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55. 聖石の日々
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サバイバルって、なんだっけ?
アランとレナード王子は毎日が楽しそう。アランはこういう採取とか狩りとかの自給自足生活が送りたかったそうで、楽しそうに日々を過ごしている。
冷蔵庫の中に食べ物がタップリあるから、本当はサバイバルとは言わないような気もするけど、アランが「これはサバイバルだ」と言い張るのでそれでも良いかなと諦めた。
レナード王子も王宮の生活は窮屈だったと言って、狩人みたいな恰好をして毎日出かけている。最初のうちは私もついて行ってたんだけど、そのうち、面倒くさくなって、ちょっとだけ森を散策したらすぐ側で冷蔵庫の家を展開してお茶を飲みながら、本を読んで過ごしている。
何だか、サバイバルというより、バカンスに来たみたいな感じ。
「おーい、玲ちゃん、獲物が獲れたよ。こーんな大きい魔猪」
「レイちゃん、ついでに魔雉も捕まえてきた。ちゃんと血抜きも解体も済ませて来たから。美味しい木の実もあるんだ。これ、雉と一緒に焼くと美味いよ」
「この前の雉のロースト、美味かったもんな。兄さんはホント雉を捕まえるのが上手いよ」
「アー君こそ、罠の張り方とか、解体とか上手で感心してしまう」
「実際に体験したのは初めてなんだけど、シミュレーションだけはしていたから以外とできて自分でもびっくりした」
「さすがはアー君」
レナード王子とアランが嬉しそうな顔で褒め合いながら魔猪の肉と羽をむしった魔雉を見せてきた。何だか、得意そうな顔をしている。二人ともシッポを振っているワンちゃんに見えるのは気のせいだろうか。
この二人は偵察と言いながら草原の先の森で喜々として狩りをしてくる。冷蔵庫の中は少し拡張されて物置部屋みたいな何もない部屋が出来たので、そこに取ってきた獲物は吊るしてある。その部屋の隅には燻製室もできてアランとレナード王子は楽しそうに色々なモノを燻製している。
その中にはどう見ても日本ではお目にかかれなかった魔物としか言いようもない顔をした魚もいた。魚にエビにタコにカニもいる。皆、とても大きい。海に行った時は私も同行したけどきれいな海、と思ってみていたらピシャンと跳ねてこちらに向かってきたのは物凄く大きなエビだった。砂の上をピョンピョン跳ねてハサミをこちらに向けてくる。
「おお、珍しい魔エビだ」
「魔エビ?」
「物凄く美味しいんだ。狂暴だけどね。取り過ぎて絶滅したんじゃないかと言われていたんだけど、久々に見た」
レナード王子は素早い身のこなしで魔エビの攻撃を避け、頭をサッと切り落とした。
そのエビは刺身で食べて、中華風の揚げ物にして、エビ団子のスープにアランのリクエストでエビチリも作った。
例えていえばイセエビをさらに濃厚にしたような深い味わいですごく美味しかった。
有村さんもテーブルに出現したエビ料理の数々に感激していたけど、やっぱりエビチリにはご飯だよね、一人だけ仲間外れは良くないかなと出してあげた白いご飯をみて固まってから、涙目で食べていたから懐かしかったんだと思う。ただ、
「やはり、あたしは聖女だわ。ついにご飯も呼び出せるようになった。後はコーラが飲みたい。神さま、コーラ、お願いします」
とお願いされたのでコーラを出してあげようとしたら、アランに全力で止められた。勘違いさせておいたほうが大人しいけど、コーラや日本の嗜好品を出すのは良くないんですって。
私は相変わらず有村さんの前には出ないようにしている。
有村さんは実は最初の日に着ていたドレスのままだけど、毎日マメに浄化を掛けているから、お風呂に入らなくても清潔を保っている。
レナード王子が出してあげたテントのなかには簡易トイレもあるし、お水もいつでも飲める魔道具のおかげに生活には問題ない。流石に何もない草原に話し相手もなく一人きりなのは気の毒かなと思って、この世界の学園で使われていた教科書とマナーブックをテーブルの上に置いてあげたら、もの凄くイヤな顔をしてベッドの下に押し込んでいた。
そう、せっかくテントを出してあげたのに、有村さんは露天に置かれたベッドで寝ている。女の子なのに丸見えの状態でベッドに寝るなんて良くないんじゃないかな、と思うんだけど、アランとレナード王子は透明な壁越しに見える有村さんのほうには、まるっきり視線を向けない。
仕方ないので時々私が彼女の様子を見ているけれど、とても元気そうに見える。でも、夜、暗い中、どうしてお外で寝る事が出来るのか理解できない。
私達は冷蔵庫の中だから透明な壁に守られているけど、有村さん、そこはお外ですよ。やっぱり日本人だから危機意識が薄いのかもしれない。
「一応、ベッドとテントのまわりには結界を張って置いたから」とレナード王子が言うので大丈夫だとは思うけど。
と言っても、この草原は聖域になっているようで野宿しても問題ないみたい。そして、レナード王子とアランも、有村さんには接触していない。時々、遠くに姿を見せてはいるけど、有村さんが駆け寄ってくると姿を消してしまう。
私たちは付近の探索をして、そして、レナード王子は一つの可能性を見出した。
「さて、しばらく楽しい日々を過ごしたがここは過去の世界なんだと思う。地形と海や過去の森の位置とかが一致している。」
聖石の世界と思っていたけど、私達はこの世界の過去に飛ばされていたらしい。異世界とか過去の世界とか、どうして飛ばされてしまうのかしら?
アランとレナード王子は毎日が楽しそう。アランはこういう採取とか狩りとかの自給自足生活が送りたかったそうで、楽しそうに日々を過ごしている。
冷蔵庫の中に食べ物がタップリあるから、本当はサバイバルとは言わないような気もするけど、アランが「これはサバイバルだ」と言い張るのでそれでも良いかなと諦めた。
レナード王子も王宮の生活は窮屈だったと言って、狩人みたいな恰好をして毎日出かけている。最初のうちは私もついて行ってたんだけど、そのうち、面倒くさくなって、ちょっとだけ森を散策したらすぐ側で冷蔵庫の家を展開してお茶を飲みながら、本を読んで過ごしている。
何だか、サバイバルというより、バカンスに来たみたいな感じ。
「おーい、玲ちゃん、獲物が獲れたよ。こーんな大きい魔猪」
「レイちゃん、ついでに魔雉も捕まえてきた。ちゃんと血抜きも解体も済ませて来たから。美味しい木の実もあるんだ。これ、雉と一緒に焼くと美味いよ」
「この前の雉のロースト、美味かったもんな。兄さんはホント雉を捕まえるのが上手いよ」
「アー君こそ、罠の張り方とか、解体とか上手で感心してしまう」
「実際に体験したのは初めてなんだけど、シミュレーションだけはしていたから以外とできて自分でもびっくりした」
「さすがはアー君」
レナード王子とアランが嬉しそうな顔で褒め合いながら魔猪の肉と羽をむしった魔雉を見せてきた。何だか、得意そうな顔をしている。二人ともシッポを振っているワンちゃんに見えるのは気のせいだろうか。
この二人は偵察と言いながら草原の先の森で喜々として狩りをしてくる。冷蔵庫の中は少し拡張されて物置部屋みたいな何もない部屋が出来たので、そこに取ってきた獲物は吊るしてある。その部屋の隅には燻製室もできてアランとレナード王子は楽しそうに色々なモノを燻製している。
その中にはどう見ても日本ではお目にかかれなかった魔物としか言いようもない顔をした魚もいた。魚にエビにタコにカニもいる。皆、とても大きい。海に行った時は私も同行したけどきれいな海、と思ってみていたらピシャンと跳ねてこちらに向かってきたのは物凄く大きなエビだった。砂の上をピョンピョン跳ねてハサミをこちらに向けてくる。
「おお、珍しい魔エビだ」
「魔エビ?」
「物凄く美味しいんだ。狂暴だけどね。取り過ぎて絶滅したんじゃないかと言われていたんだけど、久々に見た」
レナード王子は素早い身のこなしで魔エビの攻撃を避け、頭をサッと切り落とした。
そのエビは刺身で食べて、中華風の揚げ物にして、エビ団子のスープにアランのリクエストでエビチリも作った。
例えていえばイセエビをさらに濃厚にしたような深い味わいですごく美味しかった。
有村さんもテーブルに出現したエビ料理の数々に感激していたけど、やっぱりエビチリにはご飯だよね、一人だけ仲間外れは良くないかなと出してあげた白いご飯をみて固まってから、涙目で食べていたから懐かしかったんだと思う。ただ、
「やはり、あたしは聖女だわ。ついにご飯も呼び出せるようになった。後はコーラが飲みたい。神さま、コーラ、お願いします」
とお願いされたのでコーラを出してあげようとしたら、アランに全力で止められた。勘違いさせておいたほうが大人しいけど、コーラや日本の嗜好品を出すのは良くないんですって。
私は相変わらず有村さんの前には出ないようにしている。
有村さんは実は最初の日に着ていたドレスのままだけど、毎日マメに浄化を掛けているから、お風呂に入らなくても清潔を保っている。
レナード王子が出してあげたテントのなかには簡易トイレもあるし、お水もいつでも飲める魔道具のおかげに生活には問題ない。流石に何もない草原に話し相手もなく一人きりなのは気の毒かなと思って、この世界の学園で使われていた教科書とマナーブックをテーブルの上に置いてあげたら、もの凄くイヤな顔をしてベッドの下に押し込んでいた。
そう、せっかくテントを出してあげたのに、有村さんは露天に置かれたベッドで寝ている。女の子なのに丸見えの状態でベッドに寝るなんて良くないんじゃないかな、と思うんだけど、アランとレナード王子は透明な壁越しに見える有村さんのほうには、まるっきり視線を向けない。
仕方ないので時々私が彼女の様子を見ているけれど、とても元気そうに見える。でも、夜、暗い中、どうしてお外で寝る事が出来るのか理解できない。
私達は冷蔵庫の中だから透明な壁に守られているけど、有村さん、そこはお外ですよ。やっぱり日本人だから危機意識が薄いのかもしれない。
「一応、ベッドとテントのまわりには結界を張って置いたから」とレナード王子が言うので大丈夫だとは思うけど。
と言っても、この草原は聖域になっているようで野宿しても問題ないみたい。そして、レナード王子とアランも、有村さんには接触していない。時々、遠くに姿を見せてはいるけど、有村さんが駆け寄ってくると姿を消してしまう。
私たちは付近の探索をして、そして、レナード王子は一つの可能性を見出した。
「さて、しばらく楽しい日々を過ごしたがここは過去の世界なんだと思う。地形と海や過去の森の位置とかが一致している。」
聖石の世界と思っていたけど、私達はこの世界の過去に飛ばされていたらしい。異世界とか過去の世界とか、どうして飛ばされてしまうのかしら?
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