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56. そろそろ
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レナード王子が言うにはこの聖石世界の地形は原初の、国がまだ成立している前の状態になっているので、そもそもの始まりの地に行けばここから抜け出せるのではないかとの事。
ひょっとして、始まりの地に本来の聖石があって、そこから帰れるかもしれないと……。これまで楽しそうにサバイバルをしていると思ったけど、実は地形とかその他色々調べていたそう。
気にせずにサバイバルを楽しんでいるのかと思っていました。場所によっては現在のブルーバード国の状況というか、蒼の乙女の結界を感じられるところもあるので、現世の上にこの聖石の世界が透明化して乗っているんじゃないかって……。
それって、上を見上げれば生活している私達が見れたって事? えっ? トイレとか着替えもしているけど。
「いや、誰にも見えてないよ。多分」
「特に玲ちゃんの結界の中はこれまでも見えない状態になっていたじゃないか。大丈夫だよ」
「それならいいですけど……。ひょっとして蒼の乙女の結界から戻れますか?」
「いや、蒼の乙女の結界は強固だからどうやって破るというか、どうやって下界に降りるか分からない。ただ、始まりの地に行けば結界はないし、そもそもあちらから聖石を運んできているから、行ってみれば何とかなるかもしれないと思う。此処は聖石の中のはずだけど、肝心の聖石が何処にあるのか、聖石の果てが何処にあるのかがわからない」
「始まりの地から聖石を運んできたんですか?」
「うん、まぁ。今はセイント国になっている場所に聖石があって、最初の国はそこから始まったんだ。ただ、あの国の場所だけでは手狭になって、どんどん海を渡って国が広がり首都を国の中心に置く事になって、聖石を移した」
「と、いう事は始まりの地はセイント国にあるのですか?」
「そうなんだ。王家は聖石を女神に託されてこの世界を守る役割があると伝えられているんだけど、永い時を経て言い伝えも形骸化したようになって、聖女もいなくなって……」
とレナード王子は苦い顔をした。
「兄さん、何かまずい事でもあるの?」
「うん……、まだ表立ってはいないけど、昔に比べると世界全体の神気が段々と薄くなって来ているんだ。それは聖女が召喚されても、持ち直しはしてもそこまで改善される事はなかった。神官の中には緩やかに滅びに向かっているのではと言う者もいて……。ただ、この度の聖女召喚ではこれ迄よりも神気の改善が早い、だから、今回の聖女は本当の聖女ではないかと言われていて、」
「だけど、今回は二人の聖女が召喚されているから、単純に考えて聖女のちからが2倍になったとも考えられる、という事?」
「レイちゃんが聖女であるならあの聖女の力が強いのではなく、レイちゃんが補完しているのかもしれない」
「だったら、……」
「あの国、セイント国は聖女が存在する事で国が成り立っている。しかし、召喚された聖女は2、3年で元居たところに帰ってしまうんだ。セイント国では何とか引き留めようとしていたらしいけど、いつも必ず帰ってしまう。ただ、その前にその力を他の聖女、というか選ばれた巫女に移して帰るんだ。それはどうやっているのか分からない」
その召喚されている聖女って私のご先祖様じゃないかと思うんだけど、皆、どうやって帰っているのかしら。
聖女の力を渡す事で帰れるとしたら、あのセイント国ではなく、ブルーバード国に渡すほうが良いなぁ。それにしても、これまで割とノンビリとここで過ごしてきたけど、突然消えてしまって皆、ビックリしているのでは……。
「あの、今さらですが、皆さん心配されていますよね」
「ああ、一応心配はしていると思うが、飛ばされたのが聖石の中というのは見えたと思うし、俺の生存に関しては確認ができるから、その点は心配してないと思う。いざという時の食料や魔道具なども常に持ち歩いているのに合わせて、レイちゃんが食料の無限に湧くアイテムボックス持ちだという事も皆、知っているし」
