68 / 69
64. 幽霊?
しおりを挟む
輝く宝石のような岩の光は隠し部屋の中を淡く照らしていたけれど、その岩の後ろにぼんやりと人の姿が現れ出た。女性の形をしている? と思ったらシオリーヌが現れた、いえ違う、ひょっとして聖女? でも、向こうが透けて見えるから幽霊?
「まさか! 幽霊」
「どうして玲ちゃんが? いやこれはシオリーヌ? じゃないまさかの聖女?」
「古の聖女か! 本当に霊魂だけになっているのか? レイちゃんそっくりだ」
半透明の聖女は穏やかな微笑みを浮かべ、私達に向かってカーテシーをした。でも、彼女の足がない……、ドレスの下の方が消えている。幽霊って本当に足がないんだ
《ごきげんよう。お待ちしておりました。本当に永く、永くお待ちしておりました》
聖女の声はどことなくエコーが掛かっているように聞こえる。
「あの、貴女のお名前は?」
《私はクリステーヌと申します。家名は捨てましたのでただのクリステーヌでございます》
「古の聖女……昔、スピーリトゥス王国から出奔したクルステーヌ姫でしょうか?」
《そうですね。確かに私の出身はスピーリトゥス国でございます》
「あの、霊魂として残っているのでしょうか?」
《霊魂? ああ、幽霊という事でしょうか? ある意味そうかもしれませんが、幽霊とはまた違っていると私は思っています》
「あ、あの、足がありませんよね」
《ええ、実体化するにはお借りする力が足りなくて……核となる部分の力が足りないのです。どうしてでしょう。でも、何とか存在を具現化する事が出来ましたから良し、としなくては》
「あの、どうして今更出てこられたのですか?」
《今更ではございませんのよ。ただ、私の姿を認識していただく事がこれ迄できなかったというだけで》
(それを幽霊というのでは……)
私達は全員が、かの聖女の正体は幽霊だ、と思ったのだけど、それを指摘してしまう事はできなくて、ただ、黙って彼女の話を聞いていた。
《私、あの悪党の魔術師に騙されたんですの。この世界の終焉が近づいているから世界を救う為にこの地に宝玉を取り戻さなくてはいけない、と彼はほざきまして、この地に国を築く事でまずは聖石を基準に世界を救ってから、そうしてまた、真実を話して別れた国に併合されれば良いと言われたのです》
「宝玉?」
《聖石の事ですわ。彼が言うには、聖石とは宝玉であって、それは7つに分かれていて、その7つの聖石を集める事で願いを叶えることができるんだそうです》
「どこかで聞いたような話だ」
「ドラゴンは出てこないですよね?」
《あら、よくおわかりですわね。始まりのドラゴンが願いを叶えてくれるそうですわ》
「ピピピッ、ピピ!」
突然、ルナが激しく鳴いた。どうしたのかしら。ドラゴンに反応している? ドラゴンの7つの宝玉なんて眉唾ものだけど、ひょっとして有り、なのかしら。ここって異世界だし。
「ドラゴンは見たことないけど、って、ドラゴンって居るのですか?」
「伝説の生き物だが、……古い伝承のなかにドラゴンが願いをかなえるという話はある」
「あるんだ」
《それよりあの魔術師より取り返さなくてはいけないものがあります》
「魔術師、からですか」
《ええ、彼のそもそもの力の源です。どういうわけ彼はこの世界にやって来た時から不思議な力がありました。それはこの世界に由来するモノです》
「力の源?」
《ええ、彼はその力の源となる宝玉をピアスにして常に身に付けています。それを取り返してこの聖石に取り込めば聖石の力は元に戻るはずなんです。でも、私は実体がないのでどうしても取り戻せなくて、》
「魔術師が付けているピアスを取るには……、彼を動かないようにしないといけないですけど」
《バカな魔術師は自分が作ったシステムに囚われて魔力を吸われていますから、囚われたままの今なら何とかなると思うのです。でも、この聖石の中に囚われているので誰も訪れるものがいなくて》
「あの、聖石の中は過去の時代ですよね」
《過去でもあるし、現在でもあるし、未来でもあります。いつの時代というより、何時の時代でもあると言えますわ》
「私達は元の時代、元の場所に戻れるのでしょうか? 聖石に入った時点で過去の世界に飛ばされたと思ったのですが、このセイント国の場所の時間はどうなっているのでしょうか、それと一体何故、私達は聖石に取り込まれてしまったのでしょう」
「俺たち、聖石に入った時、その時間軸に戻りたいのです」
《んんっー、聖石が聖女を求めたから、貴女がたは聖石の世界に入れたんだと思いますよ。私も助けを求めましたし。戻るのは聖石の求めに答えたら戻れると思います。まずは魔術師からピアスを取り戻しましょう》
「つまり、魔術師と戦わなくてはいけないという事ですか……」
「魔術師に近づくのは嫌だな」
「魔術師と握手をすると能力を取られてしまうのではないですか?」
《ああ、そうでした。彼は人の能力を取る事が出来るのです。それがとても厄介で……、でも奪い取った能力は劣化版になりますし、今は魔力がそんなにない状態ですから、力を増幅する王笏を取り上げてしまえば良いかもしれません》
どうしても、魔術師と事を構えなければ何もできないという事はわかった、けど魔術師を何とかして聖石から出ても、ここが既にセイント国として成り立っているという事実は変えられない。その辺は何とかなるのか心配だし、この岩が聖石? としたら セイント国はこの隠し部屋を知っているの?
それに、このルナの青い卵は?
「まさか! 幽霊」
「どうして玲ちゃんが? いやこれはシオリーヌ? じゃないまさかの聖女?」
「古の聖女か! 本当に霊魂だけになっているのか? レイちゃんそっくりだ」
半透明の聖女は穏やかな微笑みを浮かべ、私達に向かってカーテシーをした。でも、彼女の足がない……、ドレスの下の方が消えている。幽霊って本当に足がないんだ
《ごきげんよう。お待ちしておりました。本当に永く、永くお待ちしておりました》
聖女の声はどことなくエコーが掛かっているように聞こえる。
「あの、貴女のお名前は?」
《私はクリステーヌと申します。家名は捨てましたのでただのクリステーヌでございます》
「古の聖女……昔、スピーリトゥス王国から出奔したクルステーヌ姫でしょうか?」
《そうですね。確かに私の出身はスピーリトゥス国でございます》
「あの、霊魂として残っているのでしょうか?」
《霊魂? ああ、幽霊という事でしょうか? ある意味そうかもしれませんが、幽霊とはまた違っていると私は思っています》
「あ、あの、足がありませんよね」
《ええ、実体化するにはお借りする力が足りなくて……核となる部分の力が足りないのです。どうしてでしょう。でも、何とか存在を具現化する事が出来ましたから良し、としなくては》
「あの、どうして今更出てこられたのですか?」
《今更ではございませんのよ。ただ、私の姿を認識していただく事がこれ迄できなかったというだけで》
(それを幽霊というのでは……)
私達は全員が、かの聖女の正体は幽霊だ、と思ったのだけど、それを指摘してしまう事はできなくて、ただ、黙って彼女の話を聞いていた。
《私、あの悪党の魔術師に騙されたんですの。この世界の終焉が近づいているから世界を救う為にこの地に宝玉を取り戻さなくてはいけない、と彼はほざきまして、この地に国を築く事でまずは聖石を基準に世界を救ってから、そうしてまた、真実を話して別れた国に併合されれば良いと言われたのです》
「宝玉?」
《聖石の事ですわ。彼が言うには、聖石とは宝玉であって、それは7つに分かれていて、その7つの聖石を集める事で願いを叶えることができるんだそうです》
「どこかで聞いたような話だ」
「ドラゴンは出てこないですよね?」
《あら、よくおわかりですわね。始まりのドラゴンが願いを叶えてくれるそうですわ》
「ピピピッ、ピピ!」
突然、ルナが激しく鳴いた。どうしたのかしら。ドラゴンに反応している? ドラゴンの7つの宝玉なんて眉唾ものだけど、ひょっとして有り、なのかしら。ここって異世界だし。
「ドラゴンは見たことないけど、って、ドラゴンって居るのですか?」
「伝説の生き物だが、……古い伝承のなかにドラゴンが願いをかなえるという話はある」
「あるんだ」
《それよりあの魔術師より取り返さなくてはいけないものがあります》
「魔術師、からですか」
《ええ、彼のそもそもの力の源です。どういうわけ彼はこの世界にやって来た時から不思議な力がありました。それはこの世界に由来するモノです》
「力の源?」
《ええ、彼はその力の源となる宝玉をピアスにして常に身に付けています。それを取り返してこの聖石に取り込めば聖石の力は元に戻るはずなんです。でも、私は実体がないのでどうしても取り戻せなくて、》
「魔術師が付けているピアスを取るには……、彼を動かないようにしないといけないですけど」
《バカな魔術師は自分が作ったシステムに囚われて魔力を吸われていますから、囚われたままの今なら何とかなると思うのです。でも、この聖石の中に囚われているので誰も訪れるものがいなくて》
「あの、聖石の中は過去の時代ですよね」
《過去でもあるし、現在でもあるし、未来でもあります。いつの時代というより、何時の時代でもあると言えますわ》
「私達は元の時代、元の場所に戻れるのでしょうか? 聖石に入った時点で過去の世界に飛ばされたと思ったのですが、このセイント国の場所の時間はどうなっているのでしょうか、それと一体何故、私達は聖石に取り込まれてしまったのでしょう」
「俺たち、聖石に入った時、その時間軸に戻りたいのです」
《んんっー、聖石が聖女を求めたから、貴女がたは聖石の世界に入れたんだと思いますよ。私も助けを求めましたし。戻るのは聖石の求めに答えたら戻れると思います。まずは魔術師からピアスを取り戻しましょう》
「つまり、魔術師と戦わなくてはいけないという事ですか……」
「魔術師に近づくのは嫌だな」
「魔術師と握手をすると能力を取られてしまうのではないですか?」
《ああ、そうでした。彼は人の能力を取る事が出来るのです。それがとても厄介で……、でも奪い取った能力は劣化版になりますし、今は魔力がそんなにない状態ですから、力を増幅する王笏を取り上げてしまえば良いかもしれません》
どうしても、魔術師と事を構えなければ何もできないという事はわかった、けど魔術師を何とかして聖石から出ても、ここが既にセイント国として成り立っているという事実は変えられない。その辺は何とかなるのか心配だし、この岩が聖石? としたら セイント国はこの隠し部屋を知っているの?
それに、このルナの青い卵は?
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
常識的に考えて
章槻雅希
ファンタジー
アッヘンヴァル王国に聖女が現れた。王国の第一王子とその側近は彼女の世話係に選ばれた。女神教正教会の依頼を国王が了承したためだ。
しかし、これに第一王女が異を唱えた。なぜ未婚の少女の世話係を同年代の異性が行うのかと。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる