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37. 王宮の神殿と桜
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この国は遥か昔に理の女神様と勇者が建国した国である。
女神様と勇者の子孫がこの国の王族として国を治め守っている。
100年周期で魔王が現れるが、その度にその時代の聖女が勇者を選定し魔王を封じる。魔王が現れると一時的に災害が起こるが、それは魔王を封じる事でおさまり、また人々は平穏な時を過ごすことができる。
私達は王宮の奥まったプライベートな応接間に通された。
陛下の護衛と侍従、二人だけしかお付きの人は居ない。それにアルファント殿下と私とお兄様。この部屋の中にいるのは6人だけだ。侍従の人がいれてくれたお茶はとても美味しかった。流石は王宮。
アールミント・ド・レクシャエンヤ・パール様、レクシャエンヤ国の国王はアルファント殿下によく似ていた。
いや、殿下が陛下に似ているのは親子だから当たり前だけど。
殿下が上手に年を取るとこんなにいい男になるんだ、と思うほど陛下は美丈夫でカッコ良かった。
これまで殿下の事は一つ上の頼りになる先輩というスタンスで見ていたけど、こんな風にいい男になるかも、と思うとチョッと胸がドキッとした。
これが異性を意識したという事かしら。父親を見て息子を意識するって、……どうなのかしら。でも、今は気にしないようにしなくては。
頭を下げた私達に対して、国王陛下は穏やかな声で
「頭を上げてくれたまえ、ここは非公式な場だから。家族が息子の友人に会って話を聞くだけだ。アルファントから話は聞いているが、厄介な事になっているようだ。王家に伝わる秘匿の真実がある。それを聞いてどうするか決めてほしい」
「ある程度、私も父上から話を聞いているが……詳しい話は王宮の神殿で話してくれるそうだ」
「どうするか」って何をどうするのだろう? ちょっと不安な予感がする。
そのまま、案内された王宮の神殿は本当に奥まったところにあった。王家の人たちのプライベート空間を通らなければいけない神殿って、王家専用って事なんだろうか。
神殿は小さい建物だったが美しかった。中に入る為には個人認証が必要で、王家の認識された人以外だと複雑な手続きが必要だった。
そして中には大変美しい人が待っていた。
「初めまして。今代の聖女様。私は王家の守り人である神官のノヴァと申します」
彼、彼で良いのだろうか、その美しい人は私に向かって優雅に頭を下げた。国王陛下が困ったように声をかけてくれた。
「これ、まだ彼女は聖女になるとは言ってない」
「これは失礼しました。すでに聖女の杖をお持ちのようでしたので」
「あの、聖女の杖があるってお聞きになったのですか?」
「いえ、聖女と魔王についての詳しい資料を見たいとしかお聞きしておりませんが、リーナ様が聖女の杖をお持ちなのはわかります。すでにアイテムボックスもお持ちのようですね」
「……」
「私には『真実の目』という加護がありますから」
ええっ、それはちょっと困る。
「聖女というのは聖女の杖に選ばれます。また、聖女の杖も聖女に選ばれるのです。ですから、お互いに認め合わないと聖女になる事はできません。つまり、聖女、いえ、リーナ様が聖女に成ると思って杖の存在を認めなければ完全なる聖女にはなりません」
「つまり、リーナが聖女に成りたくないと思ったら聖女にはならないという事ですか?」
「残念ながら」
「あの、この杖が他の方、例えばアルファント殿下がいいと思えばアルファント殿下が聖女って事でしょうか」
「まぁ、そうなります。認めあうと、ですが」
「アルファントが聖女か……」
「ちょっ、止めてください。私は「治癒の加護」を持っているだけで」
「そこなのです」
ノヴァ神官がいうには元来、聖女が『治癒』『隠蔽』『鑑定』の三つの加護を持つのも、聖女の杖を手に入れる儀式もこの王宮の神殿で行われていたそうだ。
神殿の庭にも桜の木が1本だけ生えていた。
「魔王の封印が解けそうになるとこの桜に花が咲きます。そして、神殿に聖女が現れます。桜の花が咲くと聖女が「不思議な夢を見ます」と神殿に訪れるのでこの王宮の桜の木にいざなうと「異国の歌」を歌って虹色の宝玉が落ちてきて、それを3日続ける事で聖女は三つの加護を得る事ができるのです」
「三つの加護ですか」
「『治癒』は文字どおり人を癒す加護、『隠蔽』はアイテムボックス、『鑑定』は魔物の弱点を即座に見抜くモノとこれまでは認識されていました。ですが、『隠蔽』の加護でステータスを出すことができたのは初めてなのです。
これらの加護は魔王を封印すると聖女の中から消えていきます。また、聖女の杖も元の形に戻ります。聖女であった時の記憶は残ってはいるのですが、夢の中のようなボンヤリとした思い出としてしか残りません。聖女に成られた方はそのまま神殿に属していただいてもいいし、元の生活に戻られてもいい、貴族や王族になりたい希望があってもかなえられます。なぜなら、魔王を封印するのは聖女だからです。役目を果たしていただいた聖女は生涯大切にされます」
「この加護、消えるんですか……」
物凄く残念。なぜなら食料や生活用品やベッドにタンスにテーブル等色んなものが山のように入っているから。
私とお兄様がショックを受けたような顔をしたのでノヴァ神官は慌てて
「『隠蔽』の加護で手に入れられたアイテムボックスの容量はそんなにないので国からアイテムボックスは授与されますよ」
と、いってくださったけど、そんな普通のアイテムボックスに入るような分量じゃないんです!
