48 / 69
45. 家族団らん
しおりを挟む
私の視線に気づいたレナード王子はクスクス笑うと、
「それは良い。あの公爵令嬢はミティラの事をライバル視しているけど、こちらのレイちゃんはお友達だから共同戦線を張れるな」
「そうですわ。いい加減彼女の扱いには困ってましたの。何かと張り合ってこられますもの」
「確かに、あれは私にもすり寄ってきて、うっとおしいと思っていたんだ。レイちゃんとあれの顔はソックリだが、雰囲気が違うな。レイちゃんは楚々としてたおやかだ」
「おう、確かに。レイちゃんなら嫁に来てもらってもよいな」
「そうですね。私も娘が一人増えると嬉しいですわ」
「駄目だよ。玲ちゃんは」
「ああ、アラードの大事な人なのか?」
「違うけど、大切なんだ」
「あらあら、まぁまぁ」
「そうか、そうか」
「んーんー、大切なんだな」
何だか生暖かい目でみられてしまった。私とアランって聖女と従者の関係だけど、日本から来た同胞で旅の仲間で学生同士で……、仲の良い友達、何だろうか? 一緒にいると楽だし空気みたいな存在だけど、私にとってアランってなんだろう?
アランと目があって、お互いに困惑しているのがわかる。これまでは環境の変化に戸惑って、お互いに秘密を共有していて、でも、アランって王子様だから、アラン、このまま王子様になるのだろうか?
私がボーっと座ったまま出されたお茶をぼんやりと飲んでいると、ん……このお茶、美味しい、いつの間にか、側に来ていたミティラ王女が私の手を取って、「ね、そうしましょ」と同意を求めてきた。
「えっ、何がですか?」
「もう、お揃いのドレスで歓迎会に出ましょうって事よ。そこでサンクトゥス公爵家のシオリーヌさまに二人で対決しましょう!」
「シオリーヌさま?」
「そう、レイちゃんの双子の姉妹になるのね。お顔は……ソックリだわ」
「そんなに似ています?」
「ええ、お顔は」
どうやら、聖女シオリとセイント国の王太子を迎えての歓迎会が明後日、おこなわれるらしい。それにしても、シオリとシオリーヌなんて、名前が似ている。
ミティラ王女の話によると、シオリーヌは言動もシオリに似ているような気がする。その上、時折、訳の分からない事を呟く癖があるし、こちらの学園で男子学生の取り巻きを作って、女子生徒からとても嫌われているそうだ。
「ねぇ、レイちゃんは私の隣のお部屋なんてどうかしら? 別にサンクトゥス公爵家に行かなくてもよいのでしょうし、レナードお兄様の預かりという形にしばらくはなるんでしょう?」
「俺の預かりではあるけれど、王宮ではなく「リリーの離宮」に居てもらう。他の貴族連中と遭遇すると面倒だからな。それにレイちゃんは違う世界に居たから、まだ側についていないと、どこかでボロがでそうだ。それはアー君もおなじだし。あっちで一応教師はつけたけど、こちらでもしばらくは勉強漬けだな」
「ええっ! でも歓迎会は出るんでしょう?」
「レイちゃんは歓迎会に出すよ。レイちゃんをお披露目する事で色々牽制にもなるしね。でも、アー君は歓迎会にはださない」
「どうして? アラード兄さま、せっかく帰って来たのに」
「帰ってきたのではなく、病気療養から復帰してきたんだ」
「ああ、そうね」
「しばらく、俺たちがアー君の設定に慣れる必要があるし、レイちゃんとアー君が二人同時に現れるなんて、何だか、不自然だろ。それにあの聖女がアー君を見たら寄ってきそうで怖い。顔が良い男が大好きだから。ついでに公爵家のあれも顔に惹かれて引っ付いてくるぞ」
「それは嫌だ」
嫌そうな顔をしてきっぱりと言い切ったアランに他の人達がウンウンと頷いた。そうして、どういうわけか部外者の私も王家の家族団らんに巻き込まれて、こちらの世界に来てからの事をアランと一緒に話をする事になった。
私の冷蔵庫の事もアイテムボックスという風に紹介されて、せっかくだからと冷蔵庫の横からマドレーヌを出すと、相変わらず毒見もせずにレナード王子がパクッと口に入れ
「俺、この焼き菓子がすげぇ、好きなんだ。コーラとポテチも好きだけど。甘い物としょっぱいモノを交互に食べると止められないし止まらない」
「コーラ? ポテチ?」
「聞いた事のない食べ物だな」
「玲ちゃん、コーラとポテチ、食べたい」
そうしてリクエストにお答えして取り出したコーラを前もって凄く癖があるし、薬のように感じる人もいるからと注意したにも関わらず、一気飲みしたアストールム王子は目を白黒させていた。
「やっぱり子供には炭酸はきついかも」
「初めて飲んだら、ビックリするわ。大丈夫ですか?」
「うん。何と言っていいのか分からない、不思議な飲み物だ。でも、わりと好きかも」
王さまはじめ男性陣には好評だけど、女性には会わないみたいだったので、オレンジジュースをだしてあげると100%果汁のせいかとても美味しいと喜ばれた。
王家の皆さまは以外と気さくな人々だったけど、しばらくして、王さまと王妃さま、ルクスフォンス殿下とレナード王子は聖女とセイント国の王太子との謁見がある為、いやいやながら去って行った。
でも、何故か皆さん、私の事をレイちゃんと呼んでいるけど良いのだろうか?
私とアランも船旅で疲れているでしょうからと離宮に案内されたけど、その「リリーの離宮」は王宮の奥から転移で移動する事が出来た。かなり年配の侍女さんが付いてくれて、彼女が離宮でのお世話係の責任者になると紹介された。
お名前がロッテンマイヤーさん。アランと思わず顔を見合わせてしまった。
「それは良い。あの公爵令嬢はミティラの事をライバル視しているけど、こちらのレイちゃんはお友達だから共同戦線を張れるな」
「そうですわ。いい加減彼女の扱いには困ってましたの。何かと張り合ってこられますもの」
「確かに、あれは私にもすり寄ってきて、うっとおしいと思っていたんだ。レイちゃんとあれの顔はソックリだが、雰囲気が違うな。レイちゃんは楚々としてたおやかだ」
「おう、確かに。レイちゃんなら嫁に来てもらってもよいな」
「そうですね。私も娘が一人増えると嬉しいですわ」
「駄目だよ。玲ちゃんは」
「ああ、アラードの大事な人なのか?」
「違うけど、大切なんだ」
「あらあら、まぁまぁ」
「そうか、そうか」
「んーんー、大切なんだな」
何だか生暖かい目でみられてしまった。私とアランって聖女と従者の関係だけど、日本から来た同胞で旅の仲間で学生同士で……、仲の良い友達、何だろうか? 一緒にいると楽だし空気みたいな存在だけど、私にとってアランってなんだろう?
アランと目があって、お互いに困惑しているのがわかる。これまでは環境の変化に戸惑って、お互いに秘密を共有していて、でも、アランって王子様だから、アラン、このまま王子様になるのだろうか?
私がボーっと座ったまま出されたお茶をぼんやりと飲んでいると、ん……このお茶、美味しい、いつの間にか、側に来ていたミティラ王女が私の手を取って、「ね、そうしましょ」と同意を求めてきた。
「えっ、何がですか?」
「もう、お揃いのドレスで歓迎会に出ましょうって事よ。そこでサンクトゥス公爵家のシオリーヌさまに二人で対決しましょう!」
「シオリーヌさま?」
「そう、レイちゃんの双子の姉妹になるのね。お顔は……ソックリだわ」
「そんなに似ています?」
「ええ、お顔は」
どうやら、聖女シオリとセイント国の王太子を迎えての歓迎会が明後日、おこなわれるらしい。それにしても、シオリとシオリーヌなんて、名前が似ている。
ミティラ王女の話によると、シオリーヌは言動もシオリに似ているような気がする。その上、時折、訳の分からない事を呟く癖があるし、こちらの学園で男子学生の取り巻きを作って、女子生徒からとても嫌われているそうだ。
「ねぇ、レイちゃんは私の隣のお部屋なんてどうかしら? 別にサンクトゥス公爵家に行かなくてもよいのでしょうし、レナードお兄様の預かりという形にしばらくはなるんでしょう?」
「俺の預かりではあるけれど、王宮ではなく「リリーの離宮」に居てもらう。他の貴族連中と遭遇すると面倒だからな。それにレイちゃんは違う世界に居たから、まだ側についていないと、どこかでボロがでそうだ。それはアー君もおなじだし。あっちで一応教師はつけたけど、こちらでもしばらくは勉強漬けだな」
「ええっ! でも歓迎会は出るんでしょう?」
「レイちゃんは歓迎会に出すよ。レイちゃんをお披露目する事で色々牽制にもなるしね。でも、アー君は歓迎会にはださない」
「どうして? アラード兄さま、せっかく帰って来たのに」
「帰ってきたのではなく、病気療養から復帰してきたんだ」
「ああ、そうね」
「しばらく、俺たちがアー君の設定に慣れる必要があるし、レイちゃんとアー君が二人同時に現れるなんて、何だか、不自然だろ。それにあの聖女がアー君を見たら寄ってきそうで怖い。顔が良い男が大好きだから。ついでに公爵家のあれも顔に惹かれて引っ付いてくるぞ」
「それは嫌だ」
嫌そうな顔をしてきっぱりと言い切ったアランに他の人達がウンウンと頷いた。そうして、どういうわけか部外者の私も王家の家族団らんに巻き込まれて、こちらの世界に来てからの事をアランと一緒に話をする事になった。
私の冷蔵庫の事もアイテムボックスという風に紹介されて、せっかくだからと冷蔵庫の横からマドレーヌを出すと、相変わらず毒見もせずにレナード王子がパクッと口に入れ
「俺、この焼き菓子がすげぇ、好きなんだ。コーラとポテチも好きだけど。甘い物としょっぱいモノを交互に食べると止められないし止まらない」
「コーラ? ポテチ?」
「聞いた事のない食べ物だな」
「玲ちゃん、コーラとポテチ、食べたい」
そうしてリクエストにお答えして取り出したコーラを前もって凄く癖があるし、薬のように感じる人もいるからと注意したにも関わらず、一気飲みしたアストールム王子は目を白黒させていた。
「やっぱり子供には炭酸はきついかも」
「初めて飲んだら、ビックリするわ。大丈夫ですか?」
「うん。何と言っていいのか分からない、不思議な飲み物だ。でも、わりと好きかも」
王さまはじめ男性陣には好評だけど、女性には会わないみたいだったので、オレンジジュースをだしてあげると100%果汁のせいかとても美味しいと喜ばれた。
王家の皆さまは以外と気さくな人々だったけど、しばらくして、王さまと王妃さま、ルクスフォンス殿下とレナード王子は聖女とセイント国の王太子との謁見がある為、いやいやながら去って行った。
でも、何故か皆さん、私の事をレイちゃんと呼んでいるけど良いのだろうか?
私とアランも船旅で疲れているでしょうからと離宮に案内されたけど、その「リリーの離宮」は王宮の奥から転移で移動する事が出来た。かなり年配の侍女さんが付いてくれて、彼女が離宮でのお世話係の責任者になると紹介された。
お名前がロッテンマイヤーさん。アランと思わず顔を見合わせてしまった。
1
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
常識的に考えて
章槻雅希
ファンタジー
アッヘンヴァル王国に聖女が現れた。王国の第一王子とその側近は彼女の世話係に選ばれた。女神教正教会の依頼を国王が了承したためだ。
しかし、これに第一王女が異を唱えた。なぜ未婚の少女の世話係を同年代の異性が行うのかと。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる