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30. 治癒の実と聖女の杖
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さて、どうしようかなって悩んでいたんだけど、お兄様と話し合って聖女になる為の加護の話をアルファント殿下に打ち明ける事にした。
お兄様は私が『治癒の加護』の実を食べたらいいって言うんだけど、これ、食べると私が完全に聖女に成ってしまうから嫌だった。
聖女って癒しの力が使えるイメージがすごくあるから、『治癒』がつかえる人が聖女でいいんじゃないかな。
お兄様もこれ以上過ぎた力は俺にはちょっと無理って……。
じゃぁ、私に勧めないでよ、って言ったら、「リーナはすでにチートだから大丈夫」ですって。どういう理屈なの。
どうせ、『隠蔽』と『鑑定』は私とお兄様の二人に分かれているんだから『治癒』の加護は他の人が手に入れるといいんじゃないかと思う。加護は普通一人、一つですもの。
「お兄様、鑑定の加護、どうだった?」
「それがさ、色々試行錯誤したら、使い方が分かったけど木を鑑定したら『木』って出てくるし、ナイフを鑑定したら『ナイフ』、リーナを鑑定したら『女の子』だって。そのまま見たままが鑑定結果なんだよ。使えねぇ」
「それは、まぁ。レベルが上がるとわかる事が増えてくるのね。きっと」
「もっと早くからわかっていればレベルも上がったのに、ああ~、もったいない事した。その点、リーナは『隠蔽』のレベルがしっかり上がっているな」
「だって私、『隠蔽』の加護、使いまくっているもの。ステータスを誤魔化すために常時発動中でもあるしね。『液体』の加護も食料確保のために暇さえあれば色々出しているし」
「時々、指咥えて何か飲んでいるし」
「もう、お兄様ったら。はい、これ飲む?」
「おっ、ブドウジュースか」
「の、味がするポーション」
「このポーションも反則だよ。このおかげで魔力量がドンドン上がっているような気がする。そのうちエリクサーとかも出せるようになったら、もう『治癒』の加護なんていらないんじゃないか。加護なしでも聖女と変わりない。しかも、戦闘能力付き。むしろ勇者?」
「もう、お兄様ったら止めてよね。考えないようにしていたのに。私はごく平凡で幸せな人生を送りたいの」
「チートで平凡か。能力を隠しながらスローライフ、それもいいかも」
「いいわよね~。ささやかな幸せを積み重ねたいの」
「できるといいな」
「本当に」
「じゃぁ『治癒の加護』はアルファント殿下に相談してみよう。でさ、もう一つ、思いだしたんだけど、リーナ、洞窟の奥に温泉、作ったじゃないか」
「ああ、そういえばそうね」
「その時にさ、温泉の横でかき氷をよく食べていたよね」
「お兄様はブドウジュースをお酒に見立てて飲んでいたわ。お盆にお猪口と徳利のつもりでお皿と壺だったけど」
「そう、それでさ、リーナがお盆の横に大きな雪ダルマを置いた事があったじゃないか」
「ああっー、木の実で目とか鼻とかつくったわ」
「それで、何時の間にか手足にした木の枝に丸い宝石みたいなのが付いていてさ。これなんだろって言いながら拾ったじゃないか。その枝、まだ持っている?」
「ええ、あるわよ。これ」
久々にアイテムボックスからその木の枝を出したら、木の枝が光輝いた。
木の枝なのに喜んでいるみたい。
やがて、徐々に光は収まり、ごく普通の枝になった。枝の先にはキラキラした宝石が付いていたけど。
「これ、木の枝に見えるけど、この先についている宝石? は取れないわ」
私はキラキラした石を取ろうとしたけど、その石は木の枝の先にしっかりとくっ付いて離れなかった。
「なぁ、それって?」
「これは木の枝よ!」
「でもさ、やっぱり。知らずに何かしたんじゃないか」
「ピンクさんが言うには聖女の杖はちゃんとスティック型になっていて、その先にキラキラした、キラキラした魔法玉が付いているって……もう、どうして木の枝なの!?」
「つまり、聖女の杖を手に入れるには氷の彫刻が必要だし、その出来によって杖の良し悪しも決まるみたいな事をピンク頭が言っていただろう?」
「大きな氷が必要だって言っていたのよ」
「大きな氷で彫刻するんだよ。つまり、それは聖女の杖だ。木の枝に見えるけど」
「どうしましょう。お兄様」
「聖女の杖があったとしても、」
「ええ」
「その使い方はわからない」
「……」
といった会話を昨日の夜に交わしてお互いにため息をついた。
この流れで行くと私が聖女に成ってしまいそう、なので何とかそれは阻止したい。聖女の杖の使い方もわからないし、聖女の杖が木の枝って言うのも問題がありそうな気がする。
私とお兄様はアルファント殿下に色々と丸投げする事にした。
という事で私たちは学生会に入る事にしたのである。
聖女の加護と聖女の杖の話を聞いたアルファント殿下と侍従の方は二人して、ポカンと口を開けた。
凄く揃っていて仲が良いと思った。
ところで、ピンクさんが言っていたように仲間を集めるとしたら、勇者の役はやはりアルファント殿下がするのだろうか?