「だけど、『隠蔽の加護』はすごくレベルが上がっているみたいだけど消えてしまうのか」
「そこも不思議なんですが、これまでレベルというのは聞いた事がありませんし、まだ桜の花も咲いてないのに聖女が現れるなんて事はないはずなんです」
「どうして、アプリコット辺境伯の土地に桜が咲いていたのかも謎ですし、リーナ様が聖女の杖を持たれているのは間違いありませんが、何故、今、聖女の杖が現れてしまったのか……。それも虹色の宝玉を食べたのが今から8年ほど前なんて」
「あの、必ず聖女が魔王を封印するのですか?」
「正確には聖女の杖が封印するらしいのですが、その時の聖女によって封印の仕方が違うのです。それは聖女の杖の形が関係しているらしいのですが」
「あの、ここにあるのは杖というよりは枝なんですけど」
私が聖女の杖をアイテムボックスから取り出すと聖女の枝は喜んでピカピカッと光った。枝についている宝石がキラキラと光ってイルミネーションのようだ。
キラキラしすぎ、だと思う。
女神様と勇者の子孫がこの国の王族として国を治め守っている。
100年周期で魔王が現れるが、その度にその時代の聖女が勇者を選定し魔王を封じる。魔王が現れると一時的に災害が起こるが、それは魔王を封じる事でおさまり、また人々は平穏な時を過ごすことができる。
私達は王宮の奥まったプライベートな応接間に通された。
陛下の護衛と侍従、二人だけしかお付きの人は居ない。それにアルファント殿下と私とお兄様。この部屋の中にいるのは6人だけだ。侍従の人がいれてくれたお茶はとても美味しかった。流石は王宮。
アールミント・ド・レクシャエンヤ・パール様、レクシャエンヤ国の国王はアルファント殿下によく似ていた。
いや、殿下が陛下に似ているのは親子だから当たり前だけど。
殿下が上手に年を取るとこんなにいい男になるんだ、と思うほど陛下は美丈夫でカッコ良かった。
これまで殿下の事は一つ上の頼りになる先輩というスタンスで見ていたけど、こんな風にいい男になるかも、と思うとチョッと胸がドキッとした。
これが異性を意識したという事かしら。父親を見て息子を意識するって、……どうなのかしら。でも、今は気にしないようにしなくては。
頭を下げた私達に対して、国王陛下は穏やかな声で
「頭を上げてくれたまえ、ここは非公式な場だから。家族が息子の友人に会って話を聞くだけだ。アルファントから話は聞いているが、厄介な事になっているようだ。王家に伝わる秘匿の真実がある。それを聞いてどうするか決めてほしい」
「ある程度、私も父上から話を聞いているが……詳しい話は王宮の神殿で話してくれるそうだ」
「どうするか」って何をどうするのだろう? ちょっと不安な予感がする。
そのまま、案内された王宮の神殿は本当に奥まったところにあった。王家の人たちのプライベート空間を通らなければいけない神殿って、王家専用って事なんだろうか。
神殿は小さい建物だったが美しかった。中に入る為には個人認証が必要で、王家の認識された人以外だと複雑な手続きが必要だった。
そして中には大変美しい人が待っていた。
「初めまして。今代の聖女様。私は王家の守り人である神官のノヴァと申します」
彼、彼で良いのだろうか、その美しい人は私に向かって優雅に頭を下げた。国王陛下が困ったように声をかけてくれた。
「これ、まだ彼女は聖女になるとは言ってない」
「これは失礼しました。すでに聖女の杖をお持ちのようでしたので」
「あの、聖女の杖があるってお聞きになったのですか?」
「いえ、聖女と魔王についての詳しい資料を見たいとしかお聞きしておりませんが、リーナ様が聖女の杖をお持ちなのはわかります。すでにアイテムボックスもお持ちのようですね」
「……」
「私には『真実の目』という加護がありますから」
ええっ、それはちょっと困る。
「聖女というのは聖女の杖に選ばれます。また、聖女の杖も聖女に選ばれるのです。ですから、お互いに認め合わないと聖女になる事はできません。つまり、聖女、いえ、リーナ様が聖女に成ると思って杖の存在を認めなければ完全なる聖女にはなりません」
「つまり、リーナが聖女に成りたくないと思ったら聖女にはならないという事ですか?」
「残念ながら」
「あの、この杖が他の方、例えばアルファント殿下がいいと思えばアルファント殿下が聖女って事でしょうか」
「まぁ、そうなります。認めあうと、ですが」
「アルファントが聖女か……」
「ちょっ、止めてください。私は「治癒の加護」を持っているだけで」
「そこなのです」
ノヴァ神官がいうには元来、聖女が『治癒』『隠蔽』『鑑定』の三つの加護を持つのも、聖女の杖を手に入れる儀式もこの王宮の神殿で行われていたそうだ。
神殿の庭にも桜の木が1本だけ生えていた。
「魔王の封印が解けそうになるとこの桜に花が咲きます。そして、神殿に聖女が現れます。桜の花が咲くと聖女が「不思議な夢を見ます」と神殿に訪れるのでこの王宮の桜の木にいざなうと「異国の歌」を歌って虹色の宝玉が落ちてきて、それを3日続ける事で聖女は三つの加護を得る事ができるのです」
「三つの加護ですか」
「『治癒』は文字どおり人を癒す加護、『隠蔽』はアイテムボックス、『鑑定』は魔物の弱点を即座に見抜くモノとこれまでは認識されていました。ですが、『隠蔽』の加護でステータスを出すことができたのは初めてなのです。
これらの加護は魔王を封印すると聖女の中から消えていきます。また、聖女の杖も元の形に戻ります。聖女であった時の記憶は残ってはいるのですが、夢の中のようなボンヤリとした思い出としてしか残りません。聖女に成られた方はそのまま神殿に属していただいてもいいし、元の生活に戻られてもいい、貴族や王族になりたい希望があってもかなえられます。なぜなら、魔王を封印するのは聖女だからです。役目を果たしていただいた聖女は生涯大切にされます」
「この加護、消えるんですか……」
物凄く残念。なぜなら食料や生活用品やベッドにタンスにテーブル等色んなものが山のように入っているから。
私とお兄様がショックを受けたような顔をしたのでノヴァ神官は慌てて
「『隠蔽』の加護で手に入れられたアイテムボックスの容量はそんなにないので国からアイテムボックスは授与されますよ」
と、いってくださったけど、そんな普通のアイテムボックスに入るような分量じゃないんです!
「だけど、『隠蔽の加護』はすごくレベルが上がっているみたいだけど消えてしまうのか」
「そこも不思議なんですが、これまでレベルというのは聞いた事がありませんし、まだ桜の花も咲いてないのに聖女が現れるなんて事はないはずなんです」
「どうして、アプリコット辺境伯の土地に桜が咲いていたのかも謎ですし、リーナ様が聖女の杖を持たれているのは間違いありませんが、何故、今、聖女の杖が現れてしまったのか……。それも虹色の宝玉を食べたのが今から8年ほど前なんて」
「あの、必ず聖女が魔王を封印するのですか?」
「正確には聖女の杖が封印するらしいのですが、その時の聖女によって封印の仕方が違うのです。それは聖女の杖の形が関係しているらしいのですが」
「あの、ここにあるのは杖というよりは枝なんですけど」
私が聖女の杖をアイテムボックスから取り出すと聖女の枝は喜んでピカピカッと光った。枝についている宝石がキラキラと光ってイルミネーションのようだ。
キラキラしすぎ、だと思う。
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