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28. 聖女の加護
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「お兄様、それは何かしら?」
「アルファント殿下から貰ってきたお酒に漬けたレーズンと美味しいワイン」
「お兄様……」
「アンパンと引き換えに貰ったんだ。殿下はドライフルーツをお酒に漬けて食べるのが好きだって。ケーキにいれて焼くとかなり美味しいって言っていた。リーナ、このレーズンを入れてパウンドケーキ、焼いてくれる?」
「それはいいけど」
「焼く前にもワインを合わせて混ぜ合わせて、焼けた後にも浸み込ませて置いておこう」
「いいけど……」
「ここにウメンのラム酒漬けもある。ウメンって梅の実そっくりだけど、かなり酒精が強いからあまり食べ過ぎないように、って言われた」
「アルファント殿下ってアルコールが好きなの?」
「うん。以前はかなりの酒豪だったって。今の体も王族は光の加護があるから中々酔えないって言っていた。もちろん、まだ体が出来上がってないから、お酒はワインを少しだけしか飲んでいないし、お酒に漬けたものも程々にしているってさ」
お兄様はアルファント殿下に度々呼び出されるようになった。そして、私と一緒に是非、学生会に入ってほしいと言われている。
殿下はアンパン目的だろうけど、私は攻略対象者が固まっている学生会には近づきたくない。まして、ピンクの彼女が良く出入りしているところなんて。
「でね。殿下が言うには、この乙女ゲームの詳しい内容は知らないけど、断片的に単語に聞き覚えがあるって」
「エッ? 殿下に転生の事とか、話したの?」
「うん。殿下は別格の魔力量でこれは転生が関係しているのではと思っていたところに、ピンク頭も魔力量が多いしピンクが意味不明な言葉をよく話すけど聞いたことのある単語から同じ転生者だろうとは思っていたんだって」
「そうなんだ」
「ピンクの話しかけてくる内容からひょっとしてこれはいわゆる乙女ゲームという奴では、と内心焦っていたそうなんだ」
「まぁ」
「で、僕らの魔力量がかなり多いと聞いて、ひょっとして、と思っていたらドラ焼きを見つけてこれは間違いないと確信したそうだ」
お兄様とアルファント殿下は、ピンクの彼女の愚痴で盛り上がったそうだ。そして、ラクアート様の頼みで家のタウンハウスにピンクさんが来ることを聞いて、ダメ元で酔わせてしまえ、となったらしい。
だので、レーズン入りのお酒タップリパウンドケーキ、作りました。
2日置いたのでとても美味しそう。
実際、食べてみると美味しくて……次々と食べてしまいそうになった。
「これをピンク頭に食べさせるのはもったいないな。リーナの出したホットケーキミックスで作るとどうしてこんなに美味しいんだろう」
「この世界の素材で作るより、『液体』の加護でだした材料のほうが明らかに美味しいよね」
「本当だよ」
さて、ピンクのフレグランス嬢、お見えになりました。
ラクアート様から贈られたというフリルのタップリついた可愛らしいお洋服を着て。
私、ラクアート様から何か贈られたことは無いのですけど。
ひょっとして、私に贈り物をする予算でピンクさんに色々買ってさしあげているのかしら。
そして、フレグランス嬢はあまりお酒に強くないようで、見事に酔っ払った。
で、よっぽどエーリア様に言われた事が悔しかったのか、愚痴と共にいかにして聖女になるのかぶっちゃけてくれた。
なんと、ピンクさんのお母さんはアプリコット辺境伯家の隣の領にある町はずれの出身で、そこにピンクさんが14歳になった時、遺産を受け取るために滞在する事になるそうだ。
その内容を聞いて私とお兄様は頭を抱えた。
聖女になるには、アプリコット辺境伯家の森にある桜の下に行き日本語で「サクラサクラの歌」を歌い、その時に落ちてくる虹色の実を食べて加護を手に入れる。辺境伯家の森には町はずれからこっそり侵入できるとの事。
虹色の実は1日に1粒しか落ちてこないが、まずは『隠蔽』の加護が落ちてくる。続いて『治癒』そして最後に『鑑定』この3つの加護を手に入れる事が第一歩。
『隠蔽』のレベルが2になるとアイテムボックスが手に入るから森の奥にある祭壇に氷で作った細工物を捧げる事で聖女の杖が手に入る。ですって。
えーと、私『隠蔽』の加護を持っていますけど。
そして、そういえば小さい頃に何故か1本だけ咲いていた桜の木の下で「サクラの歌」、歌った覚えがあるよ。
で、木に引っかかっていた虹色の実が飴玉みたいで思わず口に入れたらフワッと溶けて美味しかった。
その次の年にも「サクラの歌」、歌って又、虹色の飴玉を見つけたけど、美味しかったから後で食べようと思って取っておいたのがアイテムボックスにまだ入っている。
「リーナ、俺、その虹色の飴、食べた記憶がある。多分、リーナに会うちょっと前」
「エッ、私、『隠蔽』の加護がついたのは5歳の時だけど、多分強く願ったからだと思うの。お兄様、『鑑定』って強く願ってみて。『治癒』かもしれないけど」
「う、うん。うーん。お願いします。『鑑定』お願いします。……出た」
で、お兄様のステータスをオープンにすると『鑑定』の加護レベル1が付いていた。
「お兄様、鑑定の加護、持っていたのね」
「ああ、意識しないと加護として現れないのか」
「宝の持ち腐れだったわね」
なんと、聖女の加護はヒロインが手に入れる前にとっくに私たちが頂いていた。
「もう一つ、『治癒』の加護があるけどこれはピンクさんに差しあげたほうがいい?」
「まさか。それより、魔王の封印を解かないように何とかしたほうがいいな」
「今回は魔王の封印の事は話さなかったわね」
ピンクの彼女は機嫌よくアニメソングを歌っているけど、果たして酔った後、記憶が残るタイプだろうか。
お喋りした内容を全て忘れていたらいいけど。
それにしても、何故、ピンクさんは私の事を全面的に信用してるのかしら。
凄く不思議。
「アルファント殿下から貰ってきたお酒に漬けたレーズンと美味しいワイン」
「お兄様……」
「アンパンと引き換えに貰ったんだ。殿下はドライフルーツをお酒に漬けて食べるのが好きだって。ケーキにいれて焼くとかなり美味しいって言っていた。リーナ、このレーズンを入れてパウンドケーキ、焼いてくれる?」
「それはいいけど」
「焼く前にもワインを合わせて混ぜ合わせて、焼けた後にも浸み込ませて置いておこう」
「いいけど……」
「ここにウメンのラム酒漬けもある。ウメンって梅の実そっくりだけど、かなり酒精が強いからあまり食べ過ぎないように、って言われた」
「アルファント殿下ってアルコールが好きなの?」
「うん。以前はかなりの酒豪だったって。今の体も王族は光の加護があるから中々酔えないって言っていた。もちろん、まだ体が出来上がってないから、お酒はワインを少しだけしか飲んでいないし、お酒に漬けたものも程々にしているってさ」
お兄様はアルファント殿下に度々呼び出されるようになった。そして、私と一緒に是非、学生会に入ってほしいと言われている。
殿下はアンパン目的だろうけど、私は攻略対象者が固まっている学生会には近づきたくない。まして、ピンクの彼女が良く出入りしているところなんて。
「でね。殿下が言うには、この乙女ゲームの詳しい内容は知らないけど、断片的に単語に聞き覚えがあるって」
「エッ? 殿下に転生の事とか、話したの?」
「うん。殿下は別格の魔力量でこれは転生が関係しているのではと思っていたところに、ピンク頭も魔力量が多いしピンクが意味不明な言葉をよく話すけど聞いたことのある単語から同じ転生者だろうとは思っていたんだって」
「そうなんだ」
「ピンクの話しかけてくる内容からひょっとしてこれはいわゆる乙女ゲームという奴では、と内心焦っていたそうなんだ」
「まぁ」
「で、僕らの魔力量がかなり多いと聞いて、ひょっとして、と思っていたらドラ焼きを見つけてこれは間違いないと確信したそうだ」
お兄様とアルファント殿下は、ピンクの彼女の愚痴で盛り上がったそうだ。そして、ラクアート様の頼みで家のタウンハウスにピンクさんが来ることを聞いて、ダメ元で酔わせてしまえ、となったらしい。
だので、レーズン入りのお酒タップリパウンドケーキ、作りました。
2日置いたのでとても美味しそう。
実際、食べてみると美味しくて……次々と食べてしまいそうになった。
「これをピンク頭に食べさせるのはもったいないな。リーナの出したホットケーキミックスで作るとどうしてこんなに美味しいんだろう」
「この世界の素材で作るより、『液体』の加護でだした材料のほうが明らかに美味しいよね」
「本当だよ」
さて、ピンクのフレグランス嬢、お見えになりました。
ラクアート様から贈られたというフリルのタップリついた可愛らしいお洋服を着て。
私、ラクアート様から何か贈られたことは無いのですけど。
ひょっとして、私に贈り物をする予算でピンクさんに色々買ってさしあげているのかしら。
そして、フレグランス嬢はあまりお酒に強くないようで、見事に酔っ払った。
で、よっぽどエーリア様に言われた事が悔しかったのか、愚痴と共にいかにして聖女になるのかぶっちゃけてくれた。
なんと、ピンクさんのお母さんはアプリコット辺境伯家の隣の領にある町はずれの出身で、そこにピンクさんが14歳になった時、遺産を受け取るために滞在する事になるそうだ。
その内容を聞いて私とお兄様は頭を抱えた。
聖女になるには、アプリコット辺境伯家の森にある桜の下に行き日本語で「サクラサクラの歌」を歌い、その時に落ちてくる虹色の実を食べて加護を手に入れる。辺境伯家の森には町はずれからこっそり侵入できるとの事。
虹色の実は1日に1粒しか落ちてこないが、まずは『隠蔽』の加護が落ちてくる。続いて『治癒』そして最後に『鑑定』この3つの加護を手に入れる事が第一歩。
『隠蔽』のレベルが2になるとアイテムボックスが手に入るから森の奥にある祭壇に氷で作った細工物を捧げる事で聖女の杖が手に入る。ですって。
えーと、私『隠蔽』の加護を持っていますけど。
そして、そういえば小さい頃に何故か1本だけ咲いていた桜の木の下で「サクラの歌」、歌った覚えがあるよ。
で、木に引っかかっていた虹色の実が飴玉みたいで思わず口に入れたらフワッと溶けて美味しかった。
その次の年にも「サクラの歌」、歌って又、虹色の飴玉を見つけたけど、美味しかったから後で食べようと思って取っておいたのがアイテムボックスにまだ入っている。
「リーナ、俺、その虹色の飴、食べた記憶がある。多分、リーナに会うちょっと前」
「エッ、私、『隠蔽』の加護がついたのは5歳の時だけど、多分強く願ったからだと思うの。お兄様、『鑑定』って強く願ってみて。『治癒』かもしれないけど」
「う、うん。うーん。お願いします。『鑑定』お願いします。……出た」
で、お兄様のステータスをオープンにすると『鑑定』の加護レベル1が付いていた。
「お兄様、鑑定の加護、持っていたのね」
「ああ、意識しないと加護として現れないのか」
「宝の持ち腐れだったわね」
なんと、聖女の加護はヒロインが手に入れる前にとっくに私たちが頂いていた。
「もう一つ、『治癒』の加護があるけどこれはピンクさんに差しあげたほうがいい?」
「まさか。それより、魔王の封印を解かないように何とかしたほうがいいな」
「今回は魔王の封印の事は話さなかったわね」
ピンクの彼女は機嫌よくアニメソングを歌っているけど、果たして酔った後、記憶が残るタイプだろうか。
お喋りした内容を全て忘れていたらいいけど。
それにしても、何故、ピンクさんは私の事を全面的に信用してるのかしら。
凄く不思議。
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