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小話4. 私の世界3(シオリ視点)
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白い光で聖堂がいっぱいになって、思わず目をつぶって、そして目を開けたらそこにヨシンババアはいなかった。レナード王子ともう一人の公爵令嬢も居なくなっていた。3人して何処にいったんだろう。
「大丈夫か?」
「えっ、まぁ平気だけど、凄い光だった」
「そうだな。目がくらんだ」
ブギウが優しくあたしの肩を抱いた。ブギウって優男なんだけど、あたしに対する態度は良いんだよね~。これでもう少し男らしさが加わればいいんだけど。
何だか、他の連中はバタバタと何かをしているらしいけど、聖女を放って置くなんてよくないと思う。
「ねぇ、ヨシンババアとレナード様はどこへ行ったの?」
「……」
「……」
「何? どうかした?」
何で皆、無言であたしの方を見るんだろう。何か感じ悪い。
「もう、大事な聖女を放ってどこかに行くなんて失礼じゃない! あたし、なんだか喉が渇いたし、お茶にして」
「……」
「もう、何とか言ったらどうなの!」
何だか疲れてもう休みたいと言うあたしに、神官みたいな人が聖石に触ってみろっ、て言うから何かイベントが起こるかもって触ってみたけど、何も起こらなかった。つまらない。
それで、部屋に戻ってブギウに愚痴をこぼしながらお茶していると、あっちの国からあたしに面会をしたいって人が来た。
その人が凄かった。チョー、好み。イケメンだけど野性的でセクシー。これが細マッチョって言うのね。流し目で見られるだけでドキドキしてしまう。どことなくブギウに似ているけど、彼のほうがメッチャ魅力的。
「初めまして、聖女様。シオリ様とお呼びしても?」
「は、はい」
声もセクシー。もう、見つめられるとどうしていいか分からない。
「俺、いえ私はセイント国の第一王子、トルーイと申します。聖女、シオリ様にお会いできて光栄です」
「トルーイ様……第一王子?」
「ええっ、これまでは権力に興味がなくて自由気ままに旅をしていたのですが、聖女さまが召喚されたと聞いて、これは是非お目にかからないと、とブルーバード国まで追いかけてきたのです」
「あたしを追いかけて……」
「追いかけてきて良かった。こんな麗しい聖女様にお会いできるなんて、これは運命かもしれない」
「運命……」
「初めてお会いしたのにこんなに愛しい想いを抱いてしまうなんて、信じられない。何て貴女は罪深いひとなんだ。貴女のためなら、貴女が望むなら王宮に戻って、王になっても良いと思うほどに」
「王様に?」
「ええ、貴女が望むなら」
「そうしたら、あたしが王妃?」
「いつまでも一緒にいたい、貴女を守ると誓いましょう」
「ト、トルーイ様……」
もうあたし、ポーッとしてしまって、これが恋に落ちたという事ね。しかも相思相愛。思わず抱きつこうとしたら、彼は両手のひらをあたしに向けて、悲しそうに首を振った。
「しかし、貴女はブギウの婚約者。みだりに触れる事はかないません」
「でも、」
「一旦、セイント国に帰りましょう。そして、真実の愛の為に婚約を解消し、新たに私と婚約して下さいませんか」
「真実の愛!」
「愛する貴女を大切にしたい。それにブギウも私の大事な弟です。きちんと手順を踏んで貴女に改めて申し込みたいのです」
「でも、」
「正々堂々と貴女の手を取りたい。そのためにはまず、セイント国で私が王太子になる必要があります。少しだけ待ってくださいませんか?」
「ト、トルーイ様」
トルーイ様はあたしの手を軽く取り、口づけを落とした。美形なイケメンが跪いて愛を乞う、絵になる。その相手がこのあたし。
レナード様も良いけど、第二王子だし、トルーイ様は物凄い好みで王様になるって言ってるから、もう彼で良いかな。トルーイ様って、隠しルートで悪役のヨシンババアが出て来たから出現したのかも。ラッキー。
やっぱり、ココはあたしの世界。ブギウが悔しそうにこちらを見ているのも気持ちが良い。止めて、あたしのために争わないで、なんてね。
※別室で
「兄上、早かったですね」
「偶々、連絡がついて仕方ないからワザワザ来てやったぞ」
「まさか、とは思いますが……」
「俺は王位には興味はない。というかメンドクサイ国王の仕事なんてまっぴらごめんだ」
「良かった」
「なんだ。心配したのか?」
「聖女にあんな事を言うから、ひょっとして、と思って。兄上は聖女の好みそのものだし」
「聖女は顔のいい男と権力が大好きだと聞いたからな。もっとも、ほとんどの女は俺を見るとよろめいてくる。あの聖女は凄い俗物のように見えるが、本当に聖女なのか?」
「神力だけは凄いんですよ。歴代聖女の誰よりも。だから、国をしばらく離れても大丈夫なんです。ところで、兄上が今回の事を引き受けるという事は、父上と何か取引でも?」
「聖女を篭絡したら、好きな国宝を貰う事になっている。邪魔するなよ」
「良いですよ。兄上の事だから古い遺物とかが目的なんでしょう? 取り合えず、聖女が大人しく国に帰ってくれるなら」
