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45. 家族団らん
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私の視線に気づいたレナード王子はクスクス笑うと、
「それは良い。あの公爵令嬢はミティラの事をライバル視しているけど、こちらのレイちゃんはお友達だから共同戦線を張れるな」
「そうですわ。いい加減彼女の扱いには困ってましたの。何かと張り合ってこられますもの」
「確かに、あれは私にもすり寄ってきて、うっとおしいと思っていたんだ。レイちゃんとあれの顔はソックリだが、雰囲気が違うな。レイちゃんは楚々としてたおやかだ」
「おう、確かに。レイちゃんなら嫁に来てもらってもよいな」
「そうですね。私も娘が一人増えると嬉しいですわ」
「駄目だよ。玲ちゃんは」
「ああ、アラードの大事な人なのか?」
「違うけど、大切なんだ」
「あらあら、まぁまぁ」
「そうか、そうか」
「んーんー、大切なんだな」
何だか生暖かい目でみられてしまった。私とアランって聖女と従者の関係だけど、日本から来た同胞で旅の仲間で学生同士で……、仲の良い友達、何だろうか? 一緒にいると楽だし空気みたいな存在だけど、私にとってアランってなんだろう?
アランと目があって、お互いに困惑しているのがわかる。これまでは環境の変化に戸惑って、お互いに秘密を共有していて、でも、アランって王子様だから、アラン、このまま王子様になるのだろうか?
私がボーっと座ったまま出されたお茶をぼんやりと飲んでいると、ん……このお茶、美味しい、いつの間にか、側に来ていたミティラ王女が私の手を取って、「ね、そうしましょ」と同意を求めてきた。
「えっ、何がですか?」
「もう、お揃いのドレスで歓迎会に出ましょうって事よ。そこでサンクトゥス公爵家のシオリーヌさまに二人で対決しましょう!」
「シオリーヌさま?」
「そう、レイちゃんの双子の姉妹になるのね。お顔は……ソックリだわ」
「そんなに似ています?」
「ええ、お顔は」
どうやら、聖女シオリとセイント国の王太子を迎えての歓迎会が明後日、おこなわれるらしい。それにしても、シオリとシオリーヌなんて、名前が似ている。
ミティラ王女の話によると、シオリーヌは言動もシオリに似ているような気がする。その上、時折、訳の分からない事を呟く癖があるし、こちらの学園で男子学生の取り巻きを作って、女子生徒からとても嫌われているそうだ。
「ねぇ、レイちゃんは私の隣のお部屋なんてどうかしら? 別にサンクトゥス公爵家に行かなくてもよいのでしょうし、レナードお兄様の預かりという形にしばらくはなるんでしょう?」
「俺の預かりではあるけれど、王宮ではなく「リリーの離宮」に居てもらう。他の貴族連中と遭遇すると面倒だからな。それにレイちゃんは違う世界に居たから、まだ側についていないと、どこかでボロがでそうだ。それはアー君もおなじだし。あっちで一応教師はつけたけど、こちらでもしばらくは勉強漬けだな」
「ええっ! でも歓迎会は出るんでしょう?」
「レイちゃんは歓迎会に出すよ。レイちゃんをお披露目する事で色々牽制にもなるしね。でも、アー君は歓迎会にはださない」
「どうして? アラード兄さま、せっかく帰って来たのに」
「帰ってきたのではなく、病気療養から復帰してきたんだ」
「ああ、そうね」
「しばらく、俺たちがアー君の設定に慣れる必要があるし、レイちゃんとアー君が二人同時に現れるなんて、何だか、不自然だろ。それにあの聖女がアー君を見たら寄ってきそうで怖い。顔が良い男が大好きだから。ついでに公爵家のあれも顔に惹かれて引っ付いてくるぞ」
「それは嫌だ」
嫌そうな顔をしてきっぱりと言い切ったアランに他の人達がウンウンと頷いた。そうして、どういうわけか部外者の私も王家の家族団らんに巻き込まれて、こちらの世界に来てからの事をアランと一緒に話をする事になった。
私の冷蔵庫の事もアイテムボックスという風に紹介されて、せっかくだからと冷蔵庫の横からマドレーヌを出すと、相変わらず毒見もせずにレナード王子がパクッと口に入れ
「俺、この焼き菓子がすげぇ、好きなんだ。コーラとポテチも好きだけど。甘い物としょっぱいモノを交互に食べると止められないし止まらない」
「コーラ? ポテチ?」
「聞いた事のない食べ物だな」
「玲ちゃん、コーラとポテチ、食べたい」
そうしてリクエストにお答えして取り出したコーラを前もって凄く癖があるし、薬のように感じる人もいるからと注意したにも関わらず、一気飲みしたアストールム王子は目を白黒させていた。
「やっぱり子供には炭酸はきついかも」
「初めて飲んだら、ビックリするわ。大丈夫ですか?」
「うん。何と言っていいのか分からない、不思議な飲み物だ。でも、わりと好きかも」
王さまはじめ男性陣には好評だけど、女性には会わないみたいだったので、オレンジジュースをだしてあげると100%果汁のせいかとても美味しいと喜ばれた。
王家の皆さまは以外と気さくな人々だったけど、しばらくして、王さまと王妃さま、ルクスフォンス殿下とレナード王子は聖女とセイント国の王太子との謁見がある為、いやいやながら去って行った。
でも、何故か皆さん、私の事をレイちゃんと呼んでいるけど良いのだろうか?