殿下って光魔法の使い手だし、むしろ殿下が聖女、いや男だから聖人? になればいいかもしれない。
杖(木の枝)を持ってたたずむ殿下。
以外と似合うかもしれない。
お兄様は私が『治癒の加護』の実を食べたらいいって言うんだけど、これ、食べると私が完全に聖女に成ってしまうから嫌だった。
聖女って癒しの力が使えるイメージがすごくあるから、『治癒』がつかえる人が聖女でいいんじゃないかな。
お兄様もこれ以上過ぎた力は俺にはちょっと無理って……。
じゃぁ、私に勧めないでよ、って言ったら、「リーナはすでにチートだから大丈夫」ですって。どういう理屈なの。
どうせ、『隠蔽』と『鑑定』は私とお兄様の二人に分かれているんだから『治癒』の加護は他の人が手に入れるといいんじゃないかと思う。加護は普通一人、一つですもの。
「お兄様、鑑定の加護、どうだった?」
「それがさ、色々試行錯誤したら、使い方が分かったけど木を鑑定したら『木』って出てくるし、ナイフを鑑定したら『ナイフ』、リーナを鑑定したら『女の子』だって。そのまま見たままが鑑定結果なんだよ。使えねぇ」
「それは、まぁ。レベルが上がるとわかる事が増えてくるのね。きっと」
「もっと早くからわかっていればレベルも上がったのに、ああ~、もったいない事した。その点、リーナは『隠蔽』のレベルがしっかり上がっているな」
「だって私、『隠蔽』の加護、使いまくっているもの。ステータスを誤魔化すために常時発動中でもあるしね。『液体』の加護も食料確保のために暇さえあれば色々出しているし」
「時々、指咥えて何か飲んでいるし」
「もう、お兄様ったら。はい、これ飲む?」
「おっ、ブドウジュースか」
「の、味がするポーション」
「このポーションも反則だよ。このおかげで魔力量がドンドン上がっているような気がする。そのうちエリクサーとかも出せるようになったら、もう『治癒』の加護なんていらないんじゃないか。加護なしでも聖女と変わりない。しかも、戦闘能力付き。むしろ勇者?」
「もう、お兄様ったら止めてよね。考えないようにしていたのに。私はごく平凡で幸せな人生を送りたいの」
「チートで平凡か。能力を隠しながらスローライフ、それもいいかも」
「いいわよね~。ささやかな幸せを積み重ねたいの」
「できるといいな」
「本当に」
「じゃぁ『治癒の加護』はアルファント殿下に相談してみよう。でさ、もう一つ、思いだしたんだけど、リーナ、洞窟の奥に温泉、作ったじゃないか」
「ああ、そういえばそうね」
「その時にさ、温泉の横でかき氷をよく食べていたよね」
「お兄様はブドウジュースをお酒に見立てて飲んでいたわ。お盆にお猪口と徳利のつもりでお皿と壺だったけど」
「そう、それでさ、リーナがお盆の横に大きな雪ダルマを置いた事があったじゃないか」
「ああっー、木の実で目とか鼻とかつくったわ」
「それで、何時の間にか手足にした木の枝に丸い宝石みたいなのが付いていてさ。これなんだろって言いながら拾ったじゃないか。その枝、まだ持っている?」
「ええ、あるわよ。これ」
久々にアイテムボックスからその木の枝を出したら、木の枝が光輝いた。
木の枝なのに喜んでいるみたい。
やがて、徐々に光は収まり、ごく普通の枝になった。枝の先にはキラキラした宝石が付いていたけど。
「これ、木の枝に見えるけど、この先についている宝石? は取れないわ」
私はキラキラした石を取ろうとしたけど、その石は木の枝の先にしっかりとくっ付いて離れなかった。
「なぁ、それって?」
「これは木の枝よ!」
「でもさ、やっぱり。知らずに何かしたんじゃないか」
「ピンクさんが言うには聖女の杖はちゃんとスティック型になっていて、その先にキラキラした、キラキラした魔法玉が付いているって……もう、どうして木の枝なの!?」
「つまり、聖女の杖を手に入れるには氷の彫刻が必要だし、その出来によって杖の良し悪しも決まるみたいな事をピンク頭が言っていただろう?」
「大きな氷が必要だって言っていたのよ」
「大きな氷で彫刻するんだよ。つまり、それは聖女の杖だ。木の枝に見えるけど」
「どうしましょう。お兄様」
「聖女の杖があったとしても、」
「ええ」
「その使い方はわからない」
「……」
といった会話を昨日の夜に交わしてお互いにため息をついた。
この流れで行くと私が聖女に成ってしまいそう、なので何とかそれは阻止したい。聖女の杖の使い方もわからないし、聖女の杖が木の枝って言うのも問題がありそうな気がする。
私とお兄様はアルファント殿下に色々と丸投げする事にした。
という事で私たちは学生会に入る事にしたのである。
聖女の加護と聖女の杖の話を聞いたアルファント殿下と侍従の方は二人して、ポカンと口を開けた。
凄く揃っていて仲が良いと思った。
ところで、ピンクさんが言っていたように仲間を集めるとしたら、勇者の役はやはりアルファント殿下がするのだろうか?
殿下って光魔法の使い手だし、むしろ殿下が聖女、いや男だから聖人? になればいいかもしれない。
杖(木の枝)を持ってたたずむ殿下。
以外と似合うかもしれない。
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