冷女が聖女。

サラ

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小話3  私の世界2(シオリ視点)

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 この世界って私のためにあるんじゃないかと思う。
 ひょっとして漫画とか小説とか乙女ゲームとかで、こういうイケメンたちにチヤホヤされる話があって、その中に私が主人公として迷い込んでしまったとか。

 キャハッ、元になった話は知らないけど、そういう流れになっているから、きっと物語はハッピーエンドに進んでいるに違いない。
 どうしようかなぁ。レナード王子はモロ好みなんだけど、第二王子で上に第一王子がいるというのがネックかなぁ。

 でも、隣の国に行って、第一王子のほうが好みだったらそっちにしても良いかもしれない。レナード王子はちょっと、ツンデレだから恥ずかしがって冷たい態度になってしまうんだよね。
 今頃、「どうして好きなのに反対の態度を取ってしまったんだろう」なんて身もだえているに違いない。
 イケメン王子があたしを想って身もだえる、なんて、いいかも。側近たちも結構好みなんだけど、主の恋心を思って、身を引いているのね。

 キャハッ、キャハッ、ククッ、もう笑いが止まらない。
 こっちの国のブギウもあたしの取り巻きも皆、あたしの事、隣の国に行ってほしくなくて、必死で引き留めるのが面白くてたまんない。止めて! あたしの為に争わないで! なんて。あっ、このセリフ、言っておけば良かった。
 食事会の時、レナード王子と側近たちが凄くまじめな顔で挨拶するのが可笑しくて、

「そんなに畏まらなくても大丈夫。あたしとレナードさまの仲ではありませんか」
 そう言ったら、ビックリした顔で皆があたしの事を見るから

「今日は無礼講ですよ。気にしないで皆で仲良くしましょう。ねっ、ブギウ?」
「いえ、聖女さま。ブルーバード国の王子としていらしているのですから、そういうわけにはいきません」
「いいから、いいから。今日は遠慮せずにアーンってしてくれて良いのよ」

 そうレナード王子に言ったあたしの気さくな態度にツンデレ王子はついてこれないみたいで

「いえ、聖女さまはブギウ王太子の婚約者に内定されていると伺いました。実際、とても親しくお名前を許されているようですから、とてもお近くには」
「もう、いいって言っているのに」

 そう言ってあたしは気にせずに円形テーブルの席にレナード王子の腕を持って座った。慌ててブギウがあたしの隣に座ったけど、本当はこの席じゃなかったみたい。
 円形だからどこに座っても良いんじゃないかと思うんだけど。
 若い人達だけの食事会かと思ったら、宰相とか、大臣とかも一緒に食べるんですって。あたし達が先にサッサと座ったから、右往左往していて面白かった。

 でも、食事中なのにレナード王子が呼ばれてちょっと居なくなったので、その間にあたしも化粧直しに立って戻ったら、席順が変わっていた。
 何か、大臣と話があって、隣にしてもらったんですって。
 もう、せっかく可愛い聖女さまが隣に座ってあげたのにこのツンデレめ。後からデレても知らんぷりしてやる。

 でも、ちょっとプリプリしているあたしを必死にブギウが機嫌を取ってきたから、これはブギウに気を使ったためかもしれない。ブギウも大事なキープ君だから、それなりに相手してあげなくちゃ。ア~、持てる女はツライわ~。

 結局、レナード王子に付いて隣国に行く事になったから、ちょっと、ハッピー。
 この間の舞踏会で見た美少年は美少女らしいけど、所詮、普通の人間だから聖女には勝てないし、精々あおって悔しがらせてあげようっと。
 この国でもイケメンは総取り状態だったから、隣の国でもイケメンパラダイス。選り取り見取り。

 もう、誰を選んであげようかな~。別に一人でなくてはいけないって事もないし、何人か選ぼうかな~。
 あっ、そういえば忘れてた。玲はどうなっているのかな。異世界で野垂れ死になんてしてないよね。イケメンに囲まれて綺麗な宝石をいっぱい付けたあたしを見せなくちゃいけないのに。
 玲の羨ましい、悔しいって顔が見たいし、早く自慢したいから王宮に来ればいいのに。
 もう、何しているの! ノロマね。



 ※食事会の後で。

「何ですか、あの聖女の態度は!」
「マナーとか常識とかどこに置いてきたんだ。きちんと教育はしたのですか! これ迄の聖女は大人しく教育を受けて、淑やかにしていたのに、あれでは聖女のお披露目に出せないではないですか!」
「ブギウ殿下、聖女は魔道具を付けてないのですか?」

 宰相や高位の大臣は聖女の態度に驚いていた。自由奔放な性格とは聞いていたが、あれほどとは思わなかったらしい。

「いや、魔道具は綺麗な宝石だから喜んでつけている。しかし魔道具は性格の矯正はできないらしい。これまでは従順なタイプの聖女が呼ばれていたのであんな破天荒な聖女に魔道具が追い付いてないのでは、と魔術師長が言っていた」
「魅了は効いているのですか」
「私に好意は持っているらしい。だが、他の若くて顔の良い男も好きなのだ。我慢の効かない性格ではないかと……どうも、レナード王子がタイプらしくて好意を隠さない」

「本当にあからさまで」
「貴族女性としたら恥ずかしい態度でしたな」
「しかも、ブルーバード国に行く約束を勝手にしてしまいおって」
「そこなんだが、何とか、この国に戻ってくるように仕向けなくては」
「まさか、レナード王子と結婚とかしませんよね」
「いや、彼は露骨に嫌がっていた」
「聖女なのに」
「私とて、聖女だから我慢している。あれが聖女でなかったら到底、近づきたくない」
「そうですよね」
「だが、2、3年だと思えば国のために耐えているのだ」
「殿下……」

「それより、あれは以外と単細胞で頭は良くない。ひとまず、ブルーバード国に行かせるとしてもまた、この国に戻ってこさせる工作はできる」
「聖女が国を離れても大丈夫なんですか?」
「あの聖女は神力が強い。あんなのだが。2、3か月は大丈夫らしい。なるべく早めに帰らせて、そして、帰ってきたらお披露目を済ませて、サッサと洗脳してしまう」
「洗脳は……」
「一旦、洗脳して解除。ボーっとしている所を麻薬で良い気持ちにさせてしまう。どうせ、聖女は何年かで帰ってしまう」
「麻薬漬けにすると、あの性格が少しはマシになって帰ってから喜ばれるかもしれません」
「ホントにな」

 悪だくみする男たち
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