「お披露目だけすまして、後は聖女の能力を移してしまえばいいからな」
「そういう事です」
心にもない態度を取っているセイント国の王子二人の会話
「大丈夫か?」
「えっ、まぁ平気だけど、凄い光だった」
「そうだな。目がくらんだ」
ブギウが優しくあたしの肩を抱いた。ブギウって優男なんだけど、あたしに対する態度は良いんだよね~。これでもう少し男らしさが加わればいいんだけど。
何だか、他の連中はバタバタと何かをしているらしいけど、聖女を放って置くなんてよくないと思う。
「ねぇ、ヨシンババアとレナード様はどこへ行ったの?」
「……」
「……」
「何? どうかした?」
何で皆、無言であたしの方を見るんだろう。何か感じ悪い。
「もう、大事な聖女を放ってどこかに行くなんて失礼じゃない! あたし、なんだか喉が渇いたし、お茶にして」
「……」
「もう、何とか言ったらどうなの!」
何だか疲れてもう休みたいと言うあたしに、神官みたいな人が聖石に触ってみろっ、て言うから何かイベントが起こるかもって触ってみたけど、何も起こらなかった。つまらない。
それで、部屋に戻ってブギウに愚痴をこぼしながらお茶していると、あっちの国からあたしに面会をしたいって人が来た。
その人が凄かった。チョー、好み。イケメンだけど野性的でセクシー。これが細マッチョって言うのね。流し目で見られるだけでドキドキしてしまう。どことなくブギウに似ているけど、彼のほうがメッチャ魅力的。
「初めまして、聖女様。シオリ様とお呼びしても?」
「は、はい」
声もセクシー。もう、見つめられるとどうしていいか分からない。
「俺、いえ私はセイント国の第一王子、トルーイと申します。聖女、シオリ様にお会いできて光栄です」
「トルーイ様……第一王子?」
「ええっ、これまでは権力に興味がなくて自由気ままに旅をしていたのですが、聖女さまが召喚されたと聞いて、これは是非お目にかからないと、とブルーバード国まで追いかけてきたのです」
「あたしを追いかけて……」
「追いかけてきて良かった。こんな麗しい聖女様にお会いできるなんて、これは運命かもしれない」
「運命……」
「初めてお会いしたのにこんなに愛しい想いを抱いてしまうなんて、信じられない。何て貴女は罪深いひとなんだ。貴女のためなら、貴女が望むなら王宮に戻って、王になっても良いと思うほどに」
「王様に?」
「ええ、貴女が望むなら」
「そうしたら、あたしが王妃?」
「いつまでも一緒にいたい、貴女を守ると誓いましょう」
「ト、トルーイ様……」
もうあたし、ポーッとしてしまって、これが恋に落ちたという事ね。しかも相思相愛。思わず抱きつこうとしたら、彼は両手のひらをあたしに向けて、悲しそうに首を振った。
「しかし、貴女はブギウの婚約者。みだりに触れる事はかないません」
「でも、」
「一旦、セイント国に帰りましょう。そして、真実の愛の為に婚約を解消し、新たに私と婚約して下さいませんか」
「真実の愛!」
「愛する貴女を大切にしたい。それにブギウも私の大事な弟です。きちんと手順を踏んで貴女に改めて申し込みたいのです」
「でも、」
「正々堂々と貴女の手を取りたい。そのためにはまず、セイント国で私が王太子になる必要があります。少しだけ待ってくださいませんか?」
「ト、トルーイ様」
トルーイ様はあたしの手を軽く取り、口づけを落とした。美形なイケメンが跪いて愛を乞う、絵になる。その相手がこのあたし。
レナード様も良いけど、第二王子だし、トルーイ様は物凄い好みで王様になるって言ってるから、もう彼で良いかな。トルーイ様って、隠しルートで悪役のヨシンババアが出て来たから出現したのかも。ラッキー。
やっぱり、ココはあたしの世界。ブギウが悔しそうにこちらを見ているのも気持ちが良い。止めて、あたしのために争わないで、なんてね。
※別室で
「兄上、早かったですね」
「偶々、連絡がついて仕方ないからワザワザ来てやったぞ」
「まさか、とは思いますが……」
「俺は王位には興味はない。というかメンドクサイ国王の仕事なんてまっぴらごめんだ」
「良かった」
「なんだ。心配したのか?」
「聖女にあんな事を言うから、ひょっとして、と思って。兄上は聖女の好みそのものだし」
「聖女は顔のいい男と権力が大好きだと聞いたからな。もっとも、ほとんどの女は俺を見るとよろめいてくる。あの聖女は凄い俗物のように見えるが、本当に聖女なのか?」
「神力だけは凄いんですよ。歴代聖女の誰よりも。だから、国をしばらく離れても大丈夫なんです。ところで、兄上が今回の事を引き受けるという事は、父上と何か取引でも?」
「聖女を篭絡したら、好きな国宝を貰う事になっている。邪魔するなよ」
「良いですよ。兄上の事だから古い遺物とかが目的なんでしょう? 取り合えず、聖女が大人しく国に帰ってくれるなら」
「お披露目だけすまして、後は聖女の能力を移してしまえばいいからな」
「そういう事です」
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