえたようだ。
お出汁が『水魔法』でだせるなんて無理があると思うけど。
『水魔法』と『液体』の加護って被っている部分も結構あると思うから、これからもバレないように気を付けたいと思う。特にお兄様が最近、アルファント殿下に気を許し過ぎて心配。ゆるくなったお口にチャックをしておかなくては。
ノヴァ神官は過去の資料を色々持ってきてくれたけど、『始まりの書』と言われる最初のころの文書は見当たらなかったそうだ。宝物庫の中に隠し扉があるかもしれないし、この神殿の中にも隠し金庫みたいなものがあるかもしれない、という事で調べてみると言われた。
魔王の封印は100年ごとの大きな出来事ではあるが、どうしても同じことをしているので、過去の文書などは埋もれてしまうらしい。
「転生者の聖女がキーマンになるな」
アルファント殿下が私を見たけど、私だけが聖女の資格があるわけじゃないし。
「アルファント殿下とリーナ様、アーク様が三位一体の聖女の加護持ちですし、三人とも転生者という事は何か、意味があるのかもしれませんね」
「三位一体!」
「そうだった……」
「ええ、聖女の加護は『治癒』『隠蔽』『鑑定』です。今回はお三人がこの加護を分け合って受け取っています。聖女の杖はリーナ様が持ち主のようですが、魔王、小太郎様の封印、もしくは解放に関してはお三人の協力が欠かせないのではないでしょうか」
「か、考えてなかった」
「言われてみれば確かにそうだ」
「万が一に備えてできるだけ加護のレベルを上げるようにされたほうが良いと思います」
という会話があって、アルファント殿下は『治癒』のレベルを上げる為に神殿にお忍びで通う事になった。
お兄様も鑑定の結果がつまらなくても地道に鑑定をする事になり、私は言われなくても常時発動しているので褒められた。
「ねぇ、お兄様、ハニートラップって知っている?」
「ハニトラ? 甘いお菓子?」
「もう、知っているくせに」
「いや、知っているけどリーナが殿下にハニトラ仕掛けるの?」
「どうして、殿下なのよ。お兄様がピンクさんに仕掛けるの」
「ハニトラって女が男に仕掛けるんだよ」
「それの男版。ほら、ピンクさんが星の王子様が18くらいになったらタイプって前、言っていたじゃない。お兄様が大人っぽく装ってピンクさんを誘惑するの」
「ウ、ゲェ」
「もう、お兄様。どうして星の王子様なのか、パズルはどこにあるのか、ドラゴンってどこにいるのか知りたくない?」
「いや、無理だから。俺、あの手の女、無理だから。近づくだけで蕁麻疹出てきそう。殿下も同じような事を言っていた。何故、ラクちゃんがあれに引っかかったのか全く理解できない。もう、リーナだけが頼りだよ。リーナがピンク頭に普通に接する事ができるのが、ほんと、尊敬に値するよ」
「尊敬?」
「皆、言っているよ。あの頭おかしいピンク頭に対応するリーナは聖女のようだって。いや、もう本当に聖女に成ってしまえばいい。聖女だし。小太郎さんも助かるし、リーナと殿下ってお似合いだし、殿下と一緒のリーナ楽しそうじゃないか」
「えっ!? 楽しそう?」
そりゃ、最近、アルファント殿下と一緒にいる事が多くてちょっと、意識してしまう事もあるけど、でも、でも、殿下が相手だと次期王妃? いえ、いえ、いえ、無理。私に王妃なんて無理だから。
私は平凡な恋をして、平凡な結婚をして今度こそ幸せに暮らすのよ。前世では、夫は最初から愛人の元に行っていたし、学校はずっと女子校で、学校出てすぐ結婚したから恋も愛も知らないままだったし、今度こそ普通の幸せを……。
殿下は確かにカッコいいし優しいし、でも、見ていると恥ずかしいのはそんなに男の人と一緒になった事がないというか、男の人とお話したこともほとんどないし、そのせい。でも、でも、殿下は。
「リーナ、顔、真っ赤」
「えっ、ウソ!」
「リーナ、最近、殿下の事、凄く意識しているだろう?」
「えっ、-と、確かに男の人とあまり話したことがなかったから、ちょっとドキマギしているかもしれないけど」
「俺も男だよ」
「えっ! あー、確かにお兄様も男だったわ。男だって思ったこともなかった。お兄様は家族だから」
「うん。リーナ。リーナの殿下に対する気持ち、それはたぶん初恋だよ」
「えっ、あの、初恋は実らない、っていうあの初恋?」
「いや、どういう認識なんだよ。初恋を実らせて結婚する人もいるから。リーナはラクちゃんと婚約破棄をして殿下と結ばれたら良いと思う。聖女である事が広く周知されれば外野も黙らせることができるしね」
「だって、殿下にだって、選ぶ権利が」
「殿下はリーナの事が好きだと思うよ。リーナが側に来ると微妙に喜んでいるから。隠そうとして変な顔になっているけど、侍従のランディ様なんてあきれた顔している」
「うそ!」
「本当だって。問題は魔王こと『小太郎』さんの覚醒と乙女ゲームの関係だな。これまでのセオリー通りに40年後に封印で、乙女ゲームのほうはピンク頭がラクちゃんを攻略して終わりならいいけど、色々知ってしまったからにはこのまま知らん顔して逃げられないだろう? というか、リーナ、聞いてる?」
「えっ? 殿下が私の初恋? 殿下も私が好きかも?」
私の頭の中はグルグルしていた。目が回りそう。
『好きだよと言えないのが初恋』
『初恋はかなわない』
じゃぁ、殿下が初恋だと実らない。殿下が初恋だとまずいじゃない。
どうしよう。もう、どこかへ逃げてしまいたい。
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