冷女が聖女。

サラ

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47. 歓迎会

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 さて、あっという間に歓迎会当日になってしまった。
 私は朝から侍女さん達に磨き上げられドレスを着つけられた。さらに大きなサファイアが真ん中に飾られたチョーカーを付けられた。このチョーカーは精巧な細工飾りが連なっていて触るのが恐いくらいに美しい、というか凄く高そう。

「これ、凄いですね」
「ええ、国宝クラスです。レナード殿下からの贈り物になります。愛されていますね」
「えっ? 贈り物?」
「はい。今夜はレナード殿下がレイン様をエスコートします。レイン様は今夜がデビュタントになりますからその時にレナード殿下からのアクセサリーを付けられるという事は、そう言う事です」

 そう言う事ですってどういう事? 何だか、告白めいたものはあったけど、お友達からという話でしたよね!
 でも、レナード王子は王族だから家柄とか政略とか手続きとか色々あるはず。私は虫よけならぬレナード王子の苦手としている女性除け、だよね。きっと。
 準備だけで疲れてしまった私の所へアランがやって来た。アランの顔を見ると何だか癒される。

「玲ちゃん、凄く綺麗。まるで、お姫様みたい」
「みたいじゃなくてお姫様だよ。本当に凄く綺麗だ」
「レナード兄さんがこんなきれいな玲ちゃんをエスコートするなんて、」
「アー君、大丈夫。ちゃんと側にいてレイちゃんの事は守るから。アー君も姿を消して側にいてくれるだろう?」
「だけどさ、まるで玲ちゃんが兄さんの婚約者みたいじゃないか」
「そうしたほうが色々と都合が良いんだ」
「兄さんが聖女とか公爵令嬢とか牽制したいだけだろ。巻き込まれるこっちの身にもなって見ろよ」
「アー君はこの国の王子としての身分はあるけど、何もしないとレイちゃんは近くにいられないよ。離れたくないんだろう? 取り合えず、俺の大事な人として周知して地盤を固めたら後は自由にしていいからさ」
「ならいいけどさ」

 いいんだ……。
 アランがなんだか納得しているのは納得いかないけど、私は夜会に出てにこやかに微笑んでいれば良いらしい。何か言われても首を傾げて「まぁ?」とか「恐れ入ります」とかいっていればレナード王子が何とかしてくれるそうだ。でも、それってなんにもできないおバカな女性に見えないかしら?

「大丈夫、淑やかな深窓の令嬢が困って微笑んでいるだけだ」
「玲ちゃんが深窓の令嬢……」
「何か?」
「いや、見た目は間違いなくお姫様だから」
「もう……」

 そうして始まった歓迎会。
 貴族たちがさんざめく夜会の会場に王族が登場し王さまの挨拶があった。私の事はサンクトゥス公爵の隠された姫として紹介され、レナード王子の庇護を受けている彼の大切な存在であると周知された。
 いずれ、改めてお披露目をする予定と言われたけど、拍手が起こったのは何故だろう。

 その後に聖女とセイント国の王太子が入場し、彼らは先ず、王様と王妃様に挨拶をした。私もレナード王子の側にいて、にこやかに彼らの挨拶を受ける。
 とシオリが私の顔を見て睨んできた。聖女だからそんな顔をしてはいけないと思う。
 王族への挨拶が終わり、そのままシオリ達は王様と王妃様の横に並んで貴族たちの挨拶を受けた。
 王族に続く身分の大公夫妻とその子息、続いてサンクトゥス公爵家の夫妻と子息、子女だけど公爵令嬢のシオリーヌと聖女のシオリが顔を合わせた。

 そして二人して「ええっ!」と貴族子女らしからぬ声をあげた。シオリが私にそっくりな公爵令嬢を見て驚くのはわかるけど、公爵令嬢のシオリーヌが何故、そんなに驚くのか分からない。私を見て驚くのならわかるんだけど。
 お互いに指さして「えっ、えっ、」と言っているのでそのままサンクトゥス公爵が会釈をしたかと思うとシオリーヌをひっぱって早口で「聖女様にお目にかかれて光栄です」続いて「陛下に妃殿下、お招きいただきありがとうございます」「殿下、お久しぶりでございます」「レイン、綺麗だよ」「殿下、よろしくお願いいたします」「ミティラ殿下もご機嫌麗しゅうございます」と物凄く素早く挨拶を終わらせて、そうして、私を見て又、「ええっ、うそー!」と言っているシオリーヌを連れて去って行った。

 公爵夫婦で両側から挟むように連れていったのは流石だと思う。大公夫妻も空気を読んで素早く動いたのは前もって何か聞かされていたのかもしれない。
 シオリは時折、私の方をうかがい見て首を傾げていた。貴族たちの挨拶も上の空で受けていたようで、隣のブギウ王太子が焦ってそっとシオリを突いているけどまるで気にしてなかった。

 そうして、一通り貴族たちの挨拶が終わり、私はレナード王子に連れられて大広間の真ん中に進み出た。ミティラ殿下が私に「ガンバって」と小さな声でエールを送ってくれる。
 この場でファーストダンスを踊るなんて凄く緊張する。
 嫌というほど練習したけど大丈夫だろうか?

「大丈夫、何時ものように僕の足を踏んでいいから」

 レナード殿下、私は貴方の足を踏んだことはありません。レナード王子は運動神経が良いので踏まれる前に避けてくれるし、彼のリードに身を任せると私でもそれなりに見られるので、そこは安心できる。
 というか、いつもは俺なのに、僕ですって。
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