「食料が無限に湧く……、」
「だって、こちらの世界に冷蔵庫なんてないから他の人にはそういう認識なんだよ。しかも冷蔵庫も今は進化して家状態だし、『何処でも家』なんてホント便利だよ」
「それはそうだけど、この家、キッチンがないのが、」
「そこが不便だよなぁ」
「アランのキャンプ道具がなければ冷たいものばかり食べる羽目になっていたわ」
「一応俺も、野営のための道具は持っていたが」
「そうでした。レナード王子の装備で簡単な火起こしとか簡易の調理はできましたね」
「それでも、ベッドはないから」
「ああ、寝る時に警戒しなくていいのと、ベッドで寝られるのは有難い。風呂まであるし。ただ、そろそろ移動しても良いと思う」
「玲ちゃん、聖女だし何か感じるものはない?」
「そうね。ここはとても居心地の良い空間というか、気持ちが良いとは感じるんだけど、ん? そういえばルナはどうしたのかしら?」
「ルナは玲ちゃんが名前を付けたから呼べば来るんじゃないか。「ルナ、お出で」とか言ってみたら」
「まさか、来るかしら? 聖石の中なのに」
「呼んでみたら良いよ」
「ルナ! 側に来て!」
アランの言葉の通りに呼んでみたら
「ピピピ、ピピッ」
聖鳥のルナが私の肩に乗って「ピピピッ」って話しかけてきた。嬉しいという気持ちが伝わってくる。本当に来た。でも、どうやって此処に来たのかしら? 聖石の中に飛ばされた時にルナは一緒ではなかったはずなのに。
「凄いな。本当に来た」
「あのさ、玲ちゃん……」
「何?」
「俺も玲ちゃんが呼べば瞬間移動みたいに転移できるんじゃない?」
「まさか」
「ちょっと、やってみよう」
そうして試してみたら、かなり離れたところから、冷蔵庫の中にアランが飛んできた。
「姿消しと瞬間移動、もうスパイし放題」
アランが嬉しそう。レナード王子も羨ましそうに私を見つめてくるけど、でも、これってアランが私の従者になっているせいだよね。
「レイちゃん!」
いえ、いえ、いえ。そんな目で見ないで、レナード王子。王子を従者になんてできません。
あっ、アランも一応、王子だった……。
ひょっとして、始まりの地に本来の聖石があって、そこから帰れるかもしれないと……。これまで楽しそうにサバイバルをしていると思ったけど、実は地形とかその他色々調べていたそう。
気にせずにサバイバルを楽しんでいるのかと思っていました。場所によっては現在のブルーバード国の状況というか、蒼の乙女の結界を感じられるところもあるので、現世の上にこの聖石の世界が透明化して乗っているんじゃないかって……。
それって、上を見上げれば生活している私達が見れたって事? えっ? トイレとか着替えもしているけど。
「いや、誰にも見えてないよ。多分」
「特に玲ちゃんの結界の中はこれまでも見えない状態になっていたじゃないか。大丈夫だよ」
「それならいいですけど……。ひょっとして蒼の乙女の結界から戻れますか?」
「いや、蒼の乙女の結界は強固だからどうやって破るというか、どうやって下界に降りるか分からない。ただ、始まりの地に行けば結界はないし、そもそもあちらから聖石を運んできているから、行ってみれば何とかなるかもしれないと思う。此処は聖石の中のはずだけど、肝心の聖石が何処にあるのか、聖石の果てが何処にあるのかがわからない」
「始まりの地から聖石を運んできたんですか?」
「うん、まぁ。今はセイント国になっている場所に聖石があって、最初の国はそこから始まったんだ。ただ、あの国の場所だけでは手狭になって、どんどん海を渡って国が広がり首都を国の中心に置く事になって、聖石を移した」
「と、いう事は始まりの地はセイント国にあるのですか?」
「そうなんだ。王家は聖石を女神に託されてこの世界を守る役割があると伝えられているんだけど、永い時を経て言い伝えも形骸化したようになって、聖女もいなくなって……」
とレナード王子は苦い顔をした。
「兄さん、何かまずい事でもあるの?」
「うん……、まだ表立ってはいないけど、昔に比べると世界全体の神気が段々と薄くなって来ているんだ。それは聖女が召喚されても、持ち直しはしてもそこまで改善される事はなかった。神官の中には緩やかに滅びに向かっているのではと言う者もいて……。ただ、この度の聖女召喚ではこれ迄よりも神気の改善が早い、だから、今回の聖女は本当の聖女ではないかと言われていて、」
「だけど、今回は二人の聖女が召喚されているから、単純に考えて聖女のちからが2倍になったとも考えられる、という事?」
「レイちゃんが聖女であるならあの聖女の力が強いのではなく、レイちゃんが補完しているのかもしれない」
「だったら、……」
「あの国、セイント国は聖女が存在する事で国が成り立っている。しかし、召喚された聖女は2、3年で元居たところに帰ってしまうんだ。セイント国では何とか引き留めようとしていたらしいけど、いつも必ず帰ってしまう。ただ、その前にその力を他の聖女、というか選ばれた巫女に移して帰るんだ。それはどうやっているのか分からない」
その召喚されている聖女って私のご先祖様じゃないかと思うんだけど、皆、どうやって帰っているのかしら。
聖女の力を渡す事で帰れるとしたら、あのセイント国ではなく、ブルーバード国に渡すほうが良いなぁ。それにしても、これまで割とノンビリとここで過ごしてきたけど、突然消えてしまって皆、ビックリしているのでは……。
「あの、今さらですが、皆さん心配されていますよね」
「ああ、一応心配はしていると思うが、飛ばされたのが聖石の中というのは見えたと思うし、俺の生存に関しては確認ができるから、その点は心配してないと思う。いざという時の食料や魔道具なども常に持ち歩いているのに合わせて、レイちゃんが食料の無限に湧くアイテムボックス持ちだという事も皆、知っているし」
「食料が無限に湧く……、」
「だって、こちらの世界に冷蔵庫なんてないから他の人にはそういう認識なんだよ。しかも冷蔵庫も今は進化して家状態だし、『何処でも家』なんてホント便利だよ」
「それはそうだけど、この家、キッチンがないのが、」
「そこが不便だよなぁ」
「アランのキャンプ道具がなければ冷たいものばかり食べる羽目になっていたわ」
「一応俺も、野営のための道具は持っていたが」
「そうでした。レナード王子の装備で簡単な火起こしとか簡易の調理はできましたね」
「それでも、ベッドはないから」
「ああ、寝る時に警戒しなくていいのと、ベッドで寝られるのは有難い。風呂まであるし。ただ、そろそろ移動しても良いと思う」
「玲ちゃん、聖女だし何か感じるものはない?」
「そうね。ここはとても居心地の良い空間というか、気持ちが良いとは感じるんだけど、ん? そういえばルナはどうしたのかしら?」
「ルナは玲ちゃんが名前を付けたから呼べば来るんじゃないか。「ルナ、お出で」とか言ってみたら」
「まさか、来るかしら? 聖石の中なのに」
「呼んでみたら良いよ」
「ルナ! 側に来て!」
アランの言葉の通りに呼んでみたら
「ピピピ、ピピッ」
聖鳥のルナが私の肩に乗って「ピピピッ」って話しかけてきた。嬉しいという気持ちが伝わってくる。本当に来た。でも、どうやって此処に来たのかしら? 聖石の中に飛ばされた時にルナは一緒ではなかったはずなのに。
「凄いな。本当に来た」
「あのさ、玲ちゃん……」
「何?」
「俺も玲ちゃんが呼べば瞬間移動みたいに転移できるんじゃない?」
「まさか」
「ちょっと、やってみよう」
そうして試してみたら、かなり離れたところから、冷蔵庫の中にアランが飛んできた。
「姿消しと瞬間移動、もうスパイし放題」
アランが嬉しそう。レナード王子も羨ましそうに私を見つめてくるけど、でも、これってアランが私の従者になっているせいだよね。
「レイちゃん!」
いえ、いえ、いえ。そんな目で見ないで、レナード王子。王子を従者になんてできません。
あっ、アランも一応、王子だった……。
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