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53. 聖女です
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かなり驚いているレナード王子にアランが
「レナード、兄さん。ソファーに座りなよ。落ち着いて温かいコーヒーでもどう?」
「あっ、ああ、有り難う。アー君は知っていたのか?」
「何? 浄化の事? 兄さんだって、玲ちゃんが浄化を使えるのは知っていただろう? 俺だって浄化は使えるよ」
「いや、浄化を使える者はそんなにいない。神殿の神官や巫女たちが使えるようになることが多い」
「えっ、そうなの? 俺ら、最初から使えたよね」
「ええ、そうね」
「この規模の浄化を一気に使えるのは……聖女、しかいない」
「えっ、3人に合わせて掛けただけなのに? それに私だって最初は手の平サイズだったけど、頑張って使っていくうちに段々浄化できる範囲が広がっていっただけで。アランだって、段々浄化の範囲、広がっているでしょう?」
「うん。俺も段々浄化のレベルは上がっているけど、この世界の人たちはレベルって概念がないんだった。兄さんだってステータスオープンって言っても何も出なかったみたいだし」
そう、この世界の人たちはレベルとか知らないらしくて、レナード王子は私達からその話を聞いて、何とかステータスとレベルを出そうとしたけど無理だった。
「そうか……」
「あのさ、兄さん、薄々はわかっているかと思うけど玲ちゃん、聖女だから」
「……」
アランがあっさりとばらしてくれてレナード王子は眼を見開いて私の顔をじっと見た。
「聖女……」
「そう聖女」
「聖女さま、でしたか……」
「そうだよ。聖女なのに余計なモノが付いていた為に捨てられちゃたけどね」
「余計なモノ……」
「冷蔵庫が付いていた為に省略されて、冷たい女と誤解されたんだ。本当は『広義の冷蔵庫と共に玲の祝福を持つ聖女って言うんだ。玲の祝福って知っている?」
「いや、知らない。しかし聖女だったら、何故召喚の時に分からなかったんだ?」
「だって、名前と冷女って物凄く省略された称号しか出てこなかったんです。名前も苗字はなくて、冷って出ただけ」
「聖女は二人召喚されたのか。でも、レイちゃんの顔を見たら昔の聖女とソックリだってわかりそうなものなのに、アイツらの目は節穴か」
「でも、こちらへ召喚された時、私は黒髪黒目だったの」
「走っているうちに色素が抜けて行って、いつの間にか金髪だもんな」
「そうね。どうなっているかしら?」
「でも、玲ちゃんの顔はそんなに変わってないよ」
アランが言うには元々私の顔は彫りが深いほうだし、美人だと思っていたそう……、そうかしら、ちょっと照れてしまう。
私達はソファーに座ってサンドイッチを食べて、コーヒーを飲んだ。とりあえず食料の心配はないし、キッチンはないけど、アランのキャンプ道具のおかげで調理もできるから生きていくのに心配はない。ベッドにお風呂、トイレもあるのは本当に有難いと思う。
「えーと、聖女さま」
「あっ、止めて下さい。今まで通りでいいです。まだ他の人には内緒にしておきたいし」
「聖女だと知っているのは俺と兄さんだけね。だから、敬語なんてナシだよ」
「そうか、知っているのは3人だけか。わかった。今まで通りだな、気を付けよう。ここは聖石の中だと思うんだけど、ひょっとして聖石によってどこかに飛ばされた可能性もある。此処を仮の拠点にして付近を探ってみる」
「レナード、兄さんだけだと心配だから俺もついて行こうかな」
「アー君と一緒に探索か……」
とレナード王子が感慨深げに頷いたところで、ふと外を見るとベッドに寝ていたシオリーヌが起き上がるのが見えた。キョロキョロしている。そうね、草原にポツンとベッドが置いてあって、そこに一人だけだと、どうしたんだろうって思うよね。
「シオリーヌ様が起きたみたいです」
「そうだな」
「どうする?」
「放っておいても良いような気がするな」
「多分、私が行っても反発されると思うので、ここはやはり」
「俺、あいつが本当に苦手なんだ」
「わかる」
レナード王子は嫌そうに立ち上がった。あまりに気の毒なのでアランが姿を消して付いていく事になったけど、彼女、きちんと話を聞いてくれるだろうか。
あっ、レナード王子を見て嬉しそうに頬に手を当てて上目遣い。それはワザとらしいと思う。
「レナード殿下~、あたしたち、二人だけでこんなところに来てしまったんでしょうか~。これはもう運命、運命ね」
「残念ながら二人だけではなく、弟のアラードとレイン姫も一緒だ」
「えっ、だって誰もいませんよね」
そういうとシオリーヌは辺りを見回した。
「二人っきり、ですわ」
「俺もいるけどね」
そう言いながらアランが姿を現した。
「まぁ、美少年! アラード? ああ、病弱で静養している三番目、何、凄い美少年。私、シオリーヌと申します。ブルーバード国の聖女ですわ」
「見た目は日焼けした他国の人に見えるけど」
「あら、嫌ですわ。あたくしは古の聖女にソックリだってよく言われますの。ほら、この金の髪……」
そう言って、シオリーヌが自分の髪を一房摘まんで、ギョッとした顔をしてマジマジと髪を見た。ついでに髪を摘まんでいる自分の腕をみて
「ウソッー、何でこんなに肌が焼けて傷んでいるの! というか何で黒髪なのよ?!」
と叫んだ。
「『有村嘉子』さん。君、本来の姿に戻ったみたいだよ」
「本来……えっ、ええっ?」
「君さ、どうやってこの世界に来たの? 死んだの? それともトリップ?」
アランが容赦なくツッこんで聞いていく。えーと、流石に可哀そうだと思う。でも、どうやって取りなしてあげたら良いのかしら。
「レナード、兄さん。ソファーに座りなよ。落ち着いて温かいコーヒーでもどう?」
「あっ、ああ、有り難う。アー君は知っていたのか?」
「何? 浄化の事? 兄さんだって、玲ちゃんが浄化を使えるのは知っていただろう? 俺だって浄化は使えるよ」
「いや、浄化を使える者はそんなにいない。神殿の神官や巫女たちが使えるようになることが多い」
「えっ、そうなの? 俺ら、最初から使えたよね」
「ええ、そうね」
「この規模の浄化を一気に使えるのは……聖女、しかいない」
「えっ、3人に合わせて掛けただけなのに? それに私だって最初は手の平サイズだったけど、頑張って使っていくうちに段々浄化できる範囲が広がっていっただけで。アランだって、段々浄化の範囲、広がっているでしょう?」
「うん。俺も段々浄化のレベルは上がっているけど、この世界の人たちはレベルって概念がないんだった。兄さんだってステータスオープンって言っても何も出なかったみたいだし」
そう、この世界の人たちはレベルとか知らないらしくて、レナード王子は私達からその話を聞いて、何とかステータスとレベルを出そうとしたけど無理だった。
「そうか……」
「あのさ、兄さん、薄々はわかっているかと思うけど玲ちゃん、聖女だから」
「……」
アランがあっさりとばらしてくれてレナード王子は眼を見開いて私の顔をじっと見た。
「聖女……」
「そう聖女」
「聖女さま、でしたか……」
「そうだよ。聖女なのに余計なモノが付いていた為に捨てられちゃたけどね」
「余計なモノ……」
「冷蔵庫が付いていた為に省略されて、冷たい女と誤解されたんだ。本当は『広義の冷蔵庫と共に玲の祝福を持つ聖女って言うんだ。玲の祝福って知っている?」
「いや、知らない。しかし聖女だったら、何故召喚の時に分からなかったんだ?」
「だって、名前と冷女って物凄く省略された称号しか出てこなかったんです。名前も苗字はなくて、冷って出ただけ」
「聖女は二人召喚されたのか。でも、レイちゃんの顔を見たら昔の聖女とソックリだってわかりそうなものなのに、アイツらの目は節穴か」
「でも、こちらへ召喚された時、私は黒髪黒目だったの」
「走っているうちに色素が抜けて行って、いつの間にか金髪だもんな」
「そうね。どうなっているかしら?」
「でも、玲ちゃんの顔はそんなに変わってないよ」
アランが言うには元々私の顔は彫りが深いほうだし、美人だと思っていたそう……、そうかしら、ちょっと照れてしまう。
私達はソファーに座ってサンドイッチを食べて、コーヒーを飲んだ。とりあえず食料の心配はないし、キッチンはないけど、アランのキャンプ道具のおかげで調理もできるから生きていくのに心配はない。ベッドにお風呂、トイレもあるのは本当に有難いと思う。
「えーと、聖女さま」
「あっ、止めて下さい。今まで通りでいいです。まだ他の人には内緒にしておきたいし」
「聖女だと知っているのは俺と兄さんだけね。だから、敬語なんてナシだよ」
「そうか、知っているのは3人だけか。わかった。今まで通りだな、気を付けよう。ここは聖石の中だと思うんだけど、ひょっとして聖石によってどこかに飛ばされた可能性もある。此処を仮の拠点にして付近を探ってみる」
「レナード、兄さんだけだと心配だから俺もついて行こうかな」
「アー君と一緒に探索か……」
とレナード王子が感慨深げに頷いたところで、ふと外を見るとベッドに寝ていたシオリーヌが起き上がるのが見えた。キョロキョロしている。そうね、草原にポツンとベッドが置いてあって、そこに一人だけだと、どうしたんだろうって思うよね。
「シオリーヌ様が起きたみたいです」
「そうだな」
「どうする?」
「放っておいても良いような気がするな」
「多分、私が行っても反発されると思うので、ここはやはり」
「俺、あいつが本当に苦手なんだ」
「わかる」
レナード王子は嫌そうに立ち上がった。あまりに気の毒なのでアランが姿を消して付いていく事になったけど、彼女、きちんと話を聞いてくれるだろうか。
あっ、レナード王子を見て嬉しそうに頬に手を当てて上目遣い。それはワザとらしいと思う。
「レナード殿下~、あたしたち、二人だけでこんなところに来てしまったんでしょうか~。これはもう運命、運命ね」
「残念ながら二人だけではなく、弟のアラードとレイン姫も一緒だ」
「えっ、だって誰もいませんよね」
そういうとシオリーヌは辺りを見回した。
「二人っきり、ですわ」
「俺もいるけどね」
そう言いながらアランが姿を現した。
「まぁ、美少年! アラード? ああ、病弱で静養している三番目、何、凄い美少年。私、シオリーヌと申します。ブルーバード国の聖女ですわ」
「見た目は日焼けした他国の人に見えるけど」
「あら、嫌ですわ。あたくしは古の聖女にソックリだってよく言われますの。ほら、この金の髪……」
そう言って、シオリーヌが自分の髪を一房摘まんで、ギョッとした顔をしてマジマジと髪を見た。ついでに髪を摘まんでいる自分の腕をみて
「ウソッー、何でこんなに肌が焼けて傷んでいるの! というか何で黒髪なのよ?!」
と叫んだ。
「『有村嘉子』さん。君、本来の姿に戻ったみたいだよ」
「本来……えっ、ええっ?」
「君さ、どうやってこの世界に来たの? 死んだの? それともトリップ?」
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