上 下
10 / 103

10. 逃亡準備

しおりを挟む
 リーナ11歳です。

 リーナ・アプリコット。
 11歳
 加護『液体』レベル9
 加護『隠蔽』レベル7

『液体』レベルが9に上がってお湯が出せるようになった。しかも温度設定付き。露天風呂もできるし、何処でもシャワー浴び放題。
 これはお兄様が喜んで洞窟の奥に露天風呂を設置した。といっても天然の鍾乳洞の一部を区切ってお湯を入れただけなんだけど。浄化の魔石があるといってもやはりお風呂には入りたかったみたい。

「気持ちいいなぁ。お風呂につかりながらこの一杯がたまらない」

 と言いながらお猪口に見立てた小皿に小壺からぶどうジュースを注いで飲んでいる。お猪口と徳利のつもりみたいだ。中身はジュースだけど。
 お湯でジュースが生ぬるくなりそうなものだけど、氷を入れているのでちょうどいいみたいだ。私はその横でかき氷を食べている。

 暖かいところで冷たいモノを食べるのって美味しい。氷を出せるようになったので、時々アイスクリームも作って食べている。クレープに万遍なくカスタードクリームをぬって畳んでアイスを乗せて食べる。フルーツのジャムも添えて。食生活の充実が嬉しい。

 そして、ついに調味料、というか ポン酢 酢 梅酢 黒酢 リンゴ酢 焼き肉のタレが出てくるようになった。
 この『液体』の加護のレベルがどういう方向に進んでいるのか全く分からない。レベルが上がるごとにできる事は増えるけど、次に何が来るのか全く予想が付かない。だけど、チョコレートが欲しいなぁ。

 ポン酢と焼き肉のタレは嬉しかった。私が食べた記憶のある焼き肉のタレが出てくるから、前に高級焼き肉店で食べたタレの味を一生懸命思いだした。

「なにこれ、美味い。俺、こんな美味しい焼き肉のタレ、食べたことがないよ。俺んち、貧乏だったからな」
「お兄様、いくつで亡くなったの?」
「多分、高校生。俺、奨学生だったんだぜ。学費免除の。貧乏から抜け出す為に必死で勉強したなぁ~」
「それで、今もお勉強の要領が良いのね」
「まあね。でも、この体、すごく物覚えがいいんだ。リーナもそうだろ?」
「うん。転生特典かな~」
「そうかも」

 そう言いながら、セッセとお肉を焼いてはパン殻に詰めていくお兄様。お兄様のパンの実は綺麗な楕円形になっていて二つに割ってその中のパンを取り出すと殻が器として使えるようになった。
 パンの実も進化して、両手でやっと抱えられるくらいから両手にすっぽりと入るくらいまで大きさも選べるようになったし、パンの種類も増えた。一日にパンの実は7つ成るからその殻を使って食料を貯めている。

 お兄様のパンの木のレベルは9歳でレベル2 食パン、10歳でレベル3 アンパン……。何故か私の誕生日に合わせてレベルが上がった。けど、アンパン。パンの実の大きさは変えられるけど、中身をアンパンにすると実の中に2つしか入っていない。

 小さい実だとちょうど入る小さいアンパンで、大きな実だと大き目サイズ、といっても普通サイズの1.5倍くらい。中の餡子が美味しくて最初は喜んで食べたけど、食べ過ぎてちょっと飽きたかもしれない。それにしても殻のサイズが変更できるのは良かった。殻に食料を詰めて蓋をしてアイテムボックスにしまうと凄く安心する。

 リネン類や針や糸、侍女や騎士、働く人の為の制服置き場から少しずつ色々な服や靴に帽子もいただいている。
 私の貴金属は乳母に抑えられているから、現金が手に入らないのは困るけど、お兄様のところにお母さま用にお金が届いているからそれをアイテムボックスにしまっている。もちろん、お母様の貴重品とかお洋服も収納しておいた。

 そして、何とアイテムボックスの機能を付与できるようになりました。といってもカバンサイズだけど。
 お兄様のベルトに付けたレザーのウエストバックだけど、それをアイテムボックスにできないかなと思ったら何とか成功。
 お兄様がすごく喜んでお燻製のお肉を詰め込んだ。オヤツにつまめるのが良いんですって。

 いざという時の為にベッドも2つ、必要かなと思われる家具も不用品置き場から手に入れてきた。出入りする時のチェックは厳しいみたいだけど、家の中にいたら取ってもわからないから大丈夫。
 逃亡準備は着々と進んでいる。

 それにしても私の貴金属、乳母はどうやって持ち出しているんだろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜

黄舞
ファンタジー
 勇者パーティの支援職だった私は、自己を超々強化する秘法と言われた魔法を使い、幼女になってしまった。  そんな私の姿を見て、パーティメンバーが決めたのは…… 「アリシアちゃん。いい子だからお留守番しててね」  見た目は幼女でも、最強の肉体を手に入れた私は、付いてくるなと言われた手前、こっそりひっそりと陰から元仲間を支援することに決めた。  戦神の愛用していたという神器破城槌を振り回し、神の乗り物だと言うもふもふ神獣と旅を続ける珍道中! 主人公は元は立派な大人ですが、心も体も知能も子供です 基本的にコメディ色が強いです

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

聖女だと名乗り出たら、偽者呼ばわりをされて国外に追放されました。もうすぐ国が滅びますが、もう知りません 

柚木ゆず
ファンタジー
 厄災が訪れる直前に誕生するとされている、悲劇から国や民を守る存在・聖女。この国の守り神であるホズラティア様に選ばれ、わたしシュゼットが聖女に覚醒しました。  厄災を防ぐにはこの体に宿った聖なる力を、王城にあるホズラティア様の像に注がないといけません。  そのためわたしは、お父様とお母様と共にお城に向かったのですが――そこでわたし達家族を待っていたのは、王家の方々による『偽者呼ばわり』と『聖女の名を騙った罪での国外追放』でした。  陛下や王太子殿下達は、男爵家の娘如きが偉大なる聖女に選ばれるはずがない、と思われているようでして……。何を言っても、意味はありませんでした……。  わたし達家族は罵声を浴びながら国外へと追放されてしまい、まもなく訪れる厄災を防げなくなってしまったのでした。  ――ホズラティア様、お願いがございます――。  ――陛下達とは違い、他の方々には何の罪もありません――。  ――どうか、国民の皆様をお救いください――。

親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい

咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。 新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。 「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」 イルザは悪びれず私に言い放った。 でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ? ※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。 今は、その考えも消えつつある。 けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。 今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。 ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

処理中です...