冷女が聖女。

サラ

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57. 光の帯

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 結局、これからの事を考えてレナード王子を一時的に従者にする事にした。あまり気が進まないのだけど、レナード王子はとても喜んでいる。この冷蔵庫の家に自由に入れるのと瞬間移動ができるのがとても嬉しいそうだ。

「シオリーヌがいるところで騎士の儀式をするのはちょっと嫌だな」
「「騎士!?」」
「姫を守るのは騎士の役目だろう?」
「俺、従者だけど」
「内容的には騎士も従者も変わらないよ。剣もあるし、騎士の誓いって見た事ないだろう? 俺はまだ誰にも騎士の誓いを立ててないからちょうど良い」
「従者より騎士のほうがカッコいいじゃないか」
「お兄ちゃんだからな」
「騎士だとアランみたいに自由に冷蔵庫の家に出入りできないかもしれませんよ?」
「とりあえず、試してみるだけでも」

 レナード王子は従者になるのかと思いきや、騎士になるとの事。アランは「ズルい」とチョット脹れたけど、騎士の誓いの仕方もわからないし、剣もないのでとりあえず従者のままで良いと諦めた。
 アラン、剣持ってないものね。日本育ちだから銃刀法違反になるようなモノには縁がなかったし、剣道していたわけでもないから、仕方ないと思う。

 という事で海岸にやってきた。これから騎士の儀式をするそうです。聖石の中の海岸はゴミなど落ちてないし、岸辺によせる波がキラキラとお日様に当たって綺麗。誰も居ないし、波の音だけがして清廉な気が満ちている。
 その海岸で私はブレスレットの上に付けていたバングルを外した。このバングルは遮蔽の魔術が掛かっているもので、万が一有村さんに見つかって騒がれないようにレナード王子が貸してくれたもの。ブレスレットをそのまま包み込んで装着感がないので、付けている事を忘れていた。
 そうして、私がバングルを外すと共にブレスレットについていた青い石が光輝いた。

「おおっ、眩しい」
「何か、凄いな。怒っている?」
「いつまで閉じ込めているんだよって?」

 光輝いたと思うとその光は収縮し、一本の光の帯になって海の上に青く輝く道を作った。海の上に続く青い道、それは対岸のセイント国まで続いているように見えた。

「これ、まさか光の道か?」
「この帯を進めって? 海の上だよ」
「結構、広いと言えば言えるけど、狭いと言えば狭い」

 そう言いながらアランが青い光の帯に触り、そのまま飛び乗った。

「この上、歩けるけど」
「この帯の上を歩いてセイント国まで行けるのか?」

 青い光の帯の幅は人ひとりの幅くらいある。ちょうどアランの肩幅くらい。だから、歩いていけと言えば行ける……。そして、私のまわりには円を描くように丸い光の輪ができていて、それはまるで舞台上にスポットライトを浴びて立っているような感じだった。

「玲ちゃん、そのままマイク持って歌ったら良いかも」
「確かに舞台に立っているかのように見える」
「観客はいないけどね」
「俺たちが専有している、という事か」

 アランとレナード王子が楽しそうに笑い、アランは足元の光の帯を手でそっと触った。

「これ、触り心地の良い布の感触なんだけど」
「どれ、」

 そう言ってレナード王子が光の帯に触ろうとしたら触れなかった。透明な柔らかい壁に押し戻された感じがしたとの事。

「ひょっとして、冷蔵庫のお客になるには一々登録しないといけないから、それと同じように光の帯にも登録が必要なんじゃない?」
「えっ、そうなの?」

 そうして、レナード王子をお客様に登録すると、無事に光の帯に乗る事が出来た。これでセイント国まで行く事が出来る。でも、歩いてこの海を渡るとしたら途中の休憩が欲しい。
 という事で光の帯に乗ったまま、冷蔵庫の家の扉を出すと無事に光の輪の上に扉が現れた。

 アランがチョット首を傾げると、そのまま扉を横から押した。すると、何という事でしょう。扉が光の帯の上をスーッと滑って行ってしまった。かなり向こうに扉が見える。青い海の上にキラキラ光る光の帯、その上にチョコンと乗った扉……。

「ほら、皆が冷蔵庫の中に入って、それを俺が押すじゃん。そして、冷蔵庫の中から玲ちゃんが俺を呼んでくれるとワザワザ歩かなくても簡単に移動ができる」
「アー君、賢い」
「エヘヘ、それほどでも」

 アランが得意そう。でも、確かにテクテク歩いていくよりは楽かもしれない。遠くに行った扉だけれど、呼べば直ぐ私の側に扉が現れた。これは便利かもしれない。
 ただ、光の帯以外では扉を動かす事は出来なかったし、光の帯は海の上から動かなかった。私が海岸を動くと帯もそのまま私に付いてくるけど、帯の先は彼方のセイント国に繋がっているらしい。

 バングルを付けると、光は収まり光の帯は消えた。でも代わりに小鳥のルナが私の肩に乗って「ピピピ、ピピ」と訴えかけるように鳴いている。ルナ、いつの間にか居なくなっていたのに、今は凄く鳴いている。

「えーと、一時的にバングルを付けたけど、またすぐ外すから」
「ピピピ、ピ、ピピッ」
「玲ちゃん、ルナは何か言いたいんだと思う」
「ひょっとしてだけど、このバングルを外してほしい?」
「ピピッ」

 ルナが煩いので仕方なくバングルを外すと眩い光が溢れてルナが消えた。私はまた、光に包まれている。

「まさかと思うけど、この光がルナ?」
「ルナが光になって道案内しようとしているのかも」
「海の上で冷蔵庫を出す時もその青い宝石は隠さないほうが良いかもしれないね。海の上で光の帯が消えたら沈んでしまうかもしれないし」
「確かに。それは怖い」

 私はそのまま砂浜の上でスポットライトを浴びたようになったまま、レナード王子から騎士の誓いを受けた。誓いを返した時にレナード王子の剣がキラキラと輝いたのは見なかった事にしよう。
 まさか、その剣が聖剣とかにはならないよね。

 だって、聖剣を持っているのって勇者……まさかね。
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