私とアランも船旅で疲れているでしょうからと離宮に案内されたけど、その「リリーの離宮」は王宮の奥から転移で移動する事が出来た。かなり年配の侍女さんが付いてくれて、彼女が離宮でのお世話係の責任者になると紹介された。
お名前がロッテンマイヤーさん。アランと思わず顔を見合わせてしまった。
「それは良い。あの公爵令嬢はミティラの事をライバル視しているけど、こちらのレイちゃんはお友達だから共同戦線を張れるな」
「そうですわ。いい加減彼女の扱いには困ってましたの。何かと張り合ってこられますもの」
「確かに、あれは私にもすり寄ってきて、うっとおしいと思っていたんだ。レイちゃんとあれの顔はソックリだが、雰囲気が違うな。レイちゃんは楚々としてたおやかだ」
「おう、確かに。レイちゃんなら嫁に来てもらってもよいな」
「そうですね。私も娘が一人増えると嬉しいですわ」
「駄目だよ。玲ちゃんは」
「ああ、アラードの大事な人なのか?」
「違うけど、大切なんだ」
「あらあら、まぁまぁ」
「そうか、そうか」
「んーんー、大切なんだな」
何だか生暖かい目でみられてしまった。私とアランって聖女と従者の関係だけど、日本から来た同胞で旅の仲間で学生同士で……、仲の良い友達、何だろうか? 一緒にいると楽だし空気みたいな存在だけど、私にとってアランってなんだろう?
アランと目があって、お互いに困惑しているのがわかる。これまでは環境の変化に戸惑って、お互いに秘密を共有していて、でも、アランって王子様だから、アラン、このまま王子様になるのだろうか?
私がボーっと座ったまま出されたお茶をぼんやりと飲んでいると、ん……このお茶、美味しい、いつの間にか、側に来ていたミティラ王女が私の手を取って、「ね、そうしましょ」と同意を求めてきた。
「えっ、何がですか?」
「もう、お揃いのドレスで歓迎会に出ましょうって事よ。そこでサンクトゥス公爵家のシオリーヌさまに二人で対決しましょう!」
「シオリーヌさま?」
「そう、レイちゃんの双子の姉妹になるのね。お顔は……ソックリだわ」
「そんなに似ています?」
「ええ、お顔は」
どうやら、聖女シオリとセイント国の王太子を迎えての歓迎会が明後日、おこなわれるらしい。それにしても、シオリとシオリーヌなんて、名前が似ている。
ミティラ王女の話によると、シオリーヌは言動もシオリに似ているような気がする。その上、時折、訳の分からない事を呟く癖があるし、こちらの学園で男子学生の取り巻きを作って、女子生徒からとても嫌われているそうだ。
「ねぇ、レイちゃんは私の隣のお部屋なんてどうかしら? 別にサンクトゥス公爵家に行かなくてもよいのでしょうし、レナードお兄様の預かりという形にしばらくはなるんでしょう?」
「俺の預かりではあるけれど、王宮ではなく「リリーの離宮」に居てもらう。他の貴族連中と遭遇すると面倒だからな。それにレイちゃんは違う世界に居たから、まだ側についていないと、どこかでボロがでそうだ。それはアー君もおなじだし。あっちで一応教師はつけたけど、こちらでもしばらくは勉強漬けだな」
「ええっ! でも歓迎会は出るんでしょう?」
「レイちゃんは歓迎会に出すよ。レイちゃんをお披露目する事で色々牽制にもなるしね。でも、アー君は歓迎会にはださない」
「どうして? アラード兄さま、せっかく帰って来たのに」
「帰ってきたのではなく、病気療養から復帰してきたんだ」
「ああ、そうね」
「しばらく、俺たちがアー君の設定に慣れる必要があるし、レイちゃんとアー君が二人同時に現れるなんて、何だか、不自然だろ。それにあの聖女がアー君を見たら寄ってきそうで怖い。顔が良い男が大好きだから。ついでに公爵家のあれも顔に惹かれて引っ付いてくるぞ」
「それは嫌だ」
嫌そうな顔をしてきっぱりと言い切ったアランに他の人達がウンウンと頷いた。そうして、どういうわけか部外者の私も王家の家族団らんに巻き込まれて、こちらの世界に来てからの事をアランと一緒に話をする事になった。
私の冷蔵庫の事もアイテムボックスという風に紹介されて、せっかくだからと冷蔵庫の横からマドレーヌを出すと、相変わらず毒見もせずにレナード王子がパクッと口に入れ
「俺、この焼き菓子がすげぇ、好きなんだ。コーラとポテチも好きだけど。甘い物としょっぱいモノを交互に食べると止められないし止まらない」
「コーラ? ポテチ?」
「聞いた事のない食べ物だな」
「玲ちゃん、コーラとポテチ、食べたい」
そうしてリクエストにお答えして取り出したコーラを前もって凄く癖があるし、薬のように感じる人もいるからと注意したにも関わらず、一気飲みしたアストールム王子は目を白黒させていた。
「やっぱり子供には炭酸はきついかも」
「初めて飲んだら、ビックリするわ。大丈夫ですか?」
「うん。何と言っていいのか分からない、不思議な飲み物だ。でも、わりと好きかも」
王さまはじめ男性陣には好評だけど、女性には会わないみたいだったので、オレンジジュースをだしてあげると100%果汁のせいかとても美味しいと喜ばれた。
王家の皆さまは以外と気さくな人々だったけど、しばらくして、王さまと王妃さま、ルクスフォンス殿下とレナード王子は聖女とセイント国の王太子との謁見がある為、いやいやながら去って行った。
でも、何故か皆さん、私の事をレイちゃんと呼んでいるけど良いのだろうか?
私とアランも船旅で疲れているでしょうからと離宮に案内されたけど、その「リリーの離宮」は王宮の奥から転移で移動する事が出来た。かなり年配の侍女さんが付いてくれて、彼女が離宮でのお世話係の責任者になると紹介された。
お名前がロッテンマイヤーさん。アランと思わず顔を見合わせてしまった